電脳うさぎとココロのありか

電脳うさぎとココロのありか 第1話 暗闇から

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--------プロローグ(あるチャットルームより)--------


ENMA:『なあ、トム。近頃ここにいる時間、減ってないか?』
ト ム : 『そうかな。時間を確認していないから分からないけど』
ENMA:『ぜったい短くなってる。来るのだって遅いし。もう飽きたのかよ』
ト ム : 『そんなことないよ』
ENMA:『ボクがここに来たとき誰もいないと腹が立つ。ムシャクシャする!』
ト ム : 『ごめんね』
ENMA:『退屈なんだ。一日中ボクは退屈なんだ。君が居ないと気が狂いそうだ』
ト ム : 『ごめん』
ENMA:『君は謝ってばかりだな。つまんない。もっと楽しい話しようよ』
ト ム : 『どんなの?』
ENMA:『ワクワクする話だよ。例えばさあ、ねえトム、放火ってしたことある?』
ト ム : 『え?』

僕は一瞬書き込みを躊躇した。
唐突に、また彼は少し雲行きの怪しい方向に話を持っていこうとしている。
今までも何度かあった。
冗談とは分かってるが、犯罪をちらつかせる内容に話が行くと、僕は気持ちが沈んでいく。
この非公開チャットルームに入り込んだのは2カ月前。最初は何人かで話をしていたのに、ENMAは何故か僕だけに話しかけるようになった。気が付いたら彼が管理するこのチャットルームは認証制になり、僕しか入れなくなっていた。

ENMA:『あれってさ、すごく興奮するらしいな』
ト ム : 『・・・・・』
ENMA:『何か言えよ』
ト ム : 『放火は犯罪だ』
ENMA:『だからスリルがあるんじゃん。トムはやったことある?』
ト ム : 『あるわけないよ。ENMAは?』
ENMA:『やったことある』
ト ム : 『ENMAはその部屋から出られないんじゃなかった? 出られるようになったの?』
ENMA:『だから仲間にやらせたんだよ。ネット仲間にさ。ゲーム感覚の悪巧みにはすぐに乗ってくる最強の仲間が沢山いるんだ。トムも仲間だろ?』
ト ム : 『僕は・・・』

僕はその時、即答できなかった。なんだか彼が怖くて。
それを今はとても後悔している。


          ◇


街の中心地から二駅ほど離れたニュータウン。小高い山を切り開いて作られた高台にその白亜の女子校はあった。
下校時間まぎわの校舎は、クラブ活動の後片付け等で再び女生徒達の軽やかな声で賑わっていた。

「稲葉先生、あの、ちょっといいですか?」
その日のカリキュラムを終えて校門を出ようとした稲葉の元に、二人の女生徒が少し恥ずかしそうに駆け寄り、そのうちの背の高いロングヘアの女の子がそう言った。
校舎やグラウンドにはまだ他の生徒が多数いて、その目を気にするような可愛らしい仕草だ。
「え? 何?」
重いテキストの入ったショルダーバッグを抱え直しながら、稲葉は爽やかな笑顔を作った。

稲葉幸一、28歳独身。
定時である6時までは、その女子校の2年の歴史を受け持つ、ごく普通の高校教師だ。
スッキリと鼻筋が通り、切れ長の涼しげな目、ほっそりとした顎、すらりとした体。
産休の講師に替わる臨時講師として就任した当時は、女生徒たちに「ホスト先生」と言われるほどその容姿は人気だったが、その名も次第に影をひそめた。
理由は簡単だ。
純粋さ故の子供っぽさ、イノシシもびっくりな猪突猛進型熱血漢、天然ぶり。
好感は持てるが、生徒のみならず、同僚の教師さえもそのギャップに一度は驚く。
「残念王子」という新しい影のニックネームも、その好感度ゆえの産物だ。

けれど、定時を過ぎた彼には、もう一つ別の仕事があった。
今現在はバイトにも及ばない、ただの押し掛け見習いに過ぎないのだが、
学校にはナイショで通っているもう一つの職場。
それは中心街のオフィスビルの一室にある、小さな個人経営の探偵事務所だった。


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~ Comment ~

ENMA=閻魔に 見えるーー! 

怖いなぁ~ こんなチャットルームって 実際に ありそうで...
私は チャットは しないので あんまり分からないけど 
基本的に 顔(表情)が見えないし 声は聞けない相手との 文字会話は 苦手ですね。
いったん 拗れると 理解を深めるのに 文字だけでは 難しそうでしょ!?

だから コメを書き込む時は <それなりに>注意してますねー

トムは どうして 厭々(恐怖感もあり?)ながらも チャットするのかな?
んー 分からん(??:)ゞ...誰か 教えて下され~byebye☆

NoTitle 

今回は大事件に発展しそうですな。

「僕」のその後の運命が気になります。

続きを……。

けいったんさんへ 

ちょっと、このチャットルームは怖いですよね。
自分しか入れなくなってるって状況、私なら逃げてしまいます。

けいったんさん、するどい。
そう、トムくん、なんで続けるのか・・・・。
そのあたりの「なぜ?」も、やんわりと書いて行くつもりです。

私はけっこう、言葉だけで人とやり取りをするのは好きなんです。
なかなか気持ちが伝わらなかったり、誤解を生んだりするのは怖いですが・・・・。
でも、なんだか魂だけで会話してるようで、惹かれます。

これからのじれったい展開、見守ってやってください♪

ポール・ブリッツさんへ 

あ・・・・。あ・・・・、だ、大事件ですか?

どうでしょう・汗。

ひっそりと、じっくりと・・・。です。

「僕」の運命。気にしてやってくださいm(_ _)m

NoTitle 

ははははは!!「残念王子」!!ははははは!
(そこかい)

チャットルームは怖いですよね。
でも、なんとなく逃れられないトムくんの気持ちもわかります。

あぁ、もう、先が気になってしょうがないです~~~~!

秋沙さんへ 

ははは。どこに反応してんですか・笑
さすが、秋沙さんだ。

稲葉君、28歳って、知ってました?
宇佐美より6歳年下なんですねえ。

しばらくは、どこへ繋がるか分からない状況が続きますが、のんびりお付き合いください。

なんたって、全21話です。(・・・2カ月かかるよ)

NoTitle 

色んな切り口からストーリーを作ってらっしゃるんですね、すごいです。

こんなチャットルームが実際あったら怖いです。自分はすぐ逃げます。

オムさんへ 

いやいや、おはずかしい。
でも、自分が知らない分野でも、面白そうだと感じたら、徹底して勉強します^^ それも楽しいです。
限界は・・・ありますが・汗

こんなチャットルームには、入っちゃダメですよーー。オムさん。怖いです。

でも、このお話はきっと優しい気持ちで読み終われると・・・おもうんです^^

探偵事務所~!! 

おおおお! 良いですなぁ(^^)

チャットで思い出した。
あれって、会話みたいにぽんぽん進むことに妙があるんだよね。
そして、fateは思い知った!
チャットは英語でやってはいけない!!!
こちらが返事する前にイライラした相手が何回か続けて送信してくるから、会話が追いつかない!
くっそ、二度とやるもんかっ

はい、それは良いとして。
秋葉原みたいに、「止めて欲しい」人なのかな、とちょっと思いました。
むしろ、こういう人の歪みの根底、そこに至るまでの悲鳴。
そういうのを感じて苦しくなりました。
やはり‘闇’は‘闇’に敏感で、そういう心理に同調し易いのであろう。
しかし、同じ‘闇’を抱く相手にしか分からないことや、救えないことがあると思うので、fateはやはり似た‘闇’を抱く者への‘救い’を模索し続けていくだけだなぁ。



fateさんへ 

わ~~い。fateさんが、ラビット事務所に~~♪
この電脳うさぎは、ラビット・ドットコムの番外ですが、本編を読んでいない方にも(たぶん)分かるようになっています^^

今回は、ネット、人工知能にスポットを当ててみました。
ネットの世界、バーチャルのみで会話をし、心をやり取りする少年たち。
「心・感情」とは。そして、「友情・愛情」とは・・・なんて、そんなことを考えながら、書いてみました。

>むしろ、こういう人の歪みの根底、そこに至るまでの悲鳴。
>そういうのを感じて苦しくなりました。

そこを最初に感じていただいて、うれしいです。
この物語は、そこは省略してしまって、“どう、抜け出すか”に、焦点を当ててみたんです。
病むのは、意外と簡単なような気がするんです。現代人は、弱く、もろく。
だから、蔑むよりも、手を差し伸べてみたい・・・。
そんな思いが、あったように思います。

>しかし、同じ‘闇’を抱く相手にしか分からないことや、救えないことがあると思うので、fateはやは>り似た‘闇’を抱く者への‘救い’を模索し続けていくだけだなぁ。

↑まさに、それです!
この物語が成功したかどうかは・・・・・どうぞ、読了後に、教えてくださいね^^

ラビットシリーズは基本、明るいタッチなので、軽い気持ちで読んでくださいね^^
けっこう、自分でも好きな作品です^^
後半、fateさんに「え!!」といってもらえることを祈っています。

NoTitle 

lime様、こんにちは♪
ミステリー大賞が期間終了してしまうので、どうしても気になってこちらを先に手にとりました(*´ω`*人)
KEEP OUTの最終章も気になるのだけどっ(悩)

「残念王子」‥‥`;:゙;`;・(゚ε゚ )ブッ!!
ご、ごめんなさい、↑コメントのどなた様かと同じく、そこに一番注目してしまった(笑)
いいなあ、好きだなあ、こういう人♪

今日一日でどこまで読めるか?
夜、またコメントにお邪魔します(*´ω`*)テレ

土屋マルさんへ 

わ~~。
マルさん、電脳うさぎを読んでくれますか! うれしいです。

ラビットを読んだことのない人に、是非読んでもらいたかったのです。
長編、ラビット・ドットコムでおなじみのキャラたちなのですが、彼らを知らない人にも、楽しんでもらえるかどうかが心配でした。

ラビットはね、オチャらけコメディミステリーなので、ちょっとお恥ずかしいのですが、キャラの3人はとても気に入っています。
今回は「残念王子」の稲葉君が主役ですが・・・さて、マルさんに、気に入っていただけるでしょうか。ドキドキ。
(本編では、本当に稲葉君、ドジばかりで、残念な子なのです><)

さっき、鍵コメのマルさんのコメを読ませてもらいました。
マルさんの、ホラーチックな妄想に、爆笑!
そうかあ、そういうダークな展開も、面白かったかも(お、否定したぞ)

マルさんの感想、楽しみにしていますね。
「ここ、よくわからなかった」とか、「ここ、変」とかありましたら、遠慮なく書いてくださいね!!

NoTitle 

ラビット・ドットコムの番外編があると聞いて嬉しくなっちゃいました(^o^)
早速、読み始めますー。

それにしても、このお話に出てくるチャットルームは怖い・・・。

ひだまりさんへ 

わ~~~! ひだまりさん、いらっしゃいませ!
まさかこの番外にまで来てくださるとは。嬉しくて舞い上がってしまいました。

この番外は、実は本編よりも気に入っているのです。
今回は医学ではなくて、電脳世界に少しだけ足を踏み入れています。
稲葉が主役ですが、宇佐美も本編よりはきっと、本来の宇佐美らしさを発揮しているはず^^

やさしいサスペンスです。
ひだまりさんに、気に入ってもらえると嬉しいな。
どうぞ、お時間のある時でいいので、ゆっくり遊びに来てやってください^^
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