流 鬼  《連載中》

流鬼 第19話 偽りの協定(2)

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今にして思えば、自分がこの村に来たのは、根岸の死の真相を探るというよりも、根岸に対する自分の想像が、まったくの思い違いであることを確かめる為だったのかもしれない。

そしてその事で、ろくでもない妄想の連鎖から解き放たれ、自分自身もどこかで救われたいと願ったのかもしれない。
飛田は秋人という少年を見つめながら、そう思った。

まずは小菊に会わなければならない。そのためには少しばかりの嘘が必要だった。

「実は僕、民俗学の研究をしていてね、いろんな土着信仰を調べているんだ。鬼を祀った神社は日本にいくつかあるけど、ここの事はまだほとんど知られていないよね」

「え。ほかにもあるんですか、須雅神社みたいなところ。そこにも鬼が閉じ込められてるの?」
秋人は大きな目をさらに大きく開き、興味深げに飛田を見た。少し予想外の反応だ。

「ああ、鬼神神社のように有名どころもあるけど、きっとここのように、知られていなところもまだ沢山ありそうだしね。出来るだけ詳しく調べたいんだ。でもここの人たちはあまり村の歴史なんかを話すのが好きじゃないみたいで、さっぱり情報が集まらない。
ただ、なぜか小菊さんや、由良という家の名前は何度か出てきたもんだから、きっと神社について詳しいんじゃないかなと思って探してたんだ。
そう言う事で……秋人くんのお母さんに会わせてもらえると有難いんだけど」

こんな下手な芝居が通用するだろうかと幾分不安になりながら返事を待っていると、秋人は意外にもあっさりと答えをくれた。

「それならおばあちゃんに訊くといいよ。母さんは体調がよくない日は誰にも会わないし、知らない人とは口を聞かないから。それでもいい?」
不思議な事に秋人はとても好意的に目を輝かせ、飛田を真っ直ぐ見上げた。
今時の13歳にしては意外なほど無邪気で人懐っこい子供に見える。

あの第一印象の方が間違いだったのかもしれないと飛田は思った。
この子なら少し突っ込んだ質問でも受け入れて、答えてくれるかもしれない。

「君のおばあちゃんって、神社で小菊さんを拾って育てた人?」
「そうだよ。だから血は繋がっていないんだ」
あまりにあっけらかんと言うので、飛田は逆に戸惑った。

「……そのおばあちゃんが、君とお母さんのお世話を?」
「そう、全部。昼間は外で仕事もしてるし、大変だと思うから、僕も学校が無い時は、なるべく手伝うようにしてる」
「へえ、そいつは偉いな。じゃあ、小菊さんはずっと家に? 仕事は?」

「してない。体と……時々心が病気になっちゃって」
僅かにテンションが下がった気がした。けれど、質問を遠回りさせたくなくて、そのまま続けた。

「それは大変だね。働き手がおばあちゃんだけだなんて、生活も大変だろう。……ところで、秋人君のお父さんは?」
さらりと言ってみたつもりだったが、僅かに声が上ずった。
秋人と目が合う。

「お父さんは亡くなった」
「亡くなった?」
「母さんが殺したから」

次の言葉が継げず、思わず黙り込んだ飛田の顔を無表情でじっと見つめた後、秋人は笑った。

「…って、村の人たちに聞かされたんでしょう? 村の人たちはそんなひどい噂ばかり流すから。時々僕も、本当なのか嘘なのか分からなくなる。
村の人とは仲良くしたいけど、母さんの事悪く言う人たちと仲良くする気は、なんだか起こらなくて……」

すこし言い淀んで秋人は飛田を見上げた。

「飛田さんが本当の事を調べてくれるのなら、僕は協力する。母さんは鬼なんかじゃない、普通の人間だってみんなに言ってくれるのなら、協力する。母さんにも会わせてあげる」

飛田はとりあえず「出来るだけ協力する」と、頷いた。
頷きながらも罪悪感で胸が痛んだ。
本当は鬼の伝説などどうでもよかった。今はただ、小菊にもう一度会えさえすればそれでよかったのだ。

鬼などと言う迷信的なものが存在するはずないこの世の中で、小菊は鬼なんかじゃないと言うのは実際訳もない。
ただ、村人にこの根深い『いじめ』をやめさせるように説得する役は、よそ者の飛田には無理なのだ。安易に約束することなど出来ない。

それでも少年は嬉しそうに目を輝かせた。

「飛田さん、僕の家こっちだよ。ロクと一緒に付いてきて」

自転車にふわりと飛び乗って走り出した少年を、飛田は車でゆっくりと追う。
期待と不安と罪悪感の入り混じった、なんとも複雑な気持ちだった。

同じく少年を追いながら、ロクという名のカラスが、まるで挑発するように車と並走して飛ぶ。
時折こちらに首を動かすカラスの視線がすべてを見透かしているようで、飛田には怖かった。




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あれ? 思ったよりも先が長いです (゚ω゚:)
次回は、また健造の家からお送りします 


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~ Comment ~

NoTitle 

こんばんは。

おやや〜?
素直に文脈を読むと、飛田の側に「偽り」のある協定という意味のタイトルなんだけれど、limeさんの小説だから、もしかして秋人の方も……。なんて。
だって、なんか今までとちょっとキャラ違って見えるんですもの。わりとまっすぐな普通の少年風で。

いかんいかん。
どうも「裏を読まないといけないのかしら」強迫観念にやられている?

大人しく続きを読みます。

 

「裏を読みたくなる」のは、一刻も早く「不安感」を解消したい、という心理のあらわれだから、成功してるなあlimeさんのサスペンス。

もう腹をくくって最後まで列車に乗っているしかないみたい(^_^;)

八少女 夕 さんへ 

おはようございます~。

ふふ。夕さんまでいろいろ裏を考えてみてくださってる。
limeは正直者ですからね、騙したりはしないですよ~(*´▽`*)(と、一応言ってみる)

秋人視点を1回挟んではいても、なかなかこの秋人の心理は掴みにくいですもんね。
このあとじわじわと飛田が接していきます。
冷や汗と共に、観察してやってください。

(多くを語れないんで、いつもコメ返が素っ気なくてごめん><)

ポール・ブリッツ さんへ 

おはようございます。

そう言ってくださるとうれしいです。物語に、あまり多くの謎をぶち込むのは好きじゃないんですが、「こいつ何考えてる?」的な探り合いって、すごく好きなんです。(リアルでは絶対嫌だけど)

でも、私の物語は裏読みせずに、直感で読んだ方がいいかも…。なにしろ、作者が直感だけで描いているものでw

そんな感じなので、どうぞのんびり無心で、お付き合いしてやってください^^
(あ、そしてひどい駄作だったとしても、怒らないでね><)

NoTitle 

≫飛田さんが本当の事を調べてくれるのなら、僕は協力する。
↑このセリフがきな臭く感じてしまいます><;秋人怖いっ…

母さんが殺したから…なんて、村の人たちも言ってなかった気がします。
父親の死に、村人たちも関係しているのかなぁ…なんて邪推も…
罪悪感で口が重くなるってこともありますもんねぇ><;

NoTitle 

ひ~~にこにこ秋人君怖い(笑)
嬉しそうに目を輝かせたって、
秋人君何をするつもりなのか><
飛田さん・・・大丈夫なのかしら・・・^^;
なんて、もやもやうずうずしながら
次回を楽しみにしています^^♪

夢月亭清修さんへ 

なんか、秋人ってかわいい事を言えば言うほど怪しいですよね^^; なんでかな……。

でも、村人の事をよく思ってないって事が、言葉の端にじわじわと、染み出して来てる気もするし。
さあ、秋人っていったい、どんな子なのか。

じわじわ行きますね。(じわじわ過ぎるわ><)

いつも来てくださってありがとうございます(*´▽`*)

ななおんさんへ 

ひ~~、ってwww

おっかしいなあ、純粋無垢(っぽい)秋人を書けば描くほど、皆が怖がる(;´Д`)
でも、確かにこの状況でキラキラ笑顔は、なんか怖いかも><

飛田さんの無事を祈っていてください(*'▽')ww ←笑ってるしw
いつも読んでくださって、ありがとうございます!

今日久々に、ななおんさんのところで『RIKU』のイラストみて、1人で感動してました。
は~~、やっぱかわいい(*´▽`*)

NoTitle 

飛田も秋人もお互いの腹の裏を探っているのですかね。
表情とのギャップが何とも言えない。

この飛田がはったりをかまして(?)得た協定(?)、どこへ転がっていくのでしょう?
どんな驚愕の情報(?)にたどり着くのか?
ロクだけは真実を見透かしているような…(←頼りがロクとなるのか?)

NoTitle 

少年に嘘はいけないなあ。飛田クン。
(*´ω`*)
そんな大人は猟銃で撃たれて村八分になるぞー。
( TДT)

こんばんは~~(^0^*)ノ 

秋人は本当は何を考えてるんでしょうね・・・
飛田は騙すつもりが騙されて?
って感じになっちゃうのかなあ~・・・
次回は
いよいよ小菊に逢う事になる?
いったい何が起こるんだろう・・・・・
不安と期待が入り混じるわ~~(^∀^;)\

けいさんへ 

けいさん、ありがとうございます~^^

さあ、ここはいったい秋人、そう言う心理なんでしょうね。
普通にかわいく喋ってるだけなのに、なんか妙な裏を感じさせるのかな、秋人ってw

飛田は確実に小菊に近づいて行ってるみたいですが、さあ、吉と出るか凶と出るか。

うんうん、ロクの視線がなんか、全部見透かしてるように見えますよね。果たして…。
このあとも、ロクをよろしくお願いします!(え、ロク推し?)

LandM さんへ 

ほんとうに。
大人ってずるいし、うそつきですよね~^^
なにかしっぺ返しを食らわなきゃいいんだけど。

村八分、こわいぞ~~><

かじぺた さんへ 

こんにちは~。

ここ、やっぱりみんな秋人の本心に注目していますね。
一見、すごく素直な子供の受け答えをしてるのにね、秋人(笑)
確実に小菊に近づいて行ってる飛田ですが。さて、このあとどうなってしまうのか。
(どうもならなかったらごめん! ん?いいのか?)

あ、次回はね、またちょっと寄り道して、この同じ時刻の健造の家です。
あれからあの父子は、どうしてるかな?

同じ時系列で、じわじわお届けします^^
いつも、ありがとうございます~!!

NoTitle 

最近は少し元気がなかったような秋人ですが、
今回は随分と素直に色々と話しましたね~。
素直に言っているだけなのか、
それとも裏でもあるのか、その辺りも気になりますね(笑)
それにしても、「母さんが殺したから」とは、
随分と穏やかではないですね(`・ω・´;)

ツバサさんへ 

おはようございます~^^

そうそう、最近ちょっとぴりぴりした雰囲気の秋人でしたが、今回はものすごく嬉々としてましたね。
みなさん、秋人の態度に懐疑的ですが、実のところ、どうなんでしょうね><

次回はまた健造親子の登場ですが、じわじわ秋人たちにも迫ってみますね。
いつもありがとうございます♪

こんばんは~。 

遅くなってしまいました。すみません。

でも協定って誰と誰の協定の事なんだろう?そして誰が偽ってるんだろう?
飛田は上手くやったつもりのようですが、秋人の態度を見ていると分からなくなってきました。
あまりに素直に、スムーズに会話していますね。
飛田に上手く丸め込まれたように見えますが、はたしてどうなんだろう?
「母さんが殺したから」なんてフェイントをかけているし・・・。
秋人の語る言葉の中には本心の部分も含まれているようにも思えるし・・・。
飛田に救済を依頼しているようにもみえるし・・・。
飛田が村人側についた時が怖いけど・・・。
なんだかモヤモヤしますね。
ラスト、ロクの不気味な存在、流石です。

山西 サキ さんへ 

サキさん、おはようございます^^
いえ、ちっとも遅くなんかないですよ。
最近は2週間おきくらいの更新なので、のんびり読みに来てください。
コメントも、気が向いた時でいいのです(*´▽`*)

今回、いったいどちらが偽ってるのか。
すごくスムーズに事が運びましたが、秋人の本心はいったいどうなんでしょうね。
サキさんの書かれてる中に、答えがあるのか、それとも…。

飛田がこの後、秋人の事をどう思うのかがポイントかもしれませんね。
もうしばらくスッキリしないシーンが続くと思いますが、またゆるりと、お付き合いください^^

遅くなった~ 

ちょっと間が開いてしまったので、読み直しておりました。でもやっぱり引っかかったのは「ロクと一緒に付いてきて」(^^) いや、これはちょっと名言かも。だって、秋人にとっては、飛田はロクと同じ程度、もしかしてそれ以下って印象が出ていて、それは秋人を語る上でちょっとポイントかもなぁと思いました。
しかもラスト2行のロクの存在感といったら……まぁ、カラスに悪気はないんだけれど(いや、あるのか?)、あの視界確保の首振り運動、可愛いとは思いにくいですよね。小さい鳥なら可愛いけれど、カラスだし。ああやって首振られたら「見られている~」感が強くなる。ロクの存在はやっぱり物語に色を付けていますね(黒だけど)。

さて、どんな協定で、どんなところへ行き着くのか。国会中継を見守る気分で見届けたいと思います。

大海彩洋さんへ 

おはようございます^^
改めて読み直してくださってありがとう(;_;)
コメント、ちっとも遅くなんかないですよ。次の更新までまだまだありますし><←超遅筆

そして、ほんとうにそこに引っかかってくださったとはww拍手コメでは、冗談かと思ってた(笑)
でも、やっぱり見逃さないなあ~。
作者も意識していなかったんだけど、これは秋人の心理が出てしまった言葉だったかも。

>飛田はロクと同じ程度、もしかしてそれ以下
これはなかなか言い得てるかも。この時の秋人の心理は説明できませんが、ワクワクドキドキで、飛田を誘ったわけでは無さそう^^;
ロクは秋人にとって、飛田よりも大きな存在です。(言い切った)

でも、本当にロクが、この物語の中で大きな存在かどうかは、……むにゃむにゃ。
秋人の対応、飛田の精神状態によって、たった一羽のロクと言うカラスの印象が変わっていくのですか……。
この辺りは、物語が完結して振り返った時に、ああ、そうなのか、と感じ取ってもらえたらいいなあと思っています(*´ω`*)

そうそう、カラスってあの視線の投げ方、首の動かし方が、妙に癪に障ることありますよね!
通勤途中に、よそのゴミを荒らしているカラスを見かけて、走り寄って追っ払ったんだけど、すごく馬鹿にしたような目で見るんですよ。至近距離まで逃げないし。逃げても、電線の上から笑って見てるし(被害妄想)

奈良公園の鹿の耳に、土を詰め込んで遊ぶっていう記事を見た時は、こいつらとんでもないwwって、何だかゾッとしました。
カラス……。とっても興味深い生き物です(*´Д`)

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