クリスマス企画「白昼夢・番外編」  聖夜の贈り物

白昼夢・番外編 聖夜の贈り物 (前編)

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半年に一度、OEA本部では、幹部や使徒のチーフを集めた定例会が行われる。
志気を高める為とは言え、なぜかいつも多忙を極めた時期である。
辰巳は今回も面倒くさそうに、資料をめくりながら廊下を歩いていた。

「辰巳さん」
その声に前方を見ると、陽が立っていた。
相変わらず細身の体に、黒のジャケットとパンツがよく似合っている。
「ん? お前も坂木について本部まで来たのか? チーフだけの招集なのに。相変わらず物好きだな」

“物好き”という言葉の中に、坂木以外の人間には懐かない陽への特別な揶揄を込めて辰巳は言ってみた。

「ここの地下の第2倉庫は、昔のままなんだね。久しぶりに降りてみたけど」
けれど、腹立たしいまでにこの青年にはそんなイヤミは効かない。
この青年に対する嫌がらせはいつも、自分への自己嫌悪になって返ってくる。

「倉庫? そんなもん、誰が手をかけるか。猫の手も借りたいほど本部は忙しいんだ」
「ねえ、辰巳さん」
「何だ」
「これ、あげる」
口元にほんの少し笑みを浮かべながら陽は、手に持っていたものを辰巳に差し出した。
反射的に前に出した辰巳の手のひらに、陽はそっと小さな箱を乗せた。
パールホワイトの10センチ四方のシンプルな箱には、少し色あせたピンクのリボンが結ばれている。
けれど外見に似合わず、ずしりと重い。

「何だ? これ」
「開けたら分かるかも」
陽の大きな二重の目が、イタズラっぽくクルリと動き、辰巳を見た。
「わかるかもって・・・なんだよ」
眉間にシワを寄せながら手のひらの箱を凝視する辰巳に、陽は「じゃあね」と言って背を向け、去って行ってしまった。
「おい・・・、陽!」
けれどもう、青年の姿はない。
辰巳は改めて手のひらの、不気味に重い箱を見ながら、小さく呟いた。
「・・・爆弾か?」


         ◇

チラホラと本部に集まってくる連中と顔を合わせるのが面倒で、坂木は今は誰も使っていない資料室のドアを開けた。

「くそ。埃っぽい部屋だな」
一人ぼやきながら坂木は部屋の奥のソファの方へ歩いていった。
けれどそこには先客が居た。
白衣を身に纏い、二人がけソファにふんぞり返って足を組んでいるその女は、気だるそうに薄目を開けて坂木を見た。

「なんだ、坂木か。会議まで1時間、ここで寝てやろうと思ってたのに」
「沙希か・・・。お前も来てたのか」
その横柄な口をきく女は第4支部、総合医療施設の女医、沙希。歳は坂木よりも上で、たしか今44歳だったはずだ。
昔は華やかで妖艶だった美貌も、40代半ばの今はやや色あせ、目尻の小じわも目立つ。
けれどもその熟した独特の色気は、匂い立つようにその体から放たれている。

「久々に招集掛かったわ。相変わらず陰気で冷たい所よね、本部は」
「ああ、俺も苦手だよ」
坂木はその女の向かいのソファにドンと座った。
「苦手と言えば・・・あの子は元気にしてる? あなたのパートナー」
「陽か? ああ、今日も付いて来てる。その辺、ウロウロしてんじゃないか?」
「・・・そうか。来てるのね」
沙希は、嬉しいのかイヤなのか、分からない表情をして目を細めた。

「何だよ、その目は。あいつにワルサするなよ。お前の手癖の悪さは有名だから」
「へえ。心配なんだぁー。大事にしてるのね」
「そんなんじゃねえよ。節度をわきまえろって言ってんだ」
「節度?」
沙希は不思議なものでも見るように坂木を見た。
「なんだよ。おかしいか」
「そうね、ちょっと滑稽ね」
「なんとでも言え。俺はこれでも自分なりの誇りを持ってる。まがい物かもしれんが、最後の砦だ」
坂木はポケットからタバコを一箱取りだし、一本に火をつけた。

「誇りね。・・・あの子の中にあるのはもうちょっと違うものだったような気がする」
「何だ。陽のことか?」
「そうね、説明はつかないけど、ちょっと違う。16歳のあの子の中にはもっと別なモノがあった。私はさぁ、その何かが怖くて、あの子が苦手なの」

坂木はタバコの灰をポンと灰皿に落とすと、沙希を見た。
「16の頃の陽を知ってるのか?」
「まあね」
「俺と組む3年も前だ。どんな話をした?」
「言わない」
「何でだ」
「言ったら殺されそうだから」
「馬鹿か。よけい気になるだろうが」
苛立った声を出した坂木に、沙希はイタズラっぽい笑みを返し、口を開いた。

「私さ、16歳のあの子を襲ったの」
「・・・・・は?」
坂木はその言葉の意味が飲み込めず、ポカンとした顔をした。

「あの頃のOEAの育成施設じゃあよくあったことよ。OEAの女達は外界と遮断された男の子達と交わるのよ。精神の安定と健全な性教育の為に」
「な・・・・・・」
坂木はタバコを乱暴に灰皿に押しつけると、鬼のような形相で身を乗り出した。
「なんだと? お前、何言ってるのか分かってんのか?」
「あら、公認だと思ってたけど。それに、男のあんたが怒ることでもないでしょ?」
「陽は・・・まだ子供だろうが! 三十路半ばの女が、何を!」
「ほら、やっぱり怒ったじゃない」
「当たり前だろ! この淫売!」
沙希は可笑しそうに笑った。
「あんたのモラルはあの子のためには世間一般並みになるのね」
「話をそらすな!」
「10年も昔の話じゃない。それにさ、失敗しちゃったし」
「・・・・・・・」
坂木は力が抜けたように、浮かした尻をソファに戻した。

「16歳のあの子は独特の美しさを持っててね。触れれば壊れそうな癖に、しなやかな強い光を宿してて。何か癪だったのよ、そんなあの子が。無垢な顔して何か話しかけてきたから、私さあ、誰も居ない会議室にあの子を引っ張りこんで、鍵かけて、床に押し倒したの」

沙希は辛いことを思い出すように一瞬眉をひそめた。

「でも、そこまでだった。今思いだしてもムカムカする」
「何か言ったのか? あいつは」
「何も言いやしないわよ。あの子はさ、綺麗な目をして、ただじっと私を見上げるのよ。怖さでも恨みでも、あざけりでもなく、床に転がったままただ悲しそうに私をじっと見るのよ」
沙希は一つ息を吸い、吐き出した。
「あんなに自分が愚かに思えたことなんて無かったわ。最大の侮辱よ」
「最大の侮辱か」
坂木は繰り返して言ってみた。
そして、可笑しそうにくっくと笑い始めた。

「そうよ、可笑しいでしょ? 本当に滑稽よ。だから私、あの子が苦手なの」
「でも奴はあんたを傷つけはしなかったろ?」
「・・・まあね」

「あいつの純潔は、人を傷つけない。浄化させる。だから俺は、あいつから離れられない」
ほんの少し嬉しそうに言った坂木を、沙希は複雑な眼差しで見つめた。

「汚してやりたかった」
沙希は口の中で呟いたが、その声は坂木には聞き取れなかった。



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~ Comment ~

NoTitle 

やっば~~~~~い!ドキドキが止まりませんよぉlimeさん(T0T)

妖しい感じですね~~~ステキステキ。
うおおおおお先が気になる~~~。

なんかね、すっごく沙希を見上げる陽の顔が想像できちゃって。
ものすごくドキドキしながら読んでた自分も、ちょっとだけ侮辱された感じ?(笑)
くっくっく・・・と笑いがこみあげましたが、最後の「汚してやりたかった」・・・気になりますね・・・。
わ~い、これ、明日も読めるんですね~?\(^o^)/

秋沙さんへ 

ドキドキしてくれてありがとう!

後半は・・・もう少しドキッとしてもらえると・・・思います。(*^_^*)

訓練施設の男の子とOEAの女が・・・というのは、設定の中にあったんだけど、
本当に必要なエピソードかどうか迷ったあげく、使いませんでした。
今回その裏事情を盛り込んでみました。

さあ、後半はこれから取りかかります。
長ーーくなっちゃいますが、頑張って読んでください・笑

あとで、「え? どうなの?」って、質問が飛びそうな予感がしますが・・・・笑。

どうか、沙希になった気持ちで読んでみてください。
今まで知らなかった陽がそこにいるはずです。

NoTitle 

うわあああああこんなこと書いていいんですかあああああ!

それで次回がR指定ですとおおおおおお!

「なんてうらやま……いやらしいやつめ。おれにもやらせ……いや、やめさせよう」(ドラえもん10巻・ジャイアンのセリフより)

とにかく明日に期待します(なにをだ(笑))

ポール・ブリッツさんへ 

な、なにを騒いでるんですか・爆笑

だから、R指定は入らないんですってばああああーーー。(入るとしたらR−10くらい)

第一、なんで男のポールさんが騒ぐんですか・笑

たしか女目線のはず・・・・。

男性陣にも楽しめると良いんですが・・・・。あとで教えてね♪

NoTitle 

なんだってぇええっ!!
次はR指定はいるのかぁあっ!?
limeさん、それは17歳の僕に対しての仕打ちですか!
嫌がらせですかっ!!

え?ガセ?

・・・・。
ポールさん・・・・。

こういうクリスマスに書く話って面白いですよね。
僕も書いて見ましたが・・・、いやはや・・・・w

ねみさんへ 

ははは。ガセガセ。

・・・とかいって、すごいRだったら引きますね。

ねみさんも早く18になりなさい~~(●´艸`)ヾ

なになに?ねみさんも書いたんですね?クリスマス企画。
やっぱり番外編ですか?
これ書きあげたら覗きにいこう~。

NoTitle 

ひゃ~~~
陽さまぁ~
ぴゆうは参りました、あなたの身元へぇ〜ーーーー
見ないふりをして逃げていく陽様であった・・・・
v-406

何ともいいでございます。
も~~すごくいいでございます。

自分への自己嫌悪になって返ってくる

辰巳が本能で感じてるのね。
陽には色々あり過ぎて苦しいくらい切ないけど
バラバラになり、グチャグチャになったものがいつかは静かな水面になる。
その静かで美しいものが陽の心だとしたら
辰巳には水面に映る自分を見ているようになるのかな。

汚してやりたかった・・・
むぅ〜その気持がわかってしまう私って・・・汚れてるわ〜
後編が楽しみぃーーーー

ぴゆうさんへ 

おおおおお!
ぴゆうさん。なんと、懐かしいお話に立ち寄ってくださったんですね。
今読むとけっこう赤面ものなんですが、ちょっと楽しかったです^^

もう、最近ではちょっとこういう物語を書けなくなってしまって。
こんな無謀な物語。もう一度書いてみたいな^^

沙希。けっこうな熟女なんだけど、陽の前では、なぜか小娘ですね。
昔も今も。
陽のせいなのか・・・。うん、あいつは魔性だから><

刃を向けても、全部自分に帰ってくる。
だけど、試してみたくなる女心。
でも、沙希にはちゃんと、想いビトがいるのにね^^

辰巳と陽の、ちょっと噛み合わない関係を、書いてみたいと思ったのもあります。
辰巳は陽を、どう思ってるのか・・・。

やっぱり、信用してなかったですね(笑)
だけど、辰巳は坂木と違う愛情で、陽を見てくれてるはずです^^

> 汚してやりたかった・・・
> むぅ〜その気持がわかってしまう私って・・・汚れてるわ〜

ふふふ。
わかって欲しかったんですもの。作者は満足です。
女の中には、聖母のような優しさと、もう一つ別の、奥深い(やばい)感情があるのですよね^^
(と、同意を求める作者・・・)

後半も、よろしくです^^
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