残響(KEEP OUT続編3)

残響 第8話 欠落

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《昨夜はデートすっぽかされて 俺 ひどくテンション低いんですけど》

翌日、昼近くになって届いた塚本からのメールに、春樹は少しばかり笑った。
結局昨夜は塚本に会わずに直帰したのだが、どうせ塚本も冗談半分で春樹を呼んだのだろうし、そして暇つぶしに今またこんなメールを寄越しているのだろう。
〈ごめん。昨日はちょっと急用で行けなくなっちゃって〉
冗談に付き合う程度のつもりで、そう返した。
《じゃあ きつねのお面 大事そうに抱えて歩いてたのは 一体どなたさん?》

一瞬、笑いが引いた。見られていたのだ。
けれど何となくゴメンというのも妙な気がして、春樹は返信を放棄した。
やはりどこかにまだ、あの男を敬遠する気持ちが強く残っている。
悪い奴ではないのは分かっているが、春樹の能力を知ってしまっているだけに、警戒心が湧いてしまう。
知らず知らずに神経が尖ってしまう。

返信しないのに、しばらくして着信があった。
《いいよ。デートはまた いずれ》

できれば、自分のこの力を知られたくなかった。隆也以外には、誰も。
どんな言葉もからかいに聞こえる。疑心暗鬼のかたまりになる。
春樹はそっと携帯をベッドの上に転がすと、昨夜からローテーブルの上に置きっぱなしのきつね面に視線を移した。

昨夜はすぐにでも八重の所に持って行きたかったのだが、朝になって考えてみると、まるで幼稚な猿芝居に思えてしまった。
そしてそれに対する早苗の困惑顔まで浮かんでくる。
---いったい、なんのつもり?---
怖くなる。
いったい、何のつもりなのか、自分で自分が分からなくなる。

集中ゼミを終えたあとの予定は、選ばなければ際限なくあり、同じ学部やサークルの仲間のコンパや小旅行の誘いは毎日のように舞い込んで来た。
バイトも幾つか候補を決め、面接の予定を入れようと思っていた所だったし、自動車免許の集中合宿の申し込みもまだ間に合う。

実際、大学の友人達と過ごす時間は楽しかったし、たとえ触れたとしても同年代の彼らから深いダメージを受けることは無い。無いはずだ。
皆、陽気で気のいい連中だ。

けれど、そう思いながらもどこかで恐れている自分がいる。
PTSDは根深く、治癒しかけた感情を一瞬で最悪なところまで突き落とす。
横川祐一と松岡良彦との記憶のシンクロを思い出すだけで、今でも足が震え、冷たい汗が吹き出る。
他人の心の奥に潜む影や苦痛や怒り恨みが、肌を通して染み入ってくる感覚など、もう二度と味わいたく無かった。

自分の力が怖いのではなく、正体の知れない感情を内包する、人間という生き物自体が怖いのかも知れない。 
そう思うとまた、呼吸が苦しくなってくる。

開けた窓からぬるい風が入り込み、部屋の空気をほんの少し揺らした。
紙袋に入れたままになっていた夏みかんが、ふわりと薫る。
早苗に渡したお陰で半分になった夏みかんは、それでも独りで食べるには大量で、放置されたまま白い袋の中でツヤツヤ光っている。
昨日もう一度メールしてみたが、やはり隆也からの返信は無かった。
メールというのは不便だ。送ったら最後、その文面を無かったことにできない。
〈ごめん。怒らせたかな〉
中坊のようなあの一文を抹消したかった。できれば隆也に見られる前に。
そして、もう二度とメールは送らない。

              ◇

春樹は軽音部とダーツ研、ふたつのサークルに席を置いていたのだが、その後強引にサークル主催の飲み会に参加させられ、まる3日を慌ただしく過ごした。

久々の酒の席は楽しかったし、女の子達も皆気さくで話題に事欠かなかった。
けれど女の子数人が酔った勢いで「みんなで天野君のアパートに押し掛けちゃおうか」と冗談交じりに言い出し、その場が盛り上がってしまうと、胃の辺りが冷えていくほどの不安を覚えた。
肩に寄りかかってきた女の子から身をそっとかわし、「ごめん、ちょっと……」と言い淀むと、ほんの少し空気の温度が変わるのが分かった。
友人の1人が「なんだ? 彼女でも連れ込んでる?」と突っ込んでくれたため、笑いで誤魔化すことができたのだが。
けれど、何とも説明の付かない不安と不快感を拭うのには、時間がかかってしまった。

『一生、女も抱けないぞ』
塚本の言葉は、文字通りの意味だけではなく、人間の生き方を問うものだったのかも知れない。
洞察力の鋭い彼には、春樹の欠落しているモノがはっきりと見えているのだろう。
だとしたら、知りたくない。
答えを目の前に突きつけられ軟弱だと責められても、たぶん自分ではもう、どうすることもできない気がする。

アパートに帰ってからも胸が苦しく、落ち着かなかった。
暑さのせいばかりでなく、どんどん気力が衰えていくような気がする。
ベッドの上に置いたままだったきつね面が、憂いたような笑みを向けてくる。
堪らなく、ひとりだった。

お母さん。

思わず心が呼んだのは、八重だった。
全てを包み込んで愛してくれる八重の優しい手に触れ、一緒にゆりかごのような恍惚に漂いたかった。

明日、行ってもいいかどうかを聞くため、いつものように早苗にメールを送ったが、その日は結局返信は来なかった。
いつも、2分と待たずに返してくる早苗が、翌日改めて送ったメールにも、返事をくれなかった。
どうしたのだろう。早苗もどこか、体調を崩したのだろうか。
その2日後の昼過ぎ、バイトの面接に行く用意をしていた春樹の元に、待ちわびていた早苗からのメールが届いた。

《返信が遅くなって、本当にごめんなさい。2日ほど前、母、八重が永眠しました。
やっと自宅に体が帰ってきましたので、このあとごく親しい者だけで、静かにお見送りをしてあげたいと思っています。
春樹くん、もし良かったら、母にもう一度だけ会いに来てやって貰えないでしょうか。我が儘を言って、ごめんなさい》

立ったまま、春樹はしばらくじっとその文字を見つめていた。
見知った文字なのに、よく理解できなかった。なのに体から力が抜けていく。
何か、感情というたぐいのものすべてがポソポソと体からこぼれ落ち、足元に散らばっていく。
零れ落ちていく音が、耳の奥で響いて止まらない。
ぽそぽそと、延々。
「あ…」
声を出してみたが、止まらない。
思い出したように呼吸をしてみたが、自分の中にはもう何も入っては来ず、何も残っていない気がした。
ただの空っぽの器だった。

こぼれ落ちたものを探すように足元をゆっくり見渡すと、テーブルの端に置いてあったきつね面に行き当たった。物言いたげに、口元を歪めている。

--- ああ、光彦。きつねのお面、見つかったんね。ありがとうね、探してくれて。ありがとうね、光彦 ---

緩い風の中で、そんな声が聞こえた。 確かに聞こえたのに。優しい声が ありがとうって。

〈いまから 会いに行きます〉

思うように動かない指先で、春樹はゆっくりとそれだけ打ち、早苗に返信した。



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~ Comment ~

NoTitle 

やはり間に合わなかったか……(つд;)

次回の葬儀では、もっと欠落感が襲うんだろうなあ……。

大丈夫なのか春樹くんの精神。不安だ……。

(;゚ω゚)ェッ................... 

春樹の周りでそよいでいた穏やかな風は、季節風だったのでしょうか
瞬く間に 消えた…

時間と共に 人は 「生」を刻み、日々が過ぎる中 人は着実に 「死」へと歩んで行っている
それは 分かっているのに 自分自身も身近な人も いつか此の世から居なくなる事が、どこか絵空事の様に捉えてしまっている

私、最近の八重の様子から…と、思ってました。

でも 八重が春樹と関わった期間は、短いものでしたけれど、彼女は とても幸せだったのではないのでしょうか。
そう 思いたいあ。。。

ただ 置いてきぼりにされた春樹が…
今は 呆然自失の彼ですが、八重との関わり合いの中で きっと 何か大切なものを得たと思う
春樹も気付かないほど 心の中で ひっそりと芽吹いているはず…

limeさま、思い切った展開に ギャ━━━Σヾ(゚Д゚)ノ━━━ !!!!!となったよ~~
前回で 後3話だと仰っていたので 「何かあるな?」とは、予想していた私
でも 前回のお返事で 「狐福」からの 狐のお面で 何か良い事を運んで来る(本当に 思ってる)云々‥と、あったし!
それは、今日じゃないと、最終話か その前かと思ってたのに~~~!!
それでも 春樹に 良い事があると仰るのでしょうか!?
えっ♪~(  ̄ε ̄:)ヾ(ーー ) いい加減 白状しろ~~!(笑)...byebye☆ 


うぅむ 

塚本……やっぱ、ただのストーカーだったのね。いえ、つまり、行動がストーカーそのものですよね。「愛」を示すなら他の方法があるだろうに……こいつも悲しい奴、不器用なのですねぇ。
といって、どうも行動の仕方が間違っているので、同情は出来ませぬ(-"-)
それなのに、春樹ったら、ちょっと塚本を認めてもいる? う~む。

それからちょっと意外な発見もありました。春樹って、サークルに所属していたんですね。もしかして今までにも出てきていて、私が見落としていたのかしら。ダーツ研はともかく、軽音が……意外。彼の担当は何? 機械類かしら? まさか……ドラム!?(成ちゃんじゃないよ!)

そして、八重さん。亡くなられたのですね。早苗さんから、何か八重さんについて、重大なお話がありそうな予感です。きっとものすごく辛いことがあったのだろうけれど、それを記憶って上塗りしいてく、あるいは絶対にどこかに残っている優しい思い出が覆っていく……人って、そんなこともできるんですよね。良くも悪くも、だけれど。そういうことを、八重さんから少し春樹が感じて、気のせいでもいいから楽になってくれたらいいなぁ。 
「物言いたげに、口を歪めている」……狐面……妖しくて〇

ポール・ブリッツさんへ 

>やはり間に合わなかったか……(つд;)

あ、やっぱりそんな気がしていましたか。
あの感じから、温かい展開になるとはやっぱり予想できませんよね。
(私のお話ですし)

次回はまだ葬儀までは行かないんです。春樹、葬儀に出れるのかな^^;
次回は、まだこの日の続きです。

これ以上欠落とか喪失とかあったら、春樹、無くなってしまいそうですもんね。
なんとか・・・救いのあるラストにしたいです!(こっからか??)

けいったんさんへ 

本当に・・・柔らかい夏の風は、悲しい風になってしまったようで。
うん、そうなんですよね。
自分を包み込んでいる優しい人の愛情が、永遠だと思いたいし、いつまでもそばにいてくれると思いたいし。
だけど、やっぱり気づかされるんですよね。
自分を愛してくれる人は、いつかいなくなってしまう。

だけど、ちゃんと自分の道を、踏みしめて歩いている人には、その悲しみを乗り越えられるし、そこに依存したまま立ち止まったりしないのでしょうが。
今の春樹は・・・>< ひたすら依存して逃避してる状態ですもんね。悲しい。

そうですよね。
八重さんはきっと幸せな数日間だったと思います。これは絶対。
早苗さんもそう思ってくれてる。はず。

> ただ 置いてきぼりにされた春樹が…
> 今は 呆然自失の彼ですが、八重との関わり合いの中で きっと 何か大切なものを得たと思う
> 春樹も気付かないほど 心の中で ひっそりと芽吹いているはず…

だといいですよね><
今はほんと、砂漠に放り出された幼児みたいになっちゃってますが。
春樹、この悲しみを乗り越えればきっと八重さんとの出会いは、大切だったと思い起こせるはず。
さあ、乗り越えられるのかな・・・。

> limeさま、思い切った展開に ギャ━━━Σヾ(゚Д゚)ノ━━━ !!!!!となったよ~~
> 前回で 後3話だと仰っていたので 「何かあるな?」とは、予想していた私

あ^^;やっぱり??
いやもう、何かあるとしたらこういう展開しか思い浮かばなかった作者はやっぱり酷いですよね。
ここはね、八重さんには申し訳ないけど、春樹に喝を入れなきゃと思った次第で。
春樹は今、飛ぶのが怖くて巣の中にしがみ付いてるひな鳥ですもんね><

狐面には、もっともっと福を運んできてほしかったんだけど。
でも、次回もちゃんと狐さんは頑張ります。
「狐福」はちゃんとありますよ。
でも、春樹に良いことがあるかどうかは、春樹の受け取り方次第で><
分かりやすいハッピーエンドは待っていないかもしれませんが、じわじわ行きますので、もうしばらくお付き合いくださいね^^
温かいコメ、毎回ありがとうございます!
次回も日曜日更新です。

NoTitle 

きつねちゃーん、何か言ってくれー
落ちるー落ちるよー

心臓ばくばくです。大丈夫か自分。じゃなくて春樹でしょ。
会いに行ったとして、どうなるんだろう。

ふふ。こういう場面でこのお話が春樹視点ということが嬉しいです。
隆也や他の誰かの視点だと、春樹はたぶん何も語ってくれないような・・・
さあ、春樹。何思う・・・

大海彩洋さんへ 

塚本、やっぱり行動がおかしいですよね!(笑)
本人はとっても素直に感情を表現してるつもりなんですよ、本当に。
でも、どう見てもストーカーっぽい。
春樹が「冗談なのだろう」と思ってくれてることすべてが結構本気な愛情表現なんですよね、困ったことに。

じつはこれが終わった後、塚本のおまけSSを挙げます。(さっき、衝動的に書いちゃった)
あまり塚本に興味ある読者さんはいないと思われますが、書いちゃったもん(涙)
書きながら一人で笑っていました。私がイメージした彼の主題歌も、挿入。
彼の実態が、明らかに・・・!

> それなのに、春樹ったら、ちょっと塚本を認めてもいる? う~む。
春樹が、塚本をどう思うのかはとっても微妙なラインで。毎回少しづつ変化していけばいいなと思うんです。
絶対身を・・・いや気を許さない存在ではあると思いますが、自分にないパキッとした明快な精神構造に、惹かれることもあるんだろうな・・・って。(でも身はゆだねるな・笑)

> それからちょっと意外な発見もありました。春樹って、サークルに所属していたんですね。もしかして今までにも出てきていて、私が見落としていたのかしら。ダーツ研はともかく、軽音が……意外。彼の担当は何? 機械類かしら? まさか……ドラム!?(成ちゃんじゃないよ!)

ははは。これ意外でしょう? 安心してください、初めて書きました。
でも実はどちらも幽霊部員で、軽音とダーツ研に、春樹の熱烈ファン(男)がいるんです。(軽音の皮ジャン男、以前に「醒めない夢の中で」に出て来たんですが)
彼らに引っ張られて席を置いてるんだけど、イベントや飲み会には必ず呼ばれます^^
ちなみにダーツの腕はすごいんです!春樹。(でも、そんな事を書くスペースが無くって。続編があったら書こう)

> 早苗さんから、何か八重さんについて、重大なお話がありそうな予感です。

そっか、早苗さんが春樹を呼んだことから、そんな予感が漂いますよね。
まだ語られていないこの親子の事情、いろいろありそうですもんね。
だけど実は、この母子にそこまで深い悲劇は、あの光彦の死以外にはなくて。
この親子の事情は細々といろいろあるのですが、それは懐の大きな早苗さんがぜんぶ飲み込んで消化しちゃったんだと…思うのです。
ここで早苗さんが春樹を呼んだのは、「ああ、なんだ」と思われるかもしれないんですが>< 別のことで。
それが春樹にどう作用するかは、まだ作者にもはっきりと確信が持てていません。
春樹の気持ち次第というところなんですよね。
本当はあと2回分は、一気に行きたいところなんですが、長くなるのは申し訳ないし・・・。
すっきりはっきり答えや方向性が見えるラストではないかもしれませんが、ここでの精いっぱいを、見てほしいなって思います。

> 「物言いたげに、口を歪めている」……狐面……妖しくて〇

〇頂けてうれしい^^
狐さん、もうちょっとだけ登場します♪

けいさんへ 

けいさん、こんにちは~。

ああ~。おちないで、けいさんは、落ちないで~。
きつねがなにか、優しい言葉をかけてくれたらいいのにと作者も思いました。
今回、さすがの作者も春樹がかわいそうになりましたもん。
(いつもは笑ってみてるのに・・・?)

> 心臓ばくばくです。大丈夫か自分。じゃなくて春樹でしょ。
> 会いに行ったとして、どうなるんだろう。

ばくばくさせちゃいましたか!春樹と同じ気持ちになってくださるのが、何よりうれしい!
けど、幸せな気持ちのほうがいいですよね^^;
会いに行って……本当に、どうするんだろうって思いますよね。辛さが増すばかりだし。
早苗さん、酷なお願いだったのかな。

> ふふ。こういう場面でこのお話が春樹視点ということが嬉しいです。
> 隆也や他の誰かの視点だと、春樹はたぶん何も語ってくれないような・・・

本当にそうですよね。
他の人の視点だったら、無理して頑張って微笑む春樹の表面しか見えてこない。
隆也がいつも春樹の気持ちを推し量ってるけど、やっぱり春樹の声を聞きたいですよね。
(作者、あまりにも春樹がナーバスでヘタレなので、憔悴しちゃってますが^^;)
さあ、春樹、何を思う?
でもね、春樹は時々自分の感情を押し殺しますからね。(うわー、じゃあ、やっぱり同じこと?)

拍手鍵コメNさんへ 

春樹の心のうねりと、八重さんの死による喪失感、感じ取っていただけてうれしいです。
きっと春樹の中での八重さんの死って、とても特異なものなんだろうなって感じます。ある世界の崩壊にも似た喪失感で。
八重さんが春樹に残したものが、なにか春樹にいい作用をしてくれればいいのですが。
あ、思い出してくださってうれしいです。隆也。
隆也~~~、がんばれよ!(ってあんた、もう出てこないつもり??)
いや、ちょろっと最後、出てきますので!!

心の欠落 

 主人公が辛そうです。

 以前に読んだ小説作法本に、「登場人物は徹底的にいじめろ」と書いてあったのをふと思い出しました。

「自分の力が怖いのではなく、正体の知れない感情を内包する、人間という生き物自体が怖いのかも知れない」

 主人公には、人間が正体の知れないものに見えるのですね。心が読めてもなお、人間の感情を正体の知れないものと感じているのは、際立ったポイントだと思います。

 普通、心が読めれば、人間の正体が「明らかになる」というふうに考えると思うのですが、ここでは、心が読める主人公が、返って、周りの人間よりも繊細に、人間の感情を「正体が知れない」、というふうに感じています。

 これは俗に言う、「見れば見るほどわからなくなる」という現象に近いな、と思います。知れば知るほどわからなくなる。近づけば近づくほど遠くなる。
 人間の心がよく見えるほど、心の見えない部分を感じる。心の「欠落」を感じる。心の欠落という規則が、自分の心にも適応される。欠落についての想像は膨れ上がって、極限まで大きく感じられる。自分など欠落に対し為すすべがないように感じる。欠落について知りうるかもしれないことも、自分から拒否してしまう。知りすぎるがゆえに、知りたくない。

「答えを目の前に突きつけられ軟弱だと責められても、たぶん自分ではもう、どうすることもできない気がする」

 知りたくないのはどうすることもできないから。欠落についての主人公の体感が現れているように思います。人はナーバスになっているとき、人生の負の側面を非常に大きくとらえる傾向がある気がしますが、そのことが現れているようにも思えます。

NoTitle 

 こんばんは。
八重さん 亡くなってしまったのですね 薬が強くなったと前回にあったので 何か仕掛けてくるだろうなぁとは 思っていましたが…
其れでも 八重さんは人生の終わりに 優しい思い出の中で逝ったのかなぁ。
会いに行くのか… 出来れば 春樹には全てが終わってから知らせて欲しかった。
春樹… 冷たくなった手を握るのだろうか… 怖いよーーーー

ああ・・・ 

八重さんから貰った温かな記憶は
春樹に何をもたらしてくれるのかな??
狐面は頑張ってくれるんだよね???

今は次のお話を静かに待つことにします・・・・・
うええええん(´Д⊂。・゜・。

ササクレさんへ 

ササクレさん、今回も読んでくださってありがとうございます。
そしてまた深い考察。
自分の文章に破たんがなかったか、改めてビビりながら感想を読ませていただいています。

>  以前に読んだ小説作法本に、「登場人物は徹底的にいじめろ」と書いてあったのをふと思い出しました。

え、そうなんですか? 私は無意識的にどうしてもそんな話を展開してしまって、ドSだと自他ともに認めてるんですが、それもアリなんですね。よかった。じゃあこれからも・・・・笑

そうなんだと思います。自分の感情さえコントロールできないこともあるのに、他人の感情の起伏や狂気に触れてしまったらもう、あとは恐れしかないのではないかと。
実際には所詮人間なんだし、鬼や悪魔でもないのですが、ナーバスになった春樹には、今はまだ畏れしかないのかもしれませんよね。

まさに、見れば見るほど、知れば知るほど分からなくなるということなのかも。
知りすぎることは、不幸の始まりなのかもしれません。
でも知りたい…と思うのが人間なんですが。

今回、インスピレーションで付けた欠落というタイトルですが、ササクレさんのコメを見ながら、まさしく今の春樹だなと改めて感じました。
自分の欠落部分を見つめるごとに、その部分がどんどんクローズアップされて、もう修復不可能な気持ちになってくる。
これ、どんな人間にもありますよね。自信喪失というレベルで。
そんな時逃げるか、立ち向かうかで、その後の展開が変わるんだと思うんですが。

>  知りたくないのはどうすることもできないから。欠落についての主人公の体感が現れているように思います。人はナーバスになっているとき、人生の負の側面を非常に大きくとらえる傾向がある気がしますが、そのことが現れているようにも思えます。

そう言ってもらえてホッとします。
ただのヘタレだと思われても仕方ないのですが、やっぱりこの能力は心身を蝕むはず。
今は逃げてばかりいる春樹ですが、このままじゃダメだと分かってはいるんですよね。
逃げている自分を認めてしまえるかどうか。
この物語は、本当にただそれだけを描いた話なのだと思います。

こうやって分析していただけると、嬉しいと同時に、大丈夫か自分の文章!と、ドキドキしますね^^;
でもササクレさんの分析が優しいので、ほっとしています。
拙作ではありますが、またどうぞお立ち寄りください。

ウゾさんへ 

こんばんは。
やはりこういう展開になってしまいました。予感、していました??
皆さん、「八重さんの記憶が戻って、春樹に誰?っていうんじゃないかな」と、おもわれてた方も多かったようですが、私的にそちらの方が辛くて、書けませんでした。
喪失感という意味ではそちらでもよかったのですが。
やっぱりなんだか悲しすぎて。(中途半端なSです)

> 其れでも 八重さんは人生の終わりに 優しい思い出の中で逝ったのかなぁ。

うん、それは絶対にそうですよね。そこだけが救いになりそう。(え、そこだけ?)

> 会いに行くのか… 出来れば 春樹には全てが終わってから知らせて欲しかった。

そこ、ハッとしましたね。まさに・・・。春樹の気持ち的にはまだ、そのほうが良かったのかも。
でも早苗さんは、そこまで春樹が八重さんに依存していたと知らないわけですから、仕方ないかもしれませんよね。きっと春樹に一緒に見送ってほしかったんでしょう。本当にここは、早苗さんのわがままなのかも。
幾つになっても、わがままを言ってしまいたい時って、あるんですよね。

春樹、八重さんの手を・・・。うん、なんかそんなシーン、ありそうです(涙)




かじぺたさんへ 

かじぺたさん、ごめんなさい~><
(と、なぜか謝る。)
ここは一番つらい回かもしれません。
ひたすら春樹の苦悩と喪失だけのお話になってしまいました。
でも、でもきっと最終話にはなにか変ると思いますので、また来てくださいね^^
きつねのお面、もうちょっと何かに作用してくれると思うんです。

次回、そして最終話、どうぞ春樹を応援してやってくださいね。

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鍵コメHさんへ 

Hさん、きょうもありがとうございます。
またいろいろ書きだしてくださって、うれしいです。
共鳴してくださったんだと、感激^^

今回はしんみりとして、気持ちが沈んでしまう回だったと思います。
楽しく読むことが出来なかったのでは、と心配だったのですが、悲しい展開でもちゃんと物語として楽しんでもらえていることが、とてもうれしくて、ほっとしました。

Hさんのご負担にならないように、また応援してくださいね♪
ありがとうございました!

NoTitle 

なんと・・・、八重さんが亡くなってしまったとは・・・。
生きている者はいつかは逝くものですが、
実際に身近な人がなくなると辛いものですね・・・。
娘の早苗さんもショックが大きいでしょうけど、
春樹君も八重さんの心に触れている分、余計にショックでしょうね(´;ω;`)

ツバサさんへ 

こちらも読んでくださって、ありがとうございます!
今回は本当に重いシーンばかりで申し訳ないです><(いや、いつもか^^;)

そうなんですよね、大切な人でも、いつかはいなくなってしまう。
でも、このタイミングで心の寄りどころの八重さんを失うのは、本当に辛いだろうと・・・。

すっかり幼児帰りして八重さんを、心の逃避場所にしていた感のある春樹。
また内にこもって悶々としちゃうのか。
大きな変動はないかもしれませんが、あと2回、がんばります^^(作者が)
ありがとうございました。

NoTitle 

えっ!?
八重さん~~春樹が会いに行くまで、きつねの面を見せるまで
待ってくれなかったんですね・・・・・

春樹、大丈夫かなあ?

海青藍花さんへ 

藍花さん、おはようございます。
そうなんです。
きつね面、見せてあげることができませんでした。
春樹、立ち直れるかなあ~。
あと2話なんで、たぶん立ち直って終わり・・・というところまでいかないんだと思いますが。
いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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鍵コメHさんへ 

いえいえ、とても興味深く読ませていただきました。
自分の事のように、イベント、わくわくしているのです。
私も東京に住んでいたら、そんなイベントにも参加来たり、仲間で集まったり、製作したりしたんだろうな~って思いながら。
また、記事を楽しみにしています^^

NoTitle 

こりゃ、あんまりだよ!
それはないだろう。
やっと安心して触れる人に出会ったのに・・・
むごいわ。
春樹の周りは茨ばかり、
歩けば傷つき、休むことも出来ないのかな。

ぴゆうさんへ 

こんばんは~。

ほんと、酷いですよね、この展開は。ちょっと作者に説教したくなります。(私でした><)。
八重の存在って、書き続けてて、じわじわ怖くもなって来たんです。
(八重は全然悪くないんだけど)
弱ってる春樹は、このまま八重の中に、胎児のように収まって、出て来なくなるんじゃないかって。
でも、せめてもう少し、八重の優しさで傷を癒してほしかったです。
(春樹、ごめん)
このお話は、春樹に鞭打つものではないはずなんですが、ちょっと荒療治かもしれません。
もう少しだけ、成り行きを見てやってください^^

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