電脳うさぎとココロのありか

電脳うさぎとココロのありか 第8話 イライザ

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「人工無能? あれだけネットやっててシロちゃん、知らないの?」
李々子はそう言いながら、やっと探し出した急須を今度はどこへ仕舞おうかと、物が溢れた狭い給湯スペースでゴソゴソしていた。

「知らないから聞いてるんですよ。人工知能なら聞いたことありますけど。何ですかその胡散臭そうなネーミングは」
稲葉は少しむくれるように李々子に言った。
やはりここで聞くよりも、PCで調べるべきだったと少し後悔しながら。

稲葉の気持ちを察してか、宇佐美がやんわりと救いの手をのばしてくれた。
「今でこそ普通にいろんなサイトに姿を現してるけど、そのネーミングは正式名称じゃないし、知らなくて当然だよ。人工無能は会話プログラムのことだ」
「プログラムなんですか?」
「そう。人工知能ほどの高いスペックを持っている訳じゃないから、“能なし”という意味で人工無能と呼ばれてるらしい。相手が打ち込んだ言葉の組み合わせと、自分の中のデータベースとのマッチングによって、最も適当だと思われる言葉に変換して応答をするんだ。混同されやすいけど、人工知能とは目的も仕様も、根本的に違うものだよ」
「なんだ。単純なプログラムなんですね。じゃあ、危険も無いはずだ」
稲葉はホッとしたように自分の椅子に腰掛けた。

けれど宇佐美は自分の作業を続けながら、稲葉に返した。
「でも、その学習能力はバカにしたもんじゃないよ。手軽なプログラムなだけに彼らはいろんな場所に出現できる。もちろんどこに所在を置くかはプログラマーの意思なんだけどね。ひとたび解き放たれた彼らはいろんな言葉を学習していく。スラングだったり流行のネタだったり。人間がどんな言葉が好きで、どんな返事をすれば笑ってくれるか、逆に怖がるかなんてことも身に付けていくんだ。心があるわけではないから、それは単なるパターンとしての学習なんだけどね。だから、開発者が管理していないと、悪意のある卑猥な言葉ばかり連発する連中も出てくる」
「わあ。それ酷いじゃないですか。問題でしょう」
「うん。当然そんなプログラムは消されたり修正されていくけどね。製作者のモラルが問われるところだ。だけど、少しばかり知識があればこの人工無能は作れてしまうんだ。今現在、気付かずにネット上で人工無能と会話している人だってきっといるよ」

「でも、所詮プログラムなんだし、会話してたらわかるでしょ?」
「そうだね、たいがいは、会話にズレを感じて怪しいと思うだろうね。けどね、馬鹿にしたもんでもないよ? 昔、本当にセラピストとして人々の心を癒してくれたイライザ(Eliza)っていう対話ロボットがいたんだ。初期の人工無能だね」
「セラピストですか?」
「うん。彼女と画面上のやりとりをした患者は初め、彼女がプログラムなどとは思わなかったらしいよ。プログラムだと知った後も、患者の中には『たしかに自分と彼女は心のやり取りをした! 機械だなんて信じない』、と泣きながら言い張る人も居た。それくらい違和感のないやり取りをし、そして患者と気持ちを通わせたっていうよ」

稲葉の目が少年のように輝きだした。
「それって・・・それってもしかしてプログラムに感情が宿ったとか、そう言うことなんじゃないですか? プログラムを作ってるうちに、何かの偶然で心が生まれたとか!」
思わず椅子に座ったまま、宇佐美のデスクに身を乗り出してきた。
李々子も興味深そうに稲葉の横にそっと椅子を持ってきて座り、聞いている。

「そう言う事じゃないんだよ。イライザは、相手のスクリプト言語の分解と再構築がとても巧みなだけだったんだ。タネをバラせばね。まずは常に聞き役に徹し、相手の聞いて欲しいポイントに対して質問し、その答えに同調する。そんなやり取りの中で、人はそのプログラムに人間らしさを感じてしまうんだ。それをイライザ効果と呼んでいる」
「でもさ、諒。そこに感情が無いって、どうやって証明できるの? 本当に、そこに心は無かったのかしら」
李々子が椅子の背にもたれたまま、腕組みををして宇佐美に訊いてきた。
同じ考えだった稲葉も、うんうんと頷く。

宇佐美は、いつの間にか自分を食い入るように見つめている稲葉と李々子に気付くと、あきらめたようにPCデータに保存をかけ、クルリといすを回転させると二人に向き直った。

仕事が一段落したラビット事務所は、ちょっとしたゼミと化した。



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~ Comment ~

NoTitle 

ということは稲葉くんに話を持ってきたネットの相手は……。

これを「依頼者」効果と呼ぶ。

……………………。

……………………。

……………………。


山田くん座布団ぜんぶ持っていってください。

ここまでダジャレが好きだというところに、自分の齢を感じる(昔からそうだったという話もあるが……(爆))

ポール・ブリッツさんへ 

だ・・・・ダジャレですか( ̄▽ ̄)

山田君、今後1年間座布団をあげないでください。
足が痺れようと( ̄ー ̄)

NoTitle 

「イライザ」というのを見て、「キャンディ・キャンディ!?」と心の中で叫んでしまったわたしって…
(としが、ばれるよ)

人工無能って、会話プログラムだったんですね~。なるへそ。

ええと、ええと、放火犯=人工無能で、ということはENMA=遠馬はじつは幽霊じゃなくて、人工無能なのかしら?
えーん!頭がこんがらかってきた! ^ ^;

NoTitle 

うっとりしながら諒の講義を聞いてしまいました~。
すごいわぁ、すんなり頭に入ってくるわぁ。
でも、話している表情の変化とか、たぶん、時々考え込むようにして口元に持ってくる手とか、そんなもんに見とれてて、半分くらいしか聞いてないんだろうなぁ~(*^^*)デレッ(ダメじゃん)

あ、ポールさんの座布団、一年間あずかります。

西幻響子さんへ 

キャンディ・キャンディ。
私としたことが、気付かなんだ・笑
いましたね、二ールとイライザ。あれは意地悪だった。

こんがらがってくれて、うれしいです。
そんなに複雑にしてはいないんですが、やっぱりあとで、
ちょっとだけ「あ」、と、思って欲しいですもん(*^_^*)

でも、推理物ではありません。
青春ものです・爆
のんびり読んでくださいね♪

NoTitle 

ちなみに、わたしが買った昔のパソコンの公式エミュの本には、「Emmy2」という二十五年くらい前の人工無能のソフトが付録でついておりました。

オンメモリ64KBということからも想像がつくように、会話を楽しむというよりは、会話しようと努力しても、とんちんかんな受け答えに頭がクラクラしてくる結果に終わる、というのがパターンでした。

内容は、エミーという女の子とおしゃべりして服を(以下略)

秋沙さんへ 

宇佐美にうっとりしてくれる秋沙さんって、なんて貴重な存在なのかしら(*´∀`*)
落ち着いた声で、ゆっくり話してくれる宇佐美先生。
受講してみたいですよね。
(恋には疎い癖して・・・)

もうちょっと、こんな感じが続きます。
稲葉君と一緒に参加して、考えてみてくださいね。
宇佐美の声としぐさを想像しながら。

勉強は 嫌い(T▽T) 

でも 宇佐美の勉強会は 聞いてみたいかも~
人工無能って そういう事だったんですか...イマイチ 分かってないけど(^^;)ゞアハッ...
でも このイライザの会話の仕方は ”聞き上手”と言われてる人にも 共通してますよね!

座布団なしの ポールさんが 可哀相~ (y_y)
・・・で これでも いいなら どうぞ~...ゴザ...
キャァー ごめんなさーい(*0*)/byebye☆

NoTitle 

宇佐美先生の講義・・・深いッ!

なんという深さだ。

確かにこうしてしゃべっていては相手がプログラムという可能性を拭い去ることができないわけではないですもんね。

もしかしたら僕もプログラムかもよ?です。

ポール・ブリッツさんへ 

なんだって?
そんなおしゃべりロボットが?

だめですよ、そんなのに満足してちゃ。
(視点がちがってる?)


けいったんさんへ 

ごめんなさ~い(>_<)
ちょっとお勉強っぽかったですね。
でも、内容はとっても簡単ですから!

そうですね、イライザの会話方法は、円滑に会話する一番ベストな方法ですよね。
めざせ、聞き上手!

ポールさーーん。
けいったんさんから、ござ、はいりました~~。♪

ねみさんへ 

なんと!

そうだったんですか!ねみさん。

いや、一番ねみさんが人工無能っぱい。

だとしたら、かなり高性能な・・・・。

NoTitle 

ほー・・
お勉強会の続き、楽しみにしてます。
宇佐美先生の講義をもとにSF書いちゃおうかしら(笑)

これから聞き上手な友達をひそかに「イライザ」とよびたいとおもいます。ふふ。イライザの縦ロールは見事でした。

綾瀬さんへ 

綾瀬さんのSF、読んでみたいなあ~。

SFって、どこまでがSFなのかって悩んじゃいますよね。
私のラビット本編の最終話も、見ようによってはSFかも・・。

さあ、あなたの周りのイライザを探そう・笑
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