流 鬼  《連載中》

流鬼 第21話 カラスと鬼の棲む森(2)

 ←流鬼 第21話 カラスと鬼の棲む森(1)   →(雑記・イラスト)残暑お見舞い申し上げます(*´ω`*)
「じゃあ、その話を根岸にも?」
飛田は心臓がトクンと跳ねるのを感じた。

「ええ、しました。このあたりの歴史の事を調べてるって言う事でしたから」
「いったいどんな話を……」

「あそこに夜千代村が出来た時からあった、本当にただの昔話ですよ。
あの周辺の山に元々住み、ほとんど人と同じ形をして人に成りすましているけど、本当は気が荒くて、気分次第で人を喰らったっていう鬼です」

飛田は黙って頷いた。米田講師に聞いた、移り住んできた集団の話はまだ出てこない。
女将は少し笑いながら続けた。

「人を食べるというのはいかにも昔ばなしっぽくて笑えるけど、13年周期で子を産んで増やすっていうのはなんだかリアリティありますよね。そう言う数字を出されると怖くなるのは何ででしょうね」

「13年周期」
思わず飛田が声を漏らした。

「ええ、そう、13年ごとに鬼たちは何かの儀式のように子を生み、その子もまた13で子を生み、鬼の血を伝えていく。記憶も知識も恨みも、全部その血の中に伝えていく鬼。それが流鬼。
でもこの単なる昔話の流鬼と、今現在須雅神社で祀られてる流鬼は、ちょっと違うんですよね」

「……別なんですか?」
飛田は更に身を乗り出す。

「須雅神社に流鬼が祀られるようになったのは1900年のはじめに、移住してきた集団との諍いが有った後なんだそうです。
その移り住んできた人たちっていうのが、嘘か本当か、ものすごく怖い集団でね。一見普通で、村の仕事を手伝いながら生計を立ててるんだけど、村人と深く交わろうとしない。不思議な事に10代前半で子を産む女が多くて、50年くらいの間にどんどん数を増やしていったんだけど、まったく……やることなすこと伝説の流鬼なんですよ」

「……じゃあ、もしかしてその大もとの昔話があったせいで、彼らが流鬼呼ばわりされたってこと?」

「ああ、そうも言えるかもしれませんね。でも、その昔ばなしこそが、リアル流鬼の予言だったって思われてたみたいです。神通力を持って、喧嘩相手の村人を殺したって言うのが発端で、村人と対立するようになっていったそうなんだけど。偶然なのか人為的なものか、その移民の人たちは火事でみんな死んでしまったんです。結構な数だったみたいですよ。焼け跡は地獄絵図だったって。
それ以降、干ばつや山火事なんかが絶えなくて、村の人はこれは崇りに違いないって恐れ、須雅神社に流鬼を祀ったんですって。まあ、祀るというより封印と鎮魂の意味の方が近いような気がするんですけど」

飛田はしばらく言葉が出なかった。
米田講師が語ったことの全貌が、これだったのだ。ほんの100年前の話だ。流鬼は夜千代村の人間にとって、昔話などではない。
大昔の民話と、その奇妙な移民集団との関係は、多分無かったのだろう。
けれど、人の中にある姑息な感情が、それをひとくくりにして、「鬼」を作り上げた。

移民の集団は、神通力のようなものを持っていたと言う事だが、もしかしたらそれも村人の言いがかりだったのかもしれない。
書物も残っているはずはなく、そして村人にとって、だぶんその真偽はどっちでもよかったのだ。

ただ移民は邪悪な鬼であり、鬼は退治すべきものであるという図式さえ作れれば、すべて許される。

その、トチ狂った大義名分を掲げ、よそ者の集団を一致団結して焼き払ってしまった村人。
そして、教授の話によれば、初期の須雅神社が燃えてしまったのは、その後だ。
村人が我に返り、遷座させた須雅神社に流鬼を祀ったのは、ただひたすら祟りを恐れての保身のためだ。

―――そんな後ろめたく、痛い過去を抱えた須雅神社の祠宮の中から、小菊は拾われた。

村人の怖れが伝染したかのように、飛田の背筋を冷たいものがザラリと撫でる。

「13年周期……」
飛田の口から再び、その言葉がこぼれた。

よほどこういう話が好きなのか、女将が興味深げに頷く。

「その年月に意味があるのか、偶然の周期なのかは分からないけど、キリスト教始めいろんな宗教で嫌われる数字だから、なんとなく気味が悪いですよね」

飛田は頷いた。13年。あまりにも符号が合いすぎる。あの家族と。

「根岸にも、その話をされたんですね、女将さん」

「多分同じようなことを言ったと思いますよ。14年も前だからうろ覚えですけど。それにあの頃、流鬼の復活だってやたらと上夜千代の知人が騒いでたから、私も調子に乗っていろいろ喋ったのかもしれない」

「流鬼の復活って……」
「須雅神社の祠から拾われた女の子が、人にあり得ない力を持ってるって話で」
「そ! その子の……」

飛田は思わず声を荒げ、女将ににじり寄った。

「その子の話を根岸にしたんですか!?」

女将はさすがにたじろいで飛田を見る。
「飛田さん、その子の事をご存知なんですか?」

「あ……いえ」咄嗟に言葉を濁す。

「もちろん、そんな名指しで教えたりはしませんよ。 だけど、12年前須雅神社で拾われた、絶世の美少女が居るって言う噂の事は、少し話したかもしれませんね。それはもう、この町にも噂が聞こえるくらいインパクトのある話でしたから」

根岸がその話に興味を持ったのなら、上夜千代で少女についての真相を確かめるのは訳もないと思った。
飛田に残したメッセージの中の鬼が、流鬼の事であることはもう間違いない。
そして、それが“小菊”であることも。

根岸は、流鬼であると知ったうえで小菊のあの写真を撮ったのだ。
いったいどんな気持ちで……?

そしてこの世を去った夕刻。
かがり火が焚かれた須雅神社の祠の前でお前はいったい、何者と対峙したのだ。 何を見たのだ。

飛田は鈍く痛む頭を垂れたまま、目の前の机にそっと触れてみた。
けれど14年前、根岸が飛田への最後のメッセージを書いたと思われる古い文机は、黙して何も語ってはくれなかった。


             

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今回、過去の昔話が沢山あって、とてもややこしくなってしまいました( ;∀;) 読みにくくてごめんなさい~。
でも、過去の流鬼の伝説は、適当に読み飛ばしてください!
そんなことがあったんだな~~、くらいで(*´Д`)  推理は不要です。

次回は、キヨと秋人の意味深な会話です。
謎めいたこの2人、なにか解き明かす話題を振ってくれるのでしょうか……。



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~ Comment ~

NoTitle 

やはり地元の情報は地元の人から聞くのが一番ですね。
何となくやりきれない事情も抱えた歴史のような印象を受けました。
小菊が拾われたことによってまた歴史が巡っているのでしょうか。
(13年周期がすごい具体的?)

口伝ものは背景を知るとへえとなるものが多いのですが、大事なのは今かな。
現状とのつながり。ここを知りたいですね。(まだお預けですかねー…)

根岸の件や、少年たちの経験にはまだつながりがあるようなないような…?
飛田(探偵・だよね!)がこれからもどう動いてくれるのか期待しています。

キヨと秋人の意味深な会話…気になる気になる~~!!
大人と子どもの会話にはならないような予想…?

けいさんへ 

けいさん、こんばんは~^^
さっそく来てくださって、ありがとうございます!

そう、ここねえ、本当にただの昔話と、100年ほど前のけっこう具体的な事実とが絡んで、ややこしくなっていますが、あまり深く読み込まなくても大丈夫です><(←なら書くなって)
うんうん、大事なのは今なんです。
そこに気づいてもらえれば、いろいろ謎が解けて……。

根岸の事も、あの時何かあったのか、はっきりわかる時が来ます。
でもそれは、本当に最後の最後かも><

今回もいろいろ引っ張っちゃうかもしれません(*´ω`*)

次回のキヨと秋人の会話は、なかなか面白いと思いますよ(自分で言うしかない)
キツネと狸の化かし合い? いや、もっと根の暗い……。

なかなか更新が不定期ですが、またぶらっと遊びに来て下さいませ。
コメント、ありがとうございます~(#^^#)

NoTitle 

村に移住してきた異物を排除した。
いくら役に立つ存在でも、
異質な存在に見えたら村人からしたら怖かったのかもしれませんね。
だから焼き殺してしまったと。
それにしても、昔の流鬼と今の流鬼は少し違うようですが、
やっぱり、小菊は昔の流鬼の血を継いでいるんでしょうか。
そこも気になるところですね|ω・`)

NoTitle 

あれ?

十三周期の言い伝えのままだとすると、今度子供を産むもしくは父親となるのは秋人の世代なのでは? でも、また小菊が妊娠しているというのは、何か意味があるんだろうか。氣になりますね。  

一方、伝説の流鬼と、いまの(?)流鬼は違うのだとしたら、何が違って、二つともここに現れたのはなぜだろう。小菊だけは昔の方の流鬼なのかしら。

あ、上の質問、答えなくて良いですからね。
そうでなくて、これから読み進むのに、自分の疑問を整理しておこうかなと思いました。

関係ないですけれど、その昔、アステカで伝説の「白人の顔をしたケツアルコアトルがセーアカトルの年に再来する」というのを信じていて、たまたまそれにあたる年に白人たちがやってきてしまったので、侵略への対応ができなかった、という話がありましたけれど、全然関係のない人たちがやってきても、「伝説の鬼だ!」と思ってしまった村人たちは、冷静に判断し損ねたりもするのかな、と思いました。

次回、探偵の飛田がもう少し解決してくれるのを期待しています。

ツバサさんへ 

ツバサさん、いつもありがとうございます!

そうですよね、どこからどこまでが本当なのか、昔の話って眉唾物ですが、ここの村人が、移民の集団にヒドイ仕打ちをしたのは本当みたいですで。

その後で、「あれは鬼だったから」なんてことをシレっと言い伝えたのだとしたら、なんか怖いかもです><

さあ、そのことと小菊の事が、どれほど結びつくのか……。

次回の、秋人とキヨの話で、1ミリくらいわかるかな??

八少女 夕さんへ 

夕さん、おはようございます^^

お! さすが夕さん、鋭いところを突いてきますね。
13年周期。物語の中ではかなり繰り返され、大事なキーワードであるように匂わせていますが、さあ、その実態は。
26歳の小菊が再び子を孕むというのも、やっぱりこの13という周期に関係してるんでしょうね。2度目の……?それとも…。(ああ、言いたい><)

そして過去の二つの流鬼の伝説。小菊との関係は……。

こういう伝説に起因するお話って、どこまでが本当でどこまでが作り物なのか分からない部分がありますよね。
この物語も、「真実はこうだ!」と100%説明して終わるわけではないんです。
でも最後の方に、キヨが語る、「小菊は○○○○○○○○○○○○○○」って言う言葉が、本作の謎のすべてだと思っていいかも。

そのアステカの伝説、すごく興味深いですね。その時攻めて来た人たちは、伝説があったからその年に決行したのか、それとも全く別の種族が偶然に攻めて来たのか。
いずれにしても、昔話って、その裏になにかもっと悲惨な出来事の隠ぺいがあるような気が、ちょっとしてしまうこの頃です……。

次回は秋人とキヨの、これまた謎だらけな会話ですが、全部分かった後で聞くと、ああ……と思うシーンなのです^^

追伸:少し過ぎてしまいましたが、お誕生日おめでとうございます(´▽`*)

NoTitle 

う~ん、完全にわからなくなってしまいました。
13年周期・・・とか、いったいどうなっているんだろう?
女将の解説を聞いてもさっぱりわかりません。
流鬼っていったいどんな存在なんだろう?
流鬼の民話と奇妙な移住集団、そして小菊との繋がりは?
物語が終わるまでにサキが完全に納得できることを祈っていますが、この世界には人類には理解できない、或いは解明できない不思議な事もありますから。
今のところ納得のいく答えは見つけ出せません。
早く先へ進んでくれないかなぁ。
ちょっとジリジリしています。
でも、物語の結末がどうであれ、流鬼の伝説を適当に読み飛ばさないでいた方が、ドキドキして面白いと思います。

山西 サキ さんへ 

サキさん、こんばんは^^

サキさんが、読者さんみんなの代弁をしてくださった感じですね(´▽`*)
今回のはじっくり読んでも、深みにはまるだけで謎は全く解けていない感じでw

でも、そうそう、読み飛ばしていいって言ってた流鬼の二つの伝説。
実際には勿論無関係ではなくて。(ドキドキしてくださってうれしいです)この昔ばなし、全部終わった後で、「そうなのか……」と、じわっと効いて来るかも。
そうなんですよ、100%理路整然と説明ができない部分がたくさんあるんです。
たぶん、一番多くを知っている、「彼女」にも。

次回、キヨと秋人の会話で、少しだけヒントが得られるか、それともますます分からなくなるか。
この物語って、ストレス小説ですよね~><
ああ、早く先へ進めたいです(←じゃあ早く書きなさいって事ですよね(*_*))
いろいろ参考になる感想、毎回感謝です(*´ω`*)

そういえば 

この間、「ダーウィンが来た!」で、猫島における猫の研究やって、猫のDNAを調べたら、猫のメスは自分のいる群れじゃなくて、群の外の雄猫との子供を産む確率が高いとわかったとのこと。人間でも、血が濃くなると病気になることが本能的にわかっていて、昔はマレ人、といいますか、村の外から来た者たちと結ばれることを積極的に行っていたとも言いますが・・・・・流れ者ってのはある意味大事な存在だったはずだけれど、流れ来る鬼はダメなのかぁ。
鬼も、異国から来たとされる鉄を作る一族(火を使うので赤ら顔だったとも。しかも山に住んでいるから)を指したともいわれるけれど、limeさんのお話だからそんな民俗的なお話じゃないんだろうなぁ……

伝説といえば、私の出発点でもある本(そして、竹流の座右の書でもある)「古代への情熱」から、伝説と語り継がれていたのものに歴史的真実の気配を感じて探求を続けると、まさかの……な話があるし、どこかに真実が隠されているものなんですよね。でも時代が下ると、少し伝言ゲーム化してちょっとゆがむ……どこまでがどうなのか、その歪みがかえってこわかったりするんでしょうね。「怖い」と思うから怖いのか、本当に怖いのか……
「小菊は○○○○○○○○○○○○○○」がなんやら怖い・・・・・

あ、夕さんの書いておられたケツァルコアトルの伝説、まさに私が例の中学生の時に発想を得た伝説です(白人の顔をしてやってくる、という)。いや~、懐かしい。

大海彩洋さんへ 

そうか、DNAが調べられたら、また過去の民族の系譜とか、いろんなことが見えて来たんでしょうね。(小菊のDNAを調べてみたい作者)
人間も動物だから、本能的に血が濃くなるのを嫌って、外の集団を受け入れることはやぶさかでないと思うのに、高貴な方たちって、その逆を行ったりしてて、やっぱりそれも何か、人間だなあと思うところなんだけど。この村の人たちも最初は受け入れて共に仕事をしてたのに、一度衝突が起きてしまってからは、もう断裂(処理?)するしかなかったのかな。もしかしたら本当に凄まじい異能を持っていた集団かもしれないし)

でも、この過去の流鬼たちの事情は実は、この物語の中ではあまり関係が無いんです。民俗学や歴史とも違うので、あの注釈を入れたんです。
はい、私の物語に深い知識は要りません。
でも、「小菊は○○○○○○○○○○○○○○」という言葉には、そう言うのを超えたものが、込められていると思うんです。
(作者の考えすぎなのか、今のところは不安なのですが)

おお、夕さんのその伝説が?
やっぱり夕さんや大海さんって、どこか深いところで共通点があるんだなあ。
博識と言う事もそうだけど、着眼点や興味の持ち方が非凡。
……ああ、私、小学生からやり直したい(;_;)←いや、きっと同じだったかな。更にオタクになりそう(笑)

^^ 

暑中お見舞い申し上げます!

ワタクシ。以前から申し上げているように。
「読書感想文が苦手」でして^^;
それゆえ。小説のコメントは控えているのですが。
こういう日本ならではの土俗的雰囲気は好きなんですよね。
何かこう妖気を孕んで郷愁を呼び起こすような感じ。
(彼岸花に赤い服を着た美少女が立っている風な)

ボチボチ執筆活動頑張ってください!^^)/

waravinoさんへ 

ああ~わかります。
私も感想コメントは なんかズレタことを言いそうで苦手なんです。

私の物語の感想は まったく気にしないでくださいね(*‘∀‘) 読んでくださるだけで嬉しいです。
満足いく作品が書けるかどうか不安なんですが。

私もじっとり不安を煽るような、日本的なお話は好きなんですが、知識も無く……。
だからまさかこういうお話を自分が本当に書くとは思ってもいなかったので 今書きながらすごく不思議な気分なんです。
これ、別の人が書いてるんじゃない?とか(笑)

この先、妖艶さと怖さとグロテスクと……。ラストはかなりひどい展開になっていくのですが、もしよかったらまたお立ち寄りください^^

NoTitle 

こんばんは!
二話分まとめて読みました^^

今回のお話で、流鬼って「流れてきた移民」と「血に流れる鬼」っていう二つの意味があったんだなぁと思いましたよ~><

しかしまさか、こんな近くから情報が出て来るなんて飛田さんにしたらびっくりですね。笑
あんなに怖い思いしてほとんど空振りだったのにw

夢月亭清修さんへ 

夢月亭さん、2話分よんでくださって、ありがとうございます!

そうなんです、流鬼という名称は、その二つの意味があったみたいですね。
でも二つあるって事は、本当はどれが正しいのか、分からないという事で……。
昔話とか伝承とかって、いろいろ混ざりあってて、結局はどれも怪しい……っていう感覚、ないですか?
どこかあやふやな過去の伝説。それに怯える村人。
そんなものが、この物語の本質だったり……。

そうそう!w まさか民宿の女将がこんなに情報を持っていたなんて(笑)
まあ、逆に運が良かったって言う事かもしれませんよね。女将に出会えて……^^;

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