KEEP OUT 6  愛する君の為に

KEEP OUT6 第24話 聡

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「あの・・・すみません。立花局長ですか?」
隆也は、春樹達の探偵事務所のあるビルの入り口で、スラリと背の高い紳士に声を掛けた。
顔は薫とそんなに似てはいなかったが、そのスマートな物腰と高潔な雰囲気から、この人が立花聡に間違い無いという直感が働いた。
この人なら、春樹が少しばかり嫉妬心を抱いても仕方ないと納得できる、と。

「君は?」
男はエントランスへ向かおうとしていた足を止め、涼やかな目を隆也に向けた。
「春樹の友人です。あの・・・美沙さんを迎えに来たんなら、もう少し待ってあげて貰えますか? 今、春樹、たぶん美沙さんと大事な話をしてると思うんです」
「春樹君が? 私が行ってはダメな話?」
「はい」

あまりにキッパリと言ってのけた隆也が可笑しかったのか、聡は顔に似合わず豪快に笑った。
「そうか。今、取り込み中なんだね。じゃあ君は、私が邪魔するのを止める役割りってことかな」
「そんなんじゃありません。春樹はそんなことを指示する奴じゃありません。俺がここにいることもあいつは知らないはずです」
無意識にかなり棘のある言い方をしてしまい、隆也自身がハッとしたが、聡は穏やかな表情のまま隆也を見つめた。
「ごめん、そういうつもりで言ったんじゃないんだ。私も春樹君の人柄は分かってるつもりだよ。君は、・・・ええと」
「穂積と言います。穂積隆也。春樹とは高校の同級でした」
「そうか、隆也君か。・・・私の目的はここの支店長を送り届けるだけだから、待つのは構わないんだけど。ねえ、長い話になりそう?」
「分かりません。でも待ってやってください。きっと・・・大事な話をしてると思うんです」
「何の話だろう。ちょっと怖いな」
聡はさり気なくチラリと視線を上に向け、そしてすぐに戻した。

「・・・怖い?」
「この頃まるで自分が高校生くらいの子供に戻ったような気持ちになるんだ。・・・なーんて事を、ちょっと前ポロッと口にしたら、弟に笑われたよ」
「薫さんですね。何度も会ったことがあります。楽しい人ですよね」
「へえー。あいつの行動半径がまた分からなくなったよ。そして・・・君はウチの事情を何でも知ってそうだね」
「いえ、そんな。春樹や美沙さんと親しいだけです。あの、立花さん、さっきの“怖い”って、何でですか?」
隆也の真っ直ぐな問いかけに聡は少しばかり面食らったような表情をしたが、暇つぶしだと諦めたようにポツリと話し始めた。

「春樹くんがさ」
「春樹が?」
「そう。18歳のあの子の中にあるものに、この俺は少しも太刀打ちできない。そんな気持ちになってくるんだ。可笑しいだろ? でもね、それってすごく情けなくて怖いんだ」
いつの間にかかしこまった「私」は砕けた「俺」に変わり、始めに感じた近寄りがたい颯爽感も、少しばかり形を変えた。
初対面の18歳の少年に、あっさりと本心を晒してしまう気安さと純粋さ。立花聡という人物が、この短時間でサラリと隆也の中に入ってきた。
その心の中に、美沙を想う真剣な気持ちが確かに存在している。
春樹をずっと苦しめていたものの一つが、ここにある。“いい人”だと分かるからこその苦しみなのだ。

「春樹はずっと苦しんできました。俺なんか想像も及ばない世界で。美沙さんはそんな春樹の支えだったんです。その春樹が今たぶん、言ってしまったら、今までの自分達に戻れないかもしれない事を、美沙さんに伝えようとしているんです。きっと、・・・大げさかもしれないけど、死ぬ想いで。だから、もう少しここで待ってやってくれますか? お願いします」
隆也は一気にそう言うと、聡に頭を下げた。

隆也自身、今、上の事務所で春樹が何を美沙に伝えているのかは分からない。
春樹からはただ、《今日の終業時に、美沙に今の気持ちを伝えて来るよ》と、今朝短いメールをもらっただけだった。
春樹は答えを出そうとしている。
きっと決心が揺るがないように隆也に送ったメール。
必死で強くなろうとしている春樹の中の、ほんのわずかな脆さを感じ取った隆也は、どうにもじっとしていられず、この場所に来てしまっていたのだ。

「春樹君は、いい友だちを持ったね」
聡は柔らかい声でそう言った。皮肉やおべんちゃらは一度も言ったことの無さそうな、包み込むように優しく真っ直ぐな声だ。
「いいよ、待とう。何時間でもここで二人を待とう」
薄いコートの襟を立て、冷たい植え込みの縁に座り込んだ聡に、隆也は感謝の笑みを漏らした。
「温かい飲み物買ってきます。コーヒーでいいですよね」
隆也はそう言うと、返事も待たずに隣のファーストフード店へ走った。

『ねえ、隆也。立花局長って、いい人だよね』
昨日、そう訊いてきた春樹のその気持ちが今さらながら心に染みこんできて、隆也はまだ紫色の夕映えを残した空を、泣きたい気持ちでふっと仰いだ。



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~ Comment ~

NoTitle 

そうなのよ・・・そうなのよーー!
立花局長は、包容力がありの優しい大人で 美沙の前では 顔を赤らめたりする程 純真な少年の心を持つ素敵な男性なのよ!グッ!d(T◇T)b ウッ...

春樹が少しだけど持ってる 男のプライドが、萎むほどにね!
これが 薫だったら 少しでも太刀打ち出切る気がするのに~(笑)!?

二人を待つ間 悲しみと憂いの隆也に対して 幸せと嬉しさの聡が 占める想いは真逆なものでしょうけど
話しを終えて出て来た時に 春樹と美沙を包むのは、温かい心に間違いないですよね。

春樹と美沙の微妙な関係を 全く知らない聡が、この後の美沙を見て どう思い どう感じるのか・・・
ちょっと気になる所では ありますね。
まぁ 大人な聡なら 黙って微笑み 優しくハグしちゃうかもなぁ~♪
負けずに(?) 隆也も 春樹をハグしてあげてね~(笑)!
(`・ω・´(。-_-。)ゝ...byebye☆


NoTitle 

みんな思いやりがあって、支えあっていますねぇ。
みんながみんなを気遣って、優しくて・・・

隆也、私にもコーヒー、おっと、お姉さんがごっちするよ。

で、事務所の中の話は、どうなってます?
四人が会合するときは?
笑顔か涙かまさかの・・・(何?)

何時間でも待ちましょう。けど、3日以上は待てない。

けいったんさんへ 

そうなんです、聡さんは・・・悔しいほどいい奴。
こんな余裕なこと言ってても、心の中は、もしかしたら「春樹は美沙に告白してるんじゃないか」とか、
そんな不安を抱いちゃったりしてる・・・くらい、かわいい男ww

もっと、いやな男だったら、この後の展開も変わって来てるかもしれないのに・・・。

お、なんか言った?私。

>話しを終えて出て来た時に 春樹と美沙を包むのは、温かい心に間違いないですよね。

きゃ~~~。(°∇°*) 汗
でも、でも、どうなんでしょう。
はははは。(笑ってごまかす)

もしかしたら、けいったんさんの想像していないような展開になってしまうかも><
だって、あと7話あるんですよ。

もうひと波乱、ふた波乱、あるかも・・・(●´艸`)

けいさんへ 

> みんな思いやりがあって、支えあっていますねぇ。
> みんながみんなを気遣って、優しくて・・・

そう言って戴けて、うれしいです^^
みんないい人なのに・・・なぜみんな幸せにならないかなあ~(T_T)
最後は幸せになってくれるといいんだけど。

> 隆也、私にもコーヒー、おっと、お姉さんがごっちするよ。

隆也:「おお、姉さん、ゴチです!!」

そうなんですよ、問題は事務所の二人。
次回、またじれったい展開が・・・。(本当に、動きが遅くてごめんなさい~)

> 何時間でも待ちましょう。けど、3日以上は待てない。

えへへ。トップの「ご案内」で3日置き更新に切り替えたって書いたのに、ちょっと早めの今日、更新しちゃいました。
次回からは3日置き更新にするつもりなので、どうか、内容を忘れないようにしてください~(わがままな作者)

NoTitle 

春樹と美沙は、今、真剣になって互いを見ていた。

互いの知らない、いや、自分たちですら知らなかった春樹と美沙が、そこにはいた。

張りつめた空気の中で、二人は黙するしかなかった。

その時、扉が開いた。

「ちわーっす! 来々軒でーす! ラーメン三人前お持ちしましたー!」



いやもう、展開が朝読むにはヘビーで(^^;)

ポール・ブリッツさんへ 

おお、そう来たかww

いやいや、まだまだこれからです。
次回も、上の二人は、ジリジリした言い合いをします。

ポールさんが「もういいだろ~~、先へすすめ~」と、喉を掻き毟るのが見えるようです^^;

朝。読んでください。

(おかしいなあ、まるで恋愛ドラマになってきた。汗)

よかった! 

いい人でしたねー立花局長。
あくどく変身でもしてしまったら、美沙も春樹も可哀想すぎますもんね。

何時間でも待つのか。
丁度このタイミングで、マックのコーヒーはお代わり無料ではなくなったのが残念です(笑)

ごろちゃんさんへ 

ごろちゃんさん、いらっしゃいませ^^

そうなんです、局長は、本当にいい奴でした。
ここで一変して悪人に変わったら・・・おお、なんかもう、ドロドロですね^^;
(充分ドロドロだけど)

マック、コーヒーのお代わり、無料だったんですか!(知らなかった~)
ミスタードーナツは、無料ですよね。
どっちのコーヒーがおいしいかな・・・。(最近行ってないなあ)

このあと、まだまだこのシーン続きます><
進まなくて、申し訳ないです。

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