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(雑記)高村薫『マークスの山』

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高村先生の本は、これが6作目でしょうか。
黄金を抱いて翔べ』、『李歐』、『わが手に拳銃を』、『リヴィエラを撃て』、『神の火』。

そしてこの『マークスの山』。







《あらすじ》
殺人犯を特定できない警察をあざ笑うかのように、次々と人を殺し続けるマークス。捜査情報を共有できない刑事たちが苛立つ一方、事件は地検にも及ぶ。事件を解くカギは、マークスが握る秘密にあった。凶暴で狡知に長ける殺人鬼にたどり着いた合田刑事が見たものは……。リアルな筆致で描く警察小説の最高峰。


殺人事件、それを追う刑事、警察内部の人間模様、そして更に謎を深めながら続く凶行。
これは今まで読んだ先生の作品とは違う、本格ミステリーの形態を取ってる物語なのかな・・・?
しかし、読み終えて思いました。
この本は、そんなこと考えながら読んでいたら、大事な全体像を見逃してしまう、と。
(読み終えた後、気付く私・・・無念)

急展開する最終章。
そこに浮かび上がったのは、単なる事件の結末ではなく。
この事件に触れた人間たちの人生、時代、社会、組織、そんなもろもろをすべてを包み込んで凍らす「山」。

物語の中心にいる捜査一課の合田雄一郎。自分の不完全な部分を憂いつつ、葛藤しつつ、人間らしい目で犯人を追う彼も、なかなか魅力的。
けれど、それを飲みこんでしまう勢いなのが、狂気と無垢のはざまで危うい均衡を保つ、一人の若者。マークス。

彼の少年期から、犯罪を犯してゆく青年期の描写は、容姿、動き、思考、どれをとってもすさまじく、読むこちらの心臓を掴んで離しません。

少年の狂気は純粋と紙一重であり、その、吐き気のするような残虐な凶行の裏で、迷子になって怯える、哀れな子供のような憐憫さが湧きたっているのです。
いつ爆発して溶け出すか分からぬマークスを、囲って愛す真知子の存在もとても興味深く、なくてはならぬ存在です。

実際の犯行と、それに伴い、いもズル式に出てくる男たちの存在。
追跡の果て、そこで語られるのは山で繋がっていた若者たちの過ごした“ある時代”。
そこまで緻密に詳細に綴られてきた人間模様はとてもリアルでありながら、
それでいて、私が最期まで気になっていた真の「マークス」と少年の繋がりは、最期から2頁目に、たった20文字ほどで語られていたり・・・。
そんな素っ気なさが鮮やかで愉快で、「やられた~」などとにんまりしました。

最期のシーンは迫力です。
あのまま20ページも続けられたら、きっと私、凍傷です。
彼らが苦悩しながら求めた結末は、山と共にありました。
最初から最後まで、この物語は山に抱かれてたんですね。

---岩を掴む手に無機物の絶対的な冷たさが沁みていく。岩も雪もわずかな草苔も凍っていた。地球は温かい星だと誰が言ったのだろう。生命の死こそここでは自然であり、生きてる者こそ孤独なのだと合田は思った。---

このあたりから、最期にかけての描写、・・・めちゃくちゃ好きです。
恐ろしくも、唖然とするほどの美しさ。
ここで何を想うかは人によって違うのかもしれませんが、私はもう悲しくて哀れで、それでいて、静かな安堵を感じました。
これが高村先生の美学なら、これから先も、ずっと付いていきたい。そう思います。


で、、、ずーーーっと思ってたんですが。
高村先生の作品の降雨率、降雪率の高いこと。

『李歐』、『わが手に拳銃を』、『リヴィエラを撃て』、『神の火』。
ここぞという重要なシーンには、絶対雨、雪。
その描写がもう素晴らしくて、その場の緊張、臨場感を高めてくれます。

登場人物・・・みんな、雨男だね。
ふと、そんなことをつぶやいてみたくなったりして・・・^^

また、思う事半分も書き出せないレビューになってしまいましたが
・・・次は短編にしようかな。
高村先生の短編って、興味津々です。



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~ Comment ~

NoTitle 

とうとう、読み終えてしまったんですね。

合田刑事なんですね。
「レディ・ジョーカー」にも出てきます。
私、すっかり彼の虜になってるんですの。

警察物は、私はあまり好きではないのですが、
断然読みたくなりました。

もう少ししたら、読みますからね~^^

NoTitle 

はじめて手にした高村作品が「マークスの山」でした。
細かい描写、硬質な文体に読みにくさを感じたのを覚えています。今となってはそれが魅力でありますが。

降雨率、高いんですね(笑) 書いたご本人も意外と気付いていないかもしれませんよ、それ。

narinariさんへ 

やっと読み終えました~~。(おそ!)

narinariさんは、合田刑事に惚れちゃったんですね。
彼は、人気が高いみたいですね~。
なかなか、もっと深くを探ってみたいです。
加納さんっていう検事さん出てきますか?
彼と加納さん、いい感じだったんですがねえ。
もっと話をさせてみたかった♪(悪い病気です)

この「マークスの山」は、途中までは本当に警察小説っぽくて、今までの先生の作品とは別の意味で硬質でした。でも、随所に私の好きな美学が感じられて、退屈しません。
最期の8ページは、圧巻でした。
是非読んでみてくださいね。
あ、「神の火」も、ぜひ!!
やっぱり、神の火が、私の中のベスト!です^^

綾瀬さんへ 

ええ~、初めてが「マークスの山」でしたか!
それは入りにくかったでしょう。(ファンのくせに、ひどい・笑)

高村先生の作品の中では、とくにとっつきにくいかもしれません。
「李歐」で骨抜きになった私は、楽しく読めましたが^^
きっとなにか、作者なりの美学がある!と、信じて読めますから。

ええ、雨、雪!凄いです。
晴れてたことあったっけ・・・と思うほど、降りっぱなしです・笑
なぜか誰も取り上げないけど、そう思ったのは私だけじゃないはずなんだけどなあ~。

本当に、よく降りますから。

NoTitle 

僕が書けば今が暑いのか寒いのかが分からない文章に
なってしまいます。
読んでいただく方に季節感を伝える事は大事ですね。
ましてや雨。 まさか「ザーザー」と書くわけにもいきませんし。
雨の描写、これは難しそうです。

そしてlimeさん!買いましたよ『黄金を抱いて跳べ』。
もちろん『神の火』を探していたのですが(古本屋)見つける事が出来ずに
コチラを購入しました。
本の裏に書かれたあらすじを読んだだけで充分楽しめる予感が
しましたよ。

蛇井さんへ 

あえて雨の描写を入れるところが、やっぱりすごいな~といつも思うんです。
ほら、「李歐」だって、もう、濡れまくりじゃないですか。
水にもぐるシーンに、あえて激しい雨。
雨、雨、雨。
李歐がジャングルで、雨に打たれているシーン。もう、最高に印象的でした。

『黄金を抱いて跳べ』。
・・・・ちょっと違った!
『黄金を抱いて翔べ』でした!
なんかほら、 跳べだと、少しユーモラスww

ごめん、蛇井さんにはつい、突っ込んでしまいます。

『黄金を抱いて翔べ』の描写も緻密ですよ~~~。
もう、そう言うのが好きな人にはたまらない緻密な描写で犯罪を画策していきますよ。
これも大阪が舞台なので、ワクワク度が大きいかも。

でも、いつかきっと「神の火」も読んでくださいね^^

NoTitle 

そして、limeさんの前には、「照柿」「レディ・ジョーカー」「晴子情歌」「新リア王」「太陽を曳く馬」という、弁当箱みたいな本がごろごろ続く、巨大な山脈が横たわっていたのであった(笑)。

「眠るなっ! 眠ると死ぬぞー!!(笑)」

ポール・ブリッツさんへ 

やっぱりですか!

この、そびえたつ山脈を登り切った先には何があるのか!!

いや、どこかで人知れず、果ててしまうのか・・・。寂しいi-241

NoTitle 

あらホント!「跳べ」ではなく「翔べ」でした(≧▽≦)
生まれて初めて書き間違いをしました。
≪ハンサムも筆の誤り≫ですね。
死んでお詫びします(>_<)

蛇井さんへ 

ハンサムも時には過ちを犯すもんです( ̄ー ̄)

いや、生きて、また面白い間違いを重ねてください^^

NoTitle 

「マントヒヒ村上」のTAMAです。
いつもありがとうございます。
リンクの件、大歓迎です。僕のほうからも、さっそくリンクさせていただきました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

TAMAさんへ 

おお、ありがとうございます~~(*^_^*)
また楽しみが増えました。
こちらこそ、どうぞよろしくおねがいします^^

楽しみに村上たちの日々を、覗きに行きたいと思います♪

NoTitle 

マークスの山、今日図書館で上巻を借りて読み始めました。
もう、最初の描写からゾクゾクしますね。
で、改めてもう一度、limeさんのレビューを読みなおし、
全体像の感じがよく伝わってきた気がします。
やっぱり、「レディ・ジョーカー」と共通してますね。
事件に関わる人々の模様の重厚さ……。
またきっと、魂を揺さぶられるんだろうなぁ。

で、読み始めたばかりなのに、もう次は何にしよう?
と思ってたりしますが、「火の神」にしようかな、と
8割がた決めています。

だけど、読み終わったら、limeさんのようにしっかりした
感想が書けるのか自信ないなぁ~。

narinariさんへ 

narinariさんも「マークスの山」、突入ですね。
私なんて一ヶ月半かかって読んだんだけど、narinariさんは早いんだろうなあ。
(バスの中とお風呂でしか読まないのが悪い・笑)(あ、どっちもバスだ!)

高村先生の本は、結末を知りたいと思うより、文章のひとつ一つに酔うことが出来て、そんなところも好き。
そしてなにより、人間の描き方が、半端じゃないですよね。
「マークスの山」も、まったくそう。
一人一人に人生があり、生活臭がある。
あらためて作家の想像力に脱帽です。

私は今、「照柿」にトライ。
どうかな・・・面白いかな・・・。

ああ、だんだんと読む本が少なくなる寂しさ。
そして、きっと「神の火」と「李歐」を越える作品に出会えないんじゃないかという悲しみ。

でもきっとまた出会えますよね。
この世にはたっくさん、小説があるんですから。
ガンガン読みましょう。(ゆっくりだけど)

narinariさんの好きなタイプかわかりませんが、どうか「神の火」読んでみてくださいね。
私が号泣したシーン、当てられちゃうかな・・・。

通りがかりに失礼します 

通りがかりに失礼致します。
『マークスの山』の合田さんいかがでしたか?
私も高村先生の大ファンで、つい先日、『太陽をひく馬』読み終わりました。
初期のマークスとは、合田さんのバックグランドがかなり変わっててビックリでしたが・・・(苦笑い)

個人的には、高村先生のお話では、『神の火』が一番好きな私ですが、登場人物としてはマークスの合田刑事が一番かも。
刑事でありながらその組織が持つ権力臭に嫌悪感を抱きつつ、そうした自分の身の内の虚無感を日々抑えながら、それでも最低限の自己の良心に誠実あろうとする、そんな合田さんが・・・。

これからも、素敵な感想楽しみにしています。お邪魔致しました

れい豆さんへ 

いらっしゃいませ!

え!『太陽をひく馬』も、合田さんのシリーズだったんですか!!
・・・知らなかったです。
是非、読まねば!

私も合田さんの魅力に、じわじわとハマってきています。
つい先日『照柿』を読み終わり、さらに好きになりました。マークスの時よりも、揺れ動いて危なっかしくて・・・・。
今、『レディジョーカー』を読み始めたところですが、今回は合田さん、どんな顔を見せてくれるか、ワクワクしています。
ほんのチラリと出てきただけの合田さんの、視線の動きだけでもう、心を掴まれてしまいました。

私も実は『神の火』が、一番好きなんです。(感想も、書きまくってますし・笑)
たぶん、あれを超える作品は、出てこないんじゃないかと思うほど、心酔しています。
そうは行っても、やはり高村作品は、どれも魅力的で・・・。

遅読の私、『レディジョーカー』を読了するのは、かなり先になると思いますが、また感想を書きたいと思います。

そして『太陽をひく馬』! やはり、高村&合田ファンとしては、ぜったい読まなきゃいけませんね!


『 レディ・ジョーカー』は凄いです!! 

コメントへのお返事ありがとうございました。感激です!!
&またまたお邪魔しております。

『神の火』は、いいですよねえ。
あの、いりーな号から望む吹雪に煙る音海海岸の描写が、登場人物の心情風景に重なって、 たまらなく切ないです。特に今、福島原発云々で産業用原子力の利用云々が取りざたされている状況では、高村先生の問題提起には凄く大きな意味があると思いますし。
この話、私自身は初読はもう十年以上前の大学時代でしたが、最近ふと読み直し、今夫の仕事の関係で関西在住のこともあり、見知った土地の名がチラホラ出てきて、ちょっとそんな点も一人でムフフとほくそ笑んだりしておりました。(十三とか、実際に行ったことはないのですが,空気感は何となく判るので・・・)
初読の単行本では、良ちゃんと島田さんの関係性がかなり具体的なのに対し、文庫本ではより内面的、精神的なものになっているように思われたのですが、どちらにしても、良ちゃんを死を知った時の島田さんの心情が切な過ぎて泣けました。 日野の大将もいいですよねえ。

改稿の高村先生ですので、私個人的には、『マークスの山』までは、単行本・文庫本どちらも購入し読んでおります。先生ご自身が仰るように、読みやすさでは断然改稿後の文庫本の方がお勧めですが、単行本特有の文章の硬質さというか、判りそうででもなんとなくすっきりとは判らない、ギリギリの部分で読者自身が想像するしかない登場人物の心情の綾といった点の妙意は、個人的には単行本の方にあるような気も・・・。特に、『マークすの山』の最終頁などは、私個人的には単行本の方が好きです。(文庫本もいいですよ、勿論)

そしてなんと意っても!!
『レディ・ジョーカー』は、合田さんが凄いことになっています(笑)
お読みなられるのは単行本でしょうか、文庫本でしょうか?
私は単行本の方しか持っておりませんが、本屋さんでチラリと立ち読みした限りでは、単行本・文庫本、どちらにしても、合田さん凄いことになってます。
『照柿』で、かなり危なっかしい地点まで行っちゃった合田さんが、更に、って感じなのですが、そうした諸々を含んだ上で、遂に、というか・・・(笑)
三十代半ばの男性って、こんなにも危いんですかねぇ(笑)
私としては、ああ、やっぱりそうだったんだ・・・、という感想でしたが、例のあおお方との関係が・・・(笑)
意味ありげな書きかたばかりで、申し訳ありません。 どうぞ、たっぷり堪能して下さいませ。

それにしても、この『レディ・ジョーカー』の後の合田さんが『太陽を曳く馬』の四十二歳の彼になると言うのは、一ファンとしてはなかなかショッキングな展開ではありますが・・・。
この調子だと、『新冷血』はどうなってんだろう(ドキドキ)
勝手なことばかり長々と失礼いたしました。

れい豆さんへ 

れい豆さん、また来ていただいてうれしいです!
高村作品の話が出来るのって、最高にうれしいです^^

おおお!れい豆さんの語る『神の火』は、まさに私が思う事と同じで、すごくうれしいです。
実は、神の火を読んでいる最中に、あの原発事故が起こったので、
なんだか背筋の凍る思いでした。
そして、あらためて高村先生の視点の凄さを思い知らされました。
作家としては二の足を踏みそうな、微妙な問題に、いつも正面から挑むところにも、惚れぼれしてしまいます。

れい豆さんは、関西に住まれたことがあるんですね!
私は今、大阪在住なんです。
阿倍野の、島田の勤め先あたりは、本当によく行く場所で、ワクワクしました。
あの、良と島田が最後に会った、阿倍野の陸橋。
あそこは、もうすぐリフォームされちゃうんです・涙
あの陸橋のシーンは、今も胸が熱くなります。
(もちろん、動物園前のフェンスにも、しがみついてきました・・・バカですね)

あの、島田が海上で良の死を知ったシーンは、もう号泣しました。
けっこうドライな私が・・・・。
それほどあの物語に、心酔してたんですねえ。
れい豆さんと、グッとくる場面が似てること、うれしくなりました。

『レディ・ジョーカー』は文庫本を読んでいます。
ええええ、合田さんが、すごいことに??
そ・・・それは本当ですか。
『照柿』でも半壊状態で危うかった合田さんが。
もしや、加納さんのせい??
これは、ますます楽しみになってきました。
れい豆さん、ありがとうございます。

『太陽を曳く馬』は、42歳なんですか。いぶし銀だなあ・・・。
男の42は、まだまだ若いはず。
よし、もう歳とらないで、待っててくださいね~~。合田さん。

NoTitle 

早く読まないとlimeさんのほうがうわなにをするいたいいたいいたい(撲殺)

ポール・ブリッツさんへ 

なにを、なにを、なにをヾ(`ε´)

何を言い出すか分かったもんじゃないので、ポールさんはコンクリート詰めにして南港に沈めます。 ( ̄ー ̄)
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