RIKU・4 君の還る場所

RIKU・4 第15話 帰ろう

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吉ノ宮神社に車を飛ばしながら長谷川は何度もリクの携帯に電話した。
けれど電源が切られているらしく、全く繋がらない。

自分も行くと言って聞かない多恵と玉城をなだめ、会社に戻って営業車を借りた。
車の運転は久しぶりだし、神社への道順も頭に入って無かったが、まあ問題はないだろう。
そう思いながらちらりと時計を見る。時刻は深夜1時を越えた。
夜の気温はぐんぐん下がっていく。
交差点で止まると、長谷川は冷たくなった指先をこすり合わせた。
その冷たさは、寒さのせいばかりでは無かったかもしれない。

リクがそこにいる確証は何もなかった。
だが他に思い当たらない。いつも携帯をオフにしているあの青年に、改めて長谷川は腹が立った。

信号が青に変わった瞬間だった。
ふいに携帯の着信が鳴った。玉城だろうか。
相手の名前をちらりと確認した長谷川はハッとして、急いで車を路肩に寄せた。

「リク!」
思わず思い切り大きな声で呼びかけてしまった。
その声に驚いたのか、電話の向こうの人物は返事を返してこない。

「リク、どこにいるの?」
少しトーンを落として再び呼びかけると、リクの声が小さく返ってきた。
「長谷川さん・・・声でかいって」
そう言ってクスリと笑う。
けれどその声は、長い眠りから覚めた時のようなボンヤリした弱々しいものだった。
「今どこなの? 家から?」
「今・・・どこかな。よくわからない」
「分からないって何よ。子供じゃないんだから。それとも迷子にでもなった?」
「うん、そうだね。迷子になった。・・・長谷川さん、迎えに来てよ」
「はあ? 寝ぼけたこと言ってんじゃないよ。あんたの使用人じゃないんだから」
リクは小さく笑った。
「ごめんね、長谷川さん。こんな時間に電話して。・・・もう家?」
「あたりまえでしょ。もう寝るところよ」
長谷川はハンドルをグッとにぎり、静止している外の闇をじっと見つめた。
リクの声が消えそうに弱々しい。
胸が掴まれたように苦しかった。
「・・・そうだよね。ごめん。じゃあ、また」
「あ! 待って! リク!」
慌てて長谷川は携帯を強く握った。
「リク?」
切れてしまったのかと、体中がひやりとした。
けれど、電話の向こうでかすかに息遣いが感じられ、長谷川は心底ほっとした。
もう一度慎重に呼びかける。
「リク?」
「・・・ん?」
「今どこ?」
「いま? ・・・分からない」
「ふざけてんじゃないよ。ちゃんと周り見なさい! 迎えに行くから言ってみ」
思わず怒鳴るように声を荒げた。

「・・・暗くてよく見えないけど、バス停がある」
「停留所の名前は? 何て書いてある?」
リクが少し時間をかけながらその名を告げると、長谷川はドアポケットに突っ込んであった地図を取りだして素早く探した。
「いい? そこ、動くんじゃないよ、絶対に。今から行くから」
「・・・子供みたいに」
「子供より手がかかるよ!」
それだけ言うと長谷川は素早く車を出した。
腹立たしさと、焦りと、そして安堵感が交錯した奇妙な気持ちだった。

    ◇

それから1時間後。

長谷川はリクが走り書きしたメモを握りしめ、再び運転席に座っていた。
助手席には静かに眠るリクがいた。
その顔はとても青白く疲れ切っていたが、どこにも怪我はして無いようなので長谷川はホッとしていた。

教えられた場所は、寂れた廃工場近くのバス停だった。
ただ暗闇にポツンと立つそのバス停のポールの横で、ブロック塀にもたれて眠っているリクを見つけた。
屋根も何もない、吹きさらしの道路沿いだ。
「そこから動くな」といった長谷川の言葉を忠実に守ったのか。
夜の冷気に冷え切ったその体を揺すると、リクは子供のように手で目をこすりながら「ごめんね」と申し訳なさそうに笑った。
そして長谷川の肩を借り車に乗った後、そのメモを渡してきたのだ。
そこには4人の名前と、どこかの店の住所が書き込まれていた。

「これね、殺された女の人の名前と、殺した3人の名前。それから、溜まり場に使ってる場所。この3人が玉ちゃんも襲ったんだ」
それだけは調べたが、そのあとどうしていいかわからない。だから長谷川さんに相談したかったんだとリクは言った。
「その3人は?」
そう訊くと、その場所にちゃんといる、と小さく答え、そのまま疲れ切ったように眠ってしまった。

相変わらず言葉が足りない。
こんな場所で、こんなに死にそうに疲れ切ってる訳を少しも説明してくれない。
けれども、長谷川にはもうそれだけで充分だった。
この青年の持っている厄介ごとは、玉城と多恵を問いつめて自分なりに理解出来たと思った。
理解したいと思った。
「あんたは殺された女に体を貸してやったんだね。情報をもらうかわりに。女はあんたの体を使って『何か』をやった。どう? 違ってる?」
長谷川はリクの体にそっとシートベルトを掛けると、子供にするように優しくその髪をなでた。

「じゃ・・・帰ろうね」
長谷川はそうつぶやくとエンジンをかけた。
帰りは安全運転でいこう。来るときは制限速度を軽く50はオーバーしていたはずだ。
そんなことを思い出す余裕ができた。
さっきまでは自分らしくもなかったと一人口元を歪める。
人形のように寝息も立てず眠る青年をもう一度確認すると、長谷川は静かに車を出した。



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次回、「君の還る場所」 最終話です。



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鍵コメRさんへ 

そうなんですよね。わかります。
でもそこはぐっと我慢しました・爆
(歯止めが・・・・笑)

ホラー展開、悩む所だったんですが。
代償?・・・代償・・・。
次回、なにかそれらしい物があるでしょうか。

次回は玉城、復活します。最終回ですが。

明日、晴れるように祈ってますよ!!!


NoTitle 

普通の人間が下手に依り代なんかになると寿命が縮むものですが……。

大丈夫かなあリクくん。

誰か次回で玉城くんを一発殴るくらいのことをしないと事態は感情としておさまらないような気がします。

ポール・ブリッツさんへ 

やばい。誰かに玉城を殴らせなきゃ・・・(*o*)

この前多恵ちゃんに怒られて、随分反省して落ち込んでるはずなんですが・・・(^_^;) ダメ?

でも、けっこうみんなリクを心配してくれて嬉しいです。好感度低いとばかり思ってました(>_<)

どうなるやら、最終回。

「スッキリしないぞー」ってブーイング必至か! 

NoTitle 

バス停がちゃんとある地名でよかったです。

「如月駅」とか知りませんか?

いつも通いなれている電車でついつい転寝してしまって
目が覚めると「如月駅」なんです。
大体の人がそこには摩天楼が聳え立っていると。

また行こうとおもって電車に乗ってもその地名はもうない・・・。
死者の駅なのか・・・魂の・・・うわーっ・・・

そんな都市伝説を知りませんか?

ねみさんへ 

ふつうにありそうですよ、如月駅・笑

だめですよ、そんな摩天楼の見える駅で降りちゃ。

ねみさんだったら、ぜったい帰ってこれなくなりそうだから (^_^;)

私はよく、バスで寝過ごして終点まで行きますね。
いかにも、ここが目的地みたいな涼しい顔をして降りるのが得意です。

NoTitle 

いえ別にマジで殴らせなくても(^_^;)

言葉のあやです言葉のあや(^_^;)

ポール・ブリッツさんへ 

ほっ。

そうですか? 良かった。
では、いつか別の機会に・・・。それじゃ意味ない・笑

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鍵コメさんへ 

そうなんですか。お知り合いに、そんな方が・・・。
だから、こんなにもリクを心配してくださるのですね。

私には世間で言うような霊感はありませんが、9歳の頃、2カ月にわたってものすごい悪夢にうなされ、毎夜毎夜、口で説明できない恐ろしい世界を見せられました。
その時思ったんです。
死者の魂の世界はやはり存在していて、そして、迂闊に交わってはいけないのだと。

その男性、本当に大変な思いをされたんですね。
できれば、もうその力を使わずに、平穏に過ごして欲しいのですが。
きっと、たよられてしまうんでしょう。

玉城は、まだこの力の本当に怖さを知らないんですね。だから、「リクなら平気」と、思ってしまう。
玉城は玉城なりに、リクを気遣うんだけど、助けにはならないかもしれません・・・(>_<)
ただ、リクは、そんな損得抜きに、玉城を慕うわけですが・・・。
(長谷川さんの立場は?)

RIKUはこの先、「霊力」に固執した展開にはならないのですが、実は鍵コメRさんが心配してくださったように、今回のこの「扉を開けてしまう」行為が、リク自身の首を絞めてゆきます。
次回から始まる最終章「6」では、とんでもないことが・・・。

不器用でとっつきにくいけれど、じつは心優しいこの青年、どうぞこの後も、見守ってやってくださいねe-267
温かいメッセージ、ありがとうございました!!i-241
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