RIKU・6 この胸で眠れ 

RIKU・6 第8話 苛立ち

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「何してんのじゃねーよ!」

玉城はリクが鍵を開ける間我慢していた鬱憤を、リビングに上がると同時に爆発させた。
中央のテーブルに食料品の入ったスーパーの袋をガサッと置き、すぐさまリクを睨みつけた。

「ケイタイ繋がらないし、直接行ってやろうと思ったら居ないし。俺、40分玄関口で立ちんぼだ」
「今日は鍵、掛かってたろ?」
「なお悪い!」
「言うことが前と違う」
リクは洗面所で洗った手を拭きながら、呆れたように言う。

玉城はもうひと声嫌味を言おうかと思ったが諦め、ムスッとした表情のまま、スーパーの袋からガサゴソと惣菜のパックや飲み物を取りだしはじめた。

リクは近づいてきて不思議そうにそれを眺める。

「何? それ」
「外食に誘っても来ないだろ? 長谷川さんが、お前メシ食ってないんじゃないかって心配してたから、いろいろ買ってきたんだ」
テーブルにはフライドチキンやサンドイッチやおにぎりやサラダ、玉城が手当たり次第買ってきた食品が並んだ。

「俺、料理とか出来ないから出来合いばっかりだけどさ。何か食えそうなもん、あるだろ?」
「僕は寝たきりの病人じゃないよ。買い物くらい自分でできる」
リクは少しばかり困惑した顔をした。

「手ぶらで帰って来てるじゃないか」
「病院に行っただけだから」
「じゃあ、腹減ってるだろ。食え」

リクは玉城をじっと見つめ、小さく溜息をついた。
「悪いけど、今はお腹空いてない」

「溜息をつくな。ムカツクなぁ」

玉城はぐっとリクに顔を近づけた。
リクの少し色の薄い大きな瞳が反発するように玉城を見返してくる。

そう言う目をされると大概カチンとくる玉城だったが、ここはぐっと踏みとどまった。
この男が親切心を素直に受け入れないのはいつもの事だが、今回ばかりは辛抱強く向き合いたかった。
長谷川との約束もある。


「体調……病院行ったら、少しはマシなのか?」

玉城が声のトーンを落とすと、リクも僅かに表情を和らげた。
押せば反発するが、引けば少し近寄って来るこの野生の鳥の扱い方を、玉城はようやく思い出した。

「うん、点滴してもらうと少しは楽になる。特になにも治療はしてないんだけど」
「でも、そんなんじゃダメだろ。食わなきゃ死ぬぞ?」
「うん、そうだね」
リクはようやく玉城を見て笑った。

―――なにが、“そうだね”、なんだよ!
玉城は何とも言えず歯痒いような憤りを感じた。

「なあリク。……何度も訊くようだけどさ、それってやっぱり、アレのせいだろ?」
「アレ?」
「その、あれだよ。強くなっちまった霊感。俺のせいで、強めちゃったんだろ。封印解いて。だから、今までよりもひどいヤツがお前の中に入り込んだとか。……そんなんじゃないのか?」
「言ったろ? そんなこと僕にも分からない。だけど玉ちゃんが気に病むことは少しも無いって」

リクはそう言うと、壁際の二人掛けソファに座り込んだ。
外出で疲れたのだろうか。顔色が蒼白だ。
玉城はソファ横の屑籠に何となく目を走らせたが、もう包帯は片付けられていた。

「夜、どんな感じなんだ? 勝手に体が動き出すとかなのか?」
玉城は恐る恐る訊いてみた。

「始めの頃は気付かなかったんだ。朝、目が覚めた時、体が鉛のように重くって。そのうち分かったんだ。自分が夜中、勝手に外に出て行ってることが」

「え……外にか?」
「らしいね。どこに行ったとかは分からないけど。もしかしたら遠出してるのかも」
「マジでか?」
玉城は身震いした。

「怖くなって左手をベッドにくくりつけた。でも、器用に解いたり引きちぎったり。運がいいときは痛みで目が覚めるんだけど。でも3日前は、朝起きたら僕はリビングに転がってて、左手が血だらけだった。
痛みも感じない時があるんだ。絶対に外せないように鎖で縛ろうと思ったけど、今度こそ本当に手首を切り落とされそうな気がして、出来なかった」

淡々としゃべるリクの言葉にうすら寒くなり、玉城は息を飲み込んだ。
胃の辺りがズンと重く、不快になる。

「何でなのか、分からないのか?」
「うん」
「そんなこと、あり得ないだろ、普通」
「そうだろうね。普通あり得ない。だから言ったろ。僕は普通じゃない。おかしいんだ」
リクは無表情に言った。

「嘘だ。わかってんだろ?リクには。自分の手首斬りつけてまでして動き出そうとするのが、彼奴らの仕業じゃなくて、何なんだよ!」

その語気の強さに、リクは黙って玉城を見上げた。
玉城は木製の椅子に座り、畳みかけるようにリクに言った。

「俺のせいだったら何とかしてやりたいんだ。俺は何も知らずにこの2カ月ここを離れてたろ? 何か悔しいんだ。お前の力になるって言っておきながら何にもしてやれなかった。リクが眠らずに何かと戦ってるんなら、俺が夜ずっと見張ってやるよ。
俺のアパートに来てもいいし、それが嫌なら、俺がここに泊ってやってもいい。ライターの仕事は夜だって、どこでだって出来るんだ。
俺が見張っててやったら少しはリクも安心して眠れるだろうし、食欲だって……」

「玉ちゃん!」

リクの無遠慮な、苛立ったような声が玉城を遮った。

「何度も言ってるだろ。これは僕の問題だからって。もう、いい加減にしてくれないかな。うんざりなんだ!」



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~ Comment ~

NoTitle 

サポートとお節介は違うと思うであります。

これはリクの問題であり、リクが解決すべきであろうと思われます。

玉城くんはもっと自分の傍観者としての立場を考えろ、と思うであります。

ポール・ブリッツさんへ 

まったくねえ。
玉城はどうも、黙って見守るってことができないみたいです。

リクには、玉城みたいな熱血バカが、時には必要なのかもしれないけど、
今回ばかりは、逆にそれがリクを悩ませます。

今回、リク視点で描くか、玉城視点にするか迷ったんですが。
リクの心の内は、次回に回しました。

事件の進展は、次々回くらいに・・・・。(今回もスロースターターです)

NoTitle 

お守りのときもそうでしたが、
玉ちゃんは『数撃ちゃ当たる作戦』が好きなんですかね。笑。

摑みどころのないリクのこと。わからなくもないですね。

彼は好きな食べ物ってあるんですかね? 作者さん

ヒロハルさんへ 

ああ、本当にそうですね。
玉ちゃんはかなり大雑把な性格です^^;
買いもので躊躇するくらいなら、全部買う・・・的な。
彼女ができないわけです。

食事のシーンはあまり出てこないですが、リクは全く食べ物に執着なく、
あれば食べるし、無ければ食べないし、嫌いなものが特に無い代わりに、特に好きなものもない。
一日3食とか、どこの世界?・・・みたいに、気がついたら、一日何も食べてなかったりします。

NoTitle 

夢遊病に似てますね。
でも 寝ているリクを動かしているのは、物体X(=霊?)ですが。。。

それとも 多重人格!?
内に潜む もう一人のリクが、夜な夜なお出かけしてるのかなぁ~(。-`ω´-)ンー

例え 玉ちゃんが、二十四時間ずっと傍に居たとしても どうにもならないってこと?
むしろ 意識のないリクが 何かをする危険があるかも・・・ってこと?

でもせめて 何所に行ってるのか、何所をうろついてるのかは、玉ちゃんに見張ってもらって知っておいた方がいいよ~リク!
尾行開始![壁]ω´・)チラッ。。。。。。。゙(ノ・`ω・)ノスタタタッ。。。。。。チラッ(・`ω[壁]...byebye☆

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けいったんさんへ 

夢遊病の、荒っぽいタイプでしょうか(笑
でも、リクの中に入り込んでるのは・・・霊?それとも別人格?

いっぱいあがりましたが、さて、本当のところ、どうなのでしょう。
・・・最期まで分からなかったら、怒られるかなi-201i-201

そうですよね。玉ちゃんに尾行してもらうっていう手もありますね。
けど、やっぱりそれでも、リクの中に入り込んだ奴を追いだすことは・・・難しいのかなあ。
(そ、その尾行絵文字・・・・かわいすぎる!(≧∇≦))

次回はチラリとリクの本音がのぞきます。
そして、その次・・・やっと少し、動き始めます^^




鍵コメさんへ 

製作、マイペースでがんばってくださいね^^

もうここは、ぽちぽちだけで、大感謝ですよ。
気にしないで~。

NoTitle 

荒っぽいやり方も好きなんですねェ。
素敵です。

なんだかんだで力押しも大事だと思いますよ。
ひらひらと逃げていても変わらないですからねェ。

ねみさんへ 

荒っぽい玉城もいいですか?
まあ、彼の場合は、ちょっと無駄なところに力を使いすぎですが^^;

このあと、ふたりとも結構荒っぽくなってきます。
もう、玉城もリクも、遠慮しない・・・って感じですかね^^

NoTitle 

勝手に出歩いているんですね。。
うーむ…
霊体だけだったら、ケガしないで済むんですが、体ごとはちょっと危ない。
一体何をしているのやら…

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綾瀬さんへ 

まったくねえ。
リクの体で、何をしてるんだか・・。

けっこう楽しんで帰って来てたりして^^;

いやいや、事態はたぶん、楽しく無い方向へ行くと思います。

NoTitle 

あ~~~~あ。言っちゃった、「うんざりだ」( ̄□ ̄;)!!
せっかく玉ちゃんとRIKUのちょっと漫才っぽいやりとりを楽しんでいたのに・・・。
どうする?玉ちゃん。
怒る?意地になる?

それにしても、なんだか空恐ろしい事になっちゃってますね。
全然正体が見えない所がまたなんともコワイ。
どうしよう、RIKUのおなかを食い破ってエイリアンが・・・(;_; )( ;_;)ヤンヤン

秋沙さんへ 

言いました(>_<)
もう、二人とも(悪い意味で)遠慮のない言い合いをはじめます。
さあ、玉城どうする・・・。

ああ、玉城。またもやバッシングを受けるよね、きっとあんた^^;

まだまだリクに巣食うものの正体は見えません。
いろいろ、予測はできますが・・・。

そう、そのうちリクのお腹から気味の悪いエイリアンが・・・・・・・って、これ!

もうエイリアントークは終わったのにーーーーi-201

はい~(^^) 

実は、分かります、なんとなく。
初めから違和感のこの言葉に。

「そんなことを思いながら、同時に、自分の処置にこんなに時間をとって大丈夫なのかと心配になった。
待合室には順番を待つ患者がまだ多く居たはずだ。」

「この医師は、心に不安を持つ患者全員にこんなボランティアをしているのだろうか。」

伏線ですよね、これ。
もしかして、何か『暗示』的な、催眠術的なことも絡んでるのかな? というのは考え過ぎか。

心配する友人と、友人を巻き込みたくない頑なな病人。
どっちの気持ちも分かって、fateはどっちの立場であっても、同じことをするだろうな、と思うので、まぁ、成るようになるさ、と作者さまを信じて、今後も進みます!

fateさんへ 

fateさんが、寛大な人でよかった。
思わず、ネタばらしをしちゃうとこでした。

そう、そのあたりで、少しばかり澱みを作ってみました。
「なにかある」・・くらいに、思っていただければうれしいです^^

ええ、もう、忘れてくださっても構わないくらいです・爆

今のとこ、問題は、玉城とリクの心のすれ違い。
fateさんが、二人の気持ちを分かってくださって、うれしい。
このあと、どんどん冷え込んで行きますから、温かくして読んでくださいね。

そして、どうか、作者を信じてください。
この後半、読者に「ひどい!」と・・・内心きっと思われたと確信してる作者です。
でも、信じてください~~ (´Д`。)

NoTitle 

絶対あのお節介医者が裏で糸引いてるー!!

と私の中の「毛利小五郎」が申しております(笑)

でも、こんな喧嘩ぐらいじゃ二人の不思議な友情は壊れないと私信じてます。

有村司さんへ 

有村さんの中の毛利小五郎が!! (∥ ̄■ ̄∥)
いや・・・しかし、毛利小五郎の「あいつが犯人だ!」という言葉は、当てにならないようなwww
でも、あの医師、なにかありそうですよね。

>でも、こんな喧嘩ぐらいじゃ二人の不思議な友情は壊れないと私信じてます。

私もそう願いますが・・・。しかし、「こんな喧嘩」じゃ、すまなくなったり・・・・。汗

リクも、玉城も、応援してやってください~。

みんながみんな 

玉ちゃんも長谷川さんもお医者さんも、リクくんと関わると放っておけなくて、彼が自分で解決するべきことだとわかっていても手を貸してあげたくなるのだなぁ、と思ってました。

あ、でも、たぶらかされた医者は……あれあれ?
むにゃむにゃと言葉を濁しておきます。

長谷川さんがリクを傷跡ごと抱きしめたというシーン、象徴的でよかったです。
リクくんと長谷川さんが一緒に寝るというと、「添い寝」となるのも面白いですね。ほんと、そんな感じですものね。

あかねさんへ 

なんか、放っておけないみたいですね^^
あんなに、無愛想な子なのに、なぜかみんな気にかけてくれる。
(いいな~、リク)
みんなやさしいのに、なぜか幸せにならない男(笑
もう、このあともひどいですから(作者がね)

え?あかねさん、医者が、むにゃむにゃ?
気になるなあ~~。
でも、このまま観察してやってください。(リクに妙なことしないように^^)

長谷川のあのシーン、気に入ってもらえてうれしいです。
私はあまり、女性らしい女性を描くのは苦手なんですが、長谷川は気に入ってしまって。
長谷川にリクをプレゼントしてあげたい気持ち半分。
もっとじらしたい気持ち半分^^

そうなんですよね。誰かが言ってたけど、二人のむにゃむにゃは、想像できないとw
やっぱり、どう考えても添い寝ですよね。
(添い寝させてみたい・・・)
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