KEEP OUT 6  愛する君の為に

KEEP OUT6 第15話 禁じられた行為

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《隆也はいつも11時だろうが12時だろうが、お構いなしにフラリと遊びに来てたじゃないか》
 電話の向こうの春樹の声が、あまりにも切羽詰まっている気がして、隆也は内心慌てた。
 予防策として春樹に会わずにいることが、春樹を苦しめているなどと、隆也は夢にも思っていなかったのだ。

……美沙のことであんな電話をするんじゃなかった、春樹の声を聞くんじゃなかった。
 隆也はもう、ほとんどの学生が帰ってしまった予備校の教室で、一人ポツンと椅子に座り、自分の馬鹿さ加減を呪った。

 今日の夕方、ゼミの夜の部が始まる前にと思い、美沙と喫茶店で待ち合わせをしたのが7時30分。
 けれど美沙はいつまでたっても現れず、ゼミに遅刻するギリギリになって隆也が掛けた電話に出たのは、まるで別人のように生気の抜けた本人の声だった。
『行けなくなってごめんね、隆也。……また、今度』
 その声の向こうで、《大丈夫? さあ、車へ》 という男の気遣うような声が聞こえた。

 電話を切った後、隆也のいる喫茶店に入ってきた常連客がマスターに、「すぐそこで、通り魔かなんか出たみたいだね」と話しかけていた。 
 美沙に何かあったのかと思いつつも、隆也は取りあえず予備校に走り、その少し後ようやく春樹に確認の電話を入れたのだ。
 実際何があったのか気になったが、あんな憔悴した感じの美沙にもう一度、直接電話を入れる気にはなれなかった。

「ホイ、穂積どうした? 教室閉めるぞ? 泊まり込む気か?」
 のぞきに来た塾講師にそう言われ、隆也は苦笑しながら教室を出た。
 外に出ると、まだ11月末だというのにやけに冷え込み、隆也は厚手のジャンバーを着てこなかったことを激しく後悔した。

「隆也」
 不意にどこかから声がし、隆也はビクリとして辺りを見回した。誰の声なのかは明白だった。
「春樹!」 
 ガランとした自転車置き場の塀にもたれて、ジャケットのポケットに手を突っ込んだままの春樹が、隆也を見ていた。

「春樹。なんでこんな所にいるんだよ。こんな時間に」
「うん、……ちょっと暇だったし、ぶらっと寄ってみた」

 春樹のマンションからここまでは市バスで10分。さほど遠くは無いが、暇だからと言って11時過ぎに尋ねてくる場所ではない。そして今まで春樹がそうやって、ここに来たことなど一度も無かった。
 いつ校舎から出てくるか分からない隆也を、春樹はずっとここに立って待っていたのだろうか。

「こんな所に来たって、俺、もう家に帰るだけだぞ?」 
「うん、分かってる。ちょっと一人で部屋に籠もっていたくなかっただけだから」
 隆也は無表情でそう言う春樹の目をじっと見つめた。
 口では何でもないように装いながら、その目はまるで、別の何かを見ているように思えた。

 何かが違う。いつもの春樹ではない。 
 まるで薄く伸ばされたガラス細工のように、空気の振動だけで割れてしまいかねない脆さを感じた。

「なあ、どうした春樹。何かあったか?」 
 春樹に少し近づきながら隆也はじっとその目を覗き込み、本心を探ろうとした。
 自分が少しばかり避けたくらいで、この友人の心にそんなダメージを与えるとはどうしても思えなかったのだ。
 美沙と何かあったのだろうか、と。

 その時。

 あまりにも自然な動きで春樹の腕が伸び、その手は少しも躊躇うことなく、しっかりと隆也の左手首を掴んだ。

 予想もしなかった行為に隆也は一瞬ポカンとし、直後、蒼白になった。
 春樹が隆也の肌に触れたその瞬間、バシリとあるはずのない衝撃を感じ、まるで感電した人間のようにお互い身動きも取れずに固まり、絶句した。
 仕掛けた本人の春樹は目を見開いたまま隆也を凝視し、一方の隆也はもはや春樹の手を振り払う事も出来ず放心した。

「何……。隆也、それ、どういう事?」

 ガラス玉のような瞳を小刻みに揺らして春樹が呟いた時、はじめて隆也は我に返り、春樹の手を力一杯振り払った。

「何すんだよ!」
「それ、どういうことだよ、隆也」
「何がだよ! なんでこんな事するんだ! お前今まで一度だって……こんなこと……」
「これが僕だから!」

 春樹は目を見開いたまま吐き捨てるように言った。今まで聞いたことのない、まるで怯えた犬が懸命に四肢を震わせ吠えるような、悲痛な声だ。

「僕は知りたいと思う人間の心を覗けるんだ。知ってたろ?」
「なんで! 何で今、俺を……」
「隆也だけは僕に嘘吐かないし、理解してくれてると思ってた。でも、……。やっぱり隆也には、僕の能力を知られちゃいけなかったのかなって。隆也も美沙も……みんな居なくなる気がして…だから」
「だから心を覗くのか?」
「……」
「俺ならいつ覗いても構わないと思ったのか? 俺ならいいのか!」
「好きなように思ってくれていいよ」
「そんな卑屈な言い方はよせって言ってるだろ!」
「もういい。隆也がどう思おうと、もう構わない。でも」

 春樹の目は次第に赤みを帯び、そしてそれとは対照的にその頬は蒼白さを増し、唇が小刻みに震えた。

「今のは何なんだよ隆也。兄貴がなにをしたって? ポルノって何。放火って何。あの男の人は兄貴の友達だって………そう言ったのに。なあ! 隆也は何を吹き込まれてきたんだよ!」

 春樹の悲痛な叫びが凍り付いた夜気を震わせた。一番起こってはいけない事態が今、起こってしまったのだ。

 避けようと思えば避けられた。
 春樹に余計な傷を負わせてしまったのは、他でもない自分自身なのだ。けれど自分の迂闊さを呪っている時間は無かった。

―――何とかしなければ。この友人の心にこれ以上大きな痛手を負わせる前に、何とかしなければ。

「来いよ」

  隆也は春樹のジャケットの腕を強く掴み、半ば強引に歩き出した。



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~ Comment ~

NoTitle 

春樹もやる時はやったねぇ。
だけどどうなるんだろ。
モヤモヤ同士だものなぁ。
本当を知っているのは美沙だけだし・・
美沙につきまとっている男ってもしや・・・
変な考えが頭に浮かんできた。
いやいや、止めとこう。
グッと堪えてフニャララ・ラ・ラ
次回を楽しみにしています。

ぴゆうさんへ 

春樹、自分で一番やりたくないことをやっちゃいましたi-202
いつもならここで悶々と寝ちゃう春樹ですが。
この反乱が、物語を動かすことになります。

この二人、一体どういう方向に歩こうと言うのか。

次回、タイトルは「決断」。
いよいよ、この後の道が姿をあらわします。

美沙のことや、そのほかのこと、いろいろ想像を膨らませてみてもらえたらうれしいです。
もうちょい、辛い展開は続きますが、彼らにがんばってもらいましょう。^^

NoTitle 

触れたー!読んだー!知ったー!モゥダメポ゙━━。゚(。ノωヽ。)゚。━━ォ!!!

隆也を待ち伏せする程に
春樹が差し迫った気持ちを抱えてるなんて 隆也には 知るはずもなく...
隆也に触れずにはいられない程に
積もりに積もった孤独と疎外感を抱えてるなんて 隆也には 分かるはずもなく...

春樹が、自分に課していた近しい人には ”故意に”触れない&読まないの禁を破ってまで 繋ぎ止めたかった友情
隆也に通じた様で 嬉しくもあり切なくもありますね。

そんな春樹を 隆也は 何所に連れて行くのでしょうか。
まさか!・・・まさか!の人の所なの!?... Σ(゚ω゚:)
その人の 心を読み取れだなんて 隆也は 言わないよねぇ~~
ォロ(∀ ̄;)(; ̄∀)ォロ...byebye☆



けいったんさんへ 

そうなんです!!
春樹、もう自分で作った戒めを解いてしまいました><
あとできっと後悔するって、分かっていても、・・・。そんなとき、あるかも。
(18歳だってさ、子供だもん)

>春樹が、自分に課していた近しい人には ”故意に”触れない&読まないの禁を破ってまで 繋ぎ止めたかった友情
隆也に通じた様で 嬉しくもあり切なくもありますね。

ありがとうございます。
隆也も、やっと気づいたようで。

隆也は、もうちょっと春樹の敏感さを分かってなきゃ行けなかったですね。
鈍感なことも、彼の良いところなんだけど^^;

でも、とうとう春樹は、圭一の疑惑のしっぽに触れてしまいました。
まだまだ、隆也自身が半信半疑なので、情報も不完全なんだけど。

>そんな春樹を 隆也は 何所に連れて行くのでしょうか。
まさか!・・・まさか!の人の所なの!?... Σ(゚ω゚:)
その人の 心を読み取れだなんて 隆也は 言わないよねぇ~~

うん、どうでしょう^^
隆也は、そんなこと言いそうにありませんが・・・。
(次回はね、ちょっとばかり私のお気に入りの回なのです^^)

NoTitle 

こういう状況下では殴り合いをすれば誤解が解けて友情が深まる、と「青春ドラマ読本」に書いてあります。(ウソ)

ポール・ブリッツさんへ 

なるほど。
殴り合いかあ~。それもちょっと面白そう。

ああでも、だめだめ。隆也に春樹が殴れるわけないww

青春ドラマは、できそうにないですね^^

NoTitle 

ダメじゃ、春樹も隆也もどうかしている。

いったいこの二人どうなってしまうのでしょうか。
もう見てらんない。

ヒロハルさんへ 

確かに春樹はこの時、どうかしちゃってますねえ。

しかし、このままでは終われません。

きっと、なんとか頑張ってくれるはずw・・・かなあ。

拍手鍵コメNさんへ 

いつも、拍手鍵コメ、ありがとうございます!
先が気になると言って戴けて、すっごくうれしいです。

はい、佳境に入ってまいりましたが、実はまだちょうど半分の地点です。
31話完結ですので。
まだまだ、いろいろ展開しますので、お時間ありましたら、また覗いてやってください^^

NoTitle 

うー・・・知ってしまったぁ~。まだちょっとだけど、けどぉ~。

いや、春樹は知った方が良いと私は思っていました。

みんなは知ってもどうすることも出来ない。
でも、春樹は知ったら何かできるかもしれない、何てちょい期待?

けど、もうちょい違うコミュニケーションとれないのですかね、この人たち・・・

でもさ、これでとりあえず、先に進みますよう、お願い。。。

けいさんへ 

中途半端に、知ってしまいましたねぇ~。
でも、間接の間接・・・。真実はまだ、霧の中です。

>いや、春樹は知った方が良いと私は思っていました。

お、そうですか! うん、そうですよねえ・・・。いや、どうなのかな(どっちやねん)

>でも、春樹は知ったら何かできるかもしれない、何てちょい期待

↑これは、新しい意見ですね。春樹に何かできる・・・。
けいさん、春樹に期待してくれてるんですね!うれしいな。
さて、春樹はこのあと、どう進んで行くんでしょう。
彼の心に聞きながら、作者は構築していきました。

>けど、もうちょい違うコミュニケーションとれないのですかね、この人たち・・・

ははは、・・・ごもっとも。
みんな、優しいばっかりに遠ざかっちゃうから、こんなことになるんですよね。
やっぱり、ぜんぶ、あの能力のせいかな・・・。

じわじわと、先へ進みますよ。
必ずしも、最良の道ではないかもしれませんが・・・汗
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