RIKU・6 この胸で眠れ 

RIKU・6 第19話 偽りの電話

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“こいつ・・・何する気だ?”
玉城は一向に引かないみぞおちの痛みに体を折り曲げたまま固まっていた。
呼吸をするたびに胃のあたりの筋肉が突き刺されるように痛む。
それに今動くと、再びこの男に殴られかねない。リクの体に入り込んだ何者かに。
玉城は浅く呼吸をし、石のように動きをセーブした。

何かがリクの体に憑依している。
何故か霊感が今のところ全く働かない玉城には、その正体の片鱗すらも伺うことはできなかったが、リクがリクで無いことはもう疑いようがなかった。
嘘や演技などでは有り得ない。
しかしそれは一時的なモノに違いないのだと玉城は思った。
“さっき、この男が言ったことは、きっとただの冗談なのだ。そうに違いない。リクが居なくなるはずはない。そんなことは馬鹿げている。
今はただ、この男の出方を見よう。どうするかは、そのあと考えればいい。
大丈夫。きっと元通りになる。いなくなってたまるか!”
確信と言うよりは、祈りに近いそんな思いを抱きながら、玉城は疼く痛みに耐えた。

リクの手が再び、その玉城の体を探り始めたのはその時だった。
ジャケットのポケットの上を触り、そのあとジーンズの前、後ろポケットへ滑る。
後ろポケットで手が止まり、そこからスルリと玉城の携帯を抜き取ると、青年は独り言のように「これ借りるよ。自分の携帯、どっかに捨ててきやがったから。あいつ」と呟いて、どこかへ電話をかけ始めた。

“あいつ”とは、リクの事なのだ。
玉城ははらわたが煮えくりかえるような気持ちで、それを理解した。
やはり、もうそこには“リク”はいないのだ。
込み上げてくる悔しさと悲しさと、『もし取り戻すことが出来なかったら』という焦燥感に、思わず叫び出しそうになった。

「あ・・・、よかった。僕です。リクです。こんな朝早くに電話してごめんなさい」
青年は、電話に出たらしい相手と話し始めた。
その口調は物静かで、まるでリクそのものだ。玉城は怒りを抑えながら耳をすませた。

「先生、僕、どうしたらいいのか分からないんです。今朝、また記憶が無くなってしまって。気がついたら知らないアパートに居たんです。僕の目の前に、知らない人が倒れてて、血だらけで・・・。僕のナイフが刺さってて・・・。
先生、どうしよう。僕、人を殺してしまったかもしれない。もう・・・どうしたらいいのか分からないんです」
その語尾は、不安そうに震えている。

“人を殺した? それは何の冗談だ。
どこまでが作り話なんだ?
そしていったい、誰に救いを求めてるんだ?”
玉城の頭の混乱はますます酷くなった。

「お願いです、先生。今から会いたいんです。助けてください。僕を助けてください!」
玉城は目を閉じたまま息を殺し、じっと青年の一言一句、声色を伺った。
「本当ですか?・・・・・・ええ、そのアパートにもう一度行く勇気が無いんです。夢や勘違いではありえません。・・・一緒に行ってもらえますか? そのアパートの近くに小さな廃工場があるんです。華南ロータリーの近くの、松井モータース。・・・ええ、そこです。そこで落ち合わせてください。・・・今からいいですか? はい、僕もあと40分もすれば、そっちに行けますから」
そこまで淀みなくしゃべり電話を切ると、青年はもう無用とばかりに、その携帯をポンと玉城のそばに転がした。

青年の表情は見ることは出来なかったが、腹立たしいほど冷静で、満足げなのが伝わってくる。
今の会話のほとんどが芝居であり、誰かを陥れる罠であることは疑いようがなかった。
そして、目の前の青年の中に、もうリクが居ないことも。
リクは誰かにあんな風にすがりついて、助けを求めたりしない。
あんな、情けない話し方はしない。
胃の痛みは治まってきたが、こんどは吐き気が込み上げてきた。嘔吐を堪えた苦痛で涙が閉じた目じりに滲む。
苦しさと、そして湧き上がる、それを飲みこむほど激しい悲しみ。
これは喪失の涙なのだろうかと思った瞬間、玉城の全身が震えた。

玉城がすっかり気を失っていると思ったのか、リクは何も言わず、そのまま家を出ていってしまった。
完全にリクの気配が消えるのを待ち、玉城はムクリと体を起こした。
手を伸ばして携帯を掴み、立ち上がったが、足に力が入らない。

「くそ・・・。力いっぱい殴りやがって」
何とかテーブルに手を付き、体を支えた。
“コッソリ後を付けよう。このままで済ませるわけにはいかない。”

頭が混乱して錯乱して、狂いそうだった。
いったい何が起こっているのか。
これがすべてリクの仕掛けた大がかりな冗談だったら、どんなにいいだろう。
そうだったら、さっきと同じだけあいつを殴り、そして抱きしめて笑って許してやろう。
本気でそう思った。

「ぅあ・・・!」
不意に手の中の携帯のバイブが激しく震えだし、玉城は思わず声をあげた。
携帯の表示には長谷川の名があった。

・・・長谷川さん! なんで今、あんたがここに居ないんだよ! なんで!!

玉城は泣き叫びそうになりながら、バイブの震えを手のひらで包み込んだ。




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~ Comment ~

NoTitle 

・・・・・(ToT)


あ、何か言わなくちゃ(ToT)


長谷川さ~~~ん、来て~~~~~!
いやいやいや、玉ちゃん、頑張りなさいよ!
もうたぶんあの心療内科の先生も騙されちゃうから、あんただけなのよっっ頼れるのは!!
あぁもうホントに、なんで長谷川さんがいないんだよ!なんで!

秋沙さんへ 

よかった、今日は喋ってくれた・笑

ほんとに・・・なんで長谷川さんがいないんでしょう。
いや、しかし今回は長谷川さんがいても、難しいのかもしれませんが。
今回ばかりは方法が見つからないかもしれません。

でも、玉ちゃんはなんか、役に立つのかな。
(・・・この後の展開を想い浮かべ、冷や汗する作者)

やっぱり、長谷川さん、来て!i-182

NoTitle 

なんかの目的があってリクを乗っ取ったのかな。
闇雲ではなさそうだけど、謎だ。
しかし小面憎い奴だわ。
玉ちゃんしかいないし・・・
ハルク長谷川ちゃんは異国だし・・・
もうーーーーーーイライラがはじまりそうだ。
頑張れ玉ちゃん。

NoTitle 

『玉城くん、がんばって。あなたなら、きっとリクを救えるわ』
「長谷川さん……」

「いたわりの電話」でした。

お後がよろしいようで……。

ぴゆうさんへ 

ええ、きっと、たぶん、そうなんです。
“目的”が全てといいましょうか。
・・・ああ、また喋りすぎてしまう。

長谷川さんはいないし、もう、玉城が頑張るしかないんです。
玉ちゃん、すごく頑張るんですが・・・。
さあ、どうなってしまうのか。
玉ちゃん、応援してやってください。

ポール・ブリッツさんへ 

次回は長谷川さんとの電話でのやり取りなんですが・・・。


そのタイトルでその内容にしたら、・・・・絶対ウケルwww

いやいや、ポールさん。コメディじゃないですから!(ー"ー )

NoTitle 

うーん、なにをたくらんでいるんだろう、このリクをのっとった奴は。
あの先生、なにか関わりあいが?
リクは体の中で眠っているのだうか…

長谷川さーん、玉ちゃんとリクを助けてあげて!
あー、でもどうやって助けるんだろう… (T_T)

NoTitle 

HELPの電話が 本当?のリクだったら よくぞ助けを求めたね~ヽ(*^ω^*)ノ
と、どんなに嬉しい事でしょう!

でも・・・
リクであって~♪ リクでない~♪ ベンベン♪
それは~♪ 何かと~♪ 尋ねたら~♪ ベンベン~♪ 
誰なの~?。・゚(゚⊃ω⊂゚)゚・。ベンベンベンベン~♪

こちらも お後が宜しいようで~((〇| ̄|_
玉ちゃん、。・゚・(Д゚(○=(゚ω゚=)ナイテンジャネェー!!...byebye☆

西幻響子さんへ 

> うーん、なにをたくらんでいるんだろう、このリクをのっとった奴は。

> あの先生、なにか関わりあいが?

> リクは体の中で眠っているのだうか…

> あー、でもどうやって助けるんだろう…

おお、西幻さん、↑これ、すべて重要なポイントです。
答えてあげられないのが心苦しいですが^^;

ゆっくりとバレていくと思います。
結局、・・・リクを救うのは誰なんでしょう。
(あるいは誰にも救えなかったり・・・)

けいったんさんへ 

今回は弁士ですか、けいったんさん^^;

リク、助けを求めちゃえば良かったですよね。
でも、あんな泣き言言って、すがりつくのは、リクじゃないーー(>_<)

さあ、あのブラックリクの正体は・・・。
けいったんさん、わかる?
みんな、分かっててナイショにしてくれてるのかな。
そのへん、作者的に興味津々です。

みんなーーー。わたったら、わかったって、手を上げてねーーーー(^o^)/
でも、ナイショよ^^

NoTitle 

…………!!!!!

01101101100001!!!
0110001011101010111!!?

0100000011011!!!

(言葉にできない衝撃)

レルバルさんへ 

これこれ、レルバルさん。(まだ慣れないな。)

なにコンピューター言語でしゃべってんですか。
ちゃんと翻訳してくださいよーー。笑

もしかして、バージョンアップし過ぎた??
博士ーーー!

長谷川さんにすがるしか 

それだけリクくんを深く深く、魂までもを知っている玉ちゃんだからこそ、「おまえ誰だ?」って台詞が出てくるんですよね。

映像を見ているかのように、リクくんではないリクくんを見つめる玉ちゃんという、ふたりの姿が目に浮かびます。
リクくんはあの先生のところに行くのかな。
あの先生も食わせもののようにも思えるんですが、どうなんでしょ。
化かし合いとか?

そして、長谷川さん。
長谷川さんが遠くにいるのは読者としてももどかしく、玉ちゃんにしても長谷川さん本人にしても、ものすごーくもどかしいですよね。
電話で玉ちゃんを元気づけてくれると期待しています。

あかねさんへ 

> 映像を見ているかのように、リクくんではないリクくんを見つめる玉ちゃんという、ふたりの姿が目に浮かびます。

リクではないリクを感じてくださってうれしいです。
なんだか、これを書いてる時は私が辛かったです。
リクの体で何してんのよ!って、歯がゆくて。
玉城もきっと、悔しかったんじゃないかなあと。

> リクくんはあの先生のところに行くのかな。
> あの先生も食わせもののようにも思えるんですが、どうなんでしょ。
> 化かし合いとか?

おう~、あかねさん、鋭い。さて、どんな化かし合いになるのか、見てやってください。

> そして、長谷川さん。
> 長谷川さんが遠くにいるのは読者としてももどかしく、玉ちゃんにしても長谷川さん本人にしても、ものすごーくもどかしいですよね。
> 電話で玉ちゃんを元気づけてくれると期待しています。

もどかしいですよね。
長谷川さんがここにいてくれたら・・・。あ。玉ちゃんの出番はもう、なくなりますね^^;
玉ちゃんが、長谷川さんより活躍できるはずないし。

でも長谷川さん、海の向こうからでもやってくれます。(それがわかるのは、最後のほうですが^^)
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