☆感想(観劇・映画・小説)

(レビュー)『神の火』、途中だけど語りたい。

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---盗んだ火は、自分で消し、神へ返すのだ---

まだ上巻を読んでる途中だと言うのに、また感想を書いてしまいました。
いやきっと、全部読んでしまったら、逆に放心で何も書けなくなりそうで。
途中経過の感想なんて誰も興味ないだろうと思うんですが、こうやって溜まった熱を徐々に放出します

今読んでいるのは高村薫先生の『神の火』。
いつもながらめちゃくちゃハードボイルドなんですが、まさか、こんなに切ない作品だとは。
ど真ん中です、先生! どうしてくれるんです!
読むのがもったいなくて、苦しいです。

あ、これから『神の火』を読む皆さん、読んでもネタバレにならないと思う程度に、内容を書いてあります





とにかく登場人物の葛藤、愛情、不安、が、ひたひたと心に沁み込んで来ます。
それは全く飾り気なく、おそろしく淡々と綴られるのですが、それが余計にリアルに胸に響きます。

舞台は大阪。主に阿倍野、天王寺界隈。そして西成。
まさに、私の地元。なじみの場所。

【大まかなあらすじ】
現在は小さな輸入洋書店の一社員である島田。けれど彼はその昔、原子力研究所に勤める技術者であり、極秘情報をソビエトに流すスパイでもあった。
謀略の日々と決別し、すべてを捨てて平穏な日々を過ごしていた彼だったが、己をスパイに仕立てた男、江口と再会した時から、謎に包まれた原発襲撃プラン〈トロイ計画〉をめぐる、苛烈な諜報戦に巻き込まれることになった。国際政治の激流に翻弄される男たちの熱いドラマ。


この物語で、まず私をぐっと惹きつけたのは、良という青年。
主役の島田も、とても魅力的な人物ですが、そんなに登場しないこの青年が、すべて食ってしまいます。

高村先生の思惑にころりとハマってしまうように、登場してすぐ、この青年から目が離せなくなりました。
不可解で危なげな背景を背負っていそうなのに、とにかく優しく誠実、純粋・・・そして、儚い印象を与える青年です。島田も、この良が気になって仕方なくなるんですが、それに、何の説明もいりません。さもありなん、です。

高塚良と名乗りながら、東洋人ではなく、ロシア語と、流暢な日本語を話す。
どこから来たのか決して語らず、西成のあいりん地区で島田の旧友の日野とともに生活する青年。
体を壊し、自分の時間はもう長くは続かないとポツリと言う。

島田も、同じだった。世の中に背いた自分への制裁は、逃れることはできない。
もう、自分には時間が無い。
そう思っている二人の男の、友情とも愛情ともつかないやり取りは、もう、胸が熱くなります。
良と島田が一緒に居るシーンは、どれも宝物のように愛おしくてキラキラしていて、切なくて。
何度も読み直し、先に進むのが辛くなります。

火事場の江口のビルから盗み出した極秘ディスクのせいで、さらに命の危険にさらされる良と島田。
身を隠していたと思っていた良が、ひょっこり阿倍野の島田の会社に現れ、「しばらく会えないかもしれないから」言う。

天王寺公園、そして動物園わきのフェンスでの二人の会話。
「病気なら治療しろ」という島田の言葉をはぐらかし、良は、音海原発にもぐりこみ、自分が作った原子炉が稼働しているのを自分の目で見たいという。

“良はテロリストなのか。”
けれど、その事よりも島田は良の想っていること、心の内をただ知りたいと思うんです。
病を治し、敵から身を守り、生きてほしいと願うんです。
天王寺駅の陸橋で、良の手を離した島田の後悔と消失感が、ジンジン伝わってきます。

手を離しちゃいけないよ~(>_<)
なんで病院に無理やりにでも、放りこまないんだ、島田!

もう・・・本当に生きてほしいんです、良には。
こんなふうに登場人物に切実に思った事はなかった。
なんとか生きてほしい。・・・どうなるんだろう

ところで、さっきも書きました通り、この天王寺界隈、とても馴染みの場所なんです。
天王寺ステーションビル前の陸橋。
天王寺公園。
動物園。
西田辺・・・。
天王寺公園を超えて少し行くと、動物園のフェンスが見え、そこから鳥の楽園舎が見えます。
良が、そのフェンスにしがみつき、「僕、鳥が好きなんです」っていう。

あの、冷たい、心細いフェンス沿いの路地・・・。
改めてあの場所に行ってみよう・・・。
(そのすぐ近くのお寺に、我が家のお墓があって、よく通るんです)
島田が、良の手を離し、喪失感に震えた陸橋なんて、何度通ったことか。

日野と良が生活する西成。
日本最大の日雇い労働者の街。
南海線、新今宮駅から萩之茶屋駅までの間。
バラックの並ぶ、その名も「あいりん地区」は、私が20代の頃勤めていた会社のあったところです。(ふつうのデザイン事務所ですが)
新今宮から、高架をくぐったそこは、まさに別世界です。
バラック。ドヤ街。暴力団関係者が普通にそこらへんにいらっしゃって。路上賭博は普通の風景で。
面白半分に足を踏み入れてはいけない世界が、ほんの100メーター先にありました。
あそこに良が、日野が、いたのかあ・・・。

この先、どうなるんでしょう。
ちゃんと良は生き延びてくれるでしょうか。

「ぷらとん」の番犬としてハンドガンを握り、寒い雨の路地で獣の目を島田に向けた良も、
百貨店で自分にどんどん服を買ってくれる島田に、「どうして僕に、そんなに高価なものを買うんですか」と怒った良も、
盗んだディスクを、島田がPCで確認する間、ただじっと忠実な犬のように傍に座って待っていたいた良も。
どのシーンも印象的。

そして、今朝、出勤前にちょっとだけ読んだシーンで思わず泣きそうになりました。

「君が生きているという証に、毎日、1行でもいいから、僕に手紙を書いてほしい」と、別れ際に島田が言い、
そして良はそれを守るんですが。
その文面・・・。

自分が読んだ本の内容や、好きな場面。本が大好きだと言う事。およそ、命の危険を孕んだ運命の中にあるとは思えない純粋な手紙に、もう、島田の感情とリンクして泣いてしまいました。

島田の、“自分には縁のない、美しすぎるものを拾ってしまったような気がし、内心少し慌ててもいた”という、ピュアな感動にも胸が熱くなり、
ジャケットのポケットに入れた良の手紙が気になって、仕事に集中できない島田の様子が、もう、なんだか可愛らしくてしかたありませんでした。

このあとどうなるのでしょう。(いや、教えないでください)
良、島田、二人の命がどこまで届くのか。
どうか、「リヴィエラを撃て」のような、冷酷な結末が待っていませんように・・・と、願うばかりです。
とにかくどのシーンも愛おしくて堪らない。じっくりゆっくり、読みたいと思います。
(永遠に終わらないでほしい・・・)

最後に、ゾクっときた島田の、江口への台詞。

「もうひとつのキーを僕にください。代わりに僕と言うカードをあなたに差し上げますから。交換しましょう」

何でこんなことを言ったのか分かるから、泣けてきました


《下巻レビューに続く》




--------------------------------------
被災地の方々の一人でも多くのご無事と、生活の復旧をお祈りいたします。
そして、心を痛める日本中の皆さんにもまた、笑顔が戻りますように。

当ブログも、平常運転に戻りたいと思います。
まずは3月10日に下書きして保存してた、このレビューから・・・。



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~ Comment ~

NoTitle 

たしか10年以上前にハードカバーを読んだときは、サングラスを外すシーンでショックを受けました。

完全改稿版らしい文庫版ではどうだかわかりませんが……。読むか。

それにしても、limeさんがどういうところにツボるのか実にわかりやすいブックレビューが続きますね。(^^)

稲見一良先生の「ソー・ザップ!」と、福井晴敏先生の「亡国のイージス」も読んだ感想を聞きたいけれど、ちょっとご趣味とはずれるかなあ……。

「亡国のイージス」のほうは、むしろうちのブログに遊びに来てくれるネミエルさんのほうが専門かもしれん。

ポール・ブリッツさんへ 

ええええ~!
ポールさん、もうハードカバーで読んだんですか?
そうなんですか(>_<)←なんか悔しい・笑
ネタばれにならないように気遣って書いたのにi-237

そう!あの、島田がサングラスを外すシーンはドキッとしました(*^_^*)
カッコいいです。彼。
でも、やっぱり良がいい・笑

じゃあ、知ってるんですね?結末i-201
気になる・・・・。
でも言わないでくださいね!

え??
やっぱり私のツボ、わかりますか!
いゃいや・・・お恥ずかしい(>_<)
もう、バカなんです。見逃してください。

「亡国のイージス」、映画になったやつですね。見てないんですが。
私が好きそうな話ですか?
ねみさん系ですか?

文庫本は加筆400枚だそうです。
ハードカバーと、どんなふうに違うかも、教えてくださいね^^

NoTitle 

『神の火』舞台は天王寺界隈ですか。
記された各スポットは僕もよく知っております。
動物園のフェンス、『あぁ、limeさんもあの道を通ったのかぁ…』と
考えると何か不思議な感じです(笑)
どこかですれ違った事があるかも知れませんね(≧▽≦)

実際あの辺りは独特の雰囲気ですよね。
『何かしらの舞台に使ってくれ!』と言わんばかりの風景です。
しかし『神の火』コレも読まなければなりませんねぇ~。
『わが手に拳銃を』も…。
今年は高村作品一色に染まりそうです。

蛇井さんへ 

本当にそうですね。
どこかですれ違ってたかも。
(阿倍野の陸橋の上でギター弾いてたのは蛇井さんじゃないですよね・笑)

今はFOOPやandになってる場所の、それ以前の描写が出てきたりして、ワクワクします。
内容がとてもハードできな臭いだけに、あの天王寺界隈が、何だか急に映画の中に収まったような、ドラマチックな感じです
梅田やミナミは今まで映画の舞台になっていますが、なかなか天王寺界隈はないですからね。
嬉しいです。
高村先生、ナイスです!
読み終わったらきっと私、本を握りしめて一人、散策します。

蛇井さん、あきらめて、高村先生に染まってください(^.^)

NoTitle 

登場人物のうち、「ソー・ザップ!」は、早瀬青児(ハヤ)くんが、「亡国のイージス」は、如月行(こう)くんが、もろにlimeさんの好みストライクど真ん中だと思うのですが、話自体は、わたしは大好きだけれどアクション色が強いのでどうかなあ、と。

「亡国のイージス」のほうは思想的にちと幼稚なところもあるしなあ。

「ソー・ザップ!」も致命的な問題点があるしなあ。

まあお暇でしたら。

ポール・ブリッツさんへ 

ポールさんが、私好みだというなら、絶対私好みですね・笑
すっかり私の傾向を把握されてるi-237

う~ん、でも、土台のストーリはとにかく大事ですからね。
高村先生の本はどれも、ゆるぎない安定感の上にあって、その舞台だからこそ、あの魅力的な登場人物が光るんですよね。

憧れと同時に、とてつもなくうらやましい・・・。
以前、一生に一度でいいからあんな本を書いてみたい・・・と言いましたが、
今ははっきり無理だとわかります。

だから、高村先生の小説を読み終わるのが辛い・・・。

ああ、またミステリーを書いてくれないでしょうか・・・・。

NoTitle 

ネット復旧!!

あぁlimeさん!私も読みかけで語ろうかと思っていたところでしたよ!

私はちょうど、地震の前日に上巻を読み終わっていました。
ライブがあるし、ちょっとここで封印しておいて、今週からあらためて読もうって思っていたんです。
だから、地震がなかったら、limeさんのように詳しくは書かなかったにしても、この「神の火」についての記事をupするつもりでしたよ。

で、地震が起きた日は停電してしまったので、ダンナは帰ってこないし、ムスメは暗闇で早々に眠くなってしまい、義母も「やることないから寝ちゃおうかな」と、とても静かな夜。
ロウソクの灯りを頼りに下巻を読み始めました。

そうなんですよ!
良ってどこか「陽」みたいですよね!!絶対limeさんのツボだ!と思ったと同時にlimeさんの小説にも出てきそう!って思いました。

あぁ・・・あの、鳥の楽園舎が見えるフェンスがある道も、あいりん地区も、limeさんにはそんなに身近な場所なんですね~。うらやましい!
いや、行ったことがなくっても、高村先生の文章からじゅうぶんに想像できるのですが。

もう書ききれない!
落ち着いたら私もきっと、途中でもレビューを書きますから!!
(結末を知っている私ですが・・・たぶん、全て読了したら放心して書けないというの、わかります。いや、放心します、きっと)

私、江口と島田の会話がすごくツボだったりします(^O^)

秋沙さんへ 

わ~~んi-201
秋沙さん、語りたかったよ~~。
ねっと復旧、おめでとう(ToT)e-267

もう、1ページ1ページ、語りたいことがいっぱいで。
さっき下巻の最初のところで、もう、ボロボロ泣いちゃいました。

島田が良に渡すヘミングウェイのペーパーバックを無くして、茫然自失している場面。
もう、なんだか泣けて泣けて・・・。
ヤバイです。
読み終わりたくないです~~(>_<)

そういえば、西幻さんが、良は「陽」によく似てるって言っていました。
もう、(おこがましいんですが)ああ、似てる・・(>_<)って、思いました。
良の側からの心理描写がほとんど無いところも、そう思わせるところで。

淡々としてた島田が、下巻で心乱されていく感じがもう・・・。
良を島田に帰してあげたい(>_<)

もう、本当に書ききれないです。

江口がまた、いい味出していますよね(*^_^*)
すごくいいキャラです。
ちょっとだけでてくる人も、みんないい♪

また、語りましょう!



NoTitle 

あぁぁ、あのペーパーバックをなくす所は本当に胸が詰まりますね。

高村先生の小説はディテールの描写もすごいけど、とにかく登場人物ひとりひとりがいいんですっ。
江口も、日野も、堀田老も、それぞれの人生があってすごい。
今日は島田と日野の会話にぐっときました。

そうだ!
limeさん、いつか私大阪に行きますから、「神の火」縁の地めぐり、案内してくださ~~~い!!(あいりんはヤバイ?)
いや、マジですよ、これ。

秋沙さんへ 

きゃ~~~!
やりましょう!
私もうずうずしてて(≧∇≦)
読み終えて、一人で地巡りしようと思ってたんです。写真UPしようかなって。
秋沙さんが来るまで、まっていようかな~。それとも、予行演習しようかしら。
新世界までなら大丈夫!
西成の、三角公園(小説ではTVがあったところ)あたりはヤバいけど、変装してもぐりこみますか!

今日はずっと本を読んでました。

日野が・・・・。日野がいいました。

「お前の目を俺にくれ」   ・・・・ドキュ~~ン。もう、だめです。先生・・・・i-201i-201i-237

 

そうです!まさにそれ!
子供の頃からの島田の瞳に対する日野の気持ちの変化!
「食いたいと思うようになった。」
どっきゅーーーん。ですよね。

ああ、絶対連れて行って下さいね。西成、天王寺、阿倍野。
でもいつ行かれるかわかんないから、予行演習しといて下さいっ。

もっと語りたいけど、また電話が不通に

秋沙さんへ 

うわ~~~~~ん(>_<)i-201i-201

あきささ~~ん。昨夜、下巻の210Pまで読んじゃいました(T_T)
もう、もう、涙が止まらなくて、眠れなくて、苦しくて、かわいそうで、悔しくて~~~!

今日は仕事になんないです! え~~ん、高村先生! どうして~~~(>_<)

ちょっと眠れたんだけど、あのシーンの夢ばかり!
夢に秋沙さんがでてきたんでね、「あの展開は辛すぎる!!」って、語ってしまいましたよ。

はあ~~。でも、がんばって行ってきますi-182i-201
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