RIKU・5 天使の来ない夜

RIKU・5 第2話 玉城からの贈り物

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大東和出版のラウンジは、初秋のカラリとした木漏れ日を窓から取り入れ、心地よい明るさを保っていた。

様々なデザインの椅子とテーブルが並ぶ、ゆったりとしたその空間は、打ち合わせや休憩、歓談の場として自由に使える。
社員からの評判も良く、長谷川や多恵も気に入ってよく利用していた。

午前10時。
先に来て横並びに座っていた長谷川と多恵は、後から入ってきたリクに手招きした。
いつもの事ではあるが、ラウンジ内で休憩や打ち合わせをしている社員は男女問わず、必ずこの青年に一瞬目を奪われる。

今日もTシャツにジーンズ、黒のカジュアルなジャケット。
いつものように飾り気のない服装だったが、そのしなやかに伸びた肢体と柔らかな動き、神聖さを感じさせる中性的な整った顔立ちは、その場を心地良い緊張で満たした。

『きっとウチが抱えているどのモデルも勝負にならないほど綺麗な男ですよ』と、ファッション誌の編集長に言わせるほど、リクの容姿は人を惹きつける。
みんなの反応を見て、多恵が、なぜか自分の所有物を自慢するかのように「ふふ」と笑うのも、いつものことだった。

「あんたさ、ちゃんとご飯食べてる?」
自分たちの正面の椅子に座ったリクに、開口一番、長谷川が訊いた。
リクがキョトンとして長谷川を見る。

「なんで」
「また痩せた。それに少し顔が青白い」

リクが返答に困っていると、長谷川の隣で多恵がニンマリした。

「やだ~、長谷川さん、なんかお母さんみたい」
「何でお母さんよ!」

長谷川が多恵を間近で睨んだが、この新入社員は全く動じる様子もない。
悪びれもせずに長谷川に笑い返し、今度はリクの方に身を乗り出した。

「だけど、私もちょっと心配だな~。やっぱり、あれから眠れないんじゃないですか? リクさん」
「……」
リクも長谷川も黙り込んだ。

春先の吉野宮神社での殺人事件がきっかけで強まってしまったリクの特殊能力が、リク自身を苦しめていることは、二人とも玉城から聞いて知っていた。

『俺を救うために、怨霊をせき止めた扉を開けちゃったんだ』
あの事件のあと、玉城は長谷川にそう説明し、そして酷く落ち込んでうな垂れた。

『そんならまた閉めりゃあいいじゃん』
そう言った長谷川に、玉城は重いため息を吐いた。

『まだ小さい頃に掛けた封印らしくてさ。その頃は上手く“閉じる”力を発揮してたらしいんだけど。
今はそれが出来ないらしい。だからあいつは今、ひたすら怯えてるんだよ。扉から染み出して来る邪気に』

その辺の感覚は長谷川には全く理解が及ばなかったし、こればっかりはどうすることもできなかった。
そのことが長谷川には歯がゆくて仕方ない。


「心配いらないよ。ちゃんとやってる」
いつものように素っ気なく、感情を込めずにリクは答えた。
“あまり自分に構わないでほしい” というリクの信号なのだ。

ずいぶん棘が取れて人間らしくなってきたが、リクのこういう可愛げのない部分が、長谷川は気に入らなかった。他人の気持ちを汲み取ろうともしない。
知らず知らず、長谷川の声も邪険になる。

「じゃあ、今度会う時までにもう少し太っときな」
「今度っていつ。何の用事の時だよ。今日だってそっちが勝手に呼び出したくせに」
「迷惑だったらメールした時、その場で断りなよ」
「まあまあ、二人とも。ほらスマイルスマイル~」

険悪になりかけているところを、面白そうに多恵がなだめた。
「玉城先輩がいないと、なんで喧嘩になるんでしょうね、二人とも」

そう言いながら、やはり多恵はニコニコしている。
とにかく二人が揉めるのが楽しいらしい。

「で? 今日は何の呼び出し? 玉ちゃんはずっと出張だろ?」
リクがそう訊くと、多恵がテーブルの上に大きめの茶封筒を置いた。

「はい、これ」
「何?」
「玉城先輩がリクさんを呼び出して、手渡すようにって」
「玉ちゃんが?」
リクはテーブルの上の、パンパンに膨らんだB5サイズの茶封筒に目をやった。

玉城は現在『グルメディア』の「旅と食」をテーマにした長期取材で、沖縄を皮切りに、ベトナム、タイ、マレーシア等、アジア各地をまわっている。
スタッフの慰安旅行も兼ねていると言うことで、ちゃっかりそれに混ざり、1カ月半は帰らないと言う。

「僕宛に郵送すればいいのに」
困惑しながらそう言い、茶封筒を手にするリクに、長谷川が苦笑しながらつぶやいた。

「あんたを呼び出して、生存確認してくれってさ」
リクが眉をひそめる。
「なんだよそれ」
「ねえ、何を送って来たのかな、先輩。沖縄の消印だけど」
多恵に煽られ、面倒くさそうにガムテープを剥がし、封筒を覗き込んだリクが絶句した。

そのままリクは、封筒の中身をテーブルの上にガサッとひっくり返す。
テーブルの上は、西日本各地の神社や寺のお守りやお札で溢れ返った。

《リクにやるよ。どれか効くかも知れないだろ? by玉城》

メモ用紙に殴り書きした玉城のメッセージが、最後にひらりとテーブルに舞い落ちた。


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~ Comment ~

玉ちゃん~(* >ω<)=3 プー 

玉ちゃんから リクへの 心を込めた贈り物♪

お守りの神様が 仲良く 一致団結してくれれば 最強になるけど・・・

真偽のほどは 怪しいですが、私が聞いた話しです。

あまり たくさんの お守りを持つと
「よく効くのは、俺が!私が!って 喧嘩する」と、そうなったら 最悪だろうなぁ~

俺だって!:;*.':;(゚Д゚`(o=(`ε´☩)┌┛)´゚Д゚):;*.':私だって!
(。ノω<。)ァチャ-見てられない...byebye☆

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NoTitle 

玉城くんらしいや。(笑)

どこかズレてるところがまた玉城くんらしい。(笑)

中に「呪いのお札」が混じっていたら玉城くんらしさ百二十パーセントだ。(←お前は玉城という人間をどう思っているのだ(゜゜ )☆ぽかっ\(^^;))

けいったんさんへ 

あ~、私もその話、聞いたことあります(*^_^*)
なんか、喧嘩になるんですってね、神様どうしで。

あのB5の茶封筒の中で、神様どうしの熾烈な戦いが・・・。こわ。

まあ、玉ちゃんは、「そんなこと知るか。強い神様に守ってもらや~いいんだ!」とか、言いそうwww

まあ、何にしても、リクを想いながらお守りをチマチマ買ってる玉城を想像して、
和んでください(*^-^*)

鍵コメMさんへ 

おや!携帯からですね??

ふふ。玉ちゃんらしいでしょう~~^^
相変わらず、バカな奴です。

え? ご依頼?? あとでお邪魔します^^

ポール・ブリッツさんへ 

玉ちゃんらしいでしょ~~う^^

もう、次話の冒頭で長谷川に、皆さんを代弁して罵倒してもらいます。

中に呪いの・・・。
すごくありそう (^.^;)

玉ちゃんなら、絶対「うっかり」でしょうね。

それを見つけたリクが、けっこう凹んだりwwww
(パロディ書きたくなってくる)

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NoTitle 

お守りですか・・・。
心配してるんだか冷やかしてるんだか・・・w

でも根は良い人だから心配はいりませんね。
なんだかんだでみんなリクさんを愛しているんですから。
というか社会人なんだ、みんな。

なんか怖いな、会社・・・。

ねみさんへ 

普通なら、からかってんのかと思われても仕方ないですよねえww
まあ、玉城ですから。
真底心配してくれてるんですよ。ほんと、変な奴です。

周りがこんなに愛情かけてくれてるのに、どんどん勝手に不幸になって行くRIKU・・・って、春樹と同じパターンじゃん・汗
そこはまあ、突っ込まないでやってね^^

会社? これはねえ・・・、上司次第ですょ。
どんな職場もね。
ねみさんは、もう少しだけ、学生を謳歌しましょう~^^

こんにちは^^ 

あははは~!
玉城、リクの事が心配なんですね~。
てか、こうやって無造作に送りつけちゃう所が・・・(笑)。

でも、根本的に「ウザい」女達の干渉より、玉城の不器用さがまたリクのツボなんだろうな~・・・なんてi-229

何か~、長谷川さんと多恵、ライバル??なの?って感じですよねv-290
二人のこれからの心境の変化もまた楽しみです。

蘭さんへ 

玉城って、すごくリクの事を心配してるわりには・・・どうも、手段が間違ってるような^^;
そうですね。蘭さんのおっしゃるように、そんな不器用さが今のリクの癒しになるのかも。

玉ちゃんは、バカでいい!・・・ってことで。

今回は、ウザい多恵ちゃんは、あまり表に出てきません。
多恵はリクが好きというよりも、きっと、玩具的に気に入ってるんだと思いますねえ。(こわ)
でも、・・・・長谷川の想いは、・・・すごいですから(●´艸`)ヾ

今回は、スロースターターなので、しばらくは穏やかなシーンが続きます。
穏やかではありますが、・・・ちょっと色気を出してみました^^

NoTitle 

おいおい!

玉ちゃんらしいといえば、らしいけど、縁切りならともかく縁結びのお守りなんて混ざってた日には、霊と縁結び…げほんげほん!!

しかし、いくら慰安旅行たって二か月もリクをほっとくなんて!!玉ちゃん!!

…まあ仕事だからしかたないか…。

有村さんへ 

ふはは。そそっかしい玉城のことだから、そんなこともあるかもですよん~・笑

次回を読んで、笑ってください!

そうなんですよ。
こんな時期に、2カ月も居ないなんて・・・。

こんな時期に!!

仕事・・・。いや、美味しいもの食って、ちょっと記事書いて、あとはバカンスなんだ~、きっと!!

こんな時期に、リクをほったらかしにするなんて~~。(←しつこい)

ここに戻ってきました 

いやぁ、ちょっと久し振りですけど、リクくんと長谷川さんと多恵ちゃんと玉ちゃんの作り出すこの世界、この空気、なつかしい気もすれば、心地よくもあります。

冒頭のシーンの大人と子どもは……どう展開していくのでしょうか。

玉ちゃんが送ってきたお守りの数々を広げて、三人であれこれ言っているのが楽しい。
この楽しさはつかの間なのでしょうね。
きっと大変なことが起きるのでしょう。
読者としては「大変なこと」も楽しみにしています。

あかねさんへ 

あかねさん、おかえりなさい~。

リクにまた帰ってきてくださって、うれしいです。
あの子たちも、私にとっては可愛いキャラたちなので。

あの4人の微妙な関係が、いまとなっては懐かしいです。
この「5」は、最終章へのプロローグでもあります。
ミステリー要素が強くて、ややこしく感じますが、とても単純な物語なので、気楽に読んでやってくださいね。

冒頭の少年。きになりますよね^^
正体が分かるのはずーーーっとあとなので、こちらものんびりと想像してやってください。

このあと、ややこしい事に巻き込まれますが、騙されてはいけません。
本当に大変なことは、もうリクのすぐそばに・・・。

今回玉ちゃんはいませんが、どうかリクたちを応援してやってください。
そして、リクが大変な時にリゾートを満喫している玉城を、罵倒してやってください(笑
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