不可視光線 (KEEP OUT続編2)

不可視光線 第9話 塚本という因子

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レジを不満顔の後輩に押しつけ、隆也は春樹と2人、店の前の駐車場で塚本を待ち受けた。
塚本が現れたのは、電話で彼が言った通り、ぴったり10分後だ。

「2人とも、顔怖いんだけど。なんかおかしくない? 俺、天野が落とした携帯拾って届けに来てやっただけなんだけどな」
そう言いながら塚本は春樹の携帯を振って見せる。

想像以上のふてぶてしさだった。
積年の恨みを持つ宿敵にようやく対峙出来たような感覚に、隆也は武者震いした。

「こっち来いよ」
隆也はつとめて低い声で、悪びれない塚本を店の右壁面の隅に呼び寄せた。
角地にあるため、駐車場や路地から覗けば見えてしまうが、小型の用具倉庫が僅かに死角を作っていて、ちょっとした話し合いをするにはちょうど良かった。

「リンチとかやめてね。俺デリケートだから」
携帯を握ったまま両手をホールドアップさせ、塚本が笑う。

自分より頭ひとつ分背の高い男からそう言われると、逆に馬鹿にされているようにしか聞こえない。

もう充分頭に血が登っていた隆也は、塚本から携帯を奪い返そうと問答無用で腕を伸ばした。

「おっと。これは、あんたんじゃねえよ」
けれど子供を相手にするようにヒラリと隆也を交わし、塚本は春樹に顔を向けた。

「お前んだろ、天野」

ぐいと春樹に近づき、塚本は右手に持った携帯を春樹の手に触れんばかりに突きだした。
春樹は塚本の手から逃れるように大きく退く。それはもう悲しいほどに身に付いてしまった反射行動だった。

不意に塚本の笑いが辺りの暗闇に反響した。

「見事に避けてくれるね、天野。それって、他人にはめちゃくちゃ不自然に見えるぞ。気をつけなきゃ」

「なんのつもりだよ!」
咄嗟に胸ぐらに掴みかかった隆也を、まるでハエのごとく軽々と塚本は払いのけた。

「携帯を天野に返そうとしたしただけだよ、隆也くん」
「ふざけんな!」
「こっちのセリフだ! 拾ってやってわざわざこんな深夜に届けてやったのに、随分な扱いじゃないか。なあ、そうだろ? 天野」

塚本は春樹に、挑発するような視線を投げた。

「僕は、携帯を落としてなんかない」

「へえー。俺がスッたとでも?」

「お前だろ! だいたいお前、春樹がここに来るときいつも後を付けてきたろ。知らないとでも思ってんのか? 春樹になんの用だよ」

「っとにギャーギャーうるさい子ネズミだな隆也って。なあ、なんでこんなヤツのダチなんだ? 天野。友達は選ぼうよ」

「……んだと!?」

「あ、もしかして。天野の秘密を知ってる、唯一の人間だからか? 仕方なしにってやつ?」

塚本に掴みかからんばかりの勢だった隆也も、その言葉に虚を突かれ動けなくなった。
蒼ざめた顔を上げた春樹の目の前に、塚本の手がゆっくり差し出された。

「ほら。俺の手を触ってみろよ天野。俺が嘘をついてるかどうか、知りたいんだろ?」

隆也も春樹も一瞬、どう反応していいか分からず、差し出された塚本の手を見つめて固まった。
〈どういう意味だよ〉と怒鳴り返すタイミングを逃してしまったのだ。

図らずもその沈黙が、全てを認めたような絶望感を醸し出した。
不自然な沈黙が流れたが、しかしここで諦めるわけにはいかない。口を閉じてしまった春樹の代わりに隆也は応戦した。

「お前、頭おかしくね?」

「おかしいも何も……」
塚本が全く動じず、楽しそうに笑う。

「全部隆也が教えてくれたのにさ。天野の秘密のこと」

「でたらめ言うな! お前いい加減にしねーとぶっ飛ばすぞ!」

吠えるように叫んだ声が深夜のガレージに響き渡る。
しかし、それをかき消すようにすぐさま別の見知らぬ声が、横から覆い被さってきた。

「君たち、どうかしたのか?」

3人が同時に振り向くと、大声を聞きつけて来たらしい警官がひとり、駐車場の入り口に自転車を置いて、こちらに歩いて来るところだった。

隆也は咄嗟にやばいとばかり口を閉じた。何かやらかしたわけでなくとも、やはり警官は苦手だ。

塚本は何食わぬ余裕の表情で、ただ面倒くさそうに肩をすくめていたが、警官の顔がはっきり見えてくると、途端に不快そうに顔を歪めた。

「あれ? 君は確か……」

近づいて来た若い警官も、塚本の顔をじっと確認する。

「この前はどうも。ご苦労様です」
塚本の口調は幾分ぞんざいだった。

「塚本君……だったね。どうした? もめ事?」

「いえ。大学の友人と楽しくお喋りしてただけです。お巡りさんも混ざりますか?」

「遠慮しとくよ」

「パトロール中ですもんね。ほんと、こんな深夜なのにご苦労様です。そういえばさっき、中学生の坊やがウロウロしてましたよ。ああいうの注意してやった方がいいんじゃないですか? 俺らなんかより」

横柄な口調で塚本が言うと、警官は気分を害したように少しばかり睨んできたが、「深夜に大声で騒がないように」とだけ強く言い残し、踵を返した。

ガチャガチャと不機嫌そうな音を響かせて警官の自転車が遠ざかると、隆也が質問するより早く、塚本が言葉を吐き出した。

「2日前さ、あの警官、俺のアパートに来たんだ」
少し嘲笑も混ざる。

「それも刑事連れてさ。驚くってーの」

「おまえ、何やったんだよ」
隆也が反射的に訊いた。

「殺人」 

凍りつくような、間があった。

「ヒッチハイク中の少年を襲って、首しめて、そのあと車でひき殺したんだって。俺が」

塚本は奇妙に口元を歪めたが、笑ったのかどうかは、隆也には分からなかった。


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~ Comment ~

わはは(*^_^*) 

limeさんが塚本と隆也に嵌っている~~(*^_^*)
面白くてやっちまった、っていうのがよく伝わってきました。
そうですよね。噛み合ってないのに、ついつい絡み合う人たち。
書いていると妙に面白いのですね……それが、読んでいても面白い。
もっとやれ~とか思っていたら、話が進んでいない……
いやいや、それがいいのです(*^_^*)
しかも、塚本ったら、自分で怪しさの宣伝しているし。
春樹に触りたいだけの変人に見えてきた……
かなり楽しみな展開、次回も待っています(*^_^*)

ちょっと私信。
limeさん's リクエスト掌編にさっそくコメントをありがとうございました。
実は、途中で寝ちゃってて、細かいところを編集しなおそうと思ったらアップしてしまっていました^^;
しかも先にlimeさんにこんなのでいいですか??とコメを入れるはずが……
ゴテゴテですみません…睡魔が~~~
あんなので、問題なかったでしょうか。何かあれば即刻書き直します!

NoTitle 

して、携帯君の運命は・・・
いやいや、塚本くん。limeさんが書いてて楽しいとおっしゃっていたのが何となくわかりました。
隆也をハエにしたり、子ネズミにしたり、自在ですね。ぷぷ。
春樹は黙っているに限る。

塚本、よんちゃんと面識あったのか、ってちがーう(><)
実はスキンヘッドと繋がりが・・・ってそこから離れなさいっ。
すみません。次回の’少し’を待ちます。

大海彩洋さんへ 

> limeさんが塚本と隆也に嵌っている~~(*^_^*)
> 面白くてやっちまった、っていうのがよく伝わってきました。

あああ~、わかりますか><
なんだかもう、「隆也で遊ぼう」のコーナーになっちゃったようで。
物語的にはちっとも進まないし、謎な部分は一個も解けてないんですが・・・。遊んじゃいました。
でも、この塚本の言葉の中に、塚本の本当の目的や本心が隠れています。

>しかも、塚本ったら、自分で怪しさの宣伝しているし。
春樹に触りたいだけの変人に見えてきた……

そうそう(笑)
塚本、自分で変人アピール。「変態」と呼ばれると喜びますw
春樹に触りたいだけの変人! これ、当たってるかも。いやいや、本当は目的はほかにもあるんですが。
次回も、ほんのちょっとしか進みませんが、そろそろ推測可能になるかもです。^^

あ!リクエスト掌握、楽しませてもらいました^^
いえいえ、直すところなんかちっともないですよ。わたし的に。
久々にオフィス天道の面々に会えて、すごく嬉しかったです。

オフィス天道で続編とかは、わたし的にできなかったので、ものすごく嬉しいです。
ペット探し探偵で話を書いたら面白いかなとも思ったんですが、香月にパワーがないですからね^^;
あれは、凍える星の中でしか、存在できないキャラだなあ~と、涙を飲みました。

改めまして、ありがとうございました!

けいさんへ 

携帯一個で、ずいぶん長々と遊んじゃいました^^

えへ。けいさん、わかります? こうやって隆也で遊ぶのは、病みつきになります。
こりゃあ塚本くん、レギュラーだな(ぼそっ)
猪だと思った隆也が、ハエにも子ネズミにもなります。変化自由w。

そう。春樹をね・・・絡めにくかったです(苦笑)
春樹は自分のことでいっぱいいっぱいでしょうし、今は静かにスタンバッていてもらいました。
(主人公なのに、パワーが・・・)

塚本の部屋に来たのは、よんちゃんだったのか! 次回、乞うご期待。
・・・いやいや、そうではなく(笑)

次回は、少しばかり展開があります。
あの少年のことについても。
じわじわゆっくり進みますよ~。どうか付いてきてください!!涙

 

塚本くんまさかのレギュラー化ですか(^_^;)

春樹くんも心労が増えますねえ(^_^;)

まあそれはそうと、これからまたもつれるんでしょうね。二転三転して……。

続きが楽しみです(^_^)

NoTitle 

 こんにちは。
うっわぁーーーー 不穏な方向へと一直線。
うーーーん 塚本のアパートに警察が来たと言う事は…何かが 塚本に繋がるか 誰かが塚本を疑っているか…
それでいながら 塚本が自由でいると言う事は 決定的な物証はない…

うーーーん まったく解りません!!!!! 次回待っています。

ポール・ブリッツさんへ 

あ、いやいや、言ってみただけです^^
(塚本、投獄されたら無理ですし・笑)
この物語が、続いていくのかもわからないですしね。
でも、春樹が生きている限り、続くような・・・。(きっとまだ、離れられないんだろうなあ・・・)

このあと、不明な部分がもう少しでてきます。
そんなややこしい話ではないので、ポールさんも頭真っ白にして、見ていてください^^

ああ、ほんと、話が進まなくて申し訳ない。
作者が一番、ウズウズしています^^;

ウゾさんへ 

ウゾさん、こんにちは~。

不穏で、怪しげで、嫌味な塚本ばかり登場で、ごめんなさい~><
おまけにちっとも、進んでいませんよね^^;

そう。警察がアパートに来たんです。
話を聞きに来た程度なんでしょうが。(誰かがちくりましたね・笑)
まだ、捕まらずに無事でいるってことは、シロなのかも。

でも、なんでそんな話を、塚本が今ここで、春樹たちにしたか・・・ということが、重要になってきます^^
じわじわ、塚本の目的が見えてくるはずです。
次回くらいに、わかるかなあ~~~><
ウゾさんなら、わかるかな?

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

鍵コメHさんへ 

わあ^^ 緊張感を持って読んでくださったのですね。
とっても嬉しいです。

ちょっと、塚本が隆也をからかい過ぎてるな・・・なんて思ったんですが、ほっとしました。
次回は、また少し、謎の部分が明かされて、見通しが良くなってくると思います。
相変わらず小出しですが、また、ぜひお立ち寄りください^^

拍手鍵コメさんへ 

いつもありがとうございます!
え・・・と、いつも聞こうと思ってたんですが、お名前、なんてお読みするんでしょう><すいません。また、お邪魔します。

そうですよね。塚本は、なぜ知ってたか!
冒頭で、当てずっぽうに事件のことを語っていましたが、それにしても、知りすぎてる・・・と、思いますよね^^
じわじわ、そんなこともわかっていくと思います。
また是非、読みに来てください^^



NoTitle 

こんばんは。
一瞬だけ、「第9話 塚本という団子」と読んでしまいました><

毎回、ちょっとどきどきしながら読ませていただいております。

内容と全然関係ないのですが、今回警官の登場でふと思い出してしまいました。
警官見かけるたびに気になっているのですが、あの警察仕様の自転車の荷台の「白い箱」にはいったい何が入っているんでしょう?

すみませんでした><
今後も楽しみにしています^^

ゆーきさんへ 

ゆーきさん、こんばんは^^

ははは。塚本団子!! いいかもしれませんね。でも、不味そう・・・(笑)
そして、ドキドキしてくださって、すごく嬉しいです。

あの自転車の箱の中には、交通違反のステッカーや、雨具なんかが入っているそうです。
あと、赤色灯なんかも入っていて,緊急事態の時には、箱の上にくっつけて、くるくる回すそうです。
でも、自転車じゃあ、ちょっと迫力ないですね^^

楽しいコメント、ありがとうございました!

もしかして 塚本って… 

いつも いつも 人の神経を逆撫でする言動は、自分に 強く関心を持って欲しいから?
春樹と仲が良い隆也に 嫉妬してたり?
って事は、「淋しがり屋くん」なのか 塚本は!?
と、書いてて 気持ち悪くなって来た(笑)。。。∧(_ _)∧ オエェ~ゲロゲロ

春樹を苛め 私の中では 只今 不人気度暴走中の塚本ですが、
何故か limeさまの愛が感じられるのは 気のせいかしら...(○'ω'○)ん? 

私のハニー春樹を悲しませる塚本ぉ~!
おめぇなんか、おめえなんか、道端の犬のウ〇コでも踏んで 
学内で 「エンガチョ!」と言われればいいのよ!
アッカン(σ-`┰ ・´)ベェェダ!...byebye☆

けいったんさんへ 

ふふふ。けいったんさん、狙い通りの反応が嬉しいです^^
そう、塚本は嫌われキャラでいいのです!
そして、春樹を更に応援してくださいーーー。
(今回、口も挟めなかった、可愛そうな春樹・・・)

うんうん、塚本、絶対隆也に嫉妬心ありますよね。本人は、自分が上からいじめてると思ってるけど・・・。
けいったんさんには、わかってしまうのだなあ。
でも、寂しがり屋の塚本は、けいったんさん的にNGなのですね!!

ご安心ください^^
このあとも塚本はこのまま暴走しますし、最後に春樹たちと、仲良しこよし・・・とかいうキモイことにはなりません。たぶん。
でも作者、もう少し塚本をつかって隆也たちをイジり・・・・・あ、なんでもありません(爆

このあとも、塚本を罵倒しつつ、春樹たちを応援してやってくださいね!

NoTitle 

隆也の真っ直ぐさが空回りをするのって
不愉快だなぁ
こういうのわかっていても何か嫌だ。
正直者がまるまる損をしているようで
これが現実世界なんだよね。
でも、正直に真っ直ぐに生きている者が、
春樹には何よりの盾にもなる。
塚本は知るべきだわ
こんなどんよりした性格
今にも青黒い舌が出てきそうだ。

春樹!掴まるんじゃないよ
おばちゃんは言っとく

ぴゆうさんへ 

こんばんは~^^

うん、そうなんです。
隆也はまるで虫のように扱われ・・・。可哀想に。

一生懸命なのにね。なぜか塚本と話してると、喚くだけの無能な少年に見えてしまう。
塚本って隆也にとって、これ以上ないほどの天敵みたいです。

春樹もここらへんは、隆也に感謝する風でもないですが、きっと隆也の気持ちはわかってると思います。
(いや、そうじゃなければ、あまりにも隆也がかわいそうだ)

まだまだ、この3人の牽制は続きます。
イライラするかもしれませんが、どうか応援してやってください!
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