RIKU・6 この胸で眠れ 

RIKU・6 第16話 リクを捜して

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「ぅ……あたま痛て……」

頭痛と喉の渇きが、玉城を浅い眠りから引きはがした。
転がったままカーペットの上の散らかり様を見て、玉城は昨夜、相当飲み過ぎたことを悟った。

昨日の取材のあと大東和出版で内容の検討をし、まだ明るいうちに社を出たのだが、駅でバッタリ大学の時に仲の良かった友人と再会したのだ。
居酒屋をハシゴし、学生時代の思い出話を肴に深夜まで飲み明かし、そのあと会場を玉城のアパートに移して飲み直した。
ようやく友人が腰をあげたのは、2時を回った頃だった。

泊まって行けよと言ってみたが、新婚で外泊はまずいんでね、と、のろけながら笑い、タクシーで帰って行った。
亭主関白ぶってはいたが、可愛い新妻にベタぼれなのだろうと、玉城は少し妬いてみた。

そのあと床にひっくり返って少しまどろんだが、酔っているはずなのに熟睡できず、頭も体も鉛のように重かった。

窓の外を見ると、まだ薄紫の夜明け前だ。

鈍痛を堪えゆっくり上半身を起こす。
ローテーブルの上も、ビールの空き缶やスナック菓子の袋であふれかえっていた。
ウンザリしながら、床に転がっていたバッテリー切れの携帯を拾い上げ、充電アダプタに繋ぐ。

こんな時、一緒に飲んだのが女の子だったら、この空しい感じは無いんだろうか。
そんなことを思いながら、玉城は携帯の電源を入れた。


携帯はひとつブルリと震え、履歴を画面に表示していく。その文字を見て玉城はギョッとした。

長谷川から、尋常でない数の着信が入っていたのだ。

「ウぁ……こええぇ……」

最初の着信は昨夜午後8時。バッテリーが切れてすぐだ。一番最後の着信は、ほんの1時間前だった。
いったい何でこんな時間に……。しかもこの回数は何事だろう。

とにかくこのまま着信を放置したらえらいことになる。
一瞬にして玉城の脳内のモヤが吹き飛んだ。

玉城は大きく深呼吸して、長谷川に掛け直そうと携帯を握り直したが、その気配を察知したかのように、玉城の手の中で携帯が雄叫びを上げた。

驚いて落としそうになった携帯をぐっと掴みなおした玉城は、慌てて電話に出る。

「はい」
『電源切ってんじゃないよ! あんたまで何やってんのさ!』
いきなり怒鳴りつけられた。

「な、何やってるって。……いったい何なんですか」
『いつもちゃんと連絡取れるようにしときなさいよ!』
「だから何なんですか。俺だって酒飲んで、朝までぐっすり寝ることだってありますよ。24時間営業じゃないんですから」
『リクが……』
長谷川の声が急に詰まって途切れた。

「え? リクがどうかしたんですか?」
『今すぐリクの家に行って来て。ちゃんと帰ってるか、見てきて。お願いだから』
いつもとはまるで違う懇願するような長谷川の声に、玉城の体も一瞬にして強張った。

「何かあったんですか?」
『あとで話す。何かあの子おかしいんだ。とにかく急いで!』
もう既に立ち上がり、ジャンパーを掴んでいた玉城は、財布と鍵とその携帯だけ持って外へ飛び出した。


まだ空は明け切っておらず、始発の電車まで少し待たなければならなかった。
それでもリクの家ならばタクシーを飛ばすよりも、始発のJRで終点まで行き、そこからタクシーの方が早い。

その間に再び掛かってきた長谷川の電話で玉城は、昨夜のリクとのやり取りの一部始終を聞いた。

「あの馬鹿タレが!」

リクの事が心配でもあったが、そんなメッセージを残して電話を切るという身勝手な行為が腹立たしくて堪らなかった。
相手が、飛んで来ることの出来ない距離にいる長谷川なら、尚更だ。

「ったく! 自分を心配する人間の気持ちなんて少しも分かってないんですよ、あいつは。無神経で自己中でバカなんです。山から下りてきたばかりの猿並みです。大丈夫ですよ長谷川さん。あいつを見つけてぶん殴って来ますから! 長谷川さんの分まで」

息巻く玉城に、長谷川はやっと電話の向こうで少し笑った。

『乱暴しないでよ、玉城。リクはきっと今、それどころじゃないんだ。たった一人で戦ってるんだと思う。……たぶん』
「それが水くさいって言うんです。ああ、もう、ハラ立つ! もし家に居なかったら、街中を探し回って絶対見つけだして、ぶん殴ってやる」

始発の電車が滑り込んできた。
またあとで電話かけるから、と言い残して長谷川は電話を切った。

玉城は無駄だと思いつつも、リクの携帯に電話を掛けてみたが、やはり繋がらない。
怒りが更に増した。

いや、ちがう。腹を立てていたかった。
不安や心配で息苦しくなるのは、まっぴらだった。
ドクドクと早まる自分の鼓動を、腹を立てることで沈めたかった。


《もう、終わりにしていい?》

そんな言葉、いったいどういう状況になったら吐けるのか。


―――やはりあの時癇癪など起こさずに、無理やりにでも張り付いておけばよかった。

乗り込んだ始発電車の扉際に立った玉城は、込み上げる苦い想いをなだめる様に、大きく息を吐き出した。


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~ Comment ~

NoTitle 

いいか玉城くん。

昔豪州のゲイリー・キングは、言葉も通じないヴィサリオン・ツァラプキンの、「ラスタスだよ」というひとことの電話だけで行方をくらました彼のもとへまっすぐだな……。

普通の人間には無理か(笑)

ポール・ブリッツさんへ 

うううう、ありましたね、名場面。
あれは感動的だったなあ~~(´;ω;`) e-267

しかし・・・普通の人間には無理です。
普通以下の玉城には・・・。(T_T)

リクが家にいなかったら、もうお手上げです。

NoTitle 

冒頭の机の散らかり具合は、うちの『倉本武彦』の部屋のテーブルとよく似てますね。笑。
カップ麺も入れれば良かった。

ヒロハルさんへ 

あ、そう言われれば、そうですね。

倉本武彦くんも、玉城みたいに、飲むとだらしない性格なんでしょうか。
もっと、あっちはたまに片付けてくれる女性が出てきて、ちょっとラッキーかな?

カップめんはのゴミは、必需品ですw

NoTitle 

イライライライライライライライライラ。
長谷川ちゃんの気分。
イライライライライライライライライライラ。
玉城の気分。
イライライライライライライライライライライライライライラ。
私の気分。
v-412

ぴゆうさんへ 

きゃーー。
イライラのオンパレード!

申し訳ない。こんなにイライラさせちゃって。
リク、殴ってもいいです(>_<)

まだ、間に合えば・・・いえ、なんでもありません。

次回、果たしてぴゆうさんのイライラは解消されるのか。
いや、さらにイライラの大行列になるのか。
もうちょい、待っててくださいーーi-201

NoTitle 

リクの馬鹿タレ!

・・・玉ちゃん、苦労がたえませんな(笑)

西幻響子さんへ 

そう、ほんとうにリクったら、バカたれ。
いつもと反対になっちゃいました。
いつもは玉ちゃんがバカたれで・・・。

・・・って、西幻さん、もうここまで読んでくださったんですね!!
いやあ、申し訳ない。ありがとう!

リクを探して三千里~♪ 

遠く離れた長谷川には 頼みの綱は、玉ちゃんしかいなにの~
綱って・・・ すぐ 捩れて千切れそうだけどヾ( ̄▼ ̄||)ァハハ・・・

そうだ!そうだよ!玉ちゃん!
町中を探し回らなくちゃ!
見つけたら、嫌がってもゴネても とにかく 絶対に離しちゃダメェー
(*`ー´)o――――∞C<―_-)捕獲...byebye☆


けいったんさんへ 

ほんと、クモの糸並に頼りない綱だけど・笑

でも、玉ちゃんしかいないんですもんね。
ここはひとつ、頑張ってもらいましょう!!

ええ、ええ、玉城はがんばりますよ~~。

でもね、どんなに力づくで捕まえようとしても、・・・無理な場合があって(T_T)

NoTitle 

あぁもう、今回は特に玉ちゃんが○げちゃんにだぶってしまって余計にイライラ・・(笑)

玉ちゃん!あんたさんざんリゾートしてきたんだから、こんどこそ挽回しないともうlimeさんに登場させてもらえなくなるからねっっ!(`へ´)

秋沙さんへ 

ははは。
〇げちゃんとダブっちゃいましたか。
本質的に、似てきちゃったかな (^.^;)

まったくもう、自分の事は棚にあげて、よくリクに腹を立てる奴です。
こんなズレが、玉城らしいんだけど。
そう。ここで頑張らなけりゃ、レギュラーから外すよ!
リクと長谷川のラブストーリーになっちゃうよ!
(二人の赤ちゃんは可愛いだろうな、とか言う読者さんもいるぞ! 玉城!)

しかし、次回は玉城も長谷川も、予想できなかった展開へ・・・。

NoTitle 

玉ちゃんっ!

お願いっ玉ちゃんしかいないのだ!!
リクを早く見つけて…!!
ああ、ハラハラする…!!

有村司さんへ 

そう、玉ちゃんしかいない!
長谷川さんも、辛いです^^;(玉ちゃんかよ・・・)

さあ、いよいよこのあと、妙な展開に入って行きます。

ついに、奴が・・・。

有村さんの言った、もうひとつのカラーも、もう少ししたらでてくるかな?
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