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最終話 あの月が満ちるまでに

ラビット 最終話 あの月が満ちるまでに(6)

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意地悪な、残酷なかぐや姫。

男達はただただ姫を愛し、守り、側に居たかっただけなのに。
プレゼントを手に入れるために彼らは命を落とすかもしれないと言うのに。
あえて、その愛を試そうとするかぐや姫。

彼女に愛はあったのか。

たとえ男たちが身を痛めてプレゼントを渡し、愛をささやいたとしても、結局は……。

「かぐや姫は満月の夜、月に還るの」

マユカはまるで心の中を見透かしたかのようにニヤリと笑って稲葉を見た。
稲葉は今までとは違う、焦燥感を覚える。

自分はここに居てはいけない。マユカの言葉を聞いてはいけない。
けれどまるで術にかかったように、体が動かない。


「かぐや姫。……竹から生まれた女の子」

口元に冷たい笑いを浮かべながら、マユカは稲葉にゆっくり近づいてゆく。
宇佐美もまた、硬直したようにマユカを見ているのが感じられた。

「あのね、稲葉さん。私もそうなのよ」

「え?」

稲葉は至近距離まで近づいたマユカの目を見つめた。黒々とした瞳が何かを試す様に稲葉を見つめ返す。

「私は竹じゃなくて、小さなガラス瓶の中」

「マユカやめろ! そんなことして何になるんだ」

初めて宇佐美がマユカに対して声を荒げた。叫びのような悲痛な声。

けれどまるで聞こえていないかのように少女の唇は動く。

「私は13年前、宇佐美に造られた実験動物。クローンなの」

「……え?」


稲葉は少し困惑した。

―――この子はこんな時にいったい何のジョーダンを言っているんだろう。
それも、たいして面白くもないジョーダンを。

……ねえ、宇佐美さん?

けれど、視線の先の宇佐美は笑わなかった。

目を見開き、青ざめたまま愕然としている宇佐美を見て改めて、稲葉は今聞いた言葉を頭の中で反芻した。

……まさか。ウソですよね。

「宇佐美さん?」

けれどやはり宇佐美は口を開かない。少女の冗談を笑う仕草さえしてくれたら、それでやり過ごせるのに。

稲葉に帰ってきたのは、肌を刺すような張り詰めた沈黙だけだ。

稲葉自身が息をのむ音が、やけに大きくその場に響く。


―――どうしよう、卯月さん。

貴方からの依頼は、僕には荷が重すぎます。


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~ Comment ~

NoTitle 

急にSFになってびっくりしました。

13年前ってことは……。

遅くても大学院生レベルで設備と資金と優秀なスタッフを揃えて理論を確立して、しかもマスコミに一切バレないようにしてやったということですね。

宇佐美くん天才すぎる。

でも発表もしないのになぜそんな研究プロジェクトを進めたんだろう。わからん。

ポール・ブリッツさんへ 

なんとなくSFチックですね。
でも、本来のSF・・・とはちょっと違うんです。
次回、宇佐美がすべて告白します。きっと納得してくださると思うんですが・・・。

ポールさんが思っているのとは、ちょっと違った事情があるんです。

NoTitle 

まさかこの娘、

「自分をクローンだと思い込んでいる」

気の毒な娘なんですか……?

ポール・ブリッツさんへ 

ははは。
それはあまりに可哀想すぎ(^o^;…

いえ、マユカはやっぱりクローンなんです。
でも、実はそこに悲劇があるわけじゃないんです。

NoTitle 

 マユカちゃん、クローンだったのですね……!?
 推理力ゼロの私は「う~ん……宇佐美の親族」ってざっくりな予想でしたが、それもはずれてしまいました(^^;)
 サイエンス大好きなlimeさんらしいお話ですね~♪♪
 私にはとても現実的でリアリティーのあるお話に思えます。絶対にありえない……とは言い切れない。そこがリアルでちょっと怖い。面白い展開だと思います♪♪
 でも、まだ隠された謎が!? 
 次回楽しみにしていますね~ヾ(=・ω・=)o☆バイバイ☆ヾ(=・ω・=)o

NoTitle 

「真夜中の相棒」で喪失感を与えてしまったお詫びに、天才肌と直情径行の二人の青年の友情を超えた絆の物語でありながら、手に汗握るサスペンスでもある傑作、ラッセル・ブラッドン「ウィンブルドン」を読めば気持ちも明るくなる……かもしれません、といっておきます(^^)
ちなみにこっちは完全に健全なサスペンスであります。

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%B3-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%B3/dp/4102191011

ツァラプキンがジョニーであり陽だとしたら、キングがマックであり坂木ですな。

この組み合わせを思い出したとたん、これはlimeさんのご趣味とはずれるかもしれませんが、お口直しにはもってこいだろう、と……。

ちょっとでも紹介された本をほめられると、ミステリファンというのは難儀なもので、次々と作品を紹介しなければ気がすまない、という罠が(笑)

わたしみたいな犬のような男には「気合の入った読書レポ」などというエサは投げてやらないのが鉄則であります(笑笑)

16さんへ 

そう言ってもらえてホッとしました。
「ココまできてSF?」って、ぜったい思われますもんね。
忘れられがちですが、宇佐美は医学系探偵ですから・・・(知らなかったって?笑)

このあと、ちゃんとした説明を宇佐美がしてくれると思います。
(ちょっと記憶が不確か)
かなり、長い説明ですが、どうか聞いてやってください。
ありがとうございました~~(^-^)/

ポール・ブリッツさんへ 

気合の入った読書レポを書き過ぎましたか・笑
でも、実は書き切れてないほど、ジョニーとマックは私の中で爆弾でした。
今日だって、仕事中にあれ以外のラストを模索して気を晴らそうとしたり。
あれ以上のコンビは生まれなさそうです。(T_T)

でも、ポールさんの新たなお勧めも気になります・笑
ぜひ、読んでみたいと思います。

健全なサスペンス・・・って、あれだって健全なサスペンスですよおぉ~~゜(´□`。)°゜

とにかく、またTホワイト著を2冊ばかり買ってしまったので、そちらを読んで来ます。
そして・・・あの映画のDVDも買ってしまいました。
ええ、バカです。自分でもバカだと思います。
願わくば、期待はずれの映画であってほしい。
そしたら少しは喪失感から解放されるかな・・・。

すみません 

ダメだと知りながら、敢えて突っ込ませてもらいます。
「今回、短っ!」
すみません。笑。

ただ内容的には三回分くらい衝撃的でした!
宇佐美さんはそんな過去を持っていたのですね。
マユカの言いなりにならざるを得なかったのも無理はないかもしれませんね。

NoTitle 

たとえDVDに2300円も使っても、本人が満足していればいいんです。

きっと映画は傑作です。期待はずれを願って買うなんて、監督と俳優に悪いですよ(^^;)

ホワイトはなにを買ったんですか? 面白かったらレポよろしく。……って4ヶ月先か(^^)

ちなみに刑事コワルスキーはシリーズものだそうです。楽しみが増えますね(^^)

NoTitle 

あははは~~~。
やっぱりポールさんも16さんも、私がこのお話を初めて読ませていただいたときと同じ反応してる~~~(笑)

「え!?いきなりSF!?」って(^^;

でも、皆さんご安心ください。
ラストはやっぱり、ちゃ~んとlimeさんのお話なんですよ~、とだけ言っておきますか?だめ?(^^;

ヒロハルさんへ 

ははは。
だーかーらー、短いですって言ったでしょ・笑
切りどころが難しいんですよね、なかなか。

次はめっちゃ長かったりするかもです。
長いのも申し訳ないですね。
そして、どうでしょう、私の更新は2日置きですが、
2日置きって、内容忘れちゃいますかね。
(ちょっと心配)

さて、マユカ。
最後にヒロハルさんに納得してもらえるかな??

ポール・ブリッツさんへ 

手元にDVDが届きました〜〜。今夜、ゆっくり見ます!!

ジョニー以外は名前も背景も違うし、ジョニーは金髪青い目じゃないけど、
なんだかいい感じです。(写真見る限りでは)
フランス映画らしい、独特の雰囲気が・・・。
そうですね。駄作を期待して買うなんて失礼ですよね。
いい作品だったらいいな♪

ホワイトさんの小説は「木曜日の子供」と「刑事コワルスキーの夏」です。
コワルスキーのほうは、初っぱなから、かなり残虐です。
書き方がちょっと違いますね。どんな展開になるのか・・・。
おもしろかったらレポします。(^o^)/

4カ月先かも・・・・笑

秋沙さんへ 

あたたかい応援、ありがとうーーー、秋沙さん。

秋沙さんに読んでもらったときも、この部分はドキドキしました。
なんでSF?って思われそうで。
まあ、サイエンスフィクションではあるんですが、決して現実離れした物語は書きたくなかったんです。
そうそう、秋沙さんに聞き忘れてたことが。
宇佐美の判断を、どう思ったか・・・。
どうだったんでしょうね。

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