☆感想(観劇・映画・小説)

(雑記)高村薫『李歐』に感嘆(*´ο`*)

 ←電脳うさぎとココロのありか 第1話 暗闇から →電脳うさぎとココロのありか 第2話 稲葉とラビット・ドットコム
私の悪い癖です。

また半分も小説を読んでいないのに、そこまでの感想を書きたくなってしまいました。
そんな衝動に駆る作品は、必ず私の中にずっと残る秀作です。

とにかく『李歐』の世界観、色彩感、すべてにい今、気持ちを掴まれています。
高村薫の世界ですから、もちろん気取った書き方などありません。
淡々と、殺伐と昭和中期の混沌とした裏社会が描かれているのですが、それがもう、すべてひっくり返される瞬間が、170ページあたりから訪れるのです。

主人公の一彰(22)は、登場した時点ではまるで生きた屍のように無気力で、粗野で乱暴な学生にしか見えませんでした。
けれどその6歳の頃にさかのぼって書かれた第2章で、ぐっと愛情を感じてしまいます。
幼い少年の周りで繰り広げられる、きな臭い犯罪のにおい。
そこに身を浸し、幼い目でじっと孤独に耐えながら大人たちを観察する一彰に感情移入していきます。
そこには母性本能が働いているのかもしれません。

その回想部分から戻ってきた第3章では、一彰の見方は一変しました。
もう、どんな犯罪に身を沈めても、無気力な人間になっても仕方ないじゃない。そんな想いに駆られました。
けれどその中で大学に通い、バイトを続けながら自分を捨てた母を探す一彰は逆に
どんな青年よりも健気で愛おしく思えてくるのです。

物語は殺伐としてモノトーン。寒々とした犯罪のにおいに満ちた、色彩のない世界です。

けれどそこに、突然、色鮮やかな瞬間が訪れます。(あくまで私の感覚ですが)
ある、殺し屋との会話から。


ああ、ここのくだり、言いたい。
言ってもいいですか?
とても印象的なシーン。

一彰の因縁の場所で再会したその若き美しい殺し屋は、いきなり持っていた口紅を一彰の唇に塗ります。
深紅。そこからモノトーンだった世界に鮮明な色彩が落とされました。

もう、そのあとの展開は見事としか言いようがありません。
つややかで艶めかしくて流れるような旋律。

殺し屋の名を訊いた一彰に、そのかわり、君も命がけの代償を払うんだよと忠告したうえで、
その男は持っていた口紅を使い、テーブルの上に“李歐”と書くんです。
ああ、やっぱり。彼が李歐。
なんという憎い展開!なんて意味深な彼らのやり取り。

そのあと李歐が持ち出した「金儲けをしよう」という言葉と「友達になろう」という言葉。
一彰はそこで、今までに見せたことのない感嘆の笑みを見せます。
一彰が、変わった瞬間が、こちらに興奮とともに伝わってきました。
「感嘆がとまらない。今、自分が立っているのはたぶん、歓喜というやつの入り口だ」
一彰の表現に、バシッとこちらの気持ちも重なりました。

李歐という歓喜。暴力や欲望の歓喜。友達という歓喜。常軌を逸していく歓喜。

狂おしいほど甘い感情の沸騰。ここから、殺伐と生臭さに満ちながらも、色彩にあふれた展開が始まる予感が止まりません。

ちょっとだけ、私の好きな一文をここに書きだしてみていいですか?
(本当はすべてを書きだしたい気分なんですが)

--------

一彰は、テーブルに紅で書き残された“李歐”の二文字を指で消し、その指についた紅を自分の手の甲に塗りつけて、「ピァオピァオ リァンリャァン ア」と呟いてみた。かつて趙文礼が母のことをそう言ったが、明るい紅のような歓喜を感じさせるその華やかな一文を、今は李歐の上に降らせてみたら、よく似合った。
-------


飄飄亮亮ァ。
ピァオピァオ リァンリャァン ア

ハッとするほどの美しさを持つ人に言う言葉。
この物語の冒頭で何度も出てくる印象的な言葉です。

澱んだ空気の中にキラッと鮮明に光る閃光。
孤独と混沌の中に湧きあがる歓喜。
寒々としたモノトーンの中に突如浮かぶ上がる深紅。

高村薫の作品の魅力は言い尽くせませんが、こういう演出は特に、私の心を掴んで離しません。
物語はまだ、中盤にも行っていませんが、さらにじっくりゆっくり、彼らの運命を覗いてみようと思います。

ふと、表紙についていた帯を見ました。
ああ、ここにもゾクリとするコピーが・・・・。

『李歐よ 君は大陸の覇者になれ  ぼくは君の夢を見るから・・・』

ああ、たまらない。
ここは確かに歓喜の入り口です。




関連記事


もくじ  3kaku_s_L.png 凍える星
もくじ  3kaku_s_L.png モザイクの月
もくじ  3kaku_s_L.png NOISE 
もくじ  3kaku_s_L.png RIKU
もくじ  3kaku_s_L.png RIKU・3 托卵
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【電脳うさぎとココロのありか 第1話 暗闇から】へ
  • 【電脳うさぎとココロのありか 第2話 稲葉とラビット・ドットコム】へ

~ Comment ~

NoTitle 

そうかあんな危険が服着て歩いているような殺し屋もモテるのかφ(。。 )メモメモ (←おい)

先の展開が漏らせないというのがなんとも歯がゆい……。

読み終わったら「リヴィエラを撃て」も読んでみてね(^^)

ポール・ブリッツさんへ 

そうなんです。
私みたいな人種には、あんな、何しでかすかわからない、危険だらけの人物に惹かれてしまいます。

あああ。先の展開がきになる!

でもなかなか読む時間かありません(T_T)

つらいです~~。

NoTitle 

なんだとっ!
この本おもしろそうじゃないですか!
早速借りてみます!

ボクはそうですね。
「終戦のローレライ」とか好きですよ!

福井晴敏さん大好きです。

ねみさんへ 

終戦のローレライっていうのも骨太の大作らしいですね。

福井晴敏さんの作品は読んだこと無いですが、映画化されてる作品もありますよね。
ねみさん、きっと好きだろうな~って思います。

この作品は、熱い、ハードボイルド的な要素はありませんが、
一度ハマると、その世界観にどっぷりです。

男性的でありながら、とてつもなく色っぽい作品です。

拍手鍵コメのLさんへ 

拍手コメ、ありがとうございます!
そうなんですか!Lさんも同じような感覚になられたんですね。
それも、海外赴任先で??
そんな空間でこの作品を読んだら、私なんて、もう抜け出せなくなりそうです。
読んだあと、何度もランダムに読み返す! 私もきっと同じことをしそうです。

はい!これから後半をじっくり読んで行きたいと思います。
(本当に読むの遅いんです)
まだ半分しか読んでないことがこんなに嬉しいだなんて・・・。
Lさんも、ぜひまた読み返してみてくださいね。

私も、全部読み終わったとき、また感想を書きたいと思います。
・・・感動しすぎると「わ~~」とか「ああああ~~」しか出てこない恐れもありますが・・・・。

NoTitle 

本日、古本屋で「李歐」みつけてきました!!

まだ読み始めたばかりですが、もうすでにかなりやばい感覚!久々にハマりそうです。

なんでしょうねぇ、「神の火」を読んだときにはストーリーだけを追っていて文章そのものには無頓着だったから気付かなかったのかもしれませんが、
それともこの作品が特別なんでしょうか、ものすごく。。。なんというか、「官能的」な文章ですよね。
匂いとか手触りとか、そういう五感に訴えてくるものがものすごくって、どっぷりです。
不思議ですよね、男性的で大胆な文章なのに。

もう、こういうのを読んでいると、自分の文章なんて状況説明だけの、幼稚園児あたりの落書きみたいに思えてきちゃいます。
ものすごい影響受けちゃって、「くちなしの墓」後半から文章が変わっちゃいそうだ(笑)。

先が早く読みたいけれど、読み終えるのが惜しい・・・そう思える作品に久しぶりに出会った気がします!
ポールさん、limeさん、ありがとうございます!

秋沙さんへ 

わ~~い!
秋沙さんも読み始めたんですね!!

そうなんです。なんとも官能的なんです。
でも、どこか、ひっそりと冷えた感じの殺伐感があり。
まったくそうです。五感に響いてきて、その世界に引きずり込まれていく感じ。
今までにない感覚です。
最初に読んだ「黄金を抱いて翔べ」ともまた違います。
この「李歐」が特別なんでしょうか。

今240Pくらいなんですが、もう、読むのがもったいなくて・・・・。
ここで終わったとしても大満足なほどの感慨です!

私も、「ああ、これが小説なのよね!」って思いました。
あと100年寿命があっても、きっとこんな作品は書けないんだろうなあ~。
でも、でも、読める幸せがあるからいいんですよね。
出会えてよかったです。

・・・・半分しかよんでないのに・笑

あと半分、じっくりゆっくり読みたいと思います。また語りましょうね。(´∀`)ノ

NoTitle 

私は今、ちょうどその半分の120ページ。
一彰の子供時代がかなり不穏な空気に包まれてきたところです。

なんでしょうね、この官能的なのに冷えた感じ。
繰り返し出てくる機械や金属部品の描写のせいかな。

「神の火」はもっとハードボイルドで、さらに男性的な文章だった気がするんですが(やっぱりもう一度後で読もう)、「黄金を・・・」ともまた違うんですね~?

「ああ、これが小説なのよね!」まさしく!
私も、「くちなしの墓」で描きたかった世界観というか、空気感がこれだったんだなぁ・・・といまさら実感。
書き始める前にこの作品と出会っていればなぁとまで思いました。

でも、もしそうだったら、細かいディテールを書きたくなってしまって、ネット小説じゃおさまらないことになっちゃってたかもしれませんね(^^;

読み終えたらまたレビュー書いてくださいね!語りましょう~~!!

秋沙さんへ 

ほんと・・・なんて言うんでしょうね。
まったく飾り気がないのに、匂いとか空気の色とか、艶めかしさとか・・。
旋盤の削り出す金属部品までも魅力的に思えてくるんですよね。
(でも、一彰の子供時代はもう、なんともヒタヒタと寂しくて灰色で、胸が締め付けられましたが)

170Pから、すごいんです。
(い、いや、これは私の錯覚?私の病気?)
とにかく色気が漂うんです、そこかしこに。

わかります、秋沙さんが書きたい世界観。
きっとつきつめて行くと、高村薫の匂いなんじゃないでしょうか。
それならばやっぱりブログ小説には収まりきれませんね。

小説とブログ小説は別物だと私は思ってますから。
ブログ小説は短い一話の中で、次への興味を抱かせて続きを読ませる。
長編小説はちがいますもんね。

「くちなしの墓」本当に毎回楽しみにしてるんですよ。
できるならば、ず~~~っと終わらないでほしいです。
あ、そしたら長編小説になっちゃう・笑


さて、ちょっと違った視点で、また「李歐」の雑記を書いてきますね。
「アホや」って突っ込んでください。
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【電脳うさぎとココロのありか 第1話 暗闇から】へ
  • 【電脳うさぎとココロのありか 第2話 稲葉とラビット・ドットコム】へ