RIKU・4 君の還る場所

RIKU・4 第13話 浮かび上がる現況

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「え? ごめんって、リクが?」
玉城はベッドから上半身を起こした姿勢で多恵を不思議そうに見た。
ベッドの横で丸椅子に座っていた長谷川も同じような表情だ。
「わざわざ、そんなこと言いに来たのかなあ、あいつは。んで、顔も見せずに帰るしさ」
居心地の悪そうな様子で玉城はつぶやく。
リクが何のことを言っているのか玉城には分かっていたが、釈然としない。

「ねえ、先輩。リクさんに何か頼んだの?」
多恵がベッドの横ににじり寄り、玉城の近くに体を乗り出すようにして聞いた。
「何って、別に、ちょっとした事だよ」
「何よ、ちょっとしたことって」
「ちょっと人捜しの協力を頼んだだけだよ」
ムッとした表情になる玉城。

「リクさんね、捜しに行くって言ってた」
「え? 捜す? あの、あれをか? あいつをか?」
「どれのあれだか分かんないわよ。でもそう言ってた」
「なーんだ。出来るんじゃないか」
玉城は少しムッとしたようにぼやいた。
横に「霊感」のことを知らない長谷川が居るので、少し言葉を濁しながら。
「リクには出来るんじゃないかと思ったよ。俺が見る者はいつも、あいつにも見えてたから。最初から協力してくれればいいのに。だいたい冷たいんだよ、あいつは・・・」

そう玉城が言い終わらないうちに、多恵は左手を伸ばし、玉城のパジャマの襟首を掴み、ぐいと凄い力で自分の方に近づけた。
「グアッ・・・なんだよ、多恵ちゃん」
「何を頼んだのかって聞いてんのよ、私は。リクさんが捜しに行ったのはね、私のカンでは先輩を轢いた犯人よ」
「・・・は?」
長谷川も座って腕組みをしたまま黙って多恵を見た。
「さっき長谷川さんに聞いた話を総合するとそうなるの」
「どうなるんだよ。話、飛びすぎじゃないか?」
「簡単に言うとね、玉城先輩は殺人現場に遭遇し、目撃されたと焦った犯人に殺されそうになった。リクさんはその犯人を捜そうとしている」
長谷川はやはりじっと口を閉じたまま多恵を見ている。
玉城だけが話が飲み込めず、オロオロと視線を泳がせた。
「俺が見た・・・殺人現場?」
「そう。吉ノ宮神社の階段、転がり落ちたでしょ? 二日前。今日そこで女の死体が発見されたのよ。おとといくらいに殺された死体がよ。たぶん犯人は先輩に見られたことを知ってるのね。だから拾った携帯で先輩を必死に捜して、見つけたところを車でバン!」

その効果音に玉城はビクリと跳ね上がり、呆然と多恵を見つめた。
「そんな・・・。あれは浮遊した霊が見せた回想シーンだと、そう思って俺はリクに・・・」
「捜しに行ったのよ。リクさんは」
「でも、捜すってどうやって」
「殺された女に聞くんでしょ?」
多恵はさらりと言った。
ハッとする玉城。そしてやはりじっと黙って二人の会話を聞いている長谷川。

「そんなことできるのか? なんだ、そうか。まあ、あいつなら出来そうだしな。そう言う手があるのか」
「馬鹿じゃないの?」
多恵が鋭い口調で言った。
「何が!」
「自分で霊を、それも殺されて間もない魂を呼ぶのがどういう事か分かってないのよ、先輩は。たまたまチューニングが合って見てしまう微弱電波霊とは訳が違うのよ。自分に取り込むのよ。ついさっき死の苦しみの地獄を味わった憎悪と恐怖の塊を境界線ぶち破って自分の体に取り込むのよ。わかる? それがどういうことか」

玉城は硬直したように多恵を見た。今まで見たこともない多恵だった。
「それって、やばい事なのか?」
「ヤバイでしょ。ヤバイから誰もやろうとしないでしょ、もし出来たとしても。でもリクさんはやろうとしてるのよ」
「なんで」
「先輩を助けたいから」
「・・・」
「自分にそれが可能だから」
「・・・」
「先輩は、リクさんに、何を言ったの?」
最後のそれは玉城の心臓をぐっと掴んだ。何も答えられなかった。
“・・・俺はあいつに何を言ったろう” 反芻するのも怖かった。
玉城は目を見開き、ベッドヘッドに体を預けて真正面の壁を黙ったまま見つめた。

「さあ、あんたたち」
突然、ピリリとした張りのある長谷川の声がその静寂を破った。
多恵も玉城も、今まで黙って腕組みしていたその女編集長に視線を向けた。
「もうそろそろいい? ちゃんと説明してもらおうかな。あんたらが言ってる、その力の話をさ」

玉城と多恵が目を合わせて少し気まずい表情をした。
「でも長谷川さん、信じないんじゃないですか? 霊の話とか・・・」
恐る恐る玉城が言うと、長谷川はギロリと玉城を睨んだ。
「信じるとか信じないとかの話をしてるんじゃないよ。事実を説明しろって言ってんだ、分かんない奴だな。リクが置かれている状況を知りたいんだよ。ただそれだけだ。何か文句あるか?」
何の澱みも迷いも無くきっぱりとそう言った長谷川に玉城はまたしてもビリリと痺れる心地よさを感じた。

・・・そうだった。この人はそんなことを問題にする人ではなかった。悔しいほどシンプルで真っ直ぐだ。
自分のような水槽の小魚ではない。大海を泳ぐ大鯨だ。
そしてたぶん、だれよりもリクを大切に思っている人なのだ。・・・



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~ Comment ~

NoTitle 

ストーリーの展開と一緒に、すごいイキオイで読んじゃいましたよ(^^;

「もう、早く!早く!気付きなさいよ玉ちゃん!早くリクを助けに行きなさいよ~~~!」って。
多恵ちゃん、ここではグッジョブですね(笑)

長谷川さ~~~ん、やっぱりあなたが頼りだわぁぁぁ。
大鯨!早くリクを助けて~~~!

(もうすっかりストーリーに入り込んじゃって、小説としての感想を言っている場合ではなくなっているワタシでした)

NoTitle 

テストが終わって久しぶりに来たらかなりすすんでるじゃないですか。
びっくりですよ。
今からだーっがーっと読ませていただきますb

それではb

秋沙さんへ 

秋沙さん、ありがと!

今回は多恵ちゃん、意外とやってくれました。
小悪魔だけど、悪魔じゃないんですね・笑 
玉ちゃん・・・相変わらずイライラメーカーです。ずっとこのままだとレギュラーから降格かも(^_^;)

長谷川さん、大鯨さん、今回はどういう役回りなのか。
じんわり進んでいくので、のんびりお待ち下さいね。

ドラマにするなら長谷川がいちばん役得かな・笑

ねみさんへ 

テスト、お疲れさまですー。

いつでも、ゆっくり遊びに来て下さいね。

あ、それより、ねみさんのブログの不具合、直りましたか?

多恵ちゃんに参りました 

前半であれだけ小悪魔的なお騒がせキャラだった多恵ちゃんが、この局面でこんな重要な役目を果たすとは……うーん、おいしいところを持って行かれた気がする(笑)
『君の還る場所』では、多恵ちゃんだけではなく登場人物のひとりひとりが重要な役割を担っていて、キャラ立ちが光っている気がします。
さあ、次はいよいよ長谷川さんの出番だ(笑)

本条さんへ 

多恵ちゃん、ビックリです・笑
「はい、その役は私が!」といってぐんぐん前へ出てきた感じですね。
多恵ちゃんは本当に未知数で、なんだか楽しいです。

ふだんならこの役は長谷川さんなのに、今回は意外と静かですね。
このあとどう出るのか。・・・出ないのか。

でも、もしかしたら、いつもの長谷川さんではない長谷川さんを見れるかも知れません。
後3話で完結ですので、もう少し待って下さいね。

NoTitle 

多恵ちゃんやるときはやる娘ですね……。

長谷川さんも締めるときは締めますね……。

女性陣に比べて玉城くんの株は今回ちと暴落気味ですね……(^^;)

でも、さすがに恋愛小説からヒロインは降ろせないかと(コラ)

ポール・ブリッツさんへ 

そう、玉城の株は大暴落。

しかしヒロインは・・・・って、オイ!!

(どちらかというとヒロインはリク)

まあ、クリープのないコーヒーにならないように、玉ちゃんも頑張ると思いますよ。あと3話だけど・笑

一挙に 多恵が 好印象! 

まぁ 単純ですから 私 エへへ。

ほんと 男性陣に 比べて 女性陣は しっかりしてるようですねー

玉城の為に 動き出したリクが 心配だよ~。ねぇ 多恵ちゃん!!

ご無沙汰ですlime様、相変わらず バタバタと忙しいけど 気分リフレッシュに 遊びに来ました! ほんじゃ またね♪ (^o^)ゞbyebye☆

けいったんさんへ 

けいったんさん、なんだか忙しそうですね。
いちばん私生活が謎のけいったんさん・笑
リフレッシュになる?
玉城がイライラさせちゃうでしょ?笑
あと3話なので、またのんびり遊びにきてくださいね。

おはようございます^^ 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


た~~~~ま~~~~き~~~~~~~~~~~!!v-412v-412v-412v-359v-359

limeさん。
もう良いです、こんなヤツ。
「RIKU」のお話は、リクと長谷川さんのラブストーリーで行きましょう。
玉城なんて、金輪際いりません。
え~もう、全くいりませんとも!!!!!!!!!!!!v-359v-359



・・・・すみません、朝からエキサイトしてしまいました・・・・・・・v-406

天然ボケ(を装ってる)多恵、今回めちゃ良い活躍してます。
でも、責任の一片は彼女にもあるような気がするのは・・・・私が多恵ちゃんに対してまだ心を許してないから??(笑)

そしてそして長谷川さん。
やはり貴女は素晴らしい人。
少し出遅れちゃった感はあるけど、それでも彼女なら充分に巻き返せる。



リク~~~~~~!!
無事でいて~~~~~~~~~v-393v-393

・・・玉城、リクに何かあったらコロスv-40

蘭さんへ 

はははは。

蘭さんのブチ切れぶりに、朝から大爆笑してしまいました。
いや~~~、バカたれの玉城を怒ってくれてありがとう~。

彼も悪い奴じゃないと思うんだけど、霊能力や、リクの気持ちに、疎すぎなんですよね。
(それでも、リクはあんなに懐いちゃってるわけですが・汗)

トラブルメーカーの多恵ですが、今回はちょっと頑張ってもらいました。
そう、自分の事を棚に上げるのはお得意です・笑
本当は多恵に、2~3発玉城を殴って欲しかったところですが・・・我慢しました^^;

大クジラの長谷川さん。
最後まで我慢して、やっと動き出しました。
今回はもう、玉城より、長谷川さんが頼りです。
(いや、一度も玉城が頼りになったことはなかったですか!)

まあ、リクがこんなに慕う玉城ですから、捨てちゃうこともできず・笑
いつか、役に立つこともあるやもしれません。
引き出しにでも、入れておきましょう^^

長谷川とリクのラブストーリー・・・・。
ふふ。ちょっと面白いかもe-267
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