KEEP OUT 6  愛する君の為に

KEEP OUT6 第3話 捕獲 

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「いえ、違います」
 隆也はその男の横を通り過ぎながら、小声で返した。
「ああ、すみません。同年代だと思ったもので。人違いでした。ごめんなさい」
 男はそつのない営業的な笑みを浮かべ、隆也に小さく一礼したあと、すぐにエレベーターに向かった。

 何かの訪問販売だろうか。問いただすのも妙な気がして、隆也は取りあえず自分も玄関ホールを飛び出した。
 ゼミ開始時間が迫っているため、すぐ側のバス停まで走りながら、やはり少し気になって、隆也は春樹に電話を入れてみた。

『どうした? 隆也。忘れ物?』
「たった今、春樹の部屋の方に男の人が訪ねて行ったんだけど。押し売りとかだったら気をつけろよ」
 隆也がそう言うと、春樹は軽い声で一つ笑い、そして『人の心配はいいよ。それより勉強がんばれ』 と、余計な一言を付け加えた。
「うるさいよ」
 隆也はフンと鼻を鳴らして携帯を切ったあと、運良くちょうど滑り込んできた循環バスに飛び乗った。

        ◇

 405号室のドアスコープに、部屋の中からの光が漏れているのを確認すると、佐々木和彦はホッと安堵の息を吐いた。
 やはりさっき下で会った青年は天野春樹では無かったのだ。
 咄嗟に本人かどうか確認してしまったが、初対面の第一印象で警戒され、嘘を吐かれてたのだとしたら、この先やりにくい事になる。
 今回はセーフだったが、慎重に行かなければ。
 佐々木は安堵と集中の深呼吸をし、405号室のインターホンを押した。

 鍵を外す軽い音のあと、チェーンを掛けたままのドアが薄く開かれた。
 小さく「はい」と言って半分だけ顔を覗かせたのは、どう見ても高校生にしか見えない、優しい顔立ちをした少年だった。

「こんな時間にすみません。天野春樹君……ですよね?」
 佐々木が柔らかい声でそう言うと、少年は驚くほど薄い色の瞳を静かにこちらに向け、「どちら様ですか?」と返してきた。
 けれどその声に警戒心は少しもなく、まるでもう、この世に怖いモノは特別ないのだとでも言いたげな、妙な落ち着きを感じさせた。
 自分以外の家族を全て失うと言うのは、人間形成にどれほどの影響を与えるものなのだろうか。
 目的とは関係のない、そんな興味がちらりと佐々木の胸をかすめていった。

「僕、あなたの亡くなったお兄さんの古い友人なんです。先日4年ぶりに帰国して、3年前の惨事を初めて知り、慌ててここを調べさせていただきました。ご実家はもう無くなっているようでしたので。……もし良ければ、ご位牌を拝ませていただきたいと思いまして」
「兄の?」
「はい。できれば」
「……でも、ここには……」
 少年はちらりと部屋を振り返る仕草をしたあと、申し訳なさそうな笑みを浮かべた。

「僕の家は無宗教なので、位牌というのは無いんです。ごめんなさい……」
「そうなんですか。……ああ、そうか、そう言うこともあるんですよね」
「あの……」
「はい?」
「失礼ですが、雑誌社の方じゃないですよね」
「まさか。どうして?」
 佐々木は動揺を悟られないように慎重に声を出しながら、目の前の穏やかそうな少年を見つめた。
 ほんの少しの気まずい沈黙が漂ったあと、先に口を開いたのは春樹だった。

「疑ってごめんなさい。最近は無いんですが、3年前、そうやって訪ねてくる雑誌記者の人が何人かいて、ちょっと嫌な思いをしたものですから。あの……せっかく来ていただいたんですから、良かったら、どうぞ。ちょっと散らかってますが」
「それは有り難いです。僕もあなたと、お兄さんの思い出話なんかしたいなと思ってたんです」
「じゃあ、少しだけ待ってくださいね」
 片付けのためか、春樹はそう言うと一旦ドアを閉めた。
 願ってもない展開に、佐々木は思わずグッと手を握りしめた。

 幼い表情とは似つかわしくない、大人びた口の利き方をする弟、春樹。うまく行けばこのあと自分は、この少年から3年前の事件の事実の一端を聞けるかも知れない、と佐々木はほくそ笑んだ。
 逆にここで失敗すれば全て振り出しに戻ってしまう怖さもあった。そうなれば、もう手は無くなる。
 そんなことになったら、妹に顔向け出来ない。妹の無念も晴らせぬまま終わる事になる。それだけは嫌だった。
 この少年が圭一の秘密を知っているか否かにかかわらず、絶対にここから綻びを探し出してやるのだ。

 死んでしまったからと言って天野圭一の罪が消える訳ではない。
 罪人の死への哀れみなど、佐々木には皆無だった。
 圭一の代わりに、このドアの向こうの少年を地獄に突き落としても構わないとさえ思った。

 耐えがたい写真を鬼畜どもにばら蒔かれ、嘆き、心に深い傷を負って死んでいった妹の無念が晴らせるなら、自分は何だってしよう。鬼にだってなってやる。

 佐々木はチェーンを外し、大きくドアを開けてくれた少年に、「お邪魔します」と頭を下げながら、はやる心を何とか鎮めようと深く息を吸った。


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~ Comment ~

NoTitle 

これはまた重たい展開になりそうですね。笑。
ずぶ濡れのコートを着ているかのような・・・・・・。

妹の無念、天野圭一の罪、ばら撒かれた写真・・・・・・ダメだ。
想像しただけでもちょっと・・・・・・orz

最後まで耐えられるかしらん。

ヒロハルさんへ 

やっぱり重いですか~~!

やばいなあ。まだまだ序の口なのに・汗
これからどんどんやばくなるのに。

まあ、この世の不幸を全部背負いこんじゃったような春樹くんですから・・・。
なんとか、がんばってもらいましょう。(酷い)

あ、ヒロハルさんも、頑張ってくださいw。

NoTitle 

謎のワードが、次々と!
ひとつひとつが、決められた場所に収まって行く過程が、楽しいジグソーパズルですね♪
(*´-ω・)ン? 楽しいか? いや むしろ 辛いか。。。

怨念が、そこらじゅうに ”おんねん(←大阪弁で♪)”な空気を持ってる佐々木和彦!
春樹に 近づくなぁーー!!ヾ(・`д´・)ノ
だってだって...嫌~な予感が....!
ヒィ---!!!ΣΣ(゚Д゚;ノ)ノザザザザッ!!...byebye☆

けいったんさんへ 

そうなんです~。
まだ、ピースが全然ハマってなかったですもんね。

今回、きっちり嵌めて行きます。
すごーーーく辛い作業になります><

どんどん近づいて行きますよぉ~、佐々木。
そして別の場所でも、大変なことが・・・・。

嫌な予感、全開ですが、ついてきてください!(°∇°*)

NoTitle 

うわーっやめろやめんか春樹くん、「そいつに触れることは『死』を意味する! それがッ! ドッギャアアアン」と、某大先生の漫画の最初のページが頭に!

これか不幸のドミノ倒しの最初の一押しは!

うわーっ……。

べ、別の場所? どこだ? 警察?

ポール・ブリッツさんへ 

だ、だれの漫画ですかーーー。
もう、ポールさんの幅は広すぎて、わからんって。

>これか不幸のドミノ倒しの最初の一押しは!

さて、どれなんでしょう!
でも、まだまだです。うっかり触っちゃうなんて展開は御法度です。
最初の一押しは、どこなんでしょうねええええ。ふふ。(押さないかもよん)

別の場所とは、ほれ、あっちです^^
(でも、ややこしくはならないはず)
ちなみに、警察はあまり絡んできません。たぶん・・・。


NoTitle 

今まで春樹に悪意を持って接した人物はいなかっただけに、
何かズンと来ました。
妹の無念・・・
佐々木の言葉を信じれば
圭一はとんでもない奴だったみたいね。
願わくば兄の罪を春樹が背負わなくてすみますように。
無理っぽいな。

ぴゆうさんへ 

> 今まで春樹に悪意を持って接した人物はいなかっただけに、
> 何かズンと来ました。

そう言われれば、そうですね。
春樹の周りには、いつも優しい人が集まった。
こういう悪意を持って近づいて来る人間への耐性が、出来ていないかも。

佐々木が、どこまで圭一の犯罪を知っているのかは妖しいですが、
やはり圭一はとんでもない事に、首を突っ込んでいたのは確かなようです。

捕らわれちゃうのか、春樹・・・。


NoTitle 

春樹のアニキの過去が少しづつ明るみに出るのでしょうか。

春樹とは性格違うのかな。

人を怨む気持ちって、大きくて強いんですよね。

白くて弱い(?)春樹はどうなる? (白いのは関係ないか・・・)

けいさんへ 

> 春樹のアニキの過去が少しづつ明るみに出るのでしょうか。

えっと、(どうだったかな?)
圭一のことは、大まかにしか出てこないと思います。
たぶん、圭一は組織の下っ端だったと思うから。

でも、この佐々木さんの恨みは、弱い者の方へ行っちゃうような・・・><

恨みの負のエネルギーって、怖いですよね。

白くて弱い春樹、がんばれ!!(白にこだわるけいさんww)

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