KEEP OUT 4(番外) 薫  

KEEP OUT4 第4話 兄と弟

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薫と春樹は、絶妙な間合いで尾行を続けた。

けれどターゲットである鈴木は、時折連れの男と談笑を交わし、若者向けの雑貨店や衣料品店を覗き見ながら、のんびりと歩いてゆく。
その緩い空気感に、次第に薫の緊張も緩んでしまう。

やっぱり今日はハズレなのだろう。
無駄に鈴木に歩かされるだけだなと予想しながら、薫は横の少年を見た。
その少年の横顔は、涼しい目元のせいか、いつも僅かに憂いを含んでいるように見える。
困った事に、その度に薫は少なからずドキリとしてしまう。


「春樹」
「はい?」
さっきから呼び捨てにしているのだが、気にしていないようなのでそのまま続けてみた。

「なんでそうバカ正直に俺の尾行に付き合う? 自分の用事があるんだろ?」
「……ええ、まあ」
「ごめんな。さっきはあんなふうに言ったが、今日の尾行は浮気調査の予行演習になりそうない。構わないから、買い物に行って来いよ」
「あの。迷惑じゃなければこのまま続けさせてください」
「まさか、このあと本当に俺に買い物に付き合って欲しいわけじゃないよな」

そんなわけないじゃないですか、と笑い飛ばされるのを覚悟で言ってみると、春樹は驚くことに少し照れたように笑った。

「本当です」

――――おいおい、マジかよ。どういうつもりだい?

このくらいの年頃の子が、32歳のオッサンに買い物に付き合ってほしいとか、ありえるのか?
服だってなんだって、趣味が違うだろ?
本当に買い物が目的なのか? それともそのあとの……。

薫は体中の血がザワザワと動きを速めたような気がした。


             ◇

休日ではあったが、事務処理を溜め込んでしまった美沙は、今日も休日返上で鴻上支所に出勤していた。

PC打ち込みをしている美沙のデスクの端に一人の男が近づき、湯気の立つ煎れ立てのコーヒーをそっと置いた。


「あ、ごめんなさい立花さん。私がお出ししなきゃいけないのに」
美沙がそう言って恐縮しながら見上げると、男は優しげな笑みを作った。
「とんでもない。僕が勝手にフラリと立ち寄ったんだから」

その背の高い、育ちの良さそうな男は立花探偵社の社長、立花聡。
なぜか皆からは社長ではなく、某関西探偵バラエティ番組の影響から“局長”と呼ばれている。

自らをジュード・ロウ似だと言い張る弟の立花薫とは、顔も骨格も性格も似ておらず、線の細い、繊細な容姿をしていた。
そのせいかとても42歳には見えず、メガネの奥の切れ長の目は、絶えず若々しい知的な光を宿していた。


「春樹君はどう? 君の片腕になってる?」
立花聡は、美沙の斜め向かいの春樹のデスクにもたれ掛かりながら、自分もコーヒーを啜った。

「ええ。時々張り切りすぎて空回りしますが、基本的に勘のいい、賢い子です。良い助手ですよ」
「それは良かった。ところで……」
「はい?」
「薫、ここによく来る? 油売りに」
「そうですね。タイムカードを用意したいほど、よく来られますよ」
美沙は思い出したように笑った。

「『俺はこうやって息抜きしないと死んでしまうんだ』って悲しそうに言ってましたけど」
「なるほど。相変わらずだな」
「こっちも気分転換になって、楽しいですけどね。他の事務所にもフラッと息抜きに行くのかしら」
「どうかな。他の事務所はオッサンと女の子ばっかりだから」

立花聡は“当然”といった調子でサラッと言うと、窓の外に目をやり、またコーヒーを啜った。


何か、聞き間違いだろうか、と、美沙はキョトンとした顔を立花に向けた。
「女の子がいるほうが、……いいんでしょ?」

美沙の声に立花聡は同じようにキョトン顔で振り向いた。
「あれ? ……みんな知ってるもんだと思ってたのに。ごめん、忘れて」
「……はぁ」

忘れてと言われても困る。今ので100%分かってしまったものを。
そんな噂はちらっと聞いたことがあるが、薫はやっぱり「そっち」なのか。

美沙が困惑した風に視線を泳がすと、立花聡はまた何食わぬ顔で立ち上がった。

「じゃあ、僕はこれで。春樹君によろしく。それから薫には真面目にやるように時々ハッパ掛けてやってくれると有り難いな。忙しいのに、お邪魔してすまなかった」
立花聡は空になった紙コップをゴミ箱にそっと落とすと、小さく笑って事務所を出ていった。

立花聡と、立花薫。外見も中身も一見正反対だが、どこか同じものを感じる。
2人とも、ついうっかり、悪気無しに余計な事を言ってしまう男なのだ。
美沙は何となく可笑しくなって、一人クスクスと笑った。


それにしても。

薫がこの事務所に遊びに来る目的は、春樹だったんだ……。
なるほどね。

美沙は妙に納得し、別段驚くこともなく、すぐにまた仕事モードに頭を切り替えた。




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~ Comment ~

NoTitle 

ぷぷぷぷ。

あたし、この「局長」さん、かなり好みのタイプかも~(^q^)
だけど、「いらんこと言い」は余計ですねぇ(笑)

あら、薫が「そっち系」っぽいのは、周知の沙汰なんですかぁ。ははは。
隠せていると思っているのは本人ばかり?
なんかもう、みんながみんな、可愛いですね、今回のお話。

私、なんだか、春樹の「買い物」わかったような気がしてきました・・・。
大外れかもしれないからまだ言わないでおきますが_(・・)
でも、これが当たっていたとしたら・・・こんなに盛り上がって来ちゃってる薫さん、がっくりだろうなぁと今から予想して楽しくなってます('-'*)

秋沙さんへ 

へへへ。
この局長さん、このあとの最終話まで、重要な役回りになります^^
だから、今回ちょっとお披露目♪
早くも秋沙さんに気に入ってもらえて、嬉しいです。

そうなんです!!
薫がそっち系ってことは、じつは、やんわりとみんな知ってるんです。
本編でも、実はそのことが叙述されている場所が・・・。(探すのがめんどくさい作者)
みんな、知っていながら、知らない振りしてあげてる、優しい探偵さん達なんです。
(美沙は、無頓着なので、この時はっきり知ったんですけどね^^)

ほほほ。
春樹の買い物、分かっちゃいましたね。
もう、お約束のようなものかも。
分かった上で、彼らの行動を見るのも楽しいかも♪

薫がねぇ・・・。
そうなんです。もう、・・・まだまだ盛り上がっちゃうんです。

許せ、薫!!

NoTitle 

むむむ(^^;)

わたしもそうとうの「いらんこと言い」だからなあ。

五秒ほど反省(笑)

ポール・ブリッツさんへ 

5秒ですかww
そうですね、反省は5秒くらいがちょうどいいです。

いや、でもポールさんのコメは、重要なメッセージがいっぱい入ってて、うれしいです^^

NoTitle 

おいおい、薫だけじゃないのか!
いらんこと言いしてるわたし・・・
しかーーし、一度持った疑問符は作者に聞かネバネバならーーーぬ!
薫は春樹の行動をしっかり誤解しているし・・
きぃーーーーー
美沙あーーー
ぼっーーーとしてるんじゃない!
春樹がぁ~魔の手に蹂躙されるかもしれないというのに・・・

・・・・全く違う方向に一人エキサイト。
v-16

NoTitle 

「アンタは、いつもいつも いらん事ばっかり言うて!ちょっとは、黙っとき!ヾ(・`д´・)ノ」
「そやかて 母ちゃん、○×△☐・・・ ・゚・(ノД`)」
「また そんな屁理屈を言うッ!!d(`‐ェ‐´♯)」
「母ちゃん、㋬ーが理屈言うんか~?(´σ `)?」
「・・・ンモォ-=≡o(*≧д≦)o)))」

limeさま、楽しく読んでおります!ヾ(@°▽°@)ノあはは…

私も 買い物を分かったよ~♪ 
あのね~♪...しゃべるな! (ノ ̄ー ̄(; ̄X )ゝもごもご...byebye☆

NoTitle 

うーん、いいですね、聡さんと薫さんのこのメリハリ感。
なにげに聡さんもかっこいいなあ…(ひとりごとです

えぇっ。私にはわからない。「春樹の買い物」がなんなのか?
まさか薫さんを監視してるわけじゃあるまいし。

ぴゆうさんへ 

ゲイなのは、薫だけですよん^^
(あれ? そういう質問じゃなかったかな?)
聡はね・・・このあとの章に、いっぱい出てきます。
彼は、ちょっとピントのズレたところが薫に似ていますが、いい奴です^^
(いい奴ってところが、問題になってくるんですが)

問題は薫ですね。
春樹、毒牙にかかるのか! ・・・・って、・・・コメディですから、これ・笑

でも、いろいろ、想像してエキサイトしてください(*/∇\*)i-201

春樹~~、気をつけて!!



けいったんさんへ 

きゃ~~~ん(≧∇≦)
かわいいいいい。 なんなの、その顔文字の会話!
どんだけ凝るんですかwww

こちらこそ、楽しませてもらっています^^

ああ~~。けいったんさんも、わかっちゃいましたか、春樹の買い物。
いやあ、たじたじですww

そこがオチではないんですがね。でも、けっこう重要です。
ふふふ。喋るんじゃねえぞ~~ψ(`∇´)ψ

いや、分かった方がおもしろいのかな?? 

西幻響子さんへ 

お、西幻さんも、聡を気に入っていただけましたか!

大丈夫です。今までみたいに、「一見いい人そうだけど、実は鬼畜」みたいなキャラではありません。
(だれよ、それ)
「5」からは、ちょくちょく出てきますので、お見知りおきを^^

ふふ。いいんですよ、分からなくて。(ほっ)
たぶん、監視とかじゃないです。
もう、「な~~んだ、そんなことか」的な、ベタなことですし、そんなに重要ポイントじゃないんです。

なにも考えず、のんびり尾行して行ってください。
あ、春樹の無事もいのってください^^)

NoTitle 

兄と弟って、薫っちとアニキのことでしたか。
春樹と薫っちがそう見える、という方かと思いました。

はたまた、鈴木の連れが、実は自分の兄弟だった、、、とか。
春樹とリラックマとか・・・それは無理・・・
いらんこっちゃですいません(滝汗)

薫っちがどうなっても応援しますよ~

けいさんへ 

おお、なるほど!

そっか~、このタイトルで、そんなイメージが沸いたんですね。
それは盲点でした。
作者、なにも考えずに決めてるので。(いいのか、そんなことで)

でも、読者を一瞬混乱させるには、いいですよね^^(ひどい)

薫っちが、どうなっても・・・・って言いましたよね?

ふふふ。狼になっても??ψ(`∇´)ψ

NoTitle 

「ゲイは美沙助ける」

……いかん脳細胞がほんとにオヤジ化だ(^^;)

ポール・ブリッツさんへ 

そうくるかwww
いや、ちゃんと脳細胞が活性化されてます^^

ごめんなさい~、ちょっとバタバタしてて。今夜、まとめて読みますね^^

NoTitle 

ポールさんので笑った僕はもう……。
助からないのかも知れません、lime姉さん……。

いやだっ、まだおやぢになりたくないよぉ……。

るるさんへ 

少年よ、がんばれww

まだ親父化は、早い~~。


うおおおおう、謎の兄弟! 

いや、謎ではない。
ものすごく、好みの兄弟。
変なところが妙に良い味、出してます。
さすが薫さんのお兄さま。

ふふふふ。
妙に好きです。

fateさんへ 

わあ^^
fateさんが、うちの男を気に入ってくだすった(いい方変)

なんか、どっかネジが飛んでるような、洒落てるような、
頼りになりそうで、そうでなさそうで、微妙な兄です^^

この兄、「5」と「6」で、また出てきます~。

薫は、・・・ここで降板なんですが (ToT)/~~~  
(コメディ色が強すぎたらしく・・・。)

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