RIKU・6 この胸で眠れ 

RIKU・6 第2話 ベッドルームの闇

 ←RIKU・6 第1話 受診 →(雑記)予想外な登場人物たちの心の動きに戸惑い唸る作者。
「リク、いるのか?」

2カ月ぶりに訪れたリクの家の玄関ドアは、鍵が掛かっていなかった。
外出時も鍵をかけない事が多いリクのことだ。居るのかどうかは、まるで分からない。
グルメ取材先のインドから戻ってきたばかりの玉城は、木製のドアを開け、大声で友人の名を呼んでみた。

けれどログハウス調の吹き抜けの部屋はしんと静まりかえり、人のいる気配はなかった。
玉城はため息をつき、土産の入った袋を楢材の大きなテーブルにトンと置くと、変わり者の友人の部屋を見渡した。

壁際の二人掛けソファの上に、リクの携帯がころがっている。
手に取ってみると、思った通り、充電もされていない。

「……」
いつものように頭に来て悪態を吐き出そうとした玉城だったが、彼の目に止まった物がそれを止めた。
ソファの横の、円筒の屑籠だ。

その中には白い包帯が、艶めかしい蛇のようにとぐろを巻いていた。
その白の上には鮮やかな赤。
まだ完全に変色していない血が、所どころ包帯を染めている。


「リク?」

居ないと分かっていたが、玉城はもう一度リクの名を呼び、部屋をぐるりと見渡した。
急に胸がザワザワと騒ぎ、不安が呼吸を乱した。

10日ほど前に電話した時は元気だと笑っていたはずだ。
怪我でもしたのだろうか。
玉城は落ち着かなくなり、リクのベッドがあるロフトのはしごを登った。

そこで再び玉城は息を呑んだ。

ベッドの下には同じように血で汚れたタオルが丸めてあり、そしてベッドヘッドには幾重にも細めのロープが巻き付けてあった。
明らかに、何かを縛っていた形跡がある。

生成の布製ロープの端にも赤黒いものが付着し、染み込んでいた。
血だ。でも、なぜ?

途端にゾクリとする寒気を背中に感じ、玉城は身震いした。

振り返るが、もちろんそこには誰もいない。
独り暮らしにはほんの少し広すぎる、簡素で清潔なリビングがあるだけだ。

玉城は手すりを握り、ロフトからゆっくりリクの部屋を見渡してみた。

リクが毎朝一人で目覚める空間は、ひんやりとした胸の悪くなる『何か』で満たされていた。
精神を浸食してくる『何か』だ。

数ヶ月前、玉城を助けるために自ら霊力を強める行動をとってしまったリク。
彼は長い年月をかけて封印した扉を開けてしまったのだと、玉城に言った。
その意味は玉城にはよくわからなかったが、リクはその後で、“余波が誰かに影響を与えるのが怖い”と、この家を出て行こうとした。
そこまで思い詰める程、具合の悪い事態だったのだろう。
あのあと急に玉城の仕事が忙しくなり、リクと実際に会う事もほとんどなかった。


『困ったことがあれば、今度は俺が助ける』と、偉そうに言っておきながら、自分は彼に何をしてやったと言うのだろう。

リクは何かに追い込まれても、玉城や長谷川に助けを求めるタイプではない。
そのくせ自らの身の守り方を知らない。

―――分かっていた事じゃないか!


玉城は滑るようにハシゴを降りると、納戸やバスルームを覗いた。

そこに、倒れていたらどうしよう………。
一瞬過ぎったそんな想像が、玉城の胃を軋ませた。

けれど、開いたドアの中はどこも空っぽで、リクの姿は無い。
そのことに心底ホッとしながら、今度は玄関ドアに向かった。

“裏山だ。きっと裏山にいるんだ。そうだろ? そこにいてくれ”
祈るような思いでドアノブに手を伸ばした瞬間だった。


いきなりそれは勝手にスイと開き、初秋の眩しい光が玉城の目を眩(くら)ませた。
立ちすくんでいる玉城に、光の中の蒼いシルエットは一瞬驚いてかたまり、そしてすぐに嬉しそうに弾んだ声で言った。

「玉ちゃん!」



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~ Comment ~

NoTitle 

おはよー
あーよかった。
血の付いた包帯だけで終わりかと思った。
悶々が続くかとひやひやしたよ。

リクがいたのね。
何やら怪しいぞよ。
一体何があったンダーーー
玉ちゃんより先に言っとく。

NoTitle 

本編とは関係ないですが、ロフトスペースって本当憧れます。

なんていうのでしょうね。
とてもせせこましい空間なんですけど、他人の目から離れた、
「隠れ家的スペース」にはとても安らぎを感じるんですよね。

上から下まで繋がった「吹き抜け」にも憧れてしまいます。
閉鎖的と開放的、全く逆なのに、どちらも魅力的なんですよね。

私だけかな。

NoTitle 

久し振りに訪れた玉ちゃんを 待っていたのは、
点々と血に染められた包帯と 血で汚れたタオルと 血が染み込んで黒ずんだロープ

不吉な「何か」を 感じさせる物ばかり!Σ(i|!゚Д゚)ヒィィィィ

リクにとっては、癒しの存在の玉ちゃんですが、ちょっと 怒りん坊で 猪突猛進なのが ”玉に瑕”な所!(←駄洒落っぽい(笑)
誰にも 頼る事が出来ないリクから 苛々とせず 然りもせずに 話しを聞きだせるかなぁ~

霊力が、強くなったのは 玉ちゃんのせいでも あるんだからね!
分ったかな、玉ちゃん♪d( ̄ー ̄ん?)...byebye☆

NoTitle 

リクと即断するのは危険なような。

長谷川編集長という可能性もあるし、

だいいち玉城の前にはこれまで無数の、人間としか思えない霊が出てきている。

これからどうするかお手並み拝見(^^)

ぴゆうさんへ 

よかった~、もう少し先まで書いてて・笑

そうですよね。
そこで終わったら、私も悶々としちゃいます。
とにかく、とりあえず二人を合わせなきゃ。
玉城もかわいそうですしね^^;

見るからに怪しげですが、さて、リクに訊けるかな? 玉ちゃん。

ヒロハルさんへ 

いいですよね~、ロフト。
子供の頃、そんなものがあったら、絶対そこで寝てました。
まさに、隠れ家。
屋根裏はちょっと嫌ですが、ロフトは半閉鎖空間ですもんね。
(でも、きっと何回も階段から転げ落ちるんだろうな、私は・・・)

吹き抜けというものも、中学生の頃初めて知りました。
なにせ、純和風の家で育ったもんですから。

今の自宅には、“なんちゃって吹き抜け”がありますが、あまり美しくはないなあ。
ちょっと残念^^;

けいったんさんへ 

全くです。半分以上は玉ちゃんのせいですヾ(`ε´)
いっぱい遊び呆けてきたんだから、これからはちょっとリクの心配をしてあげてほしいもんです。

でも、玉ちゃんの心配の仕方は、ウザいだけですから。
また、リクに逃げられちゃうかな?

いやいや、玉城もそこまでバカではないはず。
少しは学習してきてるはず。
・・・と、思いたいんですが。さあ、どうなる事やら。

今回の玉ちゃん、ポイント上げたり下げたり、もう大変ですが、どうか見捨てないでやってくださいね(^.^;)

ポール・ブリッツさんへ 

ポールさんが、早くもすべてを疑いにかかってる~~ww
そこに長谷川さんがいたら、かなり怖い(^.^;)

さて、今回はポールさんをどこまで欺けるかな?

でも、実は謎かけも、ひっかけも、何もないはず。
ただ、読者がひっかかるとしたら・・・・・・・あ。また余計なことを言いそうになりました。

今回も、ミステリーと言うより、サスペンスです。
トリックは無いと思うので、頭を真っ白にして、見て行ってください^^。
ポールさんには酷かな?

NoTitle 

ここまで読んできて分かったことがありますです。
やっぱり僕幽霊苦手かもしれません。

後ろに何かいる気がします。

ねみさんへ 

うん、私も苦手です。
幽霊番組とか、ホラー映画とか、お金もらっても見れません^^

だから、私の書くのは、人を怖がらせるホラーじゃないですよ~。
サスペンスですから、平気ですょ^^

あれ? AIも幽霊怖い??

おはようございます^^ 

>『嬉しそうに弾んだ声で言った。
「玉ちゃん!」』


誰!? 最後に出て来たこれは!?
多恵ちゃん?? リクではありませんよね??

しかし・・・・リクに一体何が??
まさかそんなにひどくなってるなんて。。。。。。。。

次話を読むのが怖いv-11v-11

蘭さんへ 

ふふ。
リクがそんな、仔犬みたいに喜ぶはずがない・・・と思いますよね^^
でも、玉城を「玉ちゃん」と呼ぶのは、この世でただ一人。

けれども、「なんか、リクっぽくない」という感覚、感じとっていただけたなら嬉しいです。
(あ、1話からは、少し時間が経過しています)

これからリクの悩みも、すこ~しずつ見えてきます。
どうか、リクを応援してやってくださいね^^
応援してくれないと・・・悲しい結末が・・・・((;゚Д゚)

NoTitle 

あー、光の届かない海の底にリクが沈んでいくようなイメージが離れないんですよね…能天気玉ちゃんが帰ってきたかと思ったら、ジャンヌダルクは…みたいだし。
悩める有村です。

あ、骨董店今夜零時も開店します。

有村司さんへ 

> あー、光の届かない海の底にリクが沈んでいくようなイメージが離れないんですよね…

うん・・・まさに、リク自身、そんな感じでしょうね。
もう溺れちゃう・・・。

やっと玉城が帰って来て、リク的には嬉しいんだけど、役には立ちそうにないです。
玉城よりも絶対救いになりそうな長谷川は、もうすぐ・・・だし。
(でも、いなくたって、存在感大きいです、あの人は)
有村さんを、悩ませたい~~~^^

お!うれしいですね。今日も開店ですか!

最終話 

とうとうここまでやってきました。

タイトルがまた意味深ですね。
誰の胸で誰が眠るのかなぁ。

リクくんみたいな人が近くにいたら、関係者全員ずーっと気をもまされてますよね。
でも、このストーリィの中の関係者のみなさんは、そんなリクが愛しくてならないと。

お医者さんも早速たぶらかされた……たぶらかされたというと言葉は悪いですが、リクくんが気になって仕方ないふうになってしまったんですよね? 医者の習性というよりも、リクくんの魅力というか魔力というか。

ところで、この荻原先生は味方でしょうか?
今回もじっくり読ませていただきます。

あかねさんへ 

あかねさん、最終話へようこそ。

ちゃんと玉城は帰ってきましたが、さて、リクの周辺は、玉城では手に追えない事態になっているようです。
(今回も、ほんとうに玉ちゃんはイライラさせてくれるはずです。)

そう、危なげなリクに、登場人物はみんな、翻弄されてしまいます^^;
さっそく、荻原医師も、たぶらかされて・・・。

いいなあ、たぶらかされるって、言葉。頂きます(笑

新たな登場人物も交え、最終章は、とんでもない方向へ行くはずです。
今回は、何よりもリク自身に驚かされるかもしれません。

ゆっくり、ゆっくりでいいので、どうか最後まで見守ってやってください!
いつもありがとうございます^^
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