RIKU・6 この胸で眠れ 

RIKU・6 第18話 弔い

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「誰って訊かれても困るな。僕は、僕だよ」

リクはサラリとそう言うと、脱いだ服を丸めてキッチンのダストボックスへ放り込み、さっさとシャワールームへ入って行ってしまった。
その赤黒いシミを付けた衣服一式は、洗う余地もなく、その青年に不浄なものとして処理されたのだ。

当の玉城は、自分の口から出た「お前、誰だ」という言葉に自分で衝撃を受け、リビングの隅でシャワールームへ続くドアを見つめたまま固まった。

そんなこと、あって良いはずはない。けれど、あれはリクじゃない。絶対に違う。

リクは腹の立つ憎まれ口も叩くが、人をあざけるような、あんな目はしない。
けれど、あれがリクでなければ、誰なんだ。
リクはどこへ行ったというんだ。

玉城は蒼白になり、グルグルとリビングを歩き回った。

―――いったい、何なんだ。これは、何なんだ。

ほどなくしてタオルで髪を拭きながら戻ってきたリクは、もうすでに清潔な空色の綿シャツとジーンズに着替えていた。

血の気がもどってほんのり上気した艶やかな頬も、穏やかな口元も、健全な青年のモノであり、自分が投げつけた質問こそ馬鹿げているように思われた。

けれど玉城は一言も喋らず、観察するようにじっとリクを目で追う。

リクはそれに気付いたのか、チラリと玉城に視線を流したが、一瞬侮蔑の色を浮かべただけで、まるで興味無さそうに顔をそむけた。

ゾワリと玉城の背が、苛立ちと不快感に粟立った。
“違う! ……やっぱりリクじゃない!”

玉城の胸の内で起こっている激しい疑念をよそに、リクはタオルを首に掛けると軽い足取りでキッチンへ行き、コップに水を注いで一気に飲んだ後、冷蔵庫のドアを開けて中身を物色し始めた。

「腹減ったな~。あ、何か、いっぱい入ってるね。チーズに生ハムにサラダにワイン」

楽しそうにそう言うとリクは赤ワインを掴みだし、玉城の方へ振って見せた。
玉城がリクの為に買ってきた、インド土産のワインだ。

「ねえ、ワインでお祝いしようよ。お祝いする時って、お酒飲むんでしょ?」
玉城が間髪入れず返した。
「何の祝いだよ」
「僕のハッピー・バースデイ」
「お前、2月生まれだろうが!」

玉城が睨みつけるように言うと、リクは引き出しを引っかき回して見つけたコルクスクリューでワインのコルクを器用に抜きながら、肩をすくめて笑った。

「へえ。……よく知ってるね。仲いいんだ」

リクは更に「ワイングラス無いんだな」とぼやきながら大きめのグラス二つを取り出し、中央のテーブルにトンと置いた。
ボトルを高く掲げ、片方のグラスにドボドボと溢れんばかりに赤ワインを注ぐと、テーブルの横に仁王立ちしている玉城にそれを差し出した。

「じゃあ誕生祝いはやめて、弔いのお酒にする? そうだ、お葬式しようよ」

いつも少しだけ背の高い玉城を見つめてきた、臆病で寂しがり屋の、あの青年の瞳はそこにはない。
そこで玉城を見据えているのは、傲慢で無遠慮な、正体不明の男の目だった。

玉城は込み上げてきた怒りと絶望的な悲しみに任せて、そのグラスを払いのけた。
ワインの入ったグラスは軽々とはじき飛ばされ宙を舞い、壁に当たって砕け散る。

ログハウス調の温かな木目の壁から、飛び散った液体が血液のように垂れ、濃厚な甘い香りと共に床に広がった。

「お前、誰なんだよ!」
「ふん。野蛮人」

青年は短くそう言うと、手に持ったもう一つのグラスにほんの少しワインを注いで飲み干した。
けれど気に入らなかったのか、そのグラスを玉城と同じように乱暴に壁に投げつけ、そしてその砕ける音と共に玉城を睨みつけた。

「僕がリクじゃなかったら、誰なんだよ」
「知らねーよ。だから訊いてんだろ?」
「ふーん」
人形のように冷ややかな目が、再び好戦的に光った。
「バレたんなら仕方ないね。じゃあ、ひとつだけ教えてあげる」

リクは胸が触れ合うほど玉城に近づき、肩を抱き、その耳元に唇を寄せて呟いた。
「あなたのリクは、昨夜、死にました」

語尾で、その唇がニヤリと笑った。

怒りに目眩がした。

その青年を殴りつけようと体を離した玉城は、相手の右手が舞うように宙を切ったのを目の端に捉えた。
けれどその意味を理解する時間は与えられなかった。

次の瞬間にはその拳は激しくみぞおちに食い込み、玉城は火花が飛び散るような痛みに体を折り曲げた。

思いもしなかった青年からの攻撃に、まるで何の防御も出来なかった。
呼吸ができない。
何とか足を踏ん張り体勢を整えたが、肩をグイと掴まれたあと、今度は膝蹴りを同じみぞおちに食らった。
更に激しい痛みに玉城は今度こそ膝から崩れ落ち、無様に床に転がった。
喉まで胃液がせり上がり、痙攣し、苦痛の涙で視界がぼやけた。

息をしろ。
慌てるな。
慌てるな!

半分意識を失いながら石のように体を丸めた玉城の横に、青年は静かにしゃがみ込んだ。
玉城の意識が有るのか無いのか確かめるように、そのヒンヤリした細い指が玉城の頬を撫で、そしてトントンと戯れるように軽く叩く。

玉城が動けないのを確認すると、僅かに赤ワインの香りの吐息をさせて、青年は呟いた。

「これから大事な用事があるんだ。あんたに邪魔されたくないんでね。

さあ、ようやく始まるよ。 物語の最終ステージが」



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~ Comment ~

NoTitle 

さ、最終ステージ!?なんだ、なんだ??
しかし、この乗っ取り野郎、すごい憎たらしいですね!(最初は「色っぺー」と思って喜んでたんですが ^^;)
リク~~、早くもどってきておくれ~ (T_T)
うわ、玉ちゃん、ほんとに苦しそう…
(あぁ…またシンクロしちゃいましたよ、limeさん。今度はうちの銀次と(笑)

NoTitle 

うおお……何か知らんけど、とてもやばいことになっている。
物語の最終ステージとはなんぞや。

続き待ちます。

NoTitle 

・・・・・・・(ToT)

NoTitle 

ちょ・・・リクが、違う人にぃぃ
本当のリク、死んでいないで、さっさと出てきて~
きっと皆が一緒に悩んだり苦しんだりしてくれるよ~きっといい方向に行くよ~~

西幻響子さんへ 

うん、かなり憎たらしい奴ですよね。
玉ちゃん、気を許したら危ないよ~。あいつは今、何するか分かんないから。
リク・・・(T_T)
(リクが居ない状態がけっこう寂しい作者)

え、またシンクロしちゃいました?
そちらの銀ちゃんのほうが、きっとヤバそう^^;

ヒロハルさんへ 

なんか、妙な事になってしまいました。
最終ステージって言っていますが、さて・・・。

まあ、彼にとってはそうなのかもしれません。
じわじわと行きますので、ついてきてくださいね^^

秋沙さんへ 

な・・・泣いてないでなんか言ってちょーーーーーーe-452

kyoroさんへ 

死んでないで・・・って、笑っちゃったじゃないですかw
心配してくれてうれしいですe-267
自分が自分でいることをあきらめちゃった時に、消えてしまったのかもしれません。
戻って来れるのかな・・・リク(T_T)

NoTitle 

玉ちゃん! あんたが頼りよ。
酸素補給して、よく見て、頑張って!

NoTitle 

タイトルにドキドキした。
ニャンと憎たらしいーーーーー
前のコメは撤回だい。
なんだそいつ。
許せん!
脱ぐのが嫌なリクでいいから・・・
少し残念。
うんニャア!そんな不謹慎なことを言ってるバヤイでない。
ヤバイではないか!
玉ちゃん頑張れーーー
v-519鴨ーーーーんハルク長谷川ちゃん。

けいさんへ 

そう、玉ちゃんだけが頼り・・・なんだけど。
ここぞって時に、役に立たないんですよね^^;

それに、守るべきリクは、ここにはもう居ないし(T_T)

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ぴゆうさんへ 

そうとう、嫌なやつですよね(>_<)
そんなこと玉城に言う!!
そうとう鬱屈された精神の塊です。

やっぱり、本当のリクがいいですよね。(脱がなくても)
作者もすでに恋しいです。

もしリクにまた会えたら、「こんど脱げ」て言っておきます( ̄▽ ̄)

玉ちゃん、弱っちくて頼りないけど、がんばって欲しいところです。
応援、引き続きお願いします!

あ、長谷川さん、こっそり呼んだな?www

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鍵コメOさんへ 

はじめまして。
相互リンク、歓迎ですよ。
さっそく貼っておきました^^

NoTitle 

\(^◇^)/かごめ~♪\(^◇^)/かごめ~♪\(^◇^)/うしろの~正面~だぁれ~♪
・・・フフ・・・σ(▼ー▼) オレだよ・・・byブラック・リク

皆が知っているリクの葬式だなんて!
リクは 死んでなんかいないよ~(’_’)ホロリ
ちょっと疲れて 眠ってるだけだよ~(’_’) グスン

元気になったら 復活するんだからねーーー!
熟睡㊥(-ω-*)。:゚o;○゚zZ→ヽ(^____^)ノ┘復活♪...byebye☆

けいったんさんへ 

今回もブラックリク、勢力強し。
みんなの知ってるリクは・・・死んでなんか・・・いなきゃいいですね(;_;)
今、リクの内部で何が起こってるのか。
考えるのも怖いです。

けいったんさんがいっぱい応援してくれたら、リク、戻ってくるかもしれません!
どうかひとつ、宜しく (>_<)

(本当に寝てるだけなら、怒ってもいいです^^;)

NoTitle 

PNが変わったのはちょっとメンテナンスをされたからです。

リク・・・さん?
えっ、どういうことなんでしょうか。
リクさんってもしかして・・・。

のっとられてる・・・?

レルバル(ねみ)さんへ 

おお、名前が変わってる。

AI的バージョンアップをしたんですか!
強くなったんですか!

のっとられてる?

さらっと、核心を訊いてくるねみさんがすてき。

NoTitle 

ただいま~っす、なんとかPCが戻ってきました~。でもメールの再設定とセキュリティソフトの再設定に、二時間もかけてしまった大バカ野郎です。

リク……多重人格だったんですか?

あの昔のトラウマによって?

うむむ……もしそうだとしたら、殴れば元に戻る、とかいう問題じゃないよなあ……。

どっちがほんとうの人格なのかもわからん。どっちも本当の人格ではなくて、最終回ではあの事件以前の、幼児のリクが表に出てくる、という展開だったら、うむむ……悲惨だなあ。エリア88より悲惨だぞ。

こういうときになんとかしてくださいよ霊さん。

ポール・ブリッツさんへ 

おかえりなさい~、ポールさん。
なんか、寂しかったですょ~。(なんかって、なんだ)
PC、直ってよかったです!
これからも機嫌よく働いてくれるといいですね。

リクですが・・・。
なんか、その線が濃いですね。
ここで「やっぱり霊の憑依でした」といのも、ちょっとあれなんで。
ただの思いつきではなく、これにも事情がありまして。
いったいなんで別人格が、強引にでてきたのか。
なんとな~く、このあと分かって来ると思います。

ばきっと、全部解決して終わるかは分かりませんが、見てやってください。

そんな悲惨な終わり方にはしたくないんですが・・・作者の気分次第です^^;

NoTitle 

limeさん。
こんばんは♪

えぇー・・・
リクとうとうのっとられてしまったんですか?
それとも多重人格?
なぞはまだ解けそうにありませんね。

さやいちさんへ 

続きを読んでくださって、ありがとうございます。

ちょっと、リクも玉城も、大変なことになってきました。
リクの中では、何が起こってるんでしょうね。
このあとじわじわと、全ての謎が解けてくるはずです。

また、お待ちしております!
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