KEEP OUT 3 君に伝えたいこと

KEEP OUT3 第5話 封印

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警察の調べが実際どこまで進んでいたのかは美沙には分からなかったが、結局その後真実が発覚することも無く、仲の良かった家族に不穏なうわさが立つこともなかった。
ただそれは、やり切れない不運な事故として近しい人々の記憶に残った。
春樹という、哀れな遺族ひとりと共に。

「美沙、灰が落ちるって」
ぼんやりしてタバコを持っていた美沙の手元に灰皿を寄せて春樹が言った。
美沙は辛うじて灰を机の上に落とすことを免れた。
「やっぱりおかしいよ。気分でも悪いの? コーヒーでも煎れようか?」
まるでコーヒーが万能薬だと信じているような口振りで訊いてくる顔が愛おしかった。
「うん、いいね。煎れてくれる?」
美沙がそう言うと、少年は笑って頷いた。

3年前の火災の後の春樹を思い出すのが、美沙には一番辛かった。
大好きだった両親と兄を一度に亡くしたのだ。
美沙には想像すら出来ないほどの悲しみだったはずだ。
けれども春樹は美沙の知るかぎり一度も取り乱したり、人前で涙を見せることは無かった。

遠縁の親族によって告別式はひっそり行われた。
死に顔を見ることも叶わず、完全に小窓を閉じられた3つの棺の前に立った春樹は、消え入りそうに小さく、幼く見えた。
どれだけその時美沙は春樹を抱きしめてやりたいと思ったことか。
胸が張り裂けそうだった。
けれど、もし肌が触れてしまったら春樹は一瞬にして美沙の記憶を読みとってしまうだろう。
両親を愛し、兄を尊敬することを唯一の心の支えにしている少年を更に傷つけることなど出来るはずがない。
もう、これ以上春樹を苦しめる事は起きてはならない。何一つ。

春樹を見守りながら距離を取ればいい。笑えるほどそれは文字通りの「距離」だ。
春樹がそれを不審に思うことはないだろう。
美沙が自分に触れないのは当然と思っているのだから。
真実は美沙の中に封印された。


「はい、どうぞ」
香ばしいコーヒーの香りが美沙を包み込んだ。
同じカートリッジなのに、春樹が煎れるとなぜか絶妙に香りがいい。
「サンキュー」
「気分良くなった?」
「最初から別に何ともないよ」
「そう? それなら良かった」
色素の薄い、優しい色の瞳が美沙を見つめる。
その瞳に映っているのは何だろうと美沙は考えた。
死んだ兄の恋人。
忌まわしい能力の秘密を打ち明けた後、前よりも余所余所しくなった姉代わりの女。
いつまでも一人前扱いをしてくれない、冷たい職場の上司。

手を伸ばして、そのまだ幼さの残る頬に触れてみたいと思った。
そう思うたび、どうしようもない腹立たしさが込み上げてくる。

あの忌まわしい事件を起こした兄に。
そしてこの弟に与えられてしまった、呪われた力に。


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~ Comment ~

NoTitle 

コメント一番乗りっ!

さて、それにしても重過ぎる話です。
前回のコメントと同じ感想しか・・・。

兄を尊敬してきた弟にいつかは伝えなければならないのでしょうか?
墓場までもって行ってもいいんだぞ!
ようやく春樹に触れたがらない理由が少し
分かってきた気がします。(おせぇ

ねみさんへ 

お、早い^^

ねみさんにも美沙の苦悩が分かって戴けましたね。
美沙は墓場まで持っていくつもりです。
でも、春樹が好きなだけに、つらいですねえ。

ず~~っと同じような美沙のモノローグで、ごめんなさい。

次回から、春樹視点になって、ぐっと展開しますね^^
いよいよ調査開始です。

おはようございます^^ 

この3になり、私にとって美沙が本当に愛しいキャラクターになって来ましたv-345

窓の外に目をやりながら、過去を思い出し苦悶する美しい女性。
綺麗な唇の形、タバコを持つ指に彩られた寝入るの色さえ見えて来るような肉付きを、私の妄想の中でし始めましたよ~limeさん(笑)。

過去は確かに重い。
でもきっと、この二人には希望の未来があるのだと信じてあげたい・・・・

あくまでも、ミーハーな読者目線です^^;

次回が待ちきらんぜよ~~~i-237

NoTitle 

ふと思うのです。

春樹は、心の奥底で兄の真実を悟ってしまっているのではないかと。

まぁ、忌まわしい過去が無くても、春樹の力そのものが、
他者との触れあいを許してはくれないのでしょうけれど。

だけど、この能力、自身で使い分けができるように
なれば解決しますよねぇ。見ないように意識して
できないものか……(-"-;)

NoTitle 

美沙の苦悩は 解決の糸口が 見えないまま・・・
春樹の事を思う気持ちが、熱くて悲しいですね。

次回は 春樹視点で ぐっと展開するの!
もう どんな方向へ 行くか ちっとも分からないけど  それもそれで 楽しみ倍増ですよ~~♪
アッチかな?...o(・ε・*o)(o*・з・)o...コッチかな?。。。byebye☆

蘭さんへ 

そうなんですか!
美沙が気に入られるとは、予想外でした(どんな薄情な作者・笑)

「2」では、ちょっと嫌われてましたからね^^
いや~~、嬉しいです。
でも、あれですよ?
片づけできないし、料理しないし、寝像悪いし、口悪いですよ・笑
でも、イイ女なんです^^

さて、この二人に希望の光があるのでしょうか・・・。
この「3」は、ほんの通過点に過ぎないので、問題の解決には辿りつかないと思うんですが、
模索し、あがいていく彼らを少しでも描けたらと思っています。

楽しみにしてもらえて、感激です(ToT)e-267

narinariさんへ 

> 春樹は、心の奥底で兄の真実を悟ってしまっているのではないかと。

おお、そう思いますか?
さて、どうなんでしょうね。
今、真実を知っていなくても、いずれ気付く・・・かもしれません。

でも、そうなんです。
根本は、「真実」がバレルかバレないか、では、ないんですよね。
そこが問題なんです。
(いや、全然先の物語は書いていないんですがi-202

春樹の能力がセーブ出来れば一番いいんですが。
なかなか難しいようです。聴力や嗅覚みたいなもんなんでしょう。
(「白昼夢」のマキは、セーブ出来るのにね(^.^;))

けいったんさんへ 

じれったい美沙のモノローグばかりで、ごめんなさい^^
(おかしいな、もう少し展開が早いと思ったのに、今回はじわじわ・・・でした)
美沙の苦悩は、まだまだ続きます。
と、いうか、また新たな苦悩が舞い込みます。

そして次回から春樹君、頑張りますよ。
しっかりしてるのか、頼りないのか・・・・。作者もハラハラしてます(^_^;)

どっちの方向に行くのか、じ~~っと、見守ってやってくださいね^^

NoTitle 

もしも春樹の能力が「暴走」したら……と考えて少し怖くなってしまった。

床に落ちた髪の毛一本に触れただけでも、その元の持ち主の記憶がどどっと頭の中に流れ込んできたら、と。

まあlimeさんもそこまで鬼ではあるまいから妄想にとどめておくけど……。

ポール・ブリッツさんへ 

さすがに、それはないですねえ・笑

でも、優秀なサイコメトラーは、そんなこと出来るそうですね。
それどころか、いきもの以外に触っても、そこから過去の風景が見えたり・・・。

そんなことができたら、警察はいらないなあ・・・・。ww

春樹は、これ以上能力が鋭くなることは無いです。
そのかわり、セーブすることもできません(T_T)

NoTitle 

この二人に未来はあるのかな。
忌まわしい過去の呪縛を解き放たない限りは、双方にというか美沙には地獄だよね。
解き放たれるとしたら、春樹が第三者から事の顛末を知る事だよね。
だってこのまま触れずにいられるのか?
どう見ても好き合っている。
ノォーーーーーー
また、妄想モードに突入してしまう。
ニャーーーーー
v-283

ぴゆうさんへ 

私も思うんですょ。
第三者からでも、誰からでもいいから、あの事件の真相が春樹に伝われば・・・。
さあ、そこからどう進むかが、問題ですね。

私の頭の中にある結末は、読者に受け入れられるのか・・・。
怖くて、まだ書いてないんですが^^;

とにかく、春樹はその前に、大きな試練をいくつも迎えます。
美沙と結ばれるかどうかは、もしかしたらこの物語の柱ではないのかも・・・。

結末を書かずに、逃げたくなっている、ひどい作者です^^。

NoTitle 

lime様、こんにちは♪

春樹の兄は悪だったんですねっ(怒)
春樹にとっては尊敬する兄、美沙にとっては親しい友人だった故人を、どうこう言うのはアレなのですけど、ある意味、今の二人の絶望的なほどの「距離」を未来に渡るまで決定付けたのは、この兄じゃないですかっ ・゚・(つД`)・゚・
せめて、せめてもう少しだけ‥‥違うビジネスにするべきだったのにorz
あれっ、そうなると私が真に恨むべきは、作者のlime様、ということ???(笑)
うわーん、悲しいっ。

やっぱりどうにもこうにも、私の中では「美沙」という存在は特別な人物で、この人の側からものを見ると、お話にまた違った色味が加味されて、春樹の優しさ、些細な気遣いが、どれほど美沙本人に突き刺さるか、とってもよくわかります。
いつか、幸せになってほしいです(;つД`)
で、できれば、春樹と一緒に‥‥(無理かなあorz)

またお邪魔しますねっ(*´∀`*)ノ

土屋マルさんへ 

そう、諸悪の根源は、この兄、圭一~。

し、しかし、そんな設定にしたこの作者が、一番非道ということに??((((;゚Д゚))))

美沙は本当に苦労症ですね。
もしも、春樹の秘密を知らなかったとしたら、
美沙はきっと春樹を抱きしめて、罪悪感を抱かずに春樹に真実を伝えていたでしょうに。

春樹は壊れちゃってたかもしれないけど・・・。涙

でも、このままじゃあいずれ春樹も壊れちゃうんですよね(おっと、喋りすぎちゃう)
まだ26ですし、美沙だって子供。
背負うものがあまりに大き過ぎました。

美沙、ごめんよ! なんとか抜け出して!(無責任な・・・)

この二人、どうなるのが一番なんでしょうね。(って、答えはもう出してしまってるんですが・・・)


美沙さんの苦悩… 

「少しばかり異質な性癖を持ってしまった圭一は、それをひた隠しにし、いい子を演じ、両親の愛を求めていたんじゃないかな。と、思います。」

↑まさにその通りだと思います。
世間的に完璧で、異質なモノを許さない親って、子どもにとって脅威だと思います。
子どもはある程度成長すると、親の役に立てる時期が来たと思う。対等でありたくなって、少しばかり親に意見してみたり、意見を求められて内心有頂天になったりする。同じモノを観て同じように笑ったり憤ったりすることで、認められたと、頼りにされているという 実感を得る。
それはつまり、子どもが、親にも完璧ではない部分を見つけて安心し、自分も役に立てると信じさせてやる、それも本当は親の役割だと思う。
完璧で非の打ちどころのない親なんて、子どもは求めていないんだ。

だから、最初はちょっとした異常性癖に過ぎなかったものをカミングアウト出来なくて、どんどん化け物を育ててしまう。
そして、子ども自身がそれを異常だと、親の意に添わないものだと自覚しているからこそ、完璧なまでに隠してしまう。
見つかったら見捨てられるから。
そう、これです。
子どもは大好きな親に見捨てられることのみ、恐れている。だから、暴力にも逃げ出さないし、ただ、ひたすら愛されたいと祈る。

悔しいなぁ。
圭一の心の悲鳴こそが聞こえて。
でも、美沙さんが彼を恨んでしまうこともものすごく当然だから、余計に苦しい。
いや、悔しいっす。

完璧な親なんていない。
そうなんだよね。
誰も彼も模索しているのに、悲しい事件は減らない。

死にゆく者はそこで終わるけど、こうやって残されてしまって、生きていかなきゃならない者は、それを見守るしか出来ない者は、一番苦しいですね。


fateさんへ 

> 子どもは大好きな親に見捨てられることのみ、恐れている。だから、暴力にも逃げ出さないし、ただ、ひたすら愛されたいと祈る。

本当にそうですよね。
子供って、認められて愛されることに寄って、自分を確立できる。
自分が学校で苛められたことを、親に相談できない子供って多いですよね。
それもすごく分かるんです。
自分は、ちゃんと世間的に認められた、いい子なんだという虚勢を、親にも発信したい。
だから、弱点を親に話せない。

愛されたいと言う願いは、悲劇を生むことの方が多いんでしょうか。
人間って、やるせない生き物ですね。
なんだってこうも、庇護を必要としちゃうのか。

> 悔しいなぁ。
> 圭一の心の悲鳴こそが聞こえて。
> でも、美沙さんが彼を恨んでしまうこともものすごく当然だから、余計に苦しい。
> いや、悔しいっす。

ああ、あらためてそう思いました。
圭一って、可愛そうなやつ・・・。
性癖に流されてネット犯罪に手を染めたのは許し難いけど、
がんばって、がんばって信頼関係を築いた親にそれを罵倒され、全てが崩壊し、自分も親も焼きつくして、
最後には美沙さんにも恨まれて。

いったい何のための人生だったのか。
春樹にだけは、「優しい兄」と、ずっと記憶に留めておいてほしいな。(T_T)  
どうなるんでしょう。

NoTitle 

limeさん。
こんにちは♪

そうですよね。
一人で抱えるにはだいぶ大きな秘密です。
美沙の心が沈んでしまうのも仕方のない事。
春樹を思えばこそ言えないなんて、
つらいですね。
美沙は春樹を愛してるのでしょうか?
春樹は美沙を愛してるのでしょうか?

さやいちさんへ 

そうなんですよね・・・。
美沙、本当に辛いです。

春樹は美沙の辛さを知らずに、ただ、慕っているのですが、それさえも美沙にしたら、辛いです。

ええもう。
美沙は春樹をどっぷり愛しています。
姉とか、そういう感覚では無く。だから、つらい。

春樹も、この章で徐々に、変化して行くはずです。
春樹は春樹で、恋心をセーブしちゃってるんでしょうけどね。

じれったいですよ~、この章!><

そして、更に辛い事件が起こります。
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