僕らの相対論2・シュレーディンガーの猫の章

僕らの相対論2 第4話 陰湿

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「な、何だよあんた。何であんたに付いて行かなきゃなんないんだよ」
さっきソラを引きずり倒した背の高い少年が言った。光瀬ほどではないが170センチはあるだろう。
まあ、彼の疑問はもっともだ。
大学生に対してタメ口というのは気に入らないが、僕だってそう言うだろう。「『実験』ってなんだ」と。

「ついて来た方がいいよ。君たちの為に言ってるんだ」
相変わらず余裕の笑みで誘う光瀬を、僕も3人の少年も訝しげに見つめた。
けれど、
「君たち3人は、猫が好きかな?」
と言いながら自分の携帯を取り出してカメラのレンズを指さした光瀬に、少年3人は急におびえた表情になった。
なぜだ?

「一緒に行くよね。君らが仕掛けた実験だ。そして、実験は結果を見るためのものだ」
もちろん僕にはその光瀬の言葉の意味がまるで分からない。
けれど驚いたことに3人の少年は仲間同士で顔を見合わせたあと、おとなしく光瀬にしたがって歩き出した。
なんだ? どういう事? 訳がわからないのは僕だけなのか?

光瀬の後ろを、まるで亡者のように3人の少年はゾロゾロと不安そうについていく。
「いったいどんな呪文をかけたんだろう」と、僕がソラに聞くと、ソラはただ肩をすくめるだけだった。
彼も知らないのだろう。
仕方なしに、僕とソラも彼らのあとに続いた。

どうやらあの3人は学校でも頻繁にソラに絡んできているらしい。
並んで歩きながら、ソラはポツリポツリと話してくれた。
ぶつかって服が汚れただの、ソラは家を持たずホームレスのような生活をしているだの、妙な病気を持っているだの、よく分からない難癖をつけてはソラに絡むのだという。
1カ月一緒に寝起きしているが、そんな学校でのイジメのことは少しも知らなかった。
光瀬にも相談したことは無いという。そんなソラが意地らしくて不憫で、そして自分が不甲斐なくて辛かった。
イジメを目撃した光瀬は、きっとそれ以上にはらわたが煮えくりかえっているのではないだろうか。

「今回の化学のテスト、今までにないほどいい点を取ったんです、ボク」
ソラは照れながら、突然そう言った。
「へえー。良かったじゃない」
「光兄(みつ・にい)のおかげです」
「光瀬の?」
「光兄が元素について徹夜で教えてくれたんです。水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム・・・。ただ順番に覚えるだけの退屈な周期表がぼくは嫌いだったんだけど、光兄は素粒子の話からじっくり教えてくれたんです」
「クオークからってこと?」
「はい。電子は素粒子だったんですね。陽子も中性子も素粒子であるクオークから出来ていて、その同じものの組み合わせで、この世の全ての物質が出来ているんだよって。いっぱい図を書いて、教えてくれました」
「そうだけど、・・・でもテストに出ない知識ばかり詰め込まれて迷惑だったんじゃない?」
「いえ、ただ順番に丸暗記するだけだった元素に、すごく愛着を感じることができました」
「物理はロマンだって言われなかった?」
僕は笑いながら聞いた。
「はい。ロマンだそうです」
ソラが、色白で中性的な顔をほころばせて笑った。

「そのお陰でぼくトップの成績を取れたんだけど、・・・あの3人がカンニングをしてるのを見たって言ってきたんです」
「は?」
「先生やみんなにバラして欲しくなかったら何でも俺たちの言うことを聞けって。昨日は、学校から家まで裸で帰れって言われて。もちろん、無視して帰りましたけど」
「バカバカしい! やっぱり光瀬に殴らせておけばよかった」
僕はあまりにも低レベルな言いがかりと陰湿なやり方に思わず声をあげ、前を歩く3人を睨みつけた。

「光兄はそんな乱暴なことしませんよ」
「・・・残念ながら、そうみたいだね。そのかわり3人を処刑場にでも連れて行くのかな」
「まさか」
ソラはカラリと笑った。



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~ Comment ~

NoTitle 

う”っ。
ぶ・・・物理?

一年前のあの時・・・を思い出す・・・。

か、科学?
ぐはっ!

こ、これ以上おいらの心の傷をえぐらないでください><

NoTitle 

みつにい・・・私にも素粒子から教えて欲しいデス・・・
そしたら、科学の成績、もうちょっと良かったかも・・・。

って、そこじゃなくて(^^;
どこ行くのかしら。
猫?猫に何かしたの?

ねみさんへ 

ははは。
嫌なことを思い出しましたか。

嫌な思い出は忘れて、新たに前へ突き進みましょう~!

私も化学のテストにいい思い出はありません・笑

秋沙さんへ 

そうなんですよね。
みつにいに教えて欲しかった。
もっともっと化学は、面白い話だったはずなのに、
なんでかテストに苦しんだ記憶しかないんですよね。

さあ、話はどんどん物理を離れますが。
そろそろ猫の話に戻さないといけませんね。
・・・あ、いえ、シュレちゃんの話に・笑

NoTitle 

処刑場よりももっと恐ろしいところのような気がする(^^)

素粒子物理学は、もうさっぱりわけがわかりません。アップとダウンとストレンジってなあに?(^^;) スピンって?(^^;) カラーって?(^^;)

次回作が「ぼくらの相対論:宇宙ひも」とかだったらしっぽを巻いて逃げます(笑)。

ポール・ブリッツさんへ 

大丈夫です。
中学生でも分かる物語です(*^_^*)

たしかにね、スピンやカラーは分かりにくいです。
スピンに関してはちゃんとした説明が載ってないないですからね。
きっと説明もしにくいものなんでしょう。
クオークも、n,d,t,s,b,cまでは理解できても、反物質になったらちょっと理解に苦しみます。

超弦理論にまでは手をのばしません。
魅力的なんだけど、推論の域を出ませんしねえ。
だって、説明に3話くらい費やしそうで、読者さん、逃げてしまいます(T_T)

あー思い出した…。 

小学校の頃「理科」のテストで100点取ったことが一度だけあったんですよ。そしたらいじめっ子のクラスメートに、ソラ君と全く同じ因縁をつけられました。

思えばあれから理科嫌いが始まったような気がするなあ…。
光瀬君みたいなお兄ちゃんがいたら、ちょっと人生変わってたかも知れません。

有村司さんへ 

ええ! 有村さんに、そんな悲しいことが。
いじめっ子は、どこにもいますねぇ。
けっきょく、うらやましいんですよね^^;

光瀬みたいな兄ちゃんが居たら、いじめっ子なんかへっちゃらなんでしょうけど。。。。

じゃあ、このあと、有村さんの恨みも一緒に、光瀬に晴らしてもらいましょう。

私もです 

うう、物理のテスト……とらちゃんが、うまちゃんが。
だったのですが、大人になってみると、自分のわかることを読んだり聞いたりすると、面白いと思うこともあるようになりました。
勉強はいやいややるのと、好きでやるのはちがいますね。

イジメってものを聞いたり読んだりするたび、子どものころを思い出します。
苛められたし、人の真似して誰かの悪口言ったり、両方やってましたよ、反省。
私が子どものころは、私に限ってはそんなに深刻ではありませんでしたけどね。

さてさて、次あたりから本筋に入ってくるのかな。
また続き、楽しみに読ませていただきます。

あかねさんへ 

続きを読んでくださって、ありがとうございます^^

私も中高生のとき、化学と物理は苦手でした。
生物は、なぜか良かったんですが^^;

物理の力学なんて、ほとんど計算ばかりで、数字の苦手な私には苦痛で・・・。
中高生の時、光瀬みたいな友人がいてくれたらなあ、と思います。

今回ソラくん、いじめの標的になっていますが、本人はわりとのんきな性格なので、まだ救いですね。
私も中学生の頃は、とても勝気だったので、同級生と衝突しましたね。
いじめということには発展しなかったと思うんですが。
いや、でも知らず知らず、ひどいこと言って苛めてたのかも・・・。
あかねさんは、ちゃんとそれに気付いて、自分なりに向き合っていただけ、大人だなあと思います。
自覚のない苛めって、無責任で恐いことですもんね。
子供って、未熟なぶん残酷なので、このいじめという構図は、なかなか解決の難しい問題だと思います。
苛められるほうにしても、繊細で、壊れやすくて、立ち向かうパワーが湧かない。
パワーをあげたいですね。
ソラくんのように、わりとポヨンと受け止められる心って、実は貴重なのかな・・・なんて思います。

でも、今は光瀬が、かなり怒ってますよ。(あれでも、かなり・・・笑)

どうなっていくのか、のんびり見てやってください^^
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