10000文字までのショートショート

お題掌編 『秋・逃げ出した君に捧ぐ』

 ←(妄想らくがき企画)+(scriviamo!参加イラスト) 『狐画』(追記☆2月6日) →(雑記)妄想企画への参加、ありがとうございました^^
前回に引き続き、携帯小説サイトで出された「お題」から妄想して書いた、掌編を載せてみます。

今回のお題は…… 「秋の学校で…」。 です。

『秋の学校で、どんな出来事が起きましたか? それを妄想して、文章にしてください。』
という、けっこう範囲の広いテーマです。 そうですね、これはやっぱり学園ものでしょう。

前回の「となりの天使」は、ちょっと遊んでしまいましたが、今回は…、更に遊んでみました(爆)
とことんコメディです! でも、作者けっこう真面目に書きました! (>人<;) ←ほんとですって

どこかで「あ…♡」 って思っていただけると、いいな、なんて思いながら書いたラブコメです。

短いですので、どうぞ、気持ちを楽~~にして、読んでやってください^^



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             秋280



僕は胸騒ぎを覚え、校庭に飛び出した。

今日は僕らの高校の文化祭で、校舎の中も外も、展示物や出し物に力を注ぐ生徒たちの熱気であふれている。
軽音のポップな音楽や、屋台の呼び込みの声が強引に誘ってくるが、僕の心はそれどころではなかった。

望月(もちづき)がいない。

そういえば彼女は昨日から不安げだった。
「もう、最後なのよね」 と、秋色に染まる校庭を眺め、ため息ばかりついていたのだ。

そう、これは僕と望月だけにしか分からない不安なのだった。
こんなに急に指令が下るとは思っても見なかった。
僕ら二人はいつまでも、この学園で穏やかに過ごせると思っていたのだ。

けれど、上からの命令は絶対だった。
指令の後、僕がそっと触れた彼女の肩が震えていたことを、この指が覚えている。

望月は体育館の裏の、陽の当たらない場所にひっそりとたたずんで、空を見上げていた。
その頬は、空の青を映しているように蒼白で、僕の胸が軋んだ。

「望月……。こんな所にいたのか。ほら、戻ろう。もう時間がないよ」
「山下君……。うん、分かってる。でも、やっぱり怖くて。だって………何の心の準備もできてないのよ」

望月は不安そうな目をしたが、それでも一生懸命笑おうと努力していた。
その姿が僕を辛くさせる。

「わかった。君の不安を全部聞いてあげる。僕に全部吐き出しちまえよ。少しは気が楽になるかもしれない」

「山下君……。あのね……。わたしやっぱりどうしても納得できないの。わたしやあなたが、今までどれだけ尽くして来たと思う? ボスはそのことを何も分かっていないのよ。
そりゃあ、このところ能力の半分も発揮できなくなって、ボスにはかえって迷惑かけているかもしれないけど。でも……だからって……こんな仕打ち、酷いわ」

僕は優しく微笑むしかなかった。本当は叱る立場にあるのだろうけど。
「ボスっていうと、叱られるよ。“主”って呼べって、何回も言われてる」

「どこまでも優等生なのね。あなたは悔しくないの? 私だけじゃない、あなただって同じ目に遭うのよ? 斬り捨てられて、もう後は死ぬしかないのよ? 誰にも思い出してもらえず、醜く朽ち果てて消えていくだけなのよ? 誰にも悲しんでもらえないなんて、そんなのって……」

……なら、僕が悲しんであげる。

そう言いたかったが、そんな勝手な発言は、僕には許されていなかった。
僕に出来るのは、彼女が最後までその使命を全うするのを応援するだけなのだ。

「でも、僕らの死は死じゃない。そう主様に教わっただろ? 僕らのこの体が、また誰かの再生につながる」
「でも辛いじゃない、そんなの。見てよ私のこの体。もうこんなになっちゃった。だんだんと朽ちて行くのよ。少し前まではあんなに瑞々しかったのに」

「きれいだよ」
「……え?」
「今の君、とても綺麗だよ。きっと君の事を、みんなは忘れない。名前を思い出せなくても、きっと君の事を忘れない。
僕らの体は朽ちて行くけど、きっとこの世界の一つの潤いになる。希望になる。そう思ったら……少しは気持ちが軽くなると思わない?」
「……山下君」
「君を一人にしないよ。最後まで一緒に居てあげるから。さあ……行こう」

僕は彼女に手を差し出した。
完璧だと思った。もう何も怖がることないじゃないかと。

けれど、彼女は拒んだ。

「違うの! そうじゃない。……思い出せないの」
「え? 何を?」
「私たちの体を蝕んで、この世界から切り離してしまう、無慈悲な物質の名前を!」

ああ! 僕はすべてを理解した。だから彼女はここまで逃げて来たのか!

「望月!」
もう時間がない。僕は息を吸い込んで告げた。

「いいか、忘れるな。 アントシアニン! その名は、アントシアニンだ!」
「あ・・・アントシアニン!!」
彼女の声は歓喜に震えた。


「おい、山下、望月! お前ら何やってんだ、こんなところで。もう始まるぞ!」
突然ドスの利いた声が投げかけられ、僕と望月は振り返った。

メタボ気味の体をゆすって、顧問の黒岩が小走りに走って来る。
僕は手を振った。

「すみません、先生。セリフ合わせしてたんだけど、望月が、アントシアニンをどうしても覚えなくて」
「ひっどーーーい! 山下君、バラさなくてもいいでしょう? あなただってクロロフィルとクロロフォルムをいつも間違えてたじゃない」
「もう覚えたよ」
「何でもいいから教室に戻れ。生物部の出し物の時間、もうすぐなんだぞ!」

僕は顧問の言葉にカチンと来た。

「だいたい、なんで生物部が『紅葉とその仕組み』を、擬人化芝居で説明する羽目になったんですか! それも2日前に! ぼくら、お芝居未経験なんですよ!」
望月も、僕の横で大きく頷く。

顧問の黒岩は、振り向いてニンマリした。

「まあ硬い事言うな。 いいじゃないか、お前たち、スッゲー絵になってるぞ。高校最後のイベントだ。思いっきりはじけて、散って来い」


「ったく。調子いいんだから。……仕方ない。行って散ってこようか」

僕は大きくため息をついて、横に立つ望月の手をギュッと握った。
それは本当に、無意識だった。 

望月が少し驚いたような目をして僕を見上げ、ひと呼吸置いて、うん と頷く。

ひとひら、色づいた木の葉が二人の間を舞い落ちていく。

「だね。散ってこようか」

そう言って笑った望月の頬は、頭上の楓のようで。 そして、とても綺麗だと思った。



        (END)



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~ Comment ~

ははは 

軽~く読めとのアドバイス? 通り、軽~く読ませていただきました。いや、途中で、実はこの人物たちは「人間」ではなくて「物質」かとは思っていたのですが、あ、そうか、お芝居の擬人化ものだったのかぁ! 確かに、物質だったら名前は出て来なかったな(lime風には名前が出て来ない時と名前がアルファベット系の時は要注意、と私のlimeメモには書いてある^m^)。
いや、これはまさに、「本能寺の変~♪」ってやつの生物編、ですかね! ぜひともYou Tubeでアップして、受験生の助けになって欲しいものです。
そして、紅葉だけに散るって落ちもいいですね(*^_^*)

大海彩洋さんへ 

笑ってもらえてよかった~^^

自分で笑いながら書いたんですが、どうだろう、微妙かな? なんて。
でも、私がラブコメを書くなんてこんな超短編くらいしかありませんから、自分的に貴重です(笑)

あ、やっぱり最初は「人間じゃないかな?」と思われました?
だけどさすが大海さん。
私が普通の感じの名前を使った時は、それほど大きなファンタジーではないという事!・・・らしいです(大海さんデータ)

これ、前半部分はお芝居の台詞合わせと、顧問に突然難題を押し付けられた二人の胸中と、微妙に混ざり合ってるんですが、その境目が曖昧すぎますね^^;

でも本能寺の変、SS版……って、おもしろいかもしれませんよね。
もっと歴史的ないろいろを、コメディSSで覚えるって。(でも漫画であるな、すでに><)

実はこの後、NACSのお芝居をヒントにして作ったSSもあるんだけど、公開しようか悩んでます。大海さんにはきっと受けると思うんだけど(爆)

コメント、ありがとうございました^^

NoTitle 

こんにちは。^^
楽しく読ませていただきましたです。^^
発想と、展開のテンポの良さがいいですね。^^

NoTitle 

まあ、演劇か寸劇なのかは途中からなんとなくわかっていましたが。
懐かしいですね(笑)。
中学生の頃に演劇をやって、湧かせたことを思い出しました。
(*'▽')

マダム猫柳さんへ 

わ~、マダム。こんなSSにもコメを、ありがとうございます^^

何か、いきなりこんなシーンを思い浮かべてしまって勢いで書いたけど、これ、どうなんだ~~(笑)
でも、楽しんで頂けてよかった^^

結構、イケメンタレント君と可愛い女優さんが5分ドラマとかやったら、面白いかも・・・って、ちょっと妄想(危ないです)

マダム、お忙しい中、ありがとうございました!

LandMさんへ 

あはは。やっぱりばれちゃいました??

すごく芝居臭いセリフですもんね。

でも、ほんと、懐かしい。私も中学の時の文化祭は3年間演劇でした^^

1年の時は村の子供。 2年は・・・天狗。

NoTitle 

今回のお題は「秋の学校で…」なんですね^^
何かの組織に所属していて、
もうすぐ死んでしまう設定なのかと思いきや、
なるほど、演劇の台詞だったんですね~。
最後の方を見ると確かに芝居がかった台詞ですもんね(´∀`)

それにしても、最後に無意識に手を握るところなんて、
なんだかまさに青春!という感じでいいですね♪
この話はここでおしまいですが、
二人の関係は進展しそうな感じですね~。

NoTitle 

ああ~~面白かった♪

はじめはドキドキ、はらはら・・
どこかの壮大な大きな力の支配者の下の
抵抗出来ない高校生・・・
そんなこと思いながら読んでいくと

へっ!?
アントシアニン????

そこからは、笑って読ませていただきました。
ああ~~面白かった~♪

NoTitle 

卑怯なり!(悶絶して笑う)

海青藍花さんへ 

よかった~^^
藍花さんに、楽しんで頂けて。

狙い通りの反応をしていただけたこともうれしいです^^
ちょっと遊びすぎてしまいましたが、たまには・・・ね。

読んでくださって、ありがとう~~!

ポール・ブリッツさんへ 

あ、そんなことより、もう上がってますね!
後で伺います^^

ツバサさんへ 

わあ~、ツバサさん、コメ返の順番が遅くなってごめんなさい~><

こちらも読んでくださって、うれしいです^^
はい、ちょっとシリアスな感じで初めて見ましたが、じつは・・・でした(笑)
ものすごく芝居がかってますでしょww

かなりコメディ風にしてみたのですが、最後の最後でむフ^^な、青春テイストを入れてみました。
うん、この二人、いい関係になりそうですね。
ああ、いいなあ・・・・若いって><

コメント、いつもありがとうございます!

NoTitle 

limeさん的に貴重なラブコメ、楽しかったです。
部活劇~^^ 専門用語がドカドカでてきて面白そう~^^
山下君。何気にやるなあ。もう、二人して散ってこいや~^^

微笑 

うむ、どんな特殊使命を帯びた高校生なのだろう?
どこかの秘密警察にでも属しているのかな。
テレビ?

あ、いや、もしかしてこの「望月」さん、月?
そしたら山下って名前は?

などと、読んでいる途中で気分が二転三転しまして、limeさんの手中に完全にはめられていました。
そっか、そうだったのですね。

たとえばこのふたり、ではなくてふたつで、実は人間ではない、とかいうのも面白そうだな。
お題がわりと漠然としているので、これもいろんな方向に妄想が広がりそうですね。

楽しませていただきました。

けいさんへ 

そうなんです、まさかのラブコメですww
ラブコメって、なんだ?? とか、よく分かってないんですが。
高校演劇・・・といっても即席演劇ですが、なんか楽しそうですね^^
山下君って、きっとさりげなく持てるタイプだと思う。うん。(どうしよう、気に入ったw)
この後見事、散ってきます!

あかねさんへ 

おお、
あかねさんも途中まで、いろいろこの二人の素性を考えてくださったのですね。
望月って名前にまでw(乾君なら月を元に、いろいろ推測してくれそう)

でも・・・じつはこんなことでした(笑)
ここでファンタジーにしたらちょっと、当たり前な感じがしたので、ぐっとリアルに。
そうそう、タイトルは全く想像させないように、はぐらかしました。
タイトル決めるのって、楽しいんです~(SSは、気楽に決められるから)
長編のタイトルは、悩みまくるんですけどね^^

お付き合いくださって、ありがとうございました!

あははははは\(≧∀≦)/はははは!!! 

面白かった~~~\(≧∀≦)/
いや~~limeさんが最初から
とことんコメディ って仰ってるのにもかかわらず
やっぱり朽ちて逝っちゃうのかと思いましたよ(爆)
もーーー!!
うまいなあ~~~o(^^*)o

ボス(笑)のお陰で恋も生まれちゃいそう!!
散って朽ちて新しい恋が生まれちゃう!!!
きゃーーー\(≧∀≦)/しゅてきーー!!!

かじぺた さんへ 

わ~~~い、かじぺたさんに楽しんでもらえてよかった~~。
そうそう、コメディだって黙ってて、最初のシリアストークを読んでもらったほうが面白いかな?とも思ったんですが、せっかくシリアスモードになっていたのに、あんなおちゃらけたオチだと、申し訳なくて。
コメディですって注意書きしちゃったw

どっちの方が良かったかなあ~。・・・でも、コメディだって書いても、かじぺたさんは「朽ちるんだ><」って思ってくださったんだから、いっしょか(笑)

そうそう。このボス(誰だろ)のおかげで、この初々しい2人が結ばれるかも・・・。
山下君、きっといいやつだから、お幸せにね♪

恋愛ものが書けない私の、最初で最後のラブコメでした!!(爆)
読んでくださってありがとう~^^

こんばんは。 

コメディーとは聞いていてもすっかり騙されてしまいました。
ほんとにSFだと思って読んでいました。なんとなく葉っぱがモチーフになっていて、秋がテーマだから二人は散っていくのだろうか?主の元から散ってしまったらこの二人に何が起こるんだろうと思って、ドキドキしながら読んでいました。
・・・って、え~!!!こういう展開なの~?
笑っちゃうと同時に妙にホッとしました。あ~よかった。
とても面白い読後感でした。
スッゲー絵になってる二人のこれからに大いに期待します。

山西 サキ さんへ 

えへへ~^^
サキさんも、「ちゃんと言ったのに騙されてくださった」やさしい読者様なのですね♪

最初は擬人化SFでもいいかなあ~と思ったのですが、ファンタジーっぽく持っていくと、オチが見えなくなりそうな気がして、
どうせならすごく普通のラブコメにしちゃえ!と(笑)

でも、学園ものでこんなシリアスで劇的なセリフを言い合うのって、ちょっとドキドキだなあ・・・と、書きながら萌えていました。(どんな学園ヒーローものよw)

ああ、サキさんに楽しんでもらえてよかった~。
まじめすぎても、ふざけすぎてもダメなSS。 なかなか難しいけど、すごく勉強になって楽しいです。
たまにはラブコメもいいかな?(きっともう書かないけどw)

サキさん、今回もお付き合い、ありがとうございました!

拍手鍵コメNさんへ 

あ、そうかあ~。ボスつながりで、今度も天使?と^^
えへへ。実はこんな感じでした~。
ファンタジーもいいけど、こんな青春の一ページもいいかなあ~なんて。
SSでしか、ラブコメなんて書けないですもん(なんか照れくさくってw)
でも楽しく書くことができました^^
次回もSSですが、そっちはまた毛色が違ってきます。
またよかったら、のぞいてくださいね~^^

いつもありがとう♡
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