RIKU・6 この胸で眠れ 

RIKU・6 第3話 ツォモリリの石

 ←(雑記)予想外な登場人物たちの心の動きに戸惑い唸る作者。 →RIKU・6 第4話 不機嫌な編集長
光の中、リクが笑顔で立っていた。
玉城は全身の力が抜けるような安堵を覚え、一つ大きく息を吐いた。
「どこ行ってたんだよ。鍵開けっ放しで!」
「勝手に人ん家に上がり込んで、それはないよ」
リクは可笑しそうに笑うと、ゆっくりとリビングに上がり、玉城と向かい合った。
「お帰り」
「・・・うん」

けれど玉城は笑い返せなかった。
たった2カ月足らずで、リクは更に痩せてしまっていた。
あまり外出していないのだろうか。
元々日焼けとは無縁ではあったが、夏を越したと思えないほどその肌は白かった。
けれどやつれたという感じではなく、ほっそり引き締まった頬や顎のラインが、リクの整った造形を更に妖しげに美しく引き立たせている。
いつもの刺々しさが感じられず、玉城は何となく別人と向き合っているような錯覚に捕らわれながら、目の前の青年の瞳を見つめた。

「リク、何かあったのか?」
「何かって?」
「だから、体調悪いとか怪我したとか・・・。“あっちの連中”が悪さしてくるとか」
何となくベッドルームを覗いたことを言い出しにくく、玉城は遠回しに訊いてみた。
「ああ。そうだな、体調はあんまり良くない」
「どうした? あいつらか?」
ショルダーバッグを椅子の背に掛けたリクに玉城が詰め寄ると、再び可笑しそうにリクは笑った。

「“あいつら”って誰? 僕は悪の秘密組織にでも追いかけられてるのか? 大丈夫だよ、ちょっと最近食欲無いだけ。時々目眩がするから、さっき医者に行ってきた。ただの貧血だってさ」
何でもないようにサラリと言ってのけたリクは、視線をテーブルの上のエキゾチックな柄の布袋に移した。
「これ何? お土産?」
「あ、・・・ああ。帰る前インドで何か買おうと思ったんだけどさ。あまりいいの無くて」

土産の話よりも、訊きたいことが沢山ある。
あの包帯は? ベッドルームの血は? あのロープは?
けれど明らかに話題を変えたがっているリクの口調は、玉城の質問のタイミングを奪った。
「まさかまた、お守りじゃないよね?」
リクが袋を覗き込みながらイタズラっぽく言う。
玉城はその横顔を見ながら、リクの本心を探った。何かを隠しているにしては、とても穏やかだ。
けれど何か、いつもと感じが違う。空気が違う。
漠然としたそんな『何か』が、玉城を再び不安にさせた。

「残念ながら、木彫りのでっかい呪い人形みたいなのしか無くてさ。そんなの持って帰ったらきっと怒られると思って諦めたよ。中身はワインとツォモリリ湖の石」
「ツォモリリ湖?」
「ああ、すごいぞ。身震いするほど神秘的な湖なんだ。人の手あかのついてない神の領域だ。広大すぎて、
一人じゃちょっと寂しい場所なんだけど。リクを連れて行ってさ、絵を描かせたら凄いの描くんじゃないかって思ったよ」
「僕?」
リクはそう言ったまま、少し黙り込んだ。
ぐるりと視線を天井あたりに巡らした後、再び玉城の顔に戻し、そのままじっと目を見つめてくる。
玉城はどっと全身が発汗した。
訳の分からない不安と緊張が、体中の血管から吹き出して来る感じがした。
こいつは、こんな目をしていただろうか。
「な、・・・なんとなく思っただけだよ」

けれどすぐその奇妙な気配は消えた。
「そんな時はさ、玉ちゃん。可愛い彼女を思い浮かべるんだよ」
いつもの少し意地悪なリクの笑みだ。
「悪かったな。どうせ可愛い彼女なんていないさ」
「それは残念」
リクはそんな軽口をたたきながら、袋からその“石”らしき物を取り出した。
無造作に汚れた薄紙にくるまれていて、どう見てもお土産には見えない。
リクはガサガサとそれをめくり、手のひらにコロンと乗せた。
ゴツゴツとした、何の変哲もない白っぽい石だ。
「これって、拾って来たの?」
「そうだよ。ただの石ころ。でも何か持って帰りたかったんだ。記念に」
玉城がそう言う間、リクはじっとその石を目の高さまで持ち上げて見つめていた。

そのシャツの袖口から、チラリと白い物が覗いた。
包帯だと気づき、玉城の心臓がギュッと軋んだと同時にリクは呟いた。
「一緒に行こうか」
「え?」
何のことか分からずに玉城は聞き返した。
「いつか一緒に行こうよ、その湖に。僕も見たくなった」
「あ・・・あ。そうだな」
玉城はそう返すと、無理やり笑ってみせた。

人間を警戒し、避けて近づかなかった野生の鳥はここには居ない。
けれど、身を寄せて来ながらも、その手傷には決して触らせようとしない。

一体その胸の内に何を隠しているのか、玉城は今すぐ問いただしたかった。
だが思い返せば、それでいつも失敗してしまうのだ。
無理強いすれば、その口から出てくるのは、すべて嘘で固められる。

自分の方に手を差し出して来るまで待つしかないのだろうか・・・。
玉城はそんなことを思いめぐらしながら、異国の石を手の上で弄ぶ青年を、ただ無言で見つめた。





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~ Comment ~

NoTitle 

玉ちゃん・・・
これって完璧、好きな女に嫌われたくないけど、秘密が知りたいみたいな・・・
おいおいの世界だわ。
怪しい玉ちゃんに妖しいリク。
v-14ウッキーーーーー
一回転したどーー

リクの様子も気になるけど、玉ちゃんの感情の揺れがぁーーーーー
そっちか、やっぱそっちかと訊きたいのはわたしだけ?
クソーー邪魔したる←つい本音が・・・

ぴゆうさんへ 

おお、出かける5分前。コメ間に合った♪

え!!
そ、・・・・そうですか?
玉ちゃん、実はそうなのか!

と、ドキドキし始める作者。

そう言われれば、この先節々に、そんな気配もチラリと。
さあ、そんなぴゆうさんにお届けします、RIKU6.!

後半は、波乱に満ちてきます。・・・・いろんな意味でww

NoTitle 

今更だけど 玉ちゃんの前で 仮面を着けてるようで。。。

リクから 感じる【違和感】
玉ちゃん、動物的感が その不穏な空気を嗅ぎ取ったでしょ?

リクなんだから!言うまで 待ってても ダメ、食い下がっても ダメー!
それなら どうする?
考えて~考えて~何度でも考えてね~(*>人<)...byebye☆

けいったんさんへ 

うん、そう言われれば・・・リクって玉ちゃんの前では、なんか素直じゃないですね。
ん?
長谷川さんの前でも?
じゃあ、誰の前で、素直になるんだろう。

違和感を感じながらも、結局何も訊けませんでした。玉城。
けっきょくヘタレです^^;
押しても引いてもダメなリクですから、仕方ないかな。

でも、大丈夫。あの人がいますから。あの人が♪
ここの男どもは、弱くてダメですヾ(`ε´)

玉ちゃんが感じた【違和感】は、何でしょう。
まあ、玉ちゃんだから、全くの気のせいってことも充分あり得る・・・・。

NoTitle 

「中身はワインとツケモノの石」

「ツケモノの石?」

「そう。漬物の石」

「……」

「……」

「なんかひとことほしいね」

「うん」




どうもわたしは熱中症かなにかで朦朧としているみたいだ(笑)。

ポール・ブリッツさんへ 

うーーーん。

かなりヤラレテますね、ポールさん。
熱中症ですか。 菌ですか。

漬物の石。・・・・。

・・・・。

なんか、しみじみと可笑しくて、くやしい(ー"ー )

NoTitle 

「つけものの石」で書こうとしていたことがぶっ飛んでしまった(^^;)


ん~~~~~~~!!???
なんだろ、あたしまで変な汗を手のひらにかいてますよ?
リク・・・どうしたの?

ベッドルームの状態を見た後で、もう前回の終りに笑顔でドアの前に立ったリクから感じている違和感が・・・。
なんかもう今回で本物になっちゃって。
リクなんだけどリクじゃない。この違和感はなんなの!?(/_・、)
本当にリクだよね?
いや、仮面を被っているリクなの?
なんかそれだけじゃないような・・・。

うあ~~~ん、眠れなくなったらどうしてくれるのよぉぉぉlimeさ~~~~ん(^^;)

秋沙さんへ 

ぬお。秋沙さんを悩ましてしまってる。
嬉しいような、申し訳ないような。

普段から素直じゃ無くて、内面を見せないリクですが、今回もそうなのかな??

いや、ここで一つバラシテしまうと、リクも「すごく頑張ってる」んです。
今回ばかりは。
その内容は、もうすぐわかるんですが。

でも、それも更に二転三転します。

う~ん。
結局何も言えない^^;

こりゃあ、もう、読んでいただくしかないですね!←(無理やり)

NoTitle 

なんだ、お漬物の石でしたか。
そうでしたか。

リクさん、お漬物の石ならそっちじゃなくて
もっと重たいもののほうがいいかもしれませんよ、です。
記憶によれば花崗岩がいいとか・・・。

今は亡き博士がそういってました。

ねみさんへ 

そうそう、漬物石ならもっとこう、3キロぐらいのズッシリした・・・・。って、おい。

漬物石は忘れなさい(ー"ー )

まあ。博士はお亡くなりに?
それは残念だなあ。

ねみさんのメンテナンスは、どうするのかしら・・・・。

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鍵コメMさんへ 

いやいやいや。
漬物の石で、盛り上がってどうするんですか。(*^~^*)

一体、リクになにが。
・・・色魔?・・・
色魔って、どんな悪さをするんでしょうか。(どきどき)

あ、メールあとで確認してきます。
明日、明後日留守にしますので、返事が遅れたらごめんなさい~i-201

こんにちは^^ 

「ツォモリリの石」

何か響きだけでも素敵v-345
どんな石なんだろう?? 実物を見てみたい。

しかし・・・・・・・
本当にリクだった。
でも、読んでて「RIKU」を読んでる気がしなかったのは私だけじゃないはず。

リクが少しずつ変になってる。
ヤバイv-406v-406

蘭さんへ 

ツォモリリの石。ね? いい響きですよね。
はっ。それだけで選んだとバレル?w

まったく、その辺の石と変わらない白っぽい石なんでしょうが、
玉城は自分の「感動の記念」をリクに持って帰りたかったんですね。
(重いのにね(^_^;))
普段のリクなら、「写真でいいのに」って言いそうですが・・・。

やっぱり少し違いますよね。リク。
弱ると、彼、こんな感じなんです(T_T)
そうとう弱ってます。

ツォモリリの石 

なんだ~
これに食いついたのはfateだけかと思ったら、みんな漬物石に取りつかれていたんですな。

いや、fateは、その湖、行ってみたくなりました。
神の領域。
自然は、そんな風に評される場所が必ずありますね。世界遺産なんかもそうであろう。
行ってみたいけど、先立つものが…!

弱ると素直になる。
一種の防御反応ですかね。
fateもそうかも~
素直になったときは死期が近いかもしれない!(誰が?)
そんなタマじゃね~って???

なんか、このお医者さんにときめいたfateでした~

(ああ、支離滅裂…(--;)

fateさんへ 

もう~、fateさんも漬物石~~。
どんだけ魅力なんだ、つけもの石。

ツォモリリ湖。たぶん、きっと、そんなに有名じゃない場所だと思うんです。
あえてその場所を選びました。
ひっそりと広大で神秘的で心洗われるけど、横に、親しい人がいてほしい・・・と、思う場所。
写真を見た時、ここだと思いました。

石・・・検疫で引っかからなかったのかしらね^^;

そうなんです。弱ると素直になるし、優しくなるし、人恋しくなるし。
私もずいぶん弱った時期がありました。
一人が大好きな私が、人恋しくて泣いてしまう日々が。
心が悲鳴をあげてしまう病。
できれば一生あんな苦しみを体験せずにすごしたかったと思ったんですが、
今にして思えば、あれは貴重な体験でした。
人間の心は、どこまでも病んでしまう。
健康な時には、思いもしないような苦しみが、ある日突然襲ってくる。

今は完治しましたが、やっぱり人生、いろんな体験、しとくべきだなあ~って思いました。
今、そんな苦しみを抱えている人が居たら、全力で抱きしめてあげたいと思うんです。

そんなこんなで・・・リクを抱きしめてあげたい作者なのでした。
なんか、だらだら書いちゃいましたねぇ。

しかし、人間の心って、なんでこんなに脆くできてるんでしょうね。
まあ、だからこそこうやって、日々ドラマや感動があるんでしょうが^^;

NoTitle 

うーんさり気ない暖かい描写なのに読んでいて切ないのは何故でしょう…。

何だかリクが遠くへ行ってしまいそうな感覚が離れないせいでしょうか。

あ、骨董店今夜零時も開店です。

有村司さんへ 

私も、ここは書いてて切なかったです。
まあ・・・私はこの後の事、知ってるからですが。
でも、こういうシーンを書いてる方が楽しいです。
後半は、書くの辛かったから。

骨董屋、今夜も会いに行きます。(今日は骨董屋に会えるかな?)
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