流 鬼  《連載中》

流鬼 第18話 叫び(2)

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「秋人って子がやったのか? でもどうやって」
そんな飛田の質問など耳に入らぬ様子で、和貴は跳ねるように立ち上がり、そのまま家に駆けこもうとした。

けれど咄嗟に飛田は和貴の手を掴んで引き止める。
ここで逃げられるのは不本意だ。
「ちょっと待って。何か大変なのは分かるけど、小菊さんの家だけ教えてくれないか? あとはもう自力で何とかするから」

苛立ったように振り返った和貴だったが、その目は飛田を睨みつける間もなく、すぐに飛田の後ろに居る別の何かを捉えた。
一瞬にして和貴の表情が凍り付く。

振り向こうとした時にはもう遅く、すさまじい力で飛田は背後から襟首を掴みあげられ、そのまま横向けに地面に叩き落された。
頭を打ち付けるのは免れたが肩を強打し、呻きながら天を仰いだ飛田の鼻先に、二つの空洞のある凶器が突き付けられた。

肩の痛みなど瞬時に吹き飛び、全身が恐怖で硬直し縮上がる。
まだ火薬のにおいが強く残る、それは上下二連式の猟銃だった。

「俺の息子に何をしてる」
低く唸るような声で見下ろして来たのは、赤黒く日焼けした顔に無精ひげを生やした、熊のような大男だ。その目は今すぐに引き金を引いてやると言わんばかりに血走り、飛田を睨み据えている。

―――これがカラス撃ちの健造か。
喘ぐようにひとつ息を吸い込んだが、言葉が出てこない。
きっとこういう猟奇殺人犯と鉢合わせしてしまった人間は、声を上げる間もなく撃たれて死んで、翌日の朝刊に載るんだろうと、頭の中を冷めた思考が一瞬駆け抜けただけだった。

「やめなよ父さん。この人は人を探してるだけなんだ」
和貴の落ち着いた声が、逆にこの状況では異様に思えた。

「誰なんだ、こいつは」
「小菊に会いに来たみたい」
「小菊……」
健造は喉を鳴らして息を吸い込み、再び強張った形相で飛田を見下ろした。
銃口が飛田の鼻先から僅かに外れる。

「うん。僕が生まれる前、須雅神社の近くで旅行者の男の人が死んだ事故があったんだろ? この人、その死んだ人の友達で、その時の写真が……」
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!」

突如耳をつんざくような奇声を張り上げ、健造は頭を抱えたまま体を前後に激しく揺さぶり始めた。
一瞬何が起きたのか、飛田には理解できなかった。
支えを失くした猟銃は耳のすぐ横に落下し、飛田は思わず喉の奥で「ヒッ」と叫び声をあげた。
和貴も顔や体を硬直させ、絶叫しながら家の中に走り込んで行った父親を、唖然として見送った。

「和貴……。一体……」
肩の痛みを堪えて立ち上がり、和貴の傍に駆け寄ったが、和貴の顔はすでに落ち着きを取り戻していた。
何事も無かったかのように猟銃を拾い上げ、飛田を振り向く。

「由良の3人がこの村に戻ってきてから、父さんはおかしいんだ。……乱暴してごめんなさい」

工具と自転車をその場所に置いたまま、父親を追って家の中に入ろうとする和貴に、飛田はなんと声を掛けてよいのか戸惑った。この異常な事態はこの少年にとって日常なのだろうか、と胸の冷える想いがした。

「和貴。……お父さんには、猟銃を持たせちゃいけない」

小菊と健造の間にいったい何があるのか、そこも酷く疑問に思ったが、飛田は最後にこの言葉を選んだ。
けれど和貴は思いがけず、笑い返して来た。

「大丈夫。父さんは腕のいい猟師なんだ。人間は撃ったりしない。父さんが撃つのは、カラスと鬼だけだ」

真意の分からないうつろな目をして言ったあと、和貴は猟銃と共に、薄暗い引き戸の中に消えて行った。



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~ Comment ~

^^ 

>「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!」

表現の難しい場面。原作者も苦労したと思われます^^;
ところで「うわぁ」は何なの?。と自問自答。
いやいや。感嘆詞・感動詞の類でしょうと思いが移り。

っていうか。そもそもなんで「うわぁ」って言う?
日常生活でも「うわぁ」「わっ」「わ~」はよく使います。
時代劇・戦場場面では「わ~~!」必須です。他にない。
(お~!もありますが。ちょっと使いどころが違います)

いろんな(映画・ドラマ・アニメ・マンガ)場面で使われる「うわぁ」。
「わぉ!」はUSAの感嘆詞ですが。もはやこれも日常会話。
「うわぁ~」は何なのでしょう。どこへいくのでしょう・・あ。何言ってんだかねぇ。

わぁ~!脳内バラバラでござる^^;)/

waravinoさんへ 

ははは、本当だ、なんでうわ~~なんでしょうね。
アメリカ人なら違うのかな。いや、やっぱりウオーーーーとかだし。

そう、ここねえ、ずっと悩んだんです。
セリフの中に叫び声や喘ぎ声はなるく入れない方針だったんですが、ここは叫び声を入れるしか無くて。

“健造は叫んだ”じゃあ、いまいち臨場感が出ないし。苦肉の策です^^
でも、今までにない表現法なので、逆に目立ってインパクトあるかな?とも思ってみたり。

それより、waravinoさんがこれを読んでくださっていたことにびっくり。拙作なのに、恐縮です。

NoTitle 

・・・・なんだろうなあ。
言葉にできないものがこみ上げているものがあるなあ。。。
何がこの村の人物たちを救うのは何なのか。
・・・ということを考えさせられますね。
人の心を救うのは言動ですね。
この作品がすくわれる作品であることを祈りますね。
(-_-メ)

NoTitle 

あらららら。

今回の飛田は、前のような「作戦」じゃなくて知らない間にいろいろと核心に迫ってしまったのでしょうか。地雷的な。

殺人事件、小菊が絡んでいたんだろうなと予想していましたが、建造もばっちり絡んでいたようですね。さて、これは被害者または目撃者の「うわぁ」なのか加害者側のそれなのか。

「叫び」って建造だったのか……。

目の離せない展開になってきました。

LandM さんへ 

おお~、そこを考えてくださったのですね。
その部分がこの物語のおおきなテーマかもしれません。
いったいこの村に巣食ってるものは何なのか。
このあと急展開でお送りします(と言っても更新は超遅いのですが……><)

八少女 夕 さんへ 

ほんとうに、この辺はあらら……ですよね。
飛田の予想しなかった方向から、どえらい反応が来てしまって、すでに飛田はビビり気味です。
飛田の想像を越えちゃてる事実があるのか、それとも…って感じです。(なんだ?)

健造は、あの事件にどんなふうに絡んでるのか。夕さんが挙げてくれたどれかにビシッと当てはまり、そしてプラスアルファ。

これからはどんどん物語の核心に迫ります。
更新のスピードも、少し早まるかな?

でもこのラストはものすごくブーイングなのだろうな……と、そんな不安も抱えつつ、頑張ります。
またどうぞ、お立ち寄りください(*´ω`)

こんばんは~。 

混乱する健造の様子から察すると、彼、おもいっきり事件に関与していそうですね。
「父さんが撃つのは、カラスと鬼だけだ」
和貴の言葉に思わずドキッとしました。
鬼(と本人が認識していれば)は撃ってもいいんですもんね。
飛田、どんどん核心に迫っているようですが、大丈夫なんでしょうか?

山西 サキ さんへ 

サキさん、こんばんは^^

ですよね~。健造、思いっきり小菊の過去の出来事に関与してますよね。
でも、自分が何か直接手を出したのかは、まだ分かりません。(きっと近いうちにすべてわかるはず)

そして、和貴のあの言葉をピックアップしてくださって嬉しい♪
そう、そこなんですよね。
“鬼”なら、撃っても構わないと言わんばかりの和貴の発言。
鬼って、いったい……。

飛田、どんどん物語の核心を掘り下げて行ってるようです。
……っていうか、混ぜ返してる?(・_・;)

とんでもない事にならないといいのですが……。w

うむ。 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!」

いや、びっくりしました。何に驚いたかというと、あれ? limeさんには珍しい表現、と思ったからで、waravinoさんへのコメント返信で、あ、そうだよね、と思いました。叫び声と喘ぎ声は書かない方針、いや、ほんと、一緒ですわ~。そこがlimeさんと同じだなぁ何て思っていたのですが、たしかに、喘ぎ声!はたいがい書かなくて済むけど、叫び声は何だかどうしようもない時ってありますよね。
でも、今回に限っては、limeさんらしからぬ、と思った面も含めて、「何事??」と思ったので、異常感が伝わって○でした。いつも叫んでると、インパクト無いけど、ものすごくたまにだから良いのですね。

それにしても、飛田は和貴にとって、何だか迷惑なおじさんになってるような。それでも、そういう人が何かを変えてくれる可能性もあるので、頑張ってもらっちゃいましょう!
そして、和貴。最後の「カラスと鬼」という彼の言葉の中にすごいとげを感じますね。色んな思いが「鬼」という言葉の中に入っていて、和貴自身と、秋人との関係・思いにぞわっとしますが……どうなるんかなぁ。
引き続き楽しみにしています。

大海彩洋 さんへ 

こんにちは~。
あの叫び声の表記に○をくださって、うれしいです~! すごくほっとしました!(小心者)  
いや、ほんとうに叫び声はどうしようもない時がありますね。

ちょっと引いた感じなら、説明文で行けるんだけど。ここはねえ…。
(喘ぎ声はどんな場合でもNGです>< 良いシーンでも、喘ぎ声がセリフで入ってると興ざめしちゃいますもん。←普段なに読んでるんだ)
そういえば、ラビットを今思いっきり修正掛けてるんですが、稲葉君よく叫んでる(笑)
コメディタッチの場合は、まあいいかな?w

うんうん、飛田がかなり和貴の周りに波風を立ててきましたね。
でも、この先に起こることは、飛田が原因にはならないはず。飛田をそこまで中心人物にするつもりはないので^^
彼は貴重な……。いえ、なんでもありません><

そして「カラスと鬼」。このセリフにいろんな想いや予兆を込めたことを感じ取ってくださってうれしいです。
ここは、“いままでとは違う和貴の感情”を、端的に込めてみました。

このセリフに至る変化が急すぎては困るので、今までのじれったいじわじわを描かざるをえなくて。
でも、ここからは一気に行きます。
もう、どんなブーイングが来たって、運命は動きはじめてしまったので……(;_;)(;_;)

NoTitle 

サブタイトルの「叫び」。この「叫び」だったのですね。これは尋常でない。
言葉ではないのですが、言葉を発しているよう……

小菊と健造の間には絶対に触れてはいけないものがあるような。
そしてそれを秋人は知っているのかいないのか。
カラスと鬼だけ、という和貴は何を察し、何を悟っているのか。

飛田が迫るのはどこまでなのでしょうか。
やっぱり、感情もつれまくりの秋人と和貴から目が離せないっ(><)

けいさんへ 

けいさん、こんばんは~。
そう、叫びは、今まであまり登場してこなかった健造の叫びでした。
いったいなんで叫んだのか。(まあ、ちょっとヤバい事があったんでしょうね><)

小菊との関係。そして秋人。
健造はどこの絡んでいるのか。(絡んでなかったらどうしよう・汗)

カラスと鬼。まるでいっしょくたにされちゃいましたが、和貴は一体どんな意味で言ったのか。
秋人との、あのキラキラした日々は、幻だったのか。

……とか、いろいろな疑問がどんどん湧いて出ますが、少しずつ明らかにしていきます。
彼らから目を離さずに、最後まで見守ってくださるとうれしいです^^

NoTitle 

息子が怪しい人物に、
何かされていると思っても仕方ない場面でしたが、
飛田も災難でしたね^^;
それにしても、突然叫び出した建造ですが、
事故について何かを知っていたりして?
家の中に入ってしまったので確かめられませんでしたが、
やっぱり、どこかで関わっていたり、
知っている事があったりするのかもしれませんね|ω・`)

NoTitle 

「カラスと鬼」?
鹿とか熊じゃないんですね……。
鬼を実際に撃ったことがあるのでしょうか…?

この場合「鬼」って由良家の事ではないような気さえして怖いですね><;

こんばんは~~(^0^*)ノ 

男の人の「うわあああああ」って叫びって
女性の「きゃーーー」より、時として怖い事ってないですか?(;∀;)
さすがlimeさん、
この心に直接届ける不安と恐怖・・・
よくわかってるなあ~~って思いました。

私、3人姉弟で割と母親から放置されて育ったので
子供の頃、よく3人きりで家に居て
4つはなれた妹と二人で8つはなれた怖がりの弟を
怖がらせては遊んでたんですよね(^^;)\(ひどい(笑))

で、いきなり「うしろに何か居る!!」とか言って
走り出す。とか、そんな感じで怖がらせると
弟が「うわああああああ!」って恐怖の叫びを上げるんですよ・・・
それが、めっちゃ怖くてね(((゜Д゜;)))))
自分たちで怖がらせておいて弟の恐怖の叫びから
本当に恐ろしい事が起こっちゃったような気になっちゃって・・・
あれ、本当に怖かったなあ~~(;∀;)

(笑)

だいぶ前ですけど、たぶんトリビアの泉かな?で
男性だけをジェットコースターに乗せる。って企画があって
普通、女性も男性も乗ってると
女性の「きゃーーーー」って声だけが高音の所為か
目立って聞こえて来る訳ですけど、
そのときは、もちろん男性だけですから
「うおおおおおおおお」って低いうなり声みたいなのが聞こえて
これもまた、女性の悲鳴より恐ろしかったです(笑)

ツバサさんへ 

あ、そう、すっかり忘れていましたが、この、健造が和貴を気遣って……と言う部分も、すごく大切なシーンでした!
ツバサさん、思い出させてくれてありがとう!
結果的には飛田は災難だったんですが、和貴はちょっと(かなり)嬉しかったのかも。

叫び声をあげて逃げ込んでしまった健造ですが、やっぱり14年前の何かに、関わって居そうです。
いずれすべてわかると思うので、またぜひ、お立ち寄りくださいね^^
いつもありがとうございます。

夢月亭清修 さんへ 

> 鹿とか熊じゃないんですね……。
↑これ、ナイスなツッコミです(笑)
冬場の狩猟期ならきっと、バンバン鹿やイノシシを撃ってたと思うんですが。

この夏場に撃つのは駆除許可の下りたカラス・・・と鬼だけ?
健造から「鬼を撃つ」なんて一言も聞いたことのない和貴が、この言葉を吐いたというのがもう、異常事態のはじまり。
そんな雰囲気が伝わったらいいのですが><

和貴が言った鬼。この村にはびこる鬼。祀られている鬼。……同じものなのか。それもこの物語の大きなテーマの一つです。

かじぺたさんへ 

おお~~、叫びに関する面白エピソード、ありがとうございます!

かじぺたさんのを読んで、改めて思いました。
男の人の叫び声って、普段あまり聞かないから、いざ本当に近くで叫ばれたらマジ恐怖が伝染してきて怖いですよね!
強くて、守ってくれるべき人が震えあがってるんですもん><

弟エピソード、笑ってしまいましたが、想像すると……なるほどビビりますね~><
男の子の叫び声もきっと女の子にはこわいな><
(あまり苛めないようにしなきゃ←え?)

ジェットコースターの男バージョンwww
これは地響きのようでいろんな意味で怖い(笑)
やっぱり悲鳴は女の子の方がいいですねw

全然関係ないけど、福山雅治が、男性客ばかりを集めてライブをやった時の声援が「うお~~」って低い地鳴りだったので、ある意味不気味でした(笑)
でもなんか、微笑ましいw

NoTitle 

ぐぅぅ(><)
なんだか心臓がぐぅぅってなってます。
健造は何を知っているのでしょうか><
あんなに可愛かった秋人が
すっかり不気味な子供になってしまいました。
秋人と和貴はきっと元には戻れないんでしょうね
小菊も不気味なのですが一応もう大人だし、
子供の方が不気味さが増しますね^^;
続きが楽しみです><!!

ななおんさんへ 

わ~~、ななおんさん、続きを読んでくださったのですね!
(3か月くらい開けても、あまり進んでいないのがいいところ←え?)

心臓ぐぅぅってなってくださって嬉しい(;_;)
でも、ここからもっとひどい事に……。

秋人がいよいよ本性出して来た感じですよね。
でも和貴もなんだか様子がノーマルじゃないし。
この2人が、あの登場当初のような無邪気な顔で笑いあう日はもう来ない気がしますよね><
(あの頃が、偽りだったのかも知れないし)

このあと、けっこう思いもよらない方向に進むと思うのですが、相変わらずののろのろ更新なので、終わるのは秋ごろ?(どんだけ)
また、もしよかったら、ちらっと覗いてやってくださいませ。
お立ち寄り、そしてコメント、ありがとうございました!!

NoTitle 

コワくなってきたのでラスト一行を想像する。

「Nevermore」

ポール・ブリッツ さんへ 

こわいこわい~。

どこの大鴉ですか。

(って、よく分かんなかったから調べたじゃないですかw)


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