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(雑記)高村薫『レディ・ジョーカー』・・・またしても

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やっと『レディ・ジョーカー』(上)(中)(下)巻、読み終わりました。
読み終えて、しばし呆然。
正直、ラスト20ページを残すところまで、この3巻にわたる壮大かつ緻密な物語が一体どこで終結するのか、予想もつきませんでした。

それがです。
最後の最後で思いもよらない衝撃を喰らい、「ああ!!」と、思わず本を閉じました。
「やられた!」という興奮と、「やっぱり高村先生は、裏切らない」という感慨とで、溜め息。






【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
(前半)
人質は350万キロリットルのビールだ―業界のガリバー・日之出麦酒を狙った未曾有の企業テロは、なぜ起こったか。男たちを呑み込む闇社会の凄絶な営みと暴力を描いて、いま、人間存在の深淵を覗く、前人未到の物語が始まる。
(後半)
犯罪の愉楽に発狂する男たちの臓腑。犯罪が犯罪を呼び、増殖し続けるレディ・ジョーカー事件。犯人たちの狂奔とそれを覆う地下金融の腐臭はいつ止むのか。そして合田刑事を待つ驚愕の運命…高村文学の新たな頂点を記す叙事詩。



『レディ・ジョーカー』は、合田雄一郎シリーズの第3段。
『マークスの山』、『照柿』の続編です。
上記の2作品も、とても好きでしたが、やはりそれらは合田刑事シリーズの序章であったように、今は感じます。
警察小説、社会問題ミステリーと捉えられる事の多い作品ですが、私はこれは、人間の圧倒的孤独を描いた物語ではないかな・・と感じました。

うっ屈した心を持て余し、曾有の企業テロを企ててしまった、ごく平凡な5人の男。
脅迫される大企業の重役達の中で繰り広げられる様々なもくろみ。
それらをあざ笑うように利用し、根を張り続ける、闇社会の犯罪組織。
実体の掴めない「レディ・ジョーカー」を追う、警察組織の苦渋。
事件を追う、記者たちの人間模様。

事件に翻弄される大組織、大企業を緻密に描きながらも、けれど、次第に浮かび上がってくるのは、個々の心の苦悩です。

大企業の社長、城山の孤独。
警察組織の中の「自分」というモノへの絶望を抱く、合田雄一郎の孤独。
レディ・ジョーカー、一人一人の孤独。


さて・・・・。
本書を読みながら、やはり一番気になったのは合田雄一郎という刑事。
『照柿』で、本庁の第一線を退く事になった彼。
この、美しくもナイーブな男の心の動きが、読んでいる間常に気にかかっていました。

なぜ、そこまで自分の存在に思い悩むのか。
なぜ、犯罪に手を染めた刑事(半田)に、そこまで執着するのか。
元義兄、加納祐介への本当の想いは、どうなんだ!!
いったい、下巻後半の、あの〈行動〉の、真意はなんなんだ・・・・。

もぞもぞ、ドキドキ、ぞわぞわさせてくれるんですよ。合田は。

無機質で硬質で淡々と進んでゆく本シリーズのなかで、合田の周りだけ、異様とも思える隠微で淫靡な色気が漂うんです。
なんなんだ! あんたは! 早く心の内を見せなさいよ!
・・・と、叫びたくなるほど。

物語が、あと20ページで終わろうとする頃、突然それは落雷のように落ちてきました。
もう、心臓止まるかと思いました!
ああああ! そうか! そうなの? そのために? 

キュン死しそうでした。(´A`。)

合田雄一郎に、そして、高村先生にやられてしまいました。またもや。
この衝撃、この激情。そして、それと同時に浮かび上がってくる、この膨大な緻密な物語の全体像。
後半、20ページで突如吹き荒れた嵐に、まだ体がゆらゆらし、胸の熱が取れません。
どうしてくれるんですか、先生。

そう言えば、いつだって高村作品はそうでした。
最後の最後で、熱い爆弾を落としてゆく。
硬質で淡々とした語り口で進んでゆく物語の最後で、覚めない熱をくれる。
やはり、好きだ・・・高村先生。

とはいえ、これでたぶん、いったん高村作品は卒業です。
私の好きな、初期のミステリー系の作品はすべて読み終えました。
この一年あまり、高村作品ばかりに執着してきたので、そろそろ他の作品も読まなければ。
乳離れ・・・できるかしら。


ではここで、私の、高村薫作品ベスト5、発表^^

1位 『神の火』
2位 『李歐』
3位 『わが手に拳銃を』
4位 『レディ・ジョーカー』
5位 『黄金を抱いて翔べ』

『李歐』と『わが手に拳銃を』は、同着くらいですね。どちらも最高。
(『李歐』は『わが手に拳銃を』の、改訂版小説ですが、内容はほぼ、別物です。別の物語として読んだ方が面白いです)

高村先生、素敵な〈熱〉を、どうも有難うございました。
あなたは、最高の作家です。



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~ Comment ~

Re: limeさん 

さあ「晴子情歌」だ!

結局十ページで討ち死にしましたが、limeさんにはあの情念の世界を突き進める力がある! と思います。

わたしの無念を晴らしていただければ(虫のいい男であった(笑))

ポール・ブリッツさんへ 

結局、討ち死にでしたか、ポールさんww

なんか、怖いもの見たさで読んでみたくなりました。
ポールさんが断念するとは・・・。

でも、登山のように、登り切った先に、すごい景色が見えてくるかもしれません。

・・・猛吹雪で、見えなかったらどうしよう・汗

NoTitle 

これほど熱く語らせるとは・・・
よほどなのね。
一度も読んでいないの、もったいなかった。
これから少しはのんびりするので挑戦してみるでござる。

神の火か・・・
ふむふむ。

NoTitle 

そうか! そうなの? そのために? 
limeさんの興奮が伝わってきました(≧▽≦)
僕も読書で何度かそのような経験があります。

いつも思う事なのですが、そういった衝撃的展開はいつの時点で
思いつく事なのでしょう?
最初からソレを書きたくて物語を後付けするのか、それとも書いている
段階で思いつくものなのか。
後付けですとムリヤリっぽくなってしまうし、書いてるうちにですとツジツマ
が合わなくなってしまいますし…。
いやいや、素人と巨匠を一緒にしてはいけませんね。

ぴゆうさんへ 

いやあ~、お恥ずかしい。
私のレビューは、いつもこんな感じなんです^^

もう、まるでミーハーのようなはしゃぎぶり。
でも、作品自体は、とても文学的な、硬質な物語なんです。
でも・・・・登場人物に恋をしてしまうんですね、私は。
だから、もう、桃色吐息です・・ふ。

ハマらない人はハマらないんですが、ハマる人はトリコになってしまう、高村作品。
硬質な文章がお好きなら、是非一度、読んでみてください^^

蛇井さんへ 

お・・・おはずかしい。
またもや。興奮レビューを書いてしまいました (^^ゞ

でも、でも、蛇井さんならわかりますよね。この興奮。
高村先生の、あのギャップにヤラレルんです。
社会派な堅物な緻密なストーリーと描写の中に、「うおおお」と思える、とんでもないシチュエーションが隠れていて。
その色っぽさったら・・・・。
・・・・ちょっと「腐」でしょうか(≧∇≦)

このレディ・ジョーカーの最後の展開は、全体のお話とはそれほどリンクしないんですが、もう、あれかなければこのお話は集結しませんでした。
もう・・・想像してなかっただけに、ズギュンです。

ラストの衝撃的展開は、中編小説の心臓ですよね。
私の物語は大抵、そこを目指して展開します。
そこを思いついた時点で、物語の7割は完成しています。

でも、・・高村先生の場合は、ぜったいそんな書き方ではないのは確かです!
もう、計り知れない頭脳です。

でも・・・・もしかして、私と同じ書き方だったら・・・・ちょっと小躍りしたい気分ですe-267

NoTitle 

読み終えましたね( ̄∀ ̄*)

limeさんの感動ぶりは、予想通りでした。
ぜーーーったい、limeさんのツボにはまる、
そして、合田雄一郎にやられる、って思ってました。

この「レディ・ジョーカー」を読んで、何より合田に
思った感情は。

   抱きたい

もう、これに尽きる!(爆)

もう、ぐだぐだとアレやコレやと考えず、
やたらと自分を追い込んだりせず、
黙って抱かれろ!って感じ?

いやはや。直截的ですみません。
でもなんて言うか、有無をも言わせずに……
って感情、湧いて来ませんでした?
もうすっかり、こっちも付き合わされてしまって、
その代償を払ってくれって感じです(笑)

あと、城山社長、結構好きでした。
すごく魅力を感じましたね。
だから、気の毒で……。

それぞれ、違う立場の人たちの、外側から
見たら分からない苦悩がどっぷりで、
社会と言う枠組みの中で翻弄されている様が、
せつなく、またこちらもやり場のない感情が
湧いて来たりして、胸をえぐられるような思いで
読んでましたねぇ。

合田刑事は、リア王の後半にちょこっと出て来るようなので、
「晴子情歌」から読んでみようかな、と思ってはいますが、
多分、ずーっと先になるかと思います(^_^;)

narinariさんへ 

名前が違うけど、narinariさんですよね!!

はい!・・・・読み終えました(≧∇≦)
もう、もう、思うつぼです。
高村先生の策略に、見事にハマってしまいました。

そして、narinariさんのおっしゃる通り!!
何でしょうね、あの合田の、どうしようもない、囲ってしまいたくなる弱さ。
何と言うか・・・。
まったくもって・・・・。抱きたい!!
いえ、抱かれてほしい。

なんか、あれから脳内妄想劇場なんですけど (*/∇\*)
加納~~~。もう、とっ捕まえて、離すなよ!ってな感じです。

後から後から思い出すたびにキュンとします。
“そうか、だから、持物を全部処分してたんだ・・・”とか。
半田とのやり取りとか・・・。電話ボックスの、あのシーンとか(>_<)

最後は合田に持って行かれちゃいましたが(笑)実にすごいドラマでした!
もう、一人ひとり、ちゃんと生きていて。
城山社長も大好きでした。
なんか・・・幸せにしてあげたかったです。ほんと。
高村先生の描く初老の男性って、いつもめちゃくちゃ素敵なんです!
でも、そのあっけない消し方も、高村先生らしい・・・というべきか。

合田刑事は、ずいぶんおじさんになって、「太陽を曳く馬」に出てくるそうです。
おじさんになってしまうのが悲しいんですが・・・(;_;)
もし、読むことがあったら、加納とはどうなったか・・・教えてくださいね♪

NoTitle 

あははっ、本当だ。名前がっ……(^_^;)

そうです。私です。narinariです。
さすがlimeさん。よくお分かりになりました。

合田刑事は、永遠に悩ましい青年であって欲しいけど、
やっぱり彼も年はとるのか……(-"-;)

加納さんもねぇ。
前から怪しいとは思ってたんだ。
この二人の関係は、どう見たって普通じゃないもの。
男同士で合鍵って?とずっと思ってたし。

やっぱり高村先生は、お好きなんですね、男同士が。
私も好きですが。。。。

narinariさんへ 

いや~~。
加納がね。・・まさかね。

合田は何となく、そんな気がしてたんですよ。
でも、マークスも照柿も、別れた奥さんの事をウジウジ悩んでたから、
そんなわだかまりで、加納とは微妙なのかと・・・・。

ましてや、あの加納が・・・。

う~~~ん。この後どうなるのか知りたい(爆
どんなクリスマスを過ごすんでしょう。
なんか、お金積んでもいいから、高村先生に教えてもらいたい。

高村先生の作品には、必ず、友情を超えた男同士の感情が根底に漂ってますね。
「李歐」や「わが手に拳銃を」は、もう、恋物語と言ってもいいほど。
なんか・・・あの硬質で緻密な物語の中にポンと、そんな要素が入り込むと、想いもよらないミラクルが起こるというか・・・。
そこを揶揄すること自体、ナンセンスで。
だから、すんなり、どんな読者にも文人にも受け入れられるんでしょうね。
これはね、すごいことだと思うんです。

ああ、もっと読みたかったなあ・・・。
初期のような作品。(T^T)

NoTitle 

こういうことをコメント欄でオクメンもなく話し合われるおかたが、コミケを体験したらハマらないはずがない(笑)。

「加納×合田」か、「合田×加納」かで延々と議論をして同人誌を出していたでしょうな、世が世なら(笑)。

世が世でなくてよかった(笑)。

ポール・ブリッツさんへ 

いやあ、そんなに褒められると照れるなあ。(*^_^*)

・・・あ、違うか。

え?こういう会話は恥ずかしがるべきなのですか。
こりゃあ、世が世なら、相当・・・だったかもしれませんね (u_u*)ポッ

残念ながら、もう大人ですし・・・ (u_u*)ポッ

品行方正に生きたいと思います (u_u*)ポッ

あ、言っておきますが、私の小説は違いますからi-201i-201

一応否定しておきます^^

NoTitle 

お待ちしてましたよ、limeさん。
ようこそ、合田&加納のめくるめく世界へ(爆)
ようやく、「で、ふたりはどうなの?」という話ができます~♪

あ、「レディ・ジョーカー」はそういう話ではなかったですね(汗)

「レディ・ジョーカー」、壊れていく人が多いんですよね。ほとんどの人が、いろんなものに翻弄され、崩壊していく…。滅びの美学とでもいいますが、その様子が実に美しく描かれているんですよね~。あーまた読みたくなってきてしまいました(笑)

綾瀬さんへ 

はい! 遅ればせながら、やってまいりました!
「合田&加納のめくるめく世界」!
まさか、レディ・ジョーカーのラストに、あんなことがあろうとは。

>あ、「レディ・ジョーカー」はそういう話ではなかったですね(汗)

ま・・・まあ、まあ、それはそれで、置いておいて(^.^;)

もう、高村先生ったら、そんなそぶりも見せずに、こんなことするんだから。
油断も隙もあったもんじゃないですe-266

本当にこれは、滅びの美学です。
「照柿」も相当でしたが、レディも、それを上回りますね。

壊れなかったのは、加納くらいでしょうか。
・・・いや、彼もやっぱりヤバかったんでしょうか。
彼の本心は、一度も語られなかったですよね。
一度、加納の視点で物語を見てみたいもんです。

もしかしたら、すごい世界が広がってたり・・・ (●´艸`)ヾ

NoTitle 

あうぅぅぅぅ
レディー・ジョーカー、最初の何ページかでぴたりと止まってしまったままなんですよぉぉぉぉ。
まだまだ、何がなんだかわけがわからない状態の部分で(ToT)

もう、高村先生の作品なんだから、この、一見全く関係ない点と点がどんどんまとまってきて、気付いたらとにかく読み進めたくなってしまうことはわかっているのに、そこまで辿りつけない~~~~(ToT)

でも、我慢します。
欲しがりません、「くちなしの墓」をかき上げるまでは・・・・(^^;)

秋沙さんへ 

そう。なかなか最初は進まないんですよね。
この物語は、はまり込む・・・と言うタイプではなく、ただ、登場人物たちと一緒に呼吸し、悩み、自分も堕ちて行ってしまう・・・みたいな・

実際、この企業テロ、犯罪を犯してると言う感じではなくて、なんか・・・運命に呑み込まれていってしまった感じなんですよね。
これは、体験型小説・・・かな。

そしてねえ。合田刑事が、なんとも言えず、良いんですょ。
まったくかっこよくも男らしくもない、悩める男なんだけど。

秋沙さんも、いつか読んでください。
最後の20ページで、「ぐ・・」と言わせて見せます。
(私の作品じゃないけど(^^ゞ  )
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