RIKU・4 君の還る場所

RIKU・4 第9話 点在する疑問

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「あれ? 何よこれ」
長谷川は自分の携帯の画面を見ながら、誰にともなく呟いた。
そしてキョロキョロと、辺りを見回す。
午後5時。
編集室は社員のほとんどが出払っていて閑散としていたが、長谷川の目はその時「ピンク」を探していた。
そしてタイミング良く、ヒラヒラと廊下から入ってきた派手なピンクのカーディガンを捉えた。
「多恵ちゃん、ちょっと来て」
一瞬嫌そうな顔をしたものの、多恵は「はーい」と明るい声を出しながら小走りに寄ってきた。

「ねえ、朝、この携帯に玉城から電話の着信があったみたいなんだけど、何で?」
長谷川が着信履歴の画面を多恵に見せた。
「何でって、そりゃあ長谷川さんの携帯がちゃんと仕事してるからでしょう?」
多恵は小首を傾げる。
かわい子ぶっているのか無意識なのか、長谷川には未だ判断がつかない。
「私は電話に出てないよ。なんで通話済みになってんの?」
「そうですね。たぶん長谷川さんじゃない人が代わりに電話に出たんでしょう」
「誰が?」
「例えば、・・・私とか」
多恵はニコッと笑った。
「なんで人の携帯に勝手に出るの! 何考えてんのよ、あんたは」
「すいませ~ん。でも長谷川さん居なかったでしょ? 玉城先輩だから、代わりに出てもいいかなって思って」
「何で『いいかな』って思うんだろうね。あんたの頭ん中覗いてみたいよ、まったく」
長谷川はそれでも悪びれない多恵にあきれ果て、怒る気も失せた。

「で? 玉城は何の用だったの? 携帯見つかった報告?」
「いえ、先輩からじゃなく、その携帯拾った人からでした。本人に返したいから本人の居場所教えてって。親切な人ですよね」
多恵は長谷川の横の無人の椅子にちょこんと座った。

「拾った人が? 玉城は携帯の通話を止めなかったのかな。そういうところルーズだよね、あいつは。で、何て言ったの?」
「その時間ならリクさんのところだと思って、そっちにかけてみたら? って、言いました」
「・・・リクの所だろうって?」
「はい」
「教えたの?」
「はい」
多恵は細く長い足でくるくると回転式スツールを回して遊んでいる。
長谷川はじっとそれを眺めながら、ポツリと言った。
「ねえ、多恵ちゃん」
「はい?」
「ふつうさ、そんな風に頑張って本人探すかね。携帯なんてそもそも、拾うか?」
「さあ~。私は拾いませんけど。でもね、長谷川さん、世の中にはあり得ないほど心の優しい人間っているもんですよ? だめですよ、そんな風に斜めからばっかり人を見ちゃあ」
「あんたに説教されたくは無いわ!」
長谷川は、まだクルクル回っている脳天気な新人にブチリとキレながら、言い放った。

      ◇

畳半畳分の窮屈な電話ボックスの中で、玉城はグリーンの受話器をガチャリと置いた。
携帯が無くても公衆電話があるさ、なんて気楽に考えていたのが甘かった。
意外と公衆電話は見つからない。
これから向かう大東和出版のグルメ雑誌担当者と話ができたのは、リクの家を出て、かなりしてからだった。
先日無くした携帯はもう探すことは諦めていたが、やはり早く新しいのを買わないと不便で仕方ない。
リクはよく今まで携帯無しで生活してたもんだ、と感心さえした。

玉城はガサガサとショルダーバッグのポケットからメモ用紙を取りだして眺めた。
リクに協力してもらえなかったため、仕方なしに自分で描いてみた犯人の似顔絵だった。
しかし、どうひいき目に見ても「へのへのもへじ」だ。人間の顔を描くのは中学生の美術の時間以来だった。
誰に見せるわけではないので構わないのだと、自分を慰める。
自分が忘れなければいいのだから。

太い首、少しエラの張った輪郭。するどい奥二重の目、アゴだけに生やしたヒゲ。
けれどこんな男は世の中に五万といるような気がする。こんな記憶、何の役にも立ちそうにない。
それに実際それをどうしようというアイデアはなかった。そもそも、いつ起きた事件かもわからない。
そんな事件が最近起きたのかを調べる時間も当分なさそうだし、
警察に言っても「何のことですか」と笑われるだろう。

ただ、忘れてはいけないような気がした。あれは夢なんかではない。
あんな風に殺されてしまった女性の魂が、玉城に必死に訴えて来たんだとしたら、
忘れてはならないような気がした。

それなのに・・・。
死者の声を幾度となく聞いたであろうリクの本心を聞いて、玉城は本当のところショックだった。
たしかに、冷静な考えなのかもしれない。自分みたいなのが騒いでも、誰の役にも立たないかもしれない。
死者を救うことは出来ないかもしれない。
でも、無念の声を聞いてやろうという優しさがあってもいいのではないか。
この力を持つものの使命として。

「もう、二度と来ないから」
咄嗟に言ってしまったが、あの瞬間は本心だった。
何か大切なものを一つ無くしかけているような不安を感じたが、玉城はそれを振り払うように大きく深呼吸し、大東和出版へ向かった。
帰りに携帯ショップへ行き、取りあえず無くした携帯の通話を止めてこよう、とボンヤリ考えながら。
けれどその判断が遅かったことに、玉城はその時まだ気付かなかった。


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~ Comment ~

おはようございます(^0^) 

lime様が 悩みながらの アイテムの携帯が また 登場ですね!

長谷川さんは よく世間を 知ってるよ~
問題は 多恵なんだけど、 リクの事を 相手に 言ったあとですもんねー もう 遅いし。。。

玉城の携帯で また 何やら 厄介な事が・・・(T3T)ゞbyebye☆

けいったんさんへ 

なんだか、まだ携帯が付きまといますね・笑
進展がなくってごめんなさい。 (^^ゞ

多恵のことは、あまりこの後のことに響かないんですが、なんだか伏線っぽくなっちゃいましたね。
ただ、作者がこの女たちの会話が書きたかっただけなのかも。
これからの展開は、あまりに唐突でダイレクトです。

「伏線じゃないのか!」って、突っ込みが怖い作者です・笑

うーむ 

玉ちゃん……エライまじめですね。
というか、優しい人ですねえ~。

果たして報われるのでしょうか。
続きを楽しみにしております。

NoTitle 

唐突でダイレクトって……まさかいきなり乱闘シーンが!?

それともまさかいきなり心霊シーンが!?

多恵ちゃんのことも心配したわたしって……(^^;)

うーむ、展開がわからん。リクって、いつもは物静かでネガティブだけど、一度キレるとなにをするかわからん人に見えるからなあ。

次回を期待しまーす!!

ヒロハルさんへ 

玉ちゃんみたいな極端な性格な人は、私の小説に不可欠です・笑

勝手に自分で騒ぎを大きくしてくれますからね。

でも、とても大事にして、可愛がってるんですよ?
(そうはみえないけど)

さあ、報われるのか。・・・・(^_^;)最後までわかりませんね、きっと。

ポール・ブリッツさんへ 

多恵ちゃんの心配、ありがとうございます・笑
あの子は爆弾しかけられてもなんとか生き延びるようなタイプです・爆

次回、結構な展開を見せるはずです。
ちゃんとしたミステリーファンが想像されてるような手順を全部すっ飛ばして。

リク、・・・彼の出方が問題ですね。
「何をするか分からん」キャラだと言ってもらえて、嬉しいです・笑
リクには、ずっとそうであってほしいです。

NoTitle 

玉ちゃん・・・・いらいらするわっ(^^;

もう、ほとんど、長谷川の心境なんでしょうね、これって(笑)

秋沙さんへ 

玉城は「いい人」の度が過ぎますからねえ。
こうなると流石にイライラします。

長谷川~、なんとかして。笑

NoTitle 

良い人すぎる・・・。
なんてことだっ!

こんなことが許されてなるものかっ、いやない。(反語)

すいません、古典ならったので反語を使ってみたくて・・・

ねみさんへ 

さっそくの、反語の応用ですね・笑

まあ、そうです。
いい人ってのも、周りが見えなくなるほどでは、いけないってことですね。

(え?そう言ってるんじゃない?笑)


NoTitle 

玉城の思考は一直線すぎるよね。
ライターだとしたら、余りにお人好し、これじゃ心の裏を探ることなんてできないよね。
一枚なんだもの。
裏無しのスゥスゥの夏物みたいだ。

RIKUがどんな手助けをしてくれるのかが謎だけど、玉城には必要だわ。
変に知恵だけはあって歳だけは食っている。
子供より始末が悪いな。
どうするんだろ、RIKU。

ぴゆうさんへ 

まったくです。
思いこみが激しくて、熱しやすく、一直線・・・という性格は、ちょっと矛先をまちがうと、別の何かを傷つけてしまう。
おっしゃる通り、玉城は一番子供なんです。
子供のまま、大人になってしまった。(いい面もあるんですが)

リクも大人になり切れていない部分がたくさんありますが、冷静に物事の本質を見抜く力は、玉城よりもよっぽど備えています。
だから・・・リク、苦労するんですよねi-201

この後のリクの決断は、実は(まだ未発表ですが)この後の「RIKU・5」にも響いてきます。
リクにとって、玉城はかけがえのない存在なのですが、とても問題児でもあります^^

こんにちは^^ 

この物語の中で、一番まともだなと感じるのは、やっぱり長谷川さん。
常識人過ぎて、厄介なモノ(←)を背負い込んでしまう^^;

今回の玉ちゃん、やってる事が完璧に空回りしてますよね~v-388
何か、周りは振り回されてる感じがする。
それに、多恵の言動が拍車かけてるし・・・・・・・・・・。

今何話かな? あ、ちょうど真ん中くらいか・・・・・。
今一番色んな事がぐっちゃんぐっちゃんしてる時なのかも知れませんね~。
次くらいからは解決・・・つーか終焉?に向かって進んで行くのでしょうから。

また明日(多分)、続きを読みに来ますね~~v-290

蘭さんへ 

長谷川さん、唯一まともですよね^^;
でも、一番真相を知らされてないのも、長谷川さん。
リク達の霊力のこと、知らないのは彼女だけですもんね。
さて、どうなるか。

玉ちゃんは「今回も」空回りです。(笑
だって・・・玉ちゃんですもん。

次回からは。起承転結の「転」に入りそうです。
そろそろ、動きますよ~~^^
ゆっくりですが。

まだすこしじれったいけど、お付き合いください^^
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