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(雑記)アウェイで読む『聖母たちの深き淵』(柴田よしき著)

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タイトルにも書いたように、これを読み始めた時の感覚は「アウェイ」でした。

聖母(マドンナ)の深き淵 (角川文庫)聖母(マドンナ)の深き淵 (角川文庫)
(1998/03)
柴田 よしき

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私は、以前何度も書いているように、『聖なる黒夜』の麻生龍太郎と山内練の壮絶で切ない人間ドラマに魅了され、その続編とも言える、この『聖母たちの深き淵』を読み始めたのです。

しかし、この物語自体が「RIKO」シリーズの第2弾でありました。
第十五回横溝正史賞受賞作である、『RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠』の続編。
そこには、村上緑子(むらかみ・りこ)という、圧倒的な存在感を持つ、女刑事が君臨していて。

その濃厚なドラマ中に、私は麻生と練を追って、飛び込んだわけです。

この緑子刑事、最初はなかなか好きになれませんでした。
第一作目を読んでいないせいでしょうか。
いえ、きっと、彼女の中の濃厚な「女」と、それの使い方のカッコよさ、真剣に性愛に向かう強い意思が、完璧すぎて恐れをなしたんだと思います。

【あらすじ】
一児の母となり、下町の所轄署で穏やかに過ごす緑子の前に現れた親友の捜索を頼む男の体と女の心を持つ美女。保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。関連の見えない事件に隠された一つの真実。シリーズ第二弾。


同僚刑事との不倫の末、一児をもうけ、未婚の母として刑事を続ける緑子。
強さと弱さと、真っすぐ他人と関わろうとする真摯さ。そしてそれゆえの美しさ。もう・・・敵わない。
ちょっぴり嫉妬すらしてしまいます。

その緑子が、麻生に接触!!
事件の情報を得ようと、私立探偵の麻生に相談を持ちかけるところから、二人は関わるんです。

やった!麻生!・・・と、ドキドキしながら読み進めました。

この物語では、麻生はほんの脇役なのです。
しかし、その存在感。殺伐としたこの物語の中で、なんとも温かい、にじみ出る人間性。
ああ、麻生龍太郎。ちゃんとここにいてくれたね。(T_T)(練は? と、はやる心を静めながら読み進める)

麻生がなぜ警察をやめたのかも、練との関係も、過去に何があったのかも、本編の中ではほとんど語られませんでしたが、『聖なる黒夜』を読んだ読者は全部知っているんです^^
緑子も知らない事実・・・・・。



さて、ここで、私が終始興奮した柴田よしきマジックを、聞いてください。

実は、この『聖母(マドンナ)の深き淵』が書かれたのは1998年。
そして『聖なる黒夜』が書かれたのは2006年。
順序が逆なんです。
麻生も、錬も、この『聖母(マドンナ)の深き淵』から生まれたキャラクターだったんです。

『聖母(マドンナ)の深き淵』が書かれた時には、まだ『聖なる黒夜』は書かれていない。
それなのに、・・・まるで違和感が無いんです。
書きかえられたわけでもないようです。

麻生が錬について語るところも、錬が麻生の事を思い浮かべる時も。
あの『聖なる黒夜』の、細かな細かなエピソードが、何の矛盾もなくここに繋がって書かれていると言うのに。

それはどんなマジック?
8年後に書かれる物語の細部まで、設定してあったと言う事なのでしょうか。
曲がりなりにも物語を書いている私にとって、この完璧さは脅威でした。

さて。
この物語の中で、錬はすでに春日組の若頭に就任していました。

彼は・・・麻生の願いもむなしく、堕ちてしまっていました。
『聖なる黒夜』では、まだ心の中では悪魔になりきれず、麻生に救ってほしい、もしくは、麻生に自分の人生を終わらせてほしいと願っていた、不安定な状態の練でした。

けれど『私立探偵・麻生龍太郎』のエピローグで、その願いを受け入れてもらえず、麻生の手を離れてしまった錬は、・・・悪魔に魂を半分売り渡していました。

・・・・・・・(T_T) 練・・・・・・。

そして、山内錬は、緑子に、絶対にやってはいけない仕打ちをしてしまう。

ああ、緑子と完璧に敵対してしまった!どうすんのよ、練。
(『歩道』の可愛らしい練が・・・・。あの、天使のような錬が・・・)

実は、この物語の中で、麻生が辿る運命を、私は全部知っていました。
うっかり、この物語の続編にあたる『月神(ダイアナ)の浅き夢』を先に読み始めてしまい、冒頭で麻生と錬の顛末を知ってしまったんです。

それはある意味ショックでしたが、逆に、“そのシーンを読みたい”と強く思ったんです。
「その瞬間、麻生はどんな表情をしたのか。錬は、どんな気持ちで麻生を見ていたのか」

全てを知ったからこそ、読みたくなったんです。
そして、読み終えた今、想像以上の満足感に満たされています。
何度心臓がキュンとしたことか。


*******

以降は、私が本書で一番ゾクリとしたシーンです。
※以降、ネタバレなのでご注意ください。

麻生が練を救うために事件を起こし、警察に連行されて数日後。
練のいるバーに緑子が訪れ、「感想を聞きに来たのよ」と言うんです。

なぬ~?・・・緑子には分からないんですよ。錬が、この瞬間、どんなに傷心しているかなんて(ー"ー )
麻生が、逮捕されて、気分はどう?なんて聞くなよ~(>_<)

でも、緑子は以前にひどい凌辱を練に受けているわけですから。
錬は、たとえこの場で殺されたって、文句言えない。

緑子はバーのカウンターに座りながら「あんたには、生きている値打ちは無さそうね」と、練のこめかみに銃口を押しつける。
そして、以前自分がされたのと同じ仕打ちを練にするんです。

『快感が緑子の全身を貫いた。経験したことのない、強い衝撃だった。山内の整った顔がキュッと麻痺したように歪み・・・(中略)・・・。痛みを堪える人間の顔がこれほど魅惑的だと思ったのは、初めてだった。』

ああ・・・(>_<)  麻生が泣くよ・・・緑子。麻生の事で弱ってる練になんてことを。(>_<)
けれど、その時のシーン、描写があまりにも悪魔的でそれでいて官能的で美しくて。
緑子の感覚になってしまったのも事実で。

そのあとで緑子は、自分の子供に手を出したら殺すと練に銃を突きつけながら言う。
守るべき子供を持つ母親がどれ程恐ろしいかという言葉とともに。

緑子の愛するものを守ろうとする執念は、充分理解できるんです。
緑子にとっては、山内は悪魔であり、怪物。
だけど過去を知る読者は、山内練という人間の孤独と苦悩と、魔性の裏に隠された、幼子のような純粋さを知ってるんです。
練は愛されるべき母親に、冤罪だったにも関わらず、縁を切られてしまったというのに、その彼に母の愛の深さを突きつけるなんて。それも銃口を向けて。

緑子の脅しに「ああ、分かった」と、掠れた声で素直に呟く練。
きっと、緑子の中では聖母と悪魔の図が成り立っていたんでしょうが・・・。知らないのよあなたは。

もう!もう!麻生龍太郎!何とか出来ないの?
練を守って、自分も手を汚して、一緒に堕ちたつもりだろうけど、それじゃあ練は救えないよ。
残りの人生を、練に償うために使うって言ったんなら、そばにいなきゃだめでしょ。そばにいなきゃ!
塀の中に入ってる場合じゃないわよ。

と、またも悔しい想いでいっぱいになりました。

まあ、なんだかんだ言いましたが、それでも麻生や錬のその後を覗けて至福の時でした。

さあ、これでやっと『月神(ダイアナ)の浅き夢』 が読めます^^
事実上の、麻生と練の物語の完結。
彼らの結末がそこにあるのか・・・。
また、読み終えた後、感想を書きたいと思います。
(もう、これって感想じゃないね^^;)


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~ Comment ~

NoTitle 

うむむむ。
まだどの作品も読んだことがないのに、思わずネタバレまで読んでしまった。

これは・・・すごいですね。
お話の内容もさることながら、8年後に発表することになる作品の詳細が、すでにべつのお話しの中で息づいているなんて!!

でも、私はこれを読んでいて、limeさんの白昼夢だってそうじゃないの、と思ってましたよ?(^^)
limeさんだって、ほんの思い付きで書いたかのように言っていた「白昼夢」をあそこまで見事にシリーズにしてしまって、しかも、陽と坂木の出会い、いや陽の生い立ちも、かなり後から完璧に書き上げて。
「ここまで考えて最初から書いていたの!?」と私は本当にビックリしたもんです。
「ラビット」もそうですよ。
ちゃんと最初から、最終話につながっていく伏線が張られているんだもの。

柴田よしき、読んでみたくなってます・・・が・・・「積ん読」がどんどん増えてる私・・・。
「赤江瀑」も読みかけなのに、また「篠田節子」買ってきちゃった・・・
いつ読むんだ・・・(ToT)

秋沙さんへ 

ネタばれ読んだって、大丈夫です。
この物語は、ネタばれを読むと、更に読みたくなるんです^^

秋沙さんにも、一度この濃厚な「警察小説」&「性愛小説」を読んでほしいなあ。
でも、積読か増えてゆく切なさも・・・・分かります。

読む時間ないのに、つい買っちゃうんですよね。
私も6冊くらいあります。(爆
でも、・・・魔力には勝てず、やはり柴田先生から読んでしまうんですよ^^;

え?・・私の白昼夢?
いやいや、引き合いに出すのもおはずかしいんですが・・・・^^

でも、あれは本当に、第一話がポンと浮かんで、何気なく書き始めたんですよね。
そしたらみんなが、陽は悪魔だったのね。というコメをくれたので、
いや、これはファンタジーではないのです、という意味を込めて、坂木を登場させて、続編を匂わせたんでしたっけ・・・。

不思議なもので、後から浮かんだ物語が、世界を広げていくんですよね。あの感覚は充足感がありました。
そういえば、ラビットも。
漠然とした構想が、後々、徐々に輪郭を持って行って。

しかしながら、あの坂木の過去をこんなに鮮明に書きあげていった秋沙さんは、本当にすごいと思いますよ。
私が丸投げした加奈子のドラマも書きあげてくださったし。
自分が生み出した物語なら融通がきくけど、途中まで人が作った物語を引き継ぐなんて、めちゃくちゃ難しいです。
秋沙さんが、他人の物語をちゃんと中まで読みとってくださってるからですよね。

・・・ああ、なんか、熱が入ってしまったじゃないですか・笑

いずれにしても、小説は面白いです^^
読むのも、書くのも。

願わくば・・・もうちょっと、それらに興じる時間が欲しいですよね^^(贅沢かな)

NoTitle 

禁止ワードが解除できることは知っていましたが、全部解除にしてしまうとスパムに対し脆弱になってしまう気がして(汗)

さあて今日は同人誌の束見本を作りに行くぞ~(^^)

ポール・ブリッツさんへ 

そっか、あれはスパム対策でしたか。

でも、まだ被害にあったことないし・・・。
まあ、差支えがあったら考えることにします^^

NoTitle 

私も禁止ワードを解除してみました。
これからはなにをコメントされても大丈夫です(笑)

どわ~~!
「男の体と女の心を持つ美女。保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。」ってなんか凄いですね!以前にも書きましたが、ほんとに濃そうな物語。作者のこの作品への執念が感じられそう。

こういうシリーズもの?って、番号がふってないと順番がわからなくてけっこう大変だったりしますよね。他の方の作品でこの順番を調べるのに大変な思いをしたことがあります ^^;

西幻響子さんへ 

> 私も禁止ワードを解除してみました。
> これからはなにをコメントされても大丈夫です(笑)

西幻さんも解除されましたか^^
スパムとかがちょっと心配ですが・・・まあ、なにかあったら、そのあとで考えましょうね^^

そう!RIKOシリーズも、壮絶です。
受賞した1作目の『RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠』の、あらすじもすごいですよ。

【あらすじ】
男性優位主義の色濃く残る巨大な警察組織。その中で、女であることを主張し放埓に生きる女性刑事・村上緑子。彼女のチームは新宿のビデオ店から一本の裏ビデオを押収した。そこに映されていたのは残虐な輪姦シーン。それも、男が男の肉体をむさぼり、犯す。やがて、殺されていくビデオの被害者たち。緑子は事件を追い、戦いつづける、たった一つの真実、女の永遠を求めて―。性愛小説や恋愛小説としても絶賛を浴びた衝撃の新警察小説。第十五回横溝正史賞受賞作。

ね?
これはいつか、読んでみようと思います。

でもやっぱり、『聖なる黒夜』ほどには、夢中になれない気がしますが。

そうなんですよね~~。番号を振ってほしい!
でも、いい作品はきっと、順序を逆にしてよんだって、きっと感動できるんでしょうね^^

NoTitle 

ぐわぁ~~
一作目も凄いですね!
limeさん、まだ読んでないのか~。
limeさんのレビューを読んでから読んでみたいような気も…(←無精者

西幻響子さんへ 

ははは。不精者w。でも、気持ちは分かります。

でも、ちょっと待ってくださいね。
これから読む『月神(ダイアナ)の浅き夢』のあらすじも、すげー、です。↓

【あらすじ】
若い男性刑事だけを狙った連続猟奇殺人事件が発生。手足、性器を切り取られ木にぶらさげられた男の肉体。
誰が殺したのか?次のターゲットは誰なのか?刑事・緑子は一児の母として、やっと見付けた幸せの中にいた。
彼女は最後の仕事のつもりでこの事件を引き受ける。事件に仕組まれたドラマは錯綜を極め、
緑子は人間の業そのものを全身で受けとめながら捜査を続ける。刑事として、母親として、そして女として、
自分が何を求めているのかを知るために…。興奮と溢れるような情感が絶妙に絡まりあう、
「RIKO」シリーズ最高傑作。

ね?

でも、とにかく私は麻生と練を追います!!

NoTitle 

limeさまぁ~
絶対に のめり込む自信がある”麻生と山内練”シリーズ作品たち

「古市」で中古本の”入ったメール”で待っていても連絡無しの状況
やはり 買った方がいいのでしょうね。(*´;ェ;`*)うぅ・・・

悩む~悩む~ゥ──σ(・´ω・`;)──ン...byebye☆

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けいったんさんへ 

悩んでいるのですね?けいったんさん。
悩める子羊よ、迷うことなく『聖なる黒夜』を買いなさい・・・なんつって^^

これはねえ、いいですよ。本当にのめり込ませてくれます。
キャラの描き方が、半端ない。

その他の作品は、なかなかあの2人が出てきてくれなくて、じれったいんだけど、
虜になってしまったものの宿命よね (>_<)

時系列のこと、リンクで教えて下さったんですね。
残念ながら、その情報はもう消えちゃってましたが、けいったんさんの優しさに感謝!!(*^-^*)

NoTitle 

また面白そうな……!

これは我が電子頭脳に知識を蓄えるためにうんぬんw

るるさんへ 

ふふ。るるさんは、もう18だものね^^

なんでも読める、お年頃だものね^^

いいなあ。18歳。・・・遠い目・・・

NoTitle 

うーん・・・面白そう。
limeさんをこれだけ追っかけさせる、キャラに触れてみたいです。

濃い展開とキャラが深く絡まり、魅力を発するお話、良いですねー
憧れです。

limeさんの次なる追っかけレポートを楽しみにしていますっ^^

けいさんへ 

またまた、私のおバカな追っかけレポを読んでくださって、ありがとう~、けいさんe-266

もう、レビューでも何でもなく、ただの追っかけレポですよね(*/∇\*)

もうねえ、めちゃくちゃ恋してるって言うか。
こんなに味のある魅力的なキャラを書かれると、惚れっぽい私としては、キュン・・・なのです。

また、バカバカしい感想を書きますので、「またか」と、笑いながら読んでください!
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