KEEP OUT 1  呵責の夏

呵責の夏 第4話 幼き争い

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外見から受ける近寄り難さに反して、誰とでも気さくに話をする保奈美はすぐに女子全員と仲良くなった。
女子全員と言っても10人しか居ないのだが。
保奈美の斜め後ろの席の友哉は、まるで授業に集中できず、暇さえあればその長く艶やかな髪の間に覗く白いうなじと、耳から顎にかけてのシャープなラインをぼんやり見つめていた。
薄いブラウスの背中に透ける女性ならではの下着のラインに目が行くと、息苦しさを感じてくる。
他の女子達はまだそんな下着を付けていなかった。
そんなに女性的な体のラインをしてもいなかった。
罪悪感が常に友哉の心の隅に警告を与えたが、気がつくといつの間にか目がそちらに行ってしまうのだ。

けれど、そんな思いを抱くのはもちろん友哉だけではなかった。
保奈美をぼんやりと目で追ったり、チラチラと視線を送る男子達の姿は、特に注意していなくても友哉の目に入って来る。
誰もが落ち着かない。
気持ちの置きどころが見つからず、微妙な時期の少年たちは、たったひとりのその少女に心を乱された。

双子が転入してきて3週間ほどで、その揺らぎはほんの小さな事件を起こした。
男子の一人が保奈美の髪を触った触らないの些細なことが原因で、保奈美の親衛隊と化した女子と、男子との間で対立が始まったのだ。
一時的だと思えたその分裂は、それぞれのプライドを保とうとするように、頑ななものに変化して行った。

ボス猿的存在だった富田健吾と数名の男子が、保奈美に何かと辛辣な言葉を浴びせるようになると、始めのうちは田舎ものの男子など相手にしていない様子だった保奈美も、次第に嫌悪感を表すようになっていった。

「どうしてここの男子ってこんなにレベルが低いの? サイテーね」
富田健吾を真正面から見据えて保奈美がそう言うと、富田はその保奈美の細い左腕をグイと掴んで「うるさい、ブス」と、あまりにも脳のない罵声を浴びせた。
次の瞬間、保奈美の右手が驚くほど大きな音を立てて富田の頬を平手打ちした。
教室で帰り支度をしていた誰もがその瞬間を目撃し、そして誰もが富田を失笑した。
もちろん友哉も。
友哉には分かっていた。
富田が本心ではどうしようもなく保奈美に惹きつけられ、どうしていいか分からい状態になっていたことを。

羽化が始まったばかりの少年達は、心と体のアンバランスな変化に戸惑い、
未発達な表現力故に、ねじ曲がった衝動に駆られてゆく。

「由宇、さあ帰るよ」
富田を睨みつけたあと保奈美は、教室の隅でただ小さく固まっていた双子の弟の名を呼び、その腕を取るとさっさと教室を出ていった。
富田の鋭い視線が二人を後ろから射抜いていた。
いや、二人ではない。
その時すでに焦点は、弟の由宇にだけ当たっていたのかも知れない。

その悲劇の主人公は由宇に配役されたのだ。
友哉はその場面を思い出すとき、いつもそう思った。



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~ Comment ~

NoTitle 

えっ、なんでなんで?なんで由宇に焦点が…?
保奈美ちゃんと親しくなれない腹いせかしら…。
そこにどうやって友哉が関係してくるのか予想できないです ^^:

それにしても、思春期の少年少女の危うさを感じますねー。

( ゚д゚)ホゥホゥホゥ 

好きだけど どう接していいか 分からないから 優しく出来なくて 反対の行動を してしまう
子供で よくある ひとコマですね。たまに 大人になっても そんな人が いますが(苦笑)

その結果、 本人に 手酷く嫌われた。
嫌われた富田が 由宇に 標的を変えたって訳ですね。
保奈美の背で 影のような存在の由宇が 一躍 悲劇の主人公!
これからを 考えると 嫌な事しか 思いつかない。

”いじめ”...いつも クラスの中での立場が 派手めの子と 地味めの子の間にいて どちらとも 普通に 話していた 中間層の私には 縁の無い話しですが、 付いて行きますよーー!
まだまだ 任せなさ~い!∑d(`・д・´。)ок...byebye☆

西幻響子さんへ 

このガキ大将は、イライラの持って行き先が、ほかに見つからなかったんでしょう。
この時点では、ただの腹いせだったはずです。
なにせ、まだ小学生ですから・・・。

友哉はすぐに深くかかわってきます。
そしてすぐに、表舞台の主役に。

でも、まだまだ、かわいい小学生のいざこざです。

けいったんさんへ 

素直になれない時期って、ぜったいありますよね。
今なら、満面の笑みで、「好き」アピールするのに。(誰の話)

富田が標的を由宇に切り替えた理由は、まさにその通り。
実に幼稚で単純で。
友哉も、そうなんだろうと思いながら、見てるんです。
でも、・・・変化して行くんですね。微妙に。

ああ、私もその中間層でした。この、中間層って言うのが大事ですね・笑
客観的に周りを観察して、自分に火の粉がかからないようにガード。
はい、昔からずるい奴でした・爆

さあ、まだまだゆるい感じですが、ガキんちょたちにイライラしながら、ついてきてください!o(^-^)o

NoTitle 

由宇くんひとり貧乏くじ?

つらい立場だなあ……。

NoTitle 

ほんと、そうですよね。ませていく女子、女子の女性としての変化にとまどう男子。彼等の成長もそろそろ始まるときで、この何とも、微妙な時期の少年少女たちの様子が真にせまってきます。

由宇の身が心配です・・・ボスザル、何かよからぬことを考えていそう・・

ポール・ブリッツさんへ 

う~ん、由宇は辛い立場だけど、

一番の貧乏くじは別にいるかも。

でも、誰が悪いとも言い切れない・・・かんじです。

綾瀬さんへ 

小学生高学年の頃って、とくに女の子の方がませてますよね。
(団結力も強く・笑)
よくも悪くも、男の子は幼い。でも、純粋です。

この富田の事がきっかけで運命が動くわけですが、もしかしたら
富田が何もしなくても、ドラマは動いたのかも・・・・。

富田には、ちょっとばかり悪役を買って出てもらいます。

NoTitle 

「クラスで誰が好きか?」なんて話になった時、

「俺、好きな奴おれへんし」

そう答える奴って絶対いるんスよね。

「嘘つけ、おらんわけないやん。カッコつけるな」と子供ながらに、素直じゃない彼を私は責めていました。
好きな子の一人や二人いないと学校はつまらない。うん。
それは間違いない。

ヒロハルさんへ 

そうですよねえ。
小学生なんて、本当にウブだから、男同士だって言えなかったりしますよね。
女の子はすぐに教え合ってキャーキャー言うんですが・笑

好きな子がいない学校なんてつまんないですよね。
たとえ片思いだって。
私も中学生の頃は恋しまくったな~。
でも、なぜか高校生になると、ぴたりとおさまり・・・・。
やっぱり、あの微妙な時期の少年が一番魅力的ですね。
(なんの話だ?)

NoTitle 

ああー…何だかこういう…ああうまい言葉が見つからないのですが、「弟への八つ当たり」のようなのってよく分かります…。
ちょっと似たような経験をしましたので(苦笑)

こんな片田舎の狭いコミュニティーだと、八つ当たりされた当人がじっと卒業まで耐え忍ぶか、何かが暴発するまで収まらないんですよねえ…。

有村司さんへ 

そう、なんと表現していいのか分からないけれど、鬱憤や苛立ちが、弱い者へ向けられるってこと、ありますよね。
富田もまた、複雑な気持ちを処理できないでいるんでしょう。

ひとクラスしかない田舎の学校じゃあ、逃げ場がないですもんね。
6年間、たぶん立ち位置は変わらない。
田舎暮らしって、それはそれで、大変なのですよね^^;

NoTitle 

limeさん。
こんばんは♪

友哉の幼い時の思い出がどんなものなのか、
いったい何があって、今でも両親の呵責があるのか、
これから始まってゆく物語はどのようなものなのか、
すごく気になります。
楽しみです (^-^*)レモレモ♪

さやいちさんへ 

さやいちさん、KEEP OUTへようこそ!

この「呵責の夏」は、ほんとうに、どこにでもありそうな、少年達のやり取りのなかに起こってしまった出来事です。
回想シーンと、現代に戻ったシーンとに別れています。
友哉と、双子と、悪ガキどもと。そしてもう一人・・・に、注目してくださいね。

奇妙な世界になるかもしれません。(でも、ファンタジーではありません^^)
私も、わくわく、です。

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鍵コメSoさんへ 

KEEP OUTを読んでくださって、ありがとうございます。
友也の視線w なるほどちょっと美紅みたいでしたか。美紅のほうがかなり危険ですよね。
そういえばガキ大将って、今は少なくなってるんでしょうね。
いじめっ子は多いけど^^;
ここに出てくる悪ガキは、ガキ大将というよりもいじめっ子なんでしょうね。けっこう卑屈な。
ガキ大将って、じつは弱い者の味方だったりして、リーダー的存在なんですよね。
そんな子供がいてくれたらクラスも纏まるのに。

おお、サイコホラーを書かれるのですか。
頑張ってください。
私もいつか、書きたいと思ってたんですが、なかなか・・・。

あの長編は少し眠らせておいて、新作を書くのもいいかも。
私が続編を期待しているプロの作家さんの長編は、もう15年も止まったままですし^^;
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