僕らの相対論1・トンネル効果の章

僕らの相対論 第5話 買い物

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地下鉄を2回乗り換え、終点一つ手前の駅で僕らは降りた。
30分くらい乗っていたことになるだろうか。
あまり利用したことのない路線の駅だった。

「ここ?」
階段で地上に出ると僕はキョロキョロしながら聞いてみた。
「こっからちょっと、バス」
「まだ先なの?」
「交通費は出すよ」
「当然だ」
「ついでに服も買ってやるよ」
「は? 服?」
また可笑しな事を言いだした。
素っ頓狂な声を出した僕にニヤリと笑うと、光瀬はすぐ目の前にあったショップに僕を引っ張り込んだ。

「何で服なんか買うんだよ」
「いいからいいから」
光瀬は時々携帯を確認しながらズンズン奥へと進んでいく。
ティーンズファッションのその店はとても狭いため、通路ギリギリまで服で溢れ、洗車機に掛けられる車になった気分で彼の後を追った。
こう言っては何だが、光瀬は人に物を買ってやるほど気前が良くもないし、ましてや服を同性にプレゼントしてやる趣味も無いはずだ。そこまで彼に好意を持たれる言動をした記憶もない。

何とか服の合間を縫って光瀬の所に辿り着くと、彼はネル素材のシャツをハンガーごと持って、満足そうに頷いていた。
「これだ」
黄色地にブラウンと赤のラインのチェックが入った、かわいいシャツだった。
「これを僕に?」
「うん」
「変な仮装させられるのかと思ったけど、普通だったな」
「そんな趣味はない」
「ちょっと若すぎない?」
「自信持て。比奈木は充分若い」
「いや、嬉しくないし。それより、なんでこれを僕に?」
「いいからいいから。これ買うから、すぐに着替えて」
「今から着るのか?」
「そうだよ」
光瀬は当たり前のようにそう言うと、すぐにレジで支払をすませ、店員にタグを切って貰ったシャツを僕によこした。
こいつは付き合う女の子にもこういう強引なプレゼントをするんだろうか。
僕が女の子だったら即、別れるな。
そんなどうでもいいことを思いながら、僕は着ていたジャケットを脱ぎ、そのシャツを羽織った。
「中学生みたいじゃない?」
少し文句を言ってみたが、光瀬は満足げだ。
「よし。じゃあ、いこう」
却下らしい。
まあ、着られないこともないし、シャツも欲しかったとこなので、“よし”としよう。

すぐ近くの停留所まで歩くと、丁度のタイミングで滑り込んできたバスに飛び乗り、僕らは目的地へ向かった。
とは言え、僕は目的地はおろか目的も知らない。
もう、あえて聞かずにおこう。
ここまで来たら、なるようになれ、だ。
僕は、ぼんやり窓の外を見ている光瀬をチラリと見ながら、小さく溜め息をついた。

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~ Comment ~

うーむ 

光瀬君はいったい何を企んでいるのでしょう。
limeさんだけにミステリーかと思いましたが、
コメディなんですよね?

今、気づきました。一人称ですね。この作品。
limeさんは基本三人称でしたから。
これも挑戦のひとつでしょうか。
やはり今までと毛色が違いますね。

NoTitle 

「トンネル効果」で、

「不思議の国のアリス」の世界に行く、という展開を考えつきました。

だめだわたし想像力が枯渇しておる(^^;)

どういう具合の変化球を投げてくるのか、はたまた実はど真ん中ストレートの豪速球なのか楽しみです(^^)

あと3回か~、読むのがもったいないな~(^^)

ヒロハルさんへ 

ほんとうにね、この話はどこへ行くんでしょう・笑
はい、コメディなんですが、・・・笑える話でもないかな?
最後に、クスッとしてもらえれば、成功です。

そう!気づいていただけて嬉しいです。
1人称1視点、やってみました。
これは、その主人公(?)の性格によって、雰囲気が決まってきますね。
面白いけど、難しいです。

ポール・ブリッツさんへ 

不思議の国へいけるんですか?
行けばよかった・・・・。

実際、どうなんでしょうね、この展開。
あまり期待しないで読んでください。
軽いお遊びですから。
でも、くれぐれも、最後まで読んでください・笑(強制か)

NoTitle 

友達の酔狂に付き合うがぴったりだね。

光瀬くんが楽しそうにしているのが伝わってくる。
なんだかんだの比奈木くんもいいね。
ごく普通にしか見えない二人。

この先、何があるのかニャ?
v-392

ぴゆうさんへ 

ここらへんは物理関係ないから、ただ楽しんで書けました^^
(じゃあ、物理もの、辞めればいいのに・・・ってw)

光瀬は・・・じつは、こう見えてもすごく真剣なんです。
でも、何やっても焦らないし、楽しげに見えちゃうんですね。良いのか、悪いのか。

だから、比奈木は、いつまでたっても光瀬が謎なんですww
こんな二人も、面白いでしょ?

さて、このあと・・・何が始まるんでしょう・汗
お楽しみに♪

興味がなびく 

光瀬くんにノセられて、電車に乗せられてしまった比奈木くん、内心、けっこうわくわくしてるんでしょ?
比奈木くんってよくアイドル云々のたとえ話をしますよね。実はアイドルおたくなんでしょうか?

量子力学、アインシュタインとなるとやっぱり「むずかしい」感は否めませんので、細かいところを楽しませてもらっています。
このふたり、いいコンビですよね。
私もこのふたりとこのストーリィにおおいに興味がなびいてます。「興味がなびく」いいフレーズですねー。

あかねさんへ 

あかねさん、ようこそ。
面倒くさい第4話を超えたら、もうあとは、光瀬と楽しい余興です^^
難しい理論も出てきませんから、安心してくださいね。

興味が、なびく。いいですねえ~、そんな感じで私も物語を読みたいです。
この僕らの相対論は、なかなか興味を持ってもらいにくいのが難点なんですか><
あかねさんに気に入ってもらえて良かったです。

このふたりのコンビ、けっこう気に入ってます。
続編を書きたいと思いつつ、なかなか実現できず。

でも、変わり種として、これを書けて、満足しています^^
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