☆感想(観劇・映画・小説)

(雑記)映画「黄金を抱いて翔べ」の真髄

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やっと昨日、観に行ってきました。
『黄金を抱いて翔べ』

高村薫先生の原作が大好きだったために、期待と不安が半々でしたが。
井筒監督は、原作をものすごく忠実に、大事に再現してくださっていました。

単純に、野望に燃えて熱くたぎる男たちのかっこいい話にされるのでは・・・と、心配して、ごめんなさい。
要所要所の設定に違いはあれど、重要なセリフ、シーンは、カットされていませんでした。

【あらすじ】
過激派や犯罪者を相手に調達屋をしていた幸田弘之(妻夫木聡)。幸田は二十数年ぶりに訪れた故郷の大阪で、大学時代の友人・北川浩二(浅野忠信)からある計画を持ちかけられる。大手銀行本店の地下にある240億円相当の金塊を強奪するというのだ。銀行担当のシステムエンジニアである野田(桐谷健太)と共に計画を練る中で、さらに、元エレベーター技師で銀行の内部にも詳しい“ジイちゃん”こと斉藤順三(西田敏行)と、爆弾に精通している元・北朝鮮のスパイの青年“モモ”ことチョウ・リョファン(チャンミン)を仲間に引き入れる。計画を知ってしまった北川の弟・春樹(溝端淳平)もメンバーに加わって、いよいよ六人の男たちによる計画が始動する。目標の金塊は銀行の地下3階にある。地下2階の駐車場から侵入すると同時に、中之島変電所を爆破し、銀行だけでなく辺り全域を停電にする作戦だ。その準備のため、幸田は野田と共に群馬・高崎の工場の輸送車を襲撃し、ダイナマイトの強奪に成功する。が、思わぬ障壁が彼らを待ちうけていた……。


ですが。
忠実であるがゆえに、初めてこの映画を観る人には、かなり難しかったのではないでしょうか。

爆弾調達屋として、左翼派に絡んで生きてきた、生きることに無気力な幸田。
彼が、なぜ北川の馬鹿げたこの犯行計画に乗ったのか。
一体何がしたかったのか。
そして、あのラストの意味。
映画を通して、原作を知らない人にそれが伝わるのかどうかが、見終わったとき少しばかり不安でした。
2時間の尺で、あの感覚が伝わるのかどうか・・・。

しかしながら、全体を通してのこの作品には、満足です。
高村先生が、「これを映画化するなら、絶対に大阪人の監督に・・・」と願ったというのも、わかります。

大阪独特の匂い、凄み、淀み、暴力。
こちらが怯む程の迫力のシーンに、拍手。ここはもう、井筒監督、さすがとしか言い様がない。
ホテルのラウンジでの、じいちゃんとヤーさんとのやり取り。これ、ザ・大阪です。
大阪人にしか描けない、細かいけど、迫力の演出です!

この物語は、決して「かっこいい男たち」の話ではないです。
真逆かもしれない。特に幸田に関しては。
弱く、退廃的で、心の穴に落ちてぐるぐるそこを回り続け、出口を見いだせない、哀れな男。

そんな男に持ちかけられた、これまた無謀を絵に書いたような北川の計画。
そこに、なにか光があるはずもなく。
それなのに、幸田はただその無謀という熱に惹かれて、計画に乗ってしまう。

そこで出会う北の工作員、モモとのやり取りも、何かを生み出すというよりも、一緒に絡み合って、その重力で同じ闇に加速することにしかならなかった。
幸田たちに出口は用意されていなかったんじゃなかろうか。
そんな感情が、小説にも、映画にも、ひたひたと染み出ていて、私はすっかり絡め取られてしまいました。

映画では、この危なっかしくて、感情表現に乏しくて、それでも愛おしくなる男、幸田を、妻夫木聡が見事に演じてくれていました。
いやあ、彼はすごい。
映画ごとに、しっかりとその人物になりきってしまう。
もう、幸田は彼以外に考えられなくなりました。

ほかのキャスティングも、すごくいいのです。
幸田 - 妻夫木聡
北川浩二 - 浅野忠信
野田 - 桐谷健太
北川春樹 - 溝端淳平
モモ - チャンミン(東方神起)
岸口順三 - 西田敏行

物欲は激しいけど、けっこうノーマルでビビリの野田。桐谷くん、最高の好演でした。
一番キレテるかもしれない、無謀男、北川も、浅野さんが見事に再現。あの、無邪気な笑顔の恐ろしさったら・・・。
春樹だけは、もっとヤバくて危なげな、ナイフのような痛さが欲しかったんですが。
淳平くん、マスクが甘くて、ちょっと優しげだから。

ラストシーンはね。
ちょっといろいろ考えてしまうのです。
小説とは違うんだけど、小説もきっと、その方向で描かれていたんだろうと、思います。
だけど、映画のあのシーンは、直接過ぎて、あそこでエンドロールになると、90%の観客は「え・・・」となるはずです。
わたし的には、嫌いではないのですが。

かっこよく終わらせない。
どうしようもなく、悲しくて、虚しい、最後。
そう言う意味では、あのラストも、頷けます。

そういう感慨が、じーーーーっと、主題歌を聞きながら、なんのサービスもない、真っ暗なエンドロールを見ていると、湧いてくるのです。
やはり、あのエンドロールも作品の一部ですね。
大阪の観客は、誰ひとり立たずに、じーーーっとエンドロールを見つめていました。満足です。

最後、映画館を出るとき、キャストの某人気俳優を目当てにきた女性たちが、
「彼以外の登場人物、誰が誰かわかんなくて、内容もよくわからなかったわあ」
と言ってたのが、・・・無念。

振り返って、最初から全て説明したい衝動を、こらえるのに苦労しました。(´A`。)


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~ Comment ~

NoTitle 

今日はわたしも映画を見てきました。

「帝国ホテル」という映画です。1927年制作。いやー、主演女優のポーラ・ネグリが色っぽいのなんの……あの、どこへいくんですか、サイレントもですね、それはそれはすばらしくて、見ている人は年配の映画ファンばかりだったけれど、あのすばらしい世界をですね、だれですかマニアの後ろ向きな趣味だなんだといっている人は。うわーん。

ポール・ブリッツさんへ 

さすが!
1927年ですか。
サイレントですか。
女優もタイトルも、聞いたことがないですが。
ポールさんらしいです。
古い映画って、良さがわかる人には、たまらないんでしょうねえ~。
京都には、古い映画ばかりやってる映画館があって、何本見ても1000円で。
貧乏学生の頃は、よく行きましたが、フランス映画とか・・・やっぱりよくわかりませんでした。
「ブルーベルベット」は、あの曲だけ、頭の中に巡っています。

むふふのふ( ̄ω ̄*) 

実は、私、昨日見たばかりです。
そして前にもお話しましたが、かなーーーり前に原作を読んでまして。
内容はすっかり忘れたと思ってましたが、要所要所に思い出したところもありました。

モモの性癖というか、彼って同性愛者じゃなかったっけ?と思っていたのですが、あの女装して幸田を迎えてましたよね。
そしてその後スルー・・・?
はい!?∑( ̄□ ̄ノ)ノ
確か、この後モモの性癖を他の人に言われ、幸田が何か反論するというかモモをかばうシーンがあったような・・・

あれ? この女装1コマで終わりかい!?
だったら別にそんなシーンつけなくても・・・
と思いましたが・・・

そして時代背景がちょっと・・・
私が原作を読んだころから考えると、ちょっとスマホはいただけないなと。
ケータイとか多分ではじめの時代に原作を読んでいるのでできればそういうスマホとか、現代的な要素はなくても良かったような・・・
マツコとかね(^^;)

でも、大阪の人ってこんな感じなのか・・・と思いました(笑)
北川ジャイアンと幸田のび太の会話も、ついトヨタのCM思い出しました(^^)

igaigaさんへ 

わ~~い、igaigaさんも観たんですね^^
そっか、igaigaさんも、原作をよまれてたんだ!
うれしいなあ~。

そしてそして、私が書き忘れたことを書いてくださって、すっごく嬉しいです^^

> モモの性癖というか、彼って同性愛者じゃなかったっけ?と思っていたのですが、あの女装して幸田を迎えてましたよね。
> そしてその後スルー・・・?

そうなんです、そうなんです。
モモと幸田は、そういう関係に最後、なっていったんですよね。
小説の中では、その部分を、北川がつついて、「わからんもんだな。人間嫌いのお前がなあ~~」みたいな^^

その時,幸田は、無言で肯定してました^^
認めたわけです。意外と素直ですw

映画になるって聞いたときに、きっとその関係は、描かれないだろうと思ったけど、やっぱりそうでした。
仕方ないですよね。
また、話がややこしくなっちゃうし、2時間だし・・・。
本当言うと、春樹と幸田も、ちょっとやばいシーンがありました。
わたし、あのシーン好きだったんだけどなあ。
妙に悲しいシーンだったのを覚えてます。

あのモモの女装シーンは、いらなかったですね^^
あれは、モモの性癖ではなくて、北川に無理やりカムフラージュに変装させられたという設定なんですが。
説明がないから、観客、笑ってましたよ^^;

> 私が原作を読んだころから考えると、ちょっとスマホはいただけないなと。
> ケータイとか多分ではじめの時代に原作を読んでいるのでできればそういうスマホとか、現代的な要素はなくても良かったような・・・
> マツコとかね(^^;)

そうそうそう。
スマホありましたね。
「持って行けよ」「めんどくさい」というやつね。
確かに、あそこはいらなかったです。
マツコもね(w)
後半、監督の遊びがちらほら出ていましたね。
許せる範囲ですが^^;

> でも、大阪の人ってこんな感じなのか・・・と思いました(笑)

あんなですよ(w)
西成とかね、普通にヤーさん、いますから。
気のいいやーさんも多いですが^^

最後はね、北川じゃなくて、幸田のモノローグで終わって欲しかったです。本当は。

「モモさん、俺はあんたと、神の国の話がしたい・・・」って><
あれ、好きだったんです。(ノД`)・゜・

NoTitle 

>「彼以外の登場人物、誰が誰かわかんなくて、内容もよくわからなかったわあ」
と言ってたのが、・・・無念

昔、バトルロワイヤルという映画を見に行った。知り合いがキャスト出演していたからなんだけどね。いろいろ考えた。R15指定だった事もあったので、見に来ていた女子高生とかってどんな風に思うんだろうって、しばらく座席に座って聞こえる会話に耳を傾けていたところ・・・・

「藤原、ちょ~かっけぇ~~(かっこいい)」

・・・そんなもんです☆

kaziさんへ 

> 「藤原、ちょ~かっけぇ~~(かっこいい)」
>
> ・・・そんなもんです☆

ああ、kaziさんの、その時の気持ちも、わかります><
バトルロワイヤル、ですもんね。

いや、映画って、どんなふうに観たって、本人の自由なんですけどね。
押し付けちゃダメなんだろうけど。
でも、もっといろいろ、製作者の想いが伝わって欲しいなあとか・・・思ってしまうんですよね。

って、私は製作者でも、なんでもないんですが^^;
原作の1ファンとしては><

拍手鍵コメNさんへ 

はい! この映画、いろんな批評を聞きますが、わたし的にはとても満足です。小説を読んでいるからこその、感覚なのかもしれないんですが。

>私も出ている俳優陣が豪華ですし監督が井筒監督なのでlimeさんから教えてもらったあとからちょこちょこ情報見たりしてにやにやしてましたww 日本に帰ったらまだ上映しているかどうかわからないのですが見てみたい映画です^^♪

おお、そうなんですか!
私が見た映画館は12月8日までだったのですが・・・。見て欲しいなあ~~。Nさん、いつになりそうですか?

そうですよね、好きな役者さんを見たくて映画を見ることは、すごくいいことです。
私も、役者さん目当てに映画見ることが、ほとんどですから。
(今回は、特別です^^)

あのチャンミンファンの女の子たちも(w)、原作を読んでほしいなあ~~。
原作にこそ、びっくりなサプライズがあるんです!!
ここでは言えませんが。
「原作読んでみ! きゃーーーって言うよ、あんたら!」って、彼女たちに行ってあげたい。ふふふ。←へんなやつ。

おわ~~!!
やっぱりNさん、このコメ返に気づいてなかったのですね??
ぎゃー、ごめんなさい。
最初に、「コメ返は、表のコメ欄です」って、書いたような気がしたんですが、気のせいだったんですね!(猛反省)

こりゃあNさん、何ヶ月分ものコメ返を、読まなきゃ!!(強制なのかww)

NoTitle 

大阪は独特な人間くささを感じる映画が多いですよね。
そういうのはそこにいる人でないと描けないことが多いですよね。
任侠ものにしてもそうですけど。
私も映画最近見てないので見ないとですね。

NoTitle 

こんにちは。
実は映画の方は「見るのどうしよう・・・。」って悩んでました。
でも、limeさんの感想を拝見すると、むしろ読んでいた方が見て楽しめそうな出来になっているようですね。^^
これは、機会があれば是非!!

マダム猫柳さんへ 

マダム、いらっしゃい~。

おお、マダム、悩んでらしたんですね。
そうですねえ、やっぱりこれは、小説を読んでからの方が、いいかもしれません。
そのほうが、より理解できるかと。

でも、高村先生の小説は、サラっと読めるタイプではないので、こちらも構えて読んでください!(どんだけw)
ですが、高村先生の文体にはまってしまうと、癖になりますよ~~。
いつか、いつかマダムも、読んでみてください^^
私の一番、あこがれの先生なのです^^

LandMさんへ 

そうですね~。大阪のあの空気感。
独特の荒っぽさ、凄み、やーさんの近寄りがたさ。
井筒監督ならではです。

私は、任侠ものも、暴力もの(北野作品)等は、あまり好きではないのですが、
どうせ描くなら、リアリティを追求して欲しいです。
(まあ、やっぱりこの原作に惚れ込んでるから、でしょうけどね^^)

映画、たまにはいいですよね。
次は、EVA見なきゃ!

NoTitle 

いや~、大阪には、ほんの数時間の滞在経験しかないんでねぇ。
映画見る前に原作、原作読む前に大阪、な私です。

てか、すべての前に、limeさんのレビューで幸せになってしまう私、です。
あと、最初から全てlimeさんに熱く説明していただきたい衝動をこらえるのに苦労する私、です^^

いつか一緒にお茶させていただくときに^^

けいさんへ 

そっか、けいさんは、ほんの数時間の大阪体験でしたもんね。
いや、大阪は、きっとイメージそのものの街ですよ。
でも、本はいつか、読んでほしいなあ。
手ごわいです!

> てか、すべての前に、limeさんのレビューで幸せになってしまう私、です。

てへへ。私のレビューを楽しみにしてくださる、貴重な(奇特な)けいさんに感謝。

> あと、最初から全てlimeさんに熱く説明していただきたい衝動をこらえるのに苦労する私、です^^
>
> いつか一緒にお茶させていただくときに^^

わわわ。
それは危険。何を隠そう、私は・・・・説明が、ド下手!!なんですww (๑ ̄∀ ̄)

気持ちが先走りしちゃって、支離滅裂に・・・。

そんな私でも、いいですか!?

NoTitle 

limeさんが満足されたようで何よりです。
原作がある以上、誰がどう作ろうと必ず何らかの
ツッコミは入りますね。
登場人物達の風貌、声等々やはり≪脳内再生に勝るものナシ!≫
というところでしょうか。
ブログ上でお付き合いされている方とは実際にお会いした事がない
方がほとんどだと思いますが、試されるとすればlimeさんの中で僕は
どの様に脳内再生されるのでしょうか(笑)

新作スタートされるのですね。
訪問者の方も書かれていましたが、次々とアイデアが浮かぶ
limeさんは凄いです。



蛇井さんへ 

蛇井さん、いらっしゃい。
そうなんです。
意外なほど、原作に忠実で、あのやんちゃ坊主そうな監督、本当にこの作品に惚れ込んでるんだなあと、うれしくなりました。
でも、「私が助監督なら、あのシーンは変える」とか、思うシーンもありましたねw
子役のセリフがちょっと余計だったな、とか。
でも、安心しました。
観客動員数は、あまり多くないけど、ほぼ満足です。^^

小説の脳内イメージっていうのも、人それぞれですが、ネット友達のイメージも、それぞれですよね。
へびいさんは、たぶん、一見ちょっと一般市民な大人しげな感じで、内面におもしろ宇宙を抱えてるひとだろうと・・・。(イミフ?)

いえいえ、私は本当にアイデアを必死で絞り出しているような凡人で、湯水のように湧いてくるというネット作家さんを、すごく羨ましく感じています。
でも、自分の中で淘汰して、これは作品にして大丈夫、と思うものしかUPしない意気込みは、あります。
・・・私の基準なのですが><

もし、お時間ありましたら、遊びに来てください^^(コメなしでいいですよ^^)
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