RIKU・4 君の還る場所

RIKU・4 第7話 不穏な波動

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玉城が少し乱暴に閉めていったドアを、リクはしばらくじっと見つめていた。
指先が緊張して冷たくなっている。
ぎゅっと両手を握りしめた。

「強くなっている」と感じる。
多恵に言われるまでもなく、リクには分かっていた。
そんなもの無ければ、それが一番幸せな力。
関わってはいけない念と波長が合うことによって、その意識を取り込んでしまう厄介な能力。
自分はまだいい。
長い期間を経て、危険なものほど遠ざける壁を作ってきた。
けれど柔軟で優しすぎる玉城にはきっとそれができない。
隙を見せればすぐに具現化した悪意に弄ばれる。現に今回もそのせいで怪我をしている。
玉城を追ったのは、悪意のある念ではなかったかもしれない。
けれど人間がそれを恐怖と感じる限り、そこに様々な混乱が起こる。

ザワザワと窓の外の常緑樹がゆれる。
光沢のある葉に反射した光が針のように目を射し、リクは硬く目を閉じた。

『いったい、誰のせいなんでしょうねえ』

蘇った多恵の声に、胸の辺りがズキリと痛んだ。
願ったのかもしれない。
あのとき。
自分と同じものを見、自分を理解してくれる人が一人でもいれば、楽になれる、と。
もしも、そうなら。
自分のせいであるならば、自分がするべきことは分かっていた。
少しも難しくない。
今まで何度も繰り返してきたことだから。
リクはゆっくり目を開けた。

その時。テーブルに置いていた携帯のバイブが震えた。
玉城が半ば強制的にリクに持たせた携帯だ。
それのお陰で確かに救われたこともあった。
けれど、これのせいで依頼心が強くなる。

玉城は知っているのだろうか。
例えば霊感は携帯と同じだ。奴らに用件があれば波長を合わせ、相手に受信させる。
ONにすれば勝手に用件だけ押しつけて、用が済めば自分からOFFにする。
無遠慮で気ままで、嘘つきだ。

リクは唸っている携帯を手に取った。そして、着信の名前を見てほんの少し考え込む。
表示には『玉城』とあった。
携帯は失くしたと言ってなかっただろうか。
リクは訝りながらも電話に出てみた。

「・・・はい」
「あ、あの、すみません。リクさんですか?」
「・・・・・」
電話の相手はもちろん玉城では無かった。
知らない相手にいきなり名前で呼ばれて不快感を覚えるリク。
言葉は丁寧だが、どこか気怠さを含んだ若い男の声だった。
「実はこの携帯を今朝、拾いまして。持ち主の玉城さんがお困りだろうと思いまして、ご本人を探してるんです。今、そちらではないかと伺ったんですが。玉城さんは、いらっしゃいますか?」
滑らかな口調でその男はしゃべった。
「いえ。・・・今、ここには居ません」
「あ、そうなんですか。参ったな。・・・分かりました。もう少し探してみます」
「なぜ?」
「え?」
「なぜ本人を探すんですか?」
「ええ?・・・だって、それは、・・・お困りだろうと思って」
「どこか近くの交番にでも届けてくれれば、そこに取りに行くでしょう?」
リクは静かに言った。
「・・・あ、そうか。そうですよね。気付きませんでした」
「・・・・・」
「・・・本当ですよ。嫌だな。・・・親切心でやってんのに」
笑いながらだったが、そこに相手の苛立ちが感じられた。
普通、そうだろう。
親切で持ち主を探してあげているのに、今のように言われたら誰でもムッとする。
それくらいリクにも分かっている。
けれどもリクは、ためらわずに言った。

「あなた・・・ダレ?」

電話はプチッとひねたような音を出して、そこで途切れた。
電話の向こうの男の舌打ちにも聞こえた。



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~ Comment ~

NoTitle 

いかにも不審人物です、といってるも同然の電話ですね(^^)

ここらへんは、本職の振り込め詐欺の連中は、リクをも騙せるほどうまくやるんだろうけれど、まさかノウハウを聞くわけにもいかんし、リクを騙したら話が変な方向に行ってしまうし、作中のリアルさと現実とを突き合わせるのは難しいですな、やっぱり……。

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ポール・ブリッツさんへ 

ここは、電話の向こうの男の「迂闊さ」「頭の悪さ」を出してみました。
(頭の悪い連中ですから)
・・・と、いうか、この頭の悪さが、これから先のとんでもない行動につながるわけで・・・・。
私も、もっと緊迫したやり取りが書きたかった。
どんな奴が相手でも、リクはどっちみち、騙されませんからね・笑

でも、本人の電話を使っている以上、足はつきません。
そこは相手に、ラッキーだったかと・・・。

ところで、この場合、どうやったらリクから「玉城」の所在を訊き出せたと思います?
私も悩んだんですが、完璧な言葉が思い浮かびません。
犯罪には向かないみたいです。

なぜか鍵コメ、ポール・ブリッツさんへ 

第2作、「ゴールデンボーイ」は飛ばしてみました(爆
続きではないと思ったので。
第3作の「喪われた故郷」の評判が良かったので。
(でも、2作も読みたくなってきました。ここで恋人と出会うので)
ええ、今、じわじわ読んでいます。大好きな裁判のところなんです。
裁判のシーンってとても好きなんですが、とても細かくて読むのに時間かかかってしまいます。

この作品は結構本格ミステリーですよ。
その傍らで、エイズの恋人とのじりじりする切ないやり取り(ポールさんは苦手かな?)があって、
ダブルで楽しませてもらっています。
最近時間がなくて、なかなか読めませんが、大好きな作家さんです。
しかし、和訳は4作までなんでしょうか・・・。なんだか残念!

うーんわたしにもわかりませんが 

携帯から直接かけるのではなく、携帯の電話帳から電話番号を読み取り、それを使って公衆電話から、玉城の「お互いによく知らない友人」を装ってかけるとか、いくらか方法はあったように思いますが……。
これもこれで穴だらけのような気がするけど、聞き出せるようなテクニックを知っていたら、今ごろは探偵事務所に勤めていて電話番でもやっています(^^)

ポール・ブリッツさんへ 

じっくりと考えればいい案が出るかもしれないけど、手っとり早いのは多恵に訊くことですね。
でも次は長谷川が取って、やばいことになる・笑

こういう知恵が回るなら、なるほど探偵に向いてます。
あとは詐欺師・笑

この悪党たちが、頭の悪い連中で作者は助かってます。

ウゥ~ン・・・ 

lime様と ポール・ブリッツ様の遣り取りを 読んでいると 私の おバカコメを 書くのに 非常に 躊躇うものが ありますぅ。 <禁止領域>に 入るような・・・
でも 結局は 書くんですけどねー(笑)

携帯を 以前 紛失し お店の人が 丸一日程 預かって貰った身としては 携帯って 中々 警察にまでは 届けない物と 認識されてる様な 気もします。
財布が 落ちてる時とは 扱いも 違うと思います。 私だったら 携帯が 落ちてても 拾わないし。。。

だから 若い男が 拾った携帯の扱い方は むしろ 親切かも・・・感想コメにも なっていないけど lime様が 書かれた感じでも 何ら不審には 思いませんでした。と、いうことです!

リアルの方が 急に忙しくなって ご無沙汰しておりました。 これからも 宜しくお願いします(^0^)ゞbyebye☆


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けいったんさんへ 

けいったんさん。無事だったんですね。
R-Mさんのところでも見かけないから、体調悪いのかなって心配してました(^^ゞ
すいません、逆ストーカーみたいで・笑

コメント、とても参考になりました!!
携帯を無くしたり、拾ったりした経験が無いものですから。
そうですよね。
携帯は落ちてても拾わないし、持ち主を探そうなんて思わないですよね。
でも、もしそんな電話がかかってきたら、私なんて「まあ、親切な人」って、いろいろ教えてしまうかもしれません。多恵のように・・・。
自分がその立場に立つと、意外と状況を把握できなくなるかもしれませんね。

コメントありがとうございました(^o^)
どんなコメントでも大歓迎ですよ♪

鍵コメRさんへ 

お!ヘンリー・リオス、まだ読まれてません?

私はとても好きです。(なかなか読み進められませんが)
すごく清潔な、誠実な文章を書く方ですよ。作者のマイケル・ナーヴァ。
またR-Mさんのところで、書かせてもらいますね♪

本条さんへ 

本条さんにそう言っていただけて、とても嬉しいです。
この短い文体は、あまり多用すると良くないとは思うんですが、
リクの心情を描くとどうしてもこの文体になってしまいます。
リクの性格のせいでしょうか。
描く人物によって、モノローグの文体が変わる・・。これはもしかしたら未熟なのかな、と、心配もしています。(でも、テンポが良いと言ってもらえてホッとしました)

逆に、今現在書いている新作は、ワンセンテンスがとても長く、今までの書き方と全く違います。
物語の性質がそうさせるんでしょうか。(少し抒情的な物語です)
その文体を本条さんがどう思われるか、ドキドキです。
どうか、退化してませんように・・・と祈る気持ちです(#^.^#)
(たぶん、何カ月も先の公開となるはずですが)

 

なんかぞっとしてしまいました。

携帯に知らない人から電話…

いやぁぁ!です。

非通知ならなおさら怖いよ…です。

ねみさんへ 

非通知でかけてくる電話には出ないほうがいいですよ~・笑
この話の電話より怪しいですから。

しかし、いきなり知らない人から(それも男から)名前を呼ばれたら、気持ち悪いですよね~。
ぜったい嫌です。

NoTitle 

玉城の勘違いだとしても、きっかけにはなる。
殺人者達の悪は公にならねばならないし、そうあるべき。
こう云う輩には寒気がする。

これからRIKUがどんな役割を果たすのだろうか。
彼ならではのやり方だろうけど、とても楽しみ。

だけど見えるってややこしくなるよね。
どうせ見えるのなら妖精が見たいな。
それもティンカーベルみたいなのがいいなぁ~~
v-398

ぴゆうさんへ 

そうか、きっかけ・・・。
そう思うと、玉城の勘違いも、何やら功績に思えてきますね。
さて、やつらはどうなりますやら。

このあとのリクは、まさにリクだからこそ・・・な展開をみせるはずです。
まだ見せていないリクの素顔、内面を見て戴ければ、うれしいです。

そうですよね~。
けっこう、見える方たちは平気なのだそうですが、
やっぱり楽しいもんじゃないだろうと感じますよね。
(私も見るなら、妖精の方がいいですi-189

でも、確かにそこにある、別の世界の真実。
一度覗いて、確かめてみたい気もします。

・・・一度だけでいいですがi-201


おはようございます^^ 

うん。

何かやっぱり、リクの気持ちの方がすんなり理解出来る。
あでも、それはlimeさんが「リク寄り」だからかな?(笑)

まぁそれは冗談として(←)。

接触しましたね、とうとう。
凄く不穏な終り方で、次の展開がドキドキです^^;
でも今日はこれから出かけるので、また明日のお楽しみとして取っておきますv-290

毎日一話ずつ。
むふ(^m^*)
これはこれで楽しい~~e-343

蘭さんへ 

ドキ!

どの子も、みんな可愛いんですが、やっぱり・・・リクは一番可愛くて。
(物書きとしては、こういう感情は失格なんでしょうね、きっと)

今回、玉城にはちょっと嫌な役をやってもらいますが、玉城は玉城でかわいいんです(なんの言い訳w)

リクと奴らがどんなふうに関わって来るかが分かるのは、もう少し先になりそうですが、
時間のあるときだけでいいので、ゆっくり、ゆっくり、読んでみてくださいね^^

お馬鹿。 

ああーリクが携帯に出たのが運の尽き…!

真正霊感持ちの正義の鉄槌を受けるがよい!!

…とは、なりませんね。今までの行動パターンから考えて彼の場合^^;

さあ、この一見難解で単純な事件、どういう紆余曲折を経て終局へ向かうのか楽しみです。

有村司さんへ 

ふふふ。リクは、多恵のようにはいきませんでしたねえ。

明らかにあの悪党どものレベル値は、断然低いですから。
(多恵ちゃん、がんばれ)

まあ、リクの事ですから、玉城と違ってここで発奮・・・なんてことは・・・ないですよね^^;

でも、大事なポイントになることは確かです。

どちらかと言うと、巻き込まれ型のリク。今回は、どうなりますやら・・・・。

長谷川の微妙な動きにも、注目してください^^

アキラとタカヤ 

孝也さんって、タカヤと読むんですよね?
よくある名前ではありますが、うちの子たちと同名がふたりも一気に登場して、きゃああ、となりました。
なんだか嬉しいかなぁ、なんてにんまりしていますが、性格はうちの子たちとずいぶんちがっているようです。

私には霊感はまったくなく、ないのがありがたいと、リクくんを見ているとつくづく感じます。
芸術家には憧れますが、つらい人生なんでしょうね。

あかねさんへ 

わあ、本当だ^^

漢字が変わると印象も変わるので、気づきませんでした。
このワルども、私にしてはめずらしく嫌悪しながら書いたもので、印象が薄かったんですね、きっと。

でも、今更新中の「KEEP OUT」にも、実は「たかや」が出てきます。隆也です。
この子は、すっごくいい子ですよ~。安心してくださいい(なんでw)

リク、苦労症ですからねえ。^^;
いろいろ重く考えちゃうタイプで。
玉城くらい、アホなら、楽しく生きられるのに。(玉ちゃん、ごめん)
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