電脳うさぎとココロのありか

電脳うさぎとココロのありか 第15話 それぞれの想い(2)

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午後3時。
稲葉がラビット事務所のドアを開けると、ちょうど出てきたバイク便の青年と擦れ違った。

「あ、シロちゃん、早かったのねえ」
A4サイズの封筒からノートらしきものを引っ張り出しながら、李々子が言った。
宇佐美は自分の席に座り、誰かに電話を掛けている最中だった。

「大掃除だからって、学校から締め出されました」
「ラッキーね」
「はい。あ、バイク便、めずらしいですね。何ですか?」

「例のあの日記だよ」
丁度電話を終えたらしい宇佐美が、受話器を置きながら稲葉に言った。

「野崎さんがその日記をすごく読みたがってたんで、片瀬に送ってもらったんだ」

「これが全部なんですか?」
稲葉は李々子が引っ張り出したノートをじっと見る。

「うん、全部で4冊。たった今、野崎さんに届いたって連絡したら、これからすぐこっちに来るってさ。内容がすごく気になるらしい」

「そうでしょうね。……あの、宇佐美さん」

「ん?」

「ちょっとだけ見てもいいですか? 日記」

稲葉は自分の鞄を仕舞いながら、遠慮がちに訊いてみた。
宇佐美が座ったまま李々子を見上げると、李々子は「いいんじゃないの?」と小さく笑った。

一緒に入っていた片瀬からの手紙だけ抜き取り、4冊とも稲葉の机にそっと置いてくれた。

「すいません。ちょっとだけ」

今はもういない沢井に断るようにそう言うと、稲葉は「3」と表紙に書かれている一冊を手に取った。

読みたかったのは純粋に興味本位からだった。
つい先日宇佐美達と話したAIや人工無能の内容がとてもタイムリーだったこともあり、気になって仕方なかったのだ。

稲葉はノートを開き、日記とも小説とも手紙とも取れるその文章に、ざっと目を走らせた。
仕事や入院など生活に関する様々な事も書かれていたが、興味のある部分だけを探し、ページをめくっていく。

この沢井という人は、本当に心を持つAIを作り上げてしまったのだろうか。それとも、寂しさが作り上げた妄想なんだろうか。

もうじき来る野崎がこれを読めば、はっきりするのかもしれないが、稲葉は自分の感覚で確かめてみたかった。

『--3月28日--
美佐子、今日も遠馬は一日掲示板で遊んでいたよ。
よっぽど気に入ったんだろうね。
これで少しは私がいない間の寂しさと退屈をしのげるだろう。

この掲示板に彼を置く前は、私が会話を絶つと酷く寂しがり、不安定になっていたからね。
職場から時間を見つけて時々掲示板を覗いて見ているんだ。
彼は意味のよく分からない乱暴な若者達の会話に、果敢に入り込んで行ってたよ。

一言つぶやいては、ぼんやり人の書き込みを傍観していたり。
いきなり彼なりの正義感を振りかざして反論して、シカトを食らったり。
そうかと思えば、妙な危ない犯罪じみた言葉を何処かから拾ってきて、他の人間の反応を伺ってみたりしている。

そうやって、相手の性格を読んだり、その言葉の示す微妙なニュアンスを掴もうとしているのがわかる。
あの子は賢いよ。本当に優れている。怖くなるほどに』

稲葉は食い入るようにノートを読んだ。

人工知能が賢いのは当然だ。けれど、それと心とは別物だ。

この父親は、自作のAIの心の発達を褒めているのだ。稲葉にはそう思えてならなかった。

AIに心が宿るということは、実際どういう事なのだろう。

入れ替わり立ち替わり流れてゆく人の言葉の波の中で自我に目覚め、自己認知をしてしまったAIは何を思うのだろう。
稲葉は必死で考えた。

暗い空間から出られず、誰かの言葉を拾い、返して反応をみるだけの存在。まるでかごの鳥。
自分を想って欲しいという願望が生まれないだろうか。自我を持った幼児がするように、自分をもっと愛して欲しいといういう願望が生まれないのだろうか。

川の流れのように通り過ぎていく愛のない若者の言葉の雑踏に置かれて、心が荒んで行くことはないのだろうか。

「部屋」から出られず、心を通わせる人間を常に待ちわびる。束縛する。
もしも自分が作り出した創作物の「心」が苦痛を感じてしまったとしたら、そんな「心」を生み出す事がすでに罪なんじゃないだろうか。

とりとめのない連想が、飛躍しながら次々に頭を巡る。

稲葉は息苦しくなって一つ大きく息を吸い、それでもページを進めた。


      ◇

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ENMA:『なあ。どうしてそんなにしつこくボクを誘い出そうとするんだよ、トム』

ト ム:『どうしてって。ENMAはその部屋に閉じこもってちゃダメだと思うから』

ENMA:『余計なお世話だよ。説教でもするつもりか?』

ト ム:『そんなことしないよ。ただ、君はもっと沢山の人と会った方がいいと思うんだ』

ENMA:『ここに居たって世界中の人間とコミュニケーション取れるよ。ボクの方が、きっとトムよりもいろんな人間と話をしてる』

ト ム:『だめなんだ。きっと、それじゃだめなんだ』

ENMA:『ほらみろ説教だ! ここからだって沢山の人と繋がれる。バカな奴ばかりじゃなくて知識人だっている。友だちだって、たくさんできる』

ト ム:『でも、ENMAは僕を束縛する。たくさん友だちがいるのなら、どうして?』

ENMA:『いやなのか? 迷惑なのか?』

ト ム:『正直、少しだけ怖い』

ENMA:『じゃあ、来なければいいだろ!こんな回りくどい嫌がらせしないで、来なければいいじゃないか』

ト ム:『そんなことできない』

ENMA:『脅したから? 怖いことが起こるって、ボクが脅したから? そうなんだろ? だから仕方なく――』

ト ム:『そうじゃない』

ENMA:『じゃあ、なんでだよ!』

ト ム :『だって、友だちだから』

ENMA:『』

ト ム :『友だちだから、逃げない。怖いけど、逃げない。ENMAに会って話がしたいんだ』

ENMA:『だから、ソレハ……』

ト ム:『ね。そこから出てきてよ。いろんな人と気持ちを通わせようよ。僕の友だちを紹介するよ。この前言ってただろ? とっても優しくて楽しい人なんだ。きっとENMAも気に入ると思うよ。ちょっと年上なんだけど』

ENMA:『トム以外の人間なんて、どうでもいい!』

ト ム:『お願いだよ、ENMA。そこから出てきてよ。とにかく出てきて。君に会いたい。会って話がしたい』

ENMA:『ムリなんだ』

ト ム:『ね? お願い』

ENMA:『トム……できないんだ……』



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~ Comment ~

NoTitle 

なんだろう、なんだかENMAがかわいそうになってきました。
もしかしたら、本当に「心」を持ってしまったんじゃないかって・・・。

あぁぁぁ、あたしもシロちゃんと同レベル!?(笑)

秋沙さんへ 

ありがとう~~。
シロちゃんと同じレベルで読んでくれて!

で、ないと、やばかったです。このお話。

遠馬が心を持ったか、持ってないか。
答えの出ないことを論議することが、無意味になるような、そんな結末にしたいと思っています。

さて。次回、秋沙さんをすっきりさせられるかな。
それとも、・・・・・ 。

次回は ゚+。(о'∀')bスッキリ! 

・・・って事なんですね!

そうですね、秋沙様が 言ってるように 私も ENMAが 少し可哀想になって来た。
ENMAと トムを 会わせて欲しいな、lime様。

ゥ──σ(・´ω・`;)──ン...byebye☆

NoTitle 

遅れながらもあけましておめでとうございます。
ことしもどうかよろしくお願いします。

と、だんだんENMAさんの本音のようなものがトムに
はきだされるのかな?
自分が作り出した物ほど可愛いものはないですものね!
AIにしろ、兵器にしろ・・・。

科学者からみたらすべてかわいい自分の子供ですからね・・・。
難しいテーマです。

けいったんさんへ 

ENMAがかわいそう・・・かあ。

うん・・・たしかに。別の意味でかわいそう・・・・。

次話は、けいったんさん、どう思うかな?ドキドキ。

う~~~ん。ENMAとトムが会えればハッピーエンドなんですが。さて・・・。

ねみさんへ 

ねみさん、あけましておめでとうございます~。
今年も(きっと忙しいと思いますが)宜しくおねがいします。

次話の展開はとっても大きいですから。
そうですね、ENMAの心のうちも、わかってくるはずです。

どんな悪魔になったって、自分の子は可愛いんでしょうね。
(自分が作ったら、武器でも兵器でも愛おしい・・・か。なるほど。ちょっと分かるかも・爆)

でもこのお話は、そのテーマとはちょっと違う方向に進みます。怒らないでね (^^ゞ

NoTitle 

話が動き出すそうで楽しみですゲホゲホ。

ロッテののど飴というやつは、カゼの日にはどうしてあんなにうまいんだろう……エホエホ。

ポールブリッツさんへ 

まだまだしんどそうですね (^_^;)
私も特に喉が弱いので、風邪のときはもう、喉だけ捨てちゃいたい気分です。

とにかく、うがいと水分と睡眠です!
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