KEEP OUT 3 君に伝えたいこと

KEEP OUT3 第18話 淵

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「もしかして春樹、何か病気なんですか?」
「え?」

唐突で思いがけない隆也の言葉に、美沙は高い声を出した。

「その……触っちゃダメな病気とか。なんか、感染力の高いウイルスとか」
「ウイルス?」

美沙が呆れたようにそう言うと、隆也は眉間に皺をよせた。
あまりにも的はずれな幼稚な予想に、美沙の緊張が一気に緩む。

「まさか。そんなことあるわけないでしょ? 隆也はそんな風に思ってたの? そんなことだったら私はいくらだってあの子を……」

そこまで言って美沙はハッとした。

取り返しの付かないミスに気付いたが、遅かった。

隆也が真剣な、咎めるような目つきで美沙をまっすぐ見つめている。

「そんなことだったら……って何です?」


偶然なのだろうか。それとも、ハメられたのだろうか。
次第に美沙は、隆也が春樹を思いやる気持ちの強さに、気迫のようなものを感じ始めた。
同時にそれは美沙に対する嫌悪感なのかも知れないと思った。

どうしていいか分からなかった。

これほどまでに春樹を気遣う隆也に、隠す必要があるのだろうか。
何よりも、もう美沙は考えることに疲れ果てていた。
何が最善なのか、もう分からなかった。


「美沙さん」
隆也が問いつめる。
「春樹は……」

美沙は立ったままうつむき、喉の奥から絞り出すように小さく呟いた。

「春樹は大事な友達を一人、失うかもしれない」

それはもう拒否する言い訳ですらなく、言ってしまったも同然の言葉だった。

「それを聞いて俺が春樹を避けるようになるとでも思ってるんですか? バカバカしい。逆に聞きたいですよ。大事な友達を嫌いになる、どんな理由があるってんですか」

真っ直ぐな眼差しをこちらに向けてくる隆也に、美沙は強張っていたものが弛緩するのを感じた。
彼に話すことで開放されたい。誰かに理解されたい。

だけど、もしダメだったら?
もし隆也が春樹を避けるようになったら?

その両極の二つが美沙の中で対立した。
けれど隆也の性急な厳しい目は、ゆっくりと考える猶予を与えてはくれなかった。

「美沙さん!」

ごめんね、春樹。

美沙は、ゆっくりと口を開き、その言葉を口にした。

決して誰にも言わずに封印するはずだった、春樹の秘密。



        ◇



春樹は1階エレベーターを降りてすぐの、薄暗いエントランスの壁に体を預け、ボンヤリ外を眺めていた。

タクシーを止めて病院へ行く。
その事に何の意味もないような気がして、もう15分、そこに佇んでいた。

隣のビルの1階は若い子に人気のファーストフード店になっている。
学校帰りの女子高生達がそこへ向かおうと、制服の短いスカートをフワリと揺らしながら、楽しげに春樹の前を横切ってゆく。
きっと中間試験の期間中なのだろう。
こんな早い時間に下校なのは。

その後ろを、男子高校生が3人かたまり、肩を組んでふざけあいながら通り過ぎてゆく。
楽し気な笑い声がひと時響き、そして消えていった。

退屈すぎるほど平穏で当たり前だった世界が、自分とはプッツリと切り離されて、今では別の世界のように感じる。

切り離されたこちら側。
このエントランスのように、薄暗く無機質で何もない世界に居るのは、この世で自分だけのような気がした。


―――美沙は?
胃のあたりがぐっと締め付けられた。

兄の元恋人。春樹を弟のように思い、世話をやいてくれる美沙。
けれど、美沙にとって春樹がどんどん重荷になっていることを、春樹自身イヤになるほど感じていた。

昨日あんな風に自分の辛さを美沙に訴えたことを、春樹はとても後悔していた。

どうして自分の胸にだけ収めておけなかったのだろう。
自分で判断してやったことではないか。
あんな事を言っても美沙が苦しむだけなのに。
“あなたは悪くない”という言葉を言わせたかったわけじゃないはずなのに。
これ以上甘えて、どうするつもりなのだろう。

揚句に今回の事が、危ない目に遭った挙句の情報だったことも、美沙に知られてしまった。
また一つ、美沙の負担を大きくしたに違いない。

春樹は大きく息を吐いた。
そして自分に問いかけてみた。


仕事を辞めさせられ、そして「サヨナラ」と美沙が言ったら、その時僕は、どうすればいいだろう、と。



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~ Comment ~

NoTitle 

あっ! 美紗バラしおった!

その後、隆也がどんなリアクションをしたのか・・・・・・。
今回は伏せましたか。笑。

うまいなあ。これ、絶対次も読みに来たくなりますよね。笑。

ヒロハルさんへ 

ばらしちゃいましたね。
さすがの美沙も、「え~い、どうにでもなれ!」って心境だったのかもw
隆也の勝ちです。i-189

隆也、どうするんでしょうね。
隆也の態度しだいで、これから先のKEEP OUTシリーズの方向性が変わっていく・・・のかも。
(まったく関係なかったり・笑)

あと2話です。^^

NoTitle 

美沙、言っちゃうのー! 孝也に 言ってしまうのーー!(ii▽ii)

一人 孤独に押し潰されそうになりながらも 必死に 耐えて来た春樹が それを知ったら!!

美沙の心の負荷は 軽くなるどころか もっともっと 重くなるのに...
そして 孝也も 自ら望んだ事だとしても...

春樹の”淵”、美沙の”淵”、孝也の”淵”
誰が見捨て 誰を救い 誰に守られ・・・それでも 生きて行くしかないのか、この時を

あぁ 無常、無情...(=ω=)...byebye☆



けいったんさんへ 

言っちゃいました!
ああ、けいったんさんに怒られるーー。

きっと、美沙の心の負担は重くなるでしょうねえ、いろんな意味で。
だって、結局隆也を味方にすることはできないだろうし。
美沙を分かってくれる人は、やはり誰も居ないんです。

さて、隆也はどうでしょう。
隆也はね・・・あいつは、・・・(い、言えない)

春樹はどうでしょう。
ここが問題なんですが。

彼はいつだって受け身。周りに染められる。それが分かるラストじゃないかと思います。
(あ、まだあと2話ありますよ^^)

さて、けいったんさんに怒られる前に、脱出の用意をして置かなきゃーーーー。

NoTitle 

隆也くん、絶対信じないだろうなあ。

誰だって信じるわけないわな、こんな話。

美沙が信じたということは、美沙は春樹を「自分にとって特別な人間」とみなしているということだけれど、春樹も隆也も、美沙自身もわかってないだろうしなあ。

ドロドロだなあ、この三人。

もう美沙さん、覚悟を決めて春樹を……あなたも春樹も大人みたいなもんなんだから。精神的には違うかもしれんが(--;)

ポール・ブリッツさんへ 

普通、信じられないでしょうねぇ。そんなこと。

まあ、そんなサイコメトラーとかいう能力が、あるらしい。。。くらいは思っていてもねぇ。

とにかく、次回を見てください^^
あれが隆也です。

今回はたぶん、そこまでドロドロで終わらないと思いますが・・・。
ドロドロになるのは・・・「5」「6」あたりですね。酷いもんです。

美沙に何吹き込んでるんですか、ポールさん。
今、美沙にそんなことされちゃ、最終回が狂ってしまう~~。

でも、ちょっとそんな風に破滅する二人も見てみたい。^^
(誰か書いてくれないかなああ)

NoTitle 

愛する人には残酷なまでの真実を。

そしてその真実の残酷さを押し流して余りある愛を。

すみません少女小説みたいなセリフ吐いて(^^;)

ポール・ブリッツさんへ 

ん~~、いいですね。e-267
残酷で美しい結末。
けれども、最期には荒波を乗り越えた深い愛が待ってる・・・。
ポールさん、意外とロマンチスト。

・・・・却下(爆w

私がそんなに優しいと??

また別の、愛にあふれながらも、悲壮な、けれども穏やかなラストを・・・書きたいと思うのですが。
形になるのかなあ・・・。

今書いてる「5」は、RIKUシリーズのあとの公開なんで、もう、何カ月も先の公開予定です。
(みんな、このシリーズ、忘れてる頃かしら・涙)

今頃、「春樹の一家3人の惨事」の捜査状況が、ネックになってきました。
あのとき、ずいぶん水面下で警察が動いていたことを、最終話で出さざるを得なくなりました。
さあ、どうなる事やら・・・。

NoTitle 

少ない登場人物、春樹がサイコメトラー。
普通なら、次から次の難事件を解決していくだけに終わる。

だけど、limeさんの手にかかると、表情がガラリと変わってしまう。

異能を操る能力者の春樹ではなく、独りの苦悩する青年。
瑞々しく書かれるその描写に妄想を誘う。
そして美沙のやりきれない感情、苦悩が手に取るように伝わる。

この物語はこれから始まる気がする。
奥行きを見たい。広がりを見たい。

楽しみだーーー
v-391

ぴゆうさんへ 

そう言っていただけると、すっごく嬉しいです。

「呵責の夏」で、同時に春樹というキャラを生みだしたときは、
これほどまでに苦悩するとは思わなかったんですが。

サイコメトラーという能力者に、もしも自分がなってしまったら・・・。
何日も、そんなことを考えてすごしたところ、
本当に辛くて、たまらなくなって・・・。

はい、まだこの物語は続きます。
彼らは、優しいがゆえに、それぞれに苦悩していきます。

続編は「RIKU」の後になるので、ずいぶん先ですが、じわじわと書き進めています。
(・・・って、書けるのかしら・汗)

こんばんは^^ 

こ・・・・・・・・っこれは・・・・・・・・・v-12



美沙ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
おいおいおい~~~~~~~~~~~~~~!!!

何か色々色々色々気になるけど、また月曜日に続きを読みに来ます。
ううう~~、春樹~~~v-406v-406

あっそれと、決して「隆也『うざ』派」ではないんですよ^^;
何つーか・・・・・・子供だな~と・・・・・。
思いが強いせいか、「スルー」出来ない所が、粘着質に思えて^^;
強過ぎる執着は、時として大切なものを傷付けるって事に、まだ気付けてないんだな・・・と感じてしまいました。

・・・・・・自分の体験上でのコメントです^^;

蘭さんへ 

い・・・・言っちゃダメでしたか~~~~!i-201
今更、うろたえる私・笑

隆也の追い詰めと、精神の疲弊で、美沙も持ちこたえられませんでした。(;_;)
これが、この先どう影響するのか。(シリーズ、もっと後半に)
作者も怖いです^^;

お、よかった、まだ隆也にも望みはありますね?
確かに、最強のウザキャラではありますが(^^ゞ

うん、そうなんです。お子様なんですよね、隆也。よくも悪くも。
一人を救うために、他を傷つけたり、執着しすぎて、大事なものを傷つけてしまう。
時にスルーして、一歩引いて、見守る優しさ。それって大事ですよね。

いつかきっと、隆也はなにか、やらかしそうです (^.^;)・・・「5」あたりで。

さあ、そんな不安はありますが、とりあえずこの「3」はどうなりますやら。
月曜日にお待ちしています(^o^)
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