KEEP OUT 3 君に伝えたいこと

KEEP OUT3 第9話 訪問者(その2)

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「さっきの人は?」
薫が帰っていった後、美沙が煎れてくれたコーヒーを前に、ちょこんと応接セットの椅子に座った隆也が訊いた。

「ああ、本社の人。社長の弟の薫さん。なんか変わった人でしょ」
本日二人目の訪問者も、美沙はにこやかに迎えた。
事務処理はほぼできていたし、あと数件谷川理沙関係で電話を入れれば、手は空く。時間にゆとりはあった。

「若いツバメって何ですか?」
「軽い冗談だから。気にしないで」
美沙は自分のワークデスクに座ったまま、先程薫が注いでくれた冷めたコーヒーを啜った。

「美沙さんの恋人?」
思わずそれに咽せそうになる。

「まさか。どうして?」
「ハニーって」
「だから。あの人は頭の先からつま先まで冗談で出来てるのよ。仕事以外の時はほとんど信憑性の有ることは言わないわ」
「それなら良かった」
「ん? なんで?」

美沙が聞き返すと隆也は居心地悪そうに立ち上がった。

「なんでもないです。仕事中にお邪魔しました。コーヒーごちそうさま」
コーヒーは手つかずのままだ。

「春樹に用事があって来たんでしょ? 居なくて残念だったね」
「近くを通ったもんだから、ちょっと渡しものしようと思って」
隆也は小さな水色の紙袋を持ち上げた。

「渡してあげようか?」
「いえ、いいです。自分で渡しますから。……あの、今日も春樹、聞き込みですか?」
美沙は少し驚いて隆也を見た。

「どうして?」
「昨日ゲームセンターの前でバッタリ会って。人捜ししてました」
「ああ、そういうことね」
「あの……、ああいうのって危なくないんですか?」

隆也はもう一度ソファに座ると真剣な目で美沙を見つめてきた。
そこに、今までため込んで来た何らかの想いを感じ、美沙はほんの少し身構えた。

「もちろんよ。危険の無い調査を春樹にはやってもらってる。こんな職業だからね、けっこう厄介な調査もあるけど、充分に配慮してるつもりよ」
「本当に?」
「当たり前よ。私だって春樹が心配だし」
「でも、それだったらなんで……」
隆也は一度息を呑み、続けた。

「なんで春樹を雇ったんですか? 俺、春樹は普通に大学行くべきだと思うんです。あいつ、俺なんかより頭いいのに。高卒で探偵とか……」
さすがに失言だと思ったのか、そこで隆也は言葉を止めた。

美沙はフッと体の力が抜けるのを感じた。

少なからず自分に敵意を持っているらしいこの少年を前に、ほんの少し身構えていたはずなのに、知らず知らず微笑みかけていた。
想いは同じなのだ。

「ありがとうね。春樹を心配してくれて」
美沙がそう言うと隆也は少し困惑したような目をこちらに向けてきた。

純粋に春樹のことを心配して気遣ってくれるこの友人を、心底ありがたいと思った。
彼がいてくれて、本当によかったと。

しかし同時に、何も知らないこの少年が嫉妬するほどうらやましくもあった。

自分も、そうであったらどんなに楽だったろう。
ただただ、春樹を気遣っていればいいのだ。

もしも今、この少年に自分たちの苦悩を打ち明けたなら、彼は何と言うだろうか。

春樹には触れて人の心を読み取ってしまう力があり、その恐れから、この世の中の大海を泳ぐ勇気を持てずにいること。
そして自分は、その春樹に知られてはならない残酷な記憶を持ってしまっているという事。
愛してやまない春樹を守りたくても、守ることはおろか、触れることもできないという事を。

それでもまだ、彼は同じことを言うだろうか。
美沙に敵意を向けるだろうか。

隆也に向けられた微笑みが一瞬だけ、愚かな自分への嘲笑に変わった。

言えばどうなるか分かっているのに。

そんなことをチラリとでも考えてしまう自分に、辟易した。



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~ Comment ~

NoTitle 

春樹=ジョニー。美沙=マック。隆也=サイモン。

うわあ縁起でもない連想を~!!

ポール・ブリッツさんへ 

うわ~、なんて酷な配役なんだ~~。

でも、www。

隆也の中では「春樹、俺が救ってやる」・・・とか、思ってるのかも。

うわ・・・血を見るよi-201

NoTitle 

何の含みもなく 純粋に春樹を心配する隆也

でも その思いや言葉は 時に 毒を持ち 心に突き刺す

それは 春樹にも 美沙にも 明かせない真実があるから

・・・と  何だか 今日は 頭痛のせいか 歪んだ考えが・・・
ほんと 久し振りの頭痛、辛いっす...(艸`-д-)ξ...byebye☆

けいったんさんへ 

けいったんさん~!i-201
だめですよ、無理しちゃ。
頭痛の時は薬飲んで寝てなきゃ。

私もさっき、雨の中自転車で帰って美女美女で(なんだこの変換)びしょびしょで、頭痛が酷かったんですが、バファリンで回復しました!e-267
バファリンつおい!

隆也、ウザいでしょ^^
自分が一番心配してるんだって思ってるしね。
いい子なんだけど・・・ねえ。

次回はさらにウザいです!!隆也。
隆也と美沙、どちらを応援するかによって、見方が変わるかも・・・。
悪い子じゃないんですが・・・・。(弁解する)

けいったんさん、お大事にねe-267

こんばんは^^ 

おお~、今回は隆也のお話ですか~・・・・・

てか、何度か読み直しても「ん?」と感じる所があって。
>『「美沙さんの恋人?」
思わずそれに咽せそうになる。
「まさか。どうして?」
「ハニーって」
「あの人は頭の先からつま先まで冗談で出来てるのよ。仕事以外の時はほとんど信憑性の有ることは言わないわ」
「それなら良かった」
「ん? なんで?」
美沙が聞き返すと隆也は居心地悪そうに立ち上がった。』

このシーンだけ単純に読んだら、隆也が美沙に惚れてる感じがするんですけど・・・そうなのかな??
じゃなくて、春樹が美沙に想いを寄せてる事を察して、隆也のただのお節介根性とか??

ごめんなさい、読みが浅いんですよね~e-330
こりゃもう一回読み直さなきゃかな??(笑)

隆也と美沙の関係(変な意味じゃなくて・笑)、これからの展開が楽しみですね~。
私的に見ると、二人はライバル~って感じなんですけどね^^;

NoTitle 

春樹さんが。
春樹さんが全方位から愛されていますね。

美沙さんも美沙さんで隠れた思いを持っていますし
隆也さんと美沙さんはそのうち衝突するんじゃないでしょうか

蘭さんへ 

ほんとだ! そこだけピックアップすると、そうなりますね(^^ゞ

いやいや、蘭さんの読みが浅いわけじゃないです。
(読み直さずとも、もう蘭さん、当たってるwwww)

次回、隆也の本音が出てきます^^
隆也のウザさ、本領発揮です。
「そこまで言うか」って・・・笑

秘密だらけの人達なんで、スッキリしないシーンが続きますが、
もうちょっとしたら本題に入りますね^^。(重い本題ですが・・)

そしたら急展開してスピードアップしますので・・・もうちょっとジリジリしてくださいi-201

ねみさんへ 

愛されてますよね、春樹^^

三角関係とかいうのをぶっ飛ばして、一点集中? 
相関図を作るのが怖い

そうですね。鋭いです、ねみさん。

そんな展開も、あるやもしれません!!(あるって言えばいいものを・・・・)
でも、美沙は大人ですからね~~。ふふ。

NoTitle 

ご無沙汰しております・・・ _-)))コソコソ

いやはや、美沙さんのセリフがいちいちツボです。
んでもって、無駄に背の高いパーマかかりすぎの男がこれからどう絡んでくるのか、非常に楽しみであります(^^;


秋沙さんへ 

お、いらっしゃい^^

美沙は、秋沙さん的にどうでしょう。
好きかな?嫌いかな?

無駄に背の高いパーマかかりすぎの男は、ちょくちょく関わってきますが、あまり活躍しません・笑
ただのムードメーカーです・・・・・・・が、ただ今、彼の番外を書いているのは、ここだけの話・笑

NoTitle 

言っちゃいけない、でも、誰かに話して、共有して、楽になりたいそんな美沙さんの苦悩がわかりますね~

kyoroさんへ 

分かっていただけますか~i-189

美沙も、まだ26歳。そんなことも考えちゃうんですよねえ。
同情してしまう・・・割に、助けてあげない作者(^_^;)

NoTitle 

少し考える。
美沙の立場ってどう。
春樹に対しての秘密。春樹自身の秘密。
その二つを知っているのは自分だけという半分ヤケクソみたいな気持ちと優越感。
隆也に対しての目線にはあるだろうな。
共有する気なんて絶対ないのにさ。
女だよ。

ぴゆうさんへ 

美沙の中に「女」を見たんですね、ぴゆうさん。
深い所を読みとってくださって、うれしいです。

この次の話で、美沙が見せる表情は・・・・あれはもしかしたら、そうなのかも。
作者も戸惑うような態度を取るんですょ。美沙

隆也の優しさを、姉のような気持ちであり難いと思いながら、
深層心理では春樹の秘密を知ってる優越感を持っているとしたら。

このトライアングルは、ややこしくなりそうですね。
書きながら、手の中でどんどん形を変え、変貌していく登場人物たち。
(私も楽しくなってきました(*^_^*))

NoTitle 

limeさん。
こんにちは♪

友達だからこそ心配で余計な事を言ってしまう事ってありますね・・・
でも、その思いは時折相手に通じない事もあります。
そんな時、人の人生をどうこうできるわけもないのに、
なんとなく自分の無力を感じたりします。
さやいちなんて、何度自分の力のなさに失望したか。
隆也も春樹は心配だからこその、おせっかいなんでしょうね。
でも物事はそんな単純なものではない・・・と。

美沙もふわふわした風で、実になかみはまじめですね☆
真剣に悩んで、追い詰められてしまってるような。
何かいい打開策があればいいのだけれど。。。

さやいちさんへ 

ありがとうございます^^
そうなんですよね。
美沙も隆也も、それぞれに春樹のことを思っているのに、腹を割って話せない距離があって。

さやいちさんも、ほんと、そうですよね。
一生懸命友達の為を思って、悩みを聞いてあげても、なんとなく解決してあげられないという、無力感を感じてしまう・・・。
さやいちさんのは、リアルにしんどいですよね><
でも、そんな優しさは、さやいちさんの人間としてのポイントをアップさせてると思います。
(もっと良い表現は無いのか。私・・)

美沙は、隆也の優しさまでもびんびん背負って、ますます苦しい境地に陥ります。
美沙、つらいです><
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