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(雑記)「リヴィエラを撃て」読了

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いやあ、実に1カ月半かかって読み終えました。
私の遅読と、時間の無さ故です。
作品自体はとても読み応えのある、素晴らしい作品でした。

確かに私が大好きな「李歐」や「わが手に拳銃を」とは、作風が違い、
更に重厚で細密で複雑で、男くさい作品でした。
その根底にはアイルランド紛争や、政治的に複雑に絡み合う人間の抗争があったからかもしれません。

でも、テロリストやスパイ、それぞれの生きざまがとても人間味を帯びていて、
例えば冒頭で殺されてしまう、テロリスト、ジャック・モーガンにさえ、愛情を持ってしまうんです。




【あらすじ】
(文庫上巻裏表紙より)1992年冬の東京。元IRAテロリスト、ジャック・モーガンが謎の死を遂げる。それが、全ての序曲だった―。彼を衝き動かし、東京まで導いた白髪の東洋人スパイ<リヴィエラ>とは何者なのか?その秘密を巡り、CIAが、MI5が、MI6が暗闘を繰り広げる!空前のスケール、緻密な構成で国際諜報戦を活写し、絶賛を浴びた傑作。

(文庫下巻裏表紙より)CIAの<伝書鳩>とともに、父の仇である<リヴィエラ>を追っていたジャック。複雑怪奇な諜報機関の合従連衡。二重・三重スパイの暗躍。躍らされる者たち。味方は、敵は誰か。亡命中国人が持ち出した重要書類とは?ジャック亡き後、全ての鍵を握るピアニストは、万感の思いと、ある意図を込めて演奏会を開く。運命の糸に操られるかのように、人々は東京に集結する。そして・・・・。


このお話は・・・・とにかく、感情移入してしまった登場人物、ほとんどが、死んでしまいます
私が、一番好きだったIRAテロリストのジャック・モーガンなんて、冒頭で死んでしまっていたし。(T_T)

ああ、これは、・・・皆死んじゃうんだ。
半分まで来たときにそう悟りました。
ジャックが慕った、(あるいは愛した)ピアニストまで。
それはもう、あっけなく。

これは、なぜ? 本当にあっけない死。
別れを惜しむことさえ、させてもらえない。
このあたりにも、高村さんの意図があったのかもしれません。

《リヴィエラ》というコードネームを持つ、憎むべき、実態のない男。
その人物は、早い段階で「白髪の日本人」ということが分かっているんですが、どうにも霞のような印象で、
私は、その人物を憎いと思うことができませんでした。

ただ、その実態のないリヴィエラを追い、憎み、命を落としていく男たちが悲しくて。

そして、きっとこうなるだろう・・・と、思っていた結末は、あっけなく裏切られました。

スッキリと、豪快なラストを好む読者には合わないかもしれませんが・・・・。
私は、これが真実なんだなあ、と、妙に納得し、その空しさを受けとめました。

この物語に多く出てくる情報部は主にCIA、MI5、MI6です。
イギリス情報局と言えば、SISしか浮かばなかったのですが、MI5、MI6は、SISの部署名なんですね。
※MI5-英国国内で行動する外国のスパイの摘発や、国家機密の漏洩阻止などの防諜活動を主任務とする。
 MI6-海外での情報収集と諜報活動を担当。

この物語では《5》と《6》の仲互いが酷い・笑
圧倒的に《6》が悪者っぽい配役になっています。
それも興味深いですね。
余談ですが、007のジェイムズ・ボンドって《6》だったんですね。

この物語で好きなシーンはたくさんあるんですが、私が一番すきな部分は、
世界的ピアニストであり、ジャックが慕い続けたノーマン・シンクレアが、日本でコンサートをするくだり。

ウィーン・フィル交響楽団と、シンクレアのピアノ演奏の描写は、本当に鼓膜を震わせ、音が雪崩打ってくるようでした。
まさにあの描写は神がかり。
高村先生、もう、すごい!

そして、その素晴らしい演奏のあと、シンクレアが、とんでもない行動に出るんです。

あそこのシーンはしびれました。
シンクレアは、自分のために命を張ってくれた愛すべきジャックの死への慟哭を、2千人の観客の前で、その元凶である人物にぶつけるんです。
それはほんの一瞬。
彼が手に持った白いバラが、闇にぽっかり浮かびあがり、鮮明でドキドキする場面でした。

私は本来、登場人物にどっぷり感情移入して、物語を楽しみたいタイプなんですが、
この物語はとにかく、・・・愛情をもっても、すぐに消えてしまう。
なかなか、辛い物語ではありました。

けれど、なぜかそんな彼らの一瞬一瞬の、生命のきらめき、あがき、葛藤、悲哀が、心に残る、
不思議な読後感の一冊でした。

さあ、明日からは、たった今Amazonから届いた「神の火」を読みます♪
また大阪が舞台なんですよね?
楽しみです!!


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~ Comment ~

NoTitle 

うあああああ読みたい!
limeさんのレビューはどうにも揺すぶられるなぁ~。
コンサートのシーンを高村先生がどう描写しているのか、すっごく興味ある!!

あ、でも、「神の火」をいよいよ読むんですね?
じゃぁ、私も合わせてもう一度読もうかな。
もうだいぶ忘れてしまっているから・・・。

きっと、何年も前に読んだから、また違った感想が持てるはずですよね。
そしたら語り合いましょ♪
よし!明日「神の火」買ってこよう。

秋沙さんへ 

まず、買うところからですか・笑
そっか、もう、手元になかったんでしたね。

「リヴィエラを撃て」は、秋沙さんに、あのコンサートの部分だけでも読んでほしいなあ。(そんな・・)
心に、ガンガン来ますよ。
表現って、無限にあるんだなあ~~って感動します。

よし、また一緒によみましょうか!西幻さんも誘って・笑
でも、きっと私が一番読むの遅いんだろうって、自信があります(^^ゞ


NoTitle 

高村さんの描写が、「物凄い」ことは、本当に同意します。圧巻ですよね。読んでいると、あの描写の高波に巻き込まれていく、という感覚です。
正直いうと、「リヴィエラを撃て」のストーリーはほとんど忘れてしまってました(汗
でもlimeさんのレビューを読んで、再読したくなりました。
とくに、コンサートのくだり。興味深々です。

limeさんのおっしゃるように、感情移入すると消えてしまうんですよね、この物語の登場人物は(笑)。それが悲しくもあり、でもその物悲しさがこの小説の醍醐味なのかもしれませんけど…

おお!つぎはいよいよ「神の火」ですか!
わたしも再読しようかな~。
この作品は、ガンガン感情移入しちゃって大丈夫です(笑)
とにかくもう、「良」がねぇ…せつないんですよ…
それと、中華料理店のシーンは絶対、餃子と野菜炒めが食べたくなりますよ!このシーン読んでると、匂いまで思いだされてくるのです。

limeさんの感想を読むのが、楽しみです。

西幻響子さんへ 

忘れてしまうっていうの、わかります。
複雑な物語ほど、そうなんですよね。悲しいことに。
私も数カ月したら、ずいぶん忘れてしまってるかもしれません。(早!)
だからこそ、レビューを書くんです。

西幻さんも、ぜひ、コンサートの部分だけでも・・・。(またあ)

そうです、ついさっき来ました、「神の火」。
西幻さんのいう人物に興味津々です♪
秋沙さんも、もう一度読もうかっていってるので、一緒にまた読みませんか?
私、遅いですが、それでもよければ・笑

もう、ガンガン感情移入させていただきます!

NoTitle 

リヴィエラを撃て、全ての真相が明らかになったとき、

「リヴィエラ~!! 貴様みたいなやつのせいで、ジャックが、シンクレアが、それからあいつやこいつが……この野郎~!!」

と、「おれがその首はねてやる」

みたいな気分になったことを覚えています。

とにかく重厚で、人がばたばた死ぬ話でしたねえ。

大学の授業そっちのけで没頭したっけ。

ハードカバー読み返そうかなあ。



そういや、あのころ本格的な活躍を始めた女流作家ふたりを称して、

「宮部みゆきは王女様、高村薫は女王様」

などという冗談がはやってたなあ。高村先生がミステリを離れて純文学にいったのもそれに腹を立てたのが一因かもしれん(笑)

ポール・ブリッツさんへ 

私は、ポールさんが「リヴィエラ」が憎かった!って言うので、
自分はいつ、リヴィエラに怒りを感じるんだろう・・・と思いながら後半、読んでました。

でも、まるで雲の中を泳ぐような、踊らされてる感覚で、ついぞ、恨みを感じることができず・・・。
おお、私は、無感情な女なのか!と、悩みましたよ・笑
あの老人に怒りを燃やすポールさんは、もしや、純粋なのでは!(もしや?)

でも、とても面白い作品でした。感謝です!

高村先生、比べられたりするの、イヤだったんでしょうね。
そんな軽はずみな冗談を言った連中こそ、憎い!

もっともっと、「わが手に・・・」のような作品が読みたかったです・涙

そういえば、文庫本と、単行本とでは、随分違うらしいですね。表現とか。
あれをさらに推敲するなんて・・・。すごい。

NoTitle 

「リヴィエラを撃て」は李歐を探している時(古本)によく見ました。
あまりに李歐が見つからなかったのでよほどこのリヴィエラ
を先に読もうかと思いましたよ。
本を探している時≪探しているソレだけが無い≫て事よくありません?

僕も小説の中で何度か≪音≫を感じた事があります。
と、言いますか良い作品には必ず音が付いてきます。
limeさんのレビューで【原作>映像】の理屈がハッキリと分かりましたよ。
「李歐」の感想の際にまた書かせていただきます。
僕も遅読です(^-^;) あと少しです。

NoTitle 

高村先生は、「黄金を抱いて飛べ」と「神の火」を発表し、一躍有名作家になりました。それで、その年の「このミステリーがすごい!」のベスト10に、両方の作品が同時にランクインして、その票数の合計は、1位の志水辰夫先生の「行きずりの街」の得票を超えてしまったのであります。

かくして、出版社は、帯にでかでかと、「合わせ技で、第1位!」というキャッチコピーをつけて売り出しました。

しかし、事前の発表では、ベスト20までの成績しか発表されていなかったのが不運でした。

なんと志水先生は、ランク外の21位に「夜の分水嶺」という作品を発表しており、その票を合わせると高村先生の票を上回り、「合わせ技だったら1位はやっぱり志水辰夫じゃないか」というジョーク(というか真実)がミステリファンの間に広まってしまったのであります。

無論、この「驚異の新人」はたちどころに熱狂的なファン(特に冒険小説ファンの心をがっちりとつかんだのであります)を作り出し、「高村薫さえあればなにもいらぬ」みたいな声があちこちで唱えられることになったのでありますが、高村先生としては、はじめから、「ミステリではなく小説」が書きたかったらしく、のちにミステリとは完全に袂を分かってしまうことになります(そのへんのことは書いているとミステリファンのわたしは悲しくなってくる)。

ですがそこにはもしかしたらそのひとつの要因として、「マジメすぎる作風がかえってファルスのネタになってしまう」、こんなところも影響していたのではと思うであります。

あくまでも思うだけですが。

蛇井さんへ 

>良い作品には必ず音が付いてきます。

おお、そうなんですよね。
まさに。いい作品は聴覚をも刺激しますよね。
それは、心で聴く音。
映像化したら、損なわれてしまう「音」です。

【原作>映像】の真実ですね!

もしかしたら、蛇井さんは、この作品にもどっぷり浸かれるンじゃないでしょうか。
最高のスパイ小説です。


ああ。待ち遠しい。
蛇井さんの、李歐のレビュー・・・待ち通し過ぎです!(T_T)

でも、ゆっくり読んでくださいね!

ポール・ブリッツさんへ 

へーーー!
そんなことがあったんですか。

なんとも、苦くて腹立たしい話です。
「ほっといてよ!」って、先生の代わりに叫びたい。

あれとこれを合わせた合計点・・・とか、やめて欲しいですね。
作品は、それぞれが大事な子供たちなのに。

しかし、作家の世界も、大変なんですね・・・。

ああ、でもやっぱり、先生のミステリー、もっと読みたかった・・・。

NoTitle 

なにやら凄そうですね・・・。
ちょっと近くの本屋さん行ってみます!

ねみさんへ 

凄いですよー。

でも、いきなり読むには、かなり手強い本です。
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