流 鬼  《連載中》

流鬼 第16話 兆し(1)

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その朝、教室に入った和貴と秋人を迎えたのは、異様な級友たちの視線だった。

もちろん秋人に対する畏怖とも興味本位とも取れる視線は以前からあったが、今朝の雰囲気は和貴が休む前日までとはまったく違う、殺気立つほどに冷ややかなものだった。

「和貴、ちょっと……」
普段はわりとムードメーカーの中嶋が、カバンを置いたばかりの和貴を廊下に引っ張って行った。

「なんだよ」
「由良秋人はバケモノだ。近づかないほうがいい」
「……なに。突然」
まるでホラー映画の役者を演じているような中嶋の喋り方に、思わず笑いそうになった和貴だったが、中嶋はそれを許さなかった。

「3年の香川先輩が昨日、大やけどしたんだ」
「やけどって……。でもなんでそれが?」
「あいつだよ」
その視線は一瞬教室内の、大人しく自分の席に座って窓の外を見ている秋人に向けられた。
中嶋の声にはまったく躊躇いはなかった。憶測ではなくて、恐ろしいまでの断定の表情だ。

「焼却炉の当番だった香川先輩の横を由良がすれ違うとき、なんかちょっと肩が当たるとかのいざこざがあってさ。ほら、香川先輩ってあの、由良の母ちゃんに従姉殺された高本先輩と仲良いだろ。いつかそのことを面と向かって言ってやろうと思ってたみたいでさ。
ぶつかった事をきっかけにして、相当あからさまに暴言吐いたらしいよ。人殺しの子とか、鬼一家とか。
そしたらいきなり、種火程度まで消えてた、何も入ってない焼却炉から爆発するみたいに火が噴き出してさ、香川先輩直撃喰らったんだ。髪の毛と顔の皮膚焼いて、即病院送りさ。救急車来て大騒ぎだったんだぞ、昨日」

和貴はあまりの衝撃に小さく口をあけたまま中嶋を見、無言でその先を促した。

「な? そんなこと今まであったか? あの、ただでさえ燃えにくい焼却炉だぞ? 俺、由良のうわさは今まで適当に笑って聞いてたんだけど、昨日の話し聞いてちびりそうになったもんな。スプレー缶でも混ざってたんじゃないかって先生たち調べてたけど、結局そんな破片なんにも見つからなかった。
由良はそのあとホームルームを早退してさっさと帰っちゃうしさ。そのあと先生たち泡吹いて焼却炉閉鎖したり、大変だったんだ。……なあ、今朝由良はその話、和貴にしたのか?」

「いや、……ぜんぜん」
心臓がザワザワと騒ぐ。
今朝の秋人は、事故の事など匂わせもしなかった。そんな騒ぎが目の前であったのに、あまりにも不自然ではないか。

和貴は窓越しに教室の秋人をチラリと確認すると中嶋に視線を戻し、出来るだけ声を潜めた。
「……その香川って先輩は?」

「結局は顔に軽い火傷しただけだったみたいだけど、髪の毛ほとんど焼けちゃってさ。横でずっと見てたもう一人の当番の先輩は、絶対死んだ!って思ったらしいぜ。顔だけ火だるまで。先輩相当ショックらしかったから、しばらく学校休むんじゃない?」
「……へえ。こわいな」
「由良だよ。あいつやっぱり化け物なんだ。でも証拠がないし、だれもあいつを突き出せない。……けさも平気な顔で登校してきやがる し。和貴、ほんと、もう近づくのやめた方がいいって」

そこまで話したところで担任が廊下の端に見え、その話題はとりあえずそこで打ち切りになった。
担任に注意される前に二人は慌てて室内に飛び込み、席に着く。
教室では誰もが秋人を目の端で捉え、観察し、ピリピリとした空気に満たされている。

和貴は頭の中でひたすら、焼却炉の種火が爆発的に燃え出す科学的な別の理由を考えながら、担任の話を上の空で聞いていた。
けれどもその一方で、心のどこかではすっかり諦め、由良秋人という人間の正体に、自分が結論を出そうとしているのに気付きはじめていた。


                ◇



------------------------------------------------------------------------------------------
今回も短めですが、ここまでで止めておきますね><
次回、(2)からようやく飛田ががっつり介入してきます。
村人や関係者への聞き込み調査で、真相がじわじわ分かっていくはずです。
(飛田が、優秀ならば……(・_・;))
少年たちとの接触も、もうすぐかな。



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~ Comment ~

NoTitle 

話してくれなかった…恐らくそれも和貴の心をザワつかせるのでは。
色々情報が入ってきて、和貴もグラグラに揺らいでいるのでしょうか。

秋人は和貴にも本当に心を閉ざしているのかなあ…
和貴次第のような気もするが、飛田の登場に期待…できる?

けいさんへ 

けいさん、こんばんは~^^
いつもありがとうございます!

秋人、全然全く、何もなかったような感じで、普通に和貴と登校してきましたもんね。
今日の情報で和貴はぐらぐらを通り越して、疑心暗鬼が本鬼になるかも…。

秋人は心を閉ざしてるのか、それとも…。(なんだ><)
親友だったはずの2人ですが、もう、遠い昔のこと?
飛田の動きに、期待してやってください!(頼りない探偵ですが><)ーーー

ふ~む 

これは方向性が分からなくなってきました。私も和貴と一緒に却炉の種火が爆発的に燃え出す科学的な理由を考えちゃいましたよ。リンの発火、そういえば、Xファイルにそんなのがあったなぁ~。科学とオカルトの狭間、楽しいですよね。
方向性が分からなくなったのは、limeさんが秋人のことをどっちへ落とすのか、というところです。実はこれまでは、「色々言われるけれど、でも実は普通の子。ちょっとくらい不思議な力がある程度」かも、と思っていたのですが、あれ? やっぱり「かなりがっちり能力者?(ミュー?)」……これまでのlim作品ではどっちもあったので、どっちかな~で楽しむことにします。
え? 個人的には? う~ん、ここんところ、「でもやっぱり結構普通の子」傾向が強かったので、今度はがっつり能力者方向(やや悪魔的?)を読みたい気がしているのでした。
え? そんな話じゃない? えっと、和貴と秋人の友情物語なの? いやいや、それだけでは済むまい。でも飛田が来るので、新たな展開を期待、ですね(^^)

NoTitle 

いきなり「バケモノだ」とはいったい何事かと思いきや、
焼却炉絡みで先輩が火傷ですか……。
秋人に酷い事を言っていたから、
それで秋人が怒って力を使ってという風にも取れますが、
真相はどうなのでしょうね。
和貴にも秋人の口から話していなかったようですし、
単に知られたくなかったから話さなかったのか、それとも……。

こんばんは~。 

いよいよ秋人の本性が見え始めたのでしょうか。
科学的に説明できない現象が、明らかに秋人をキーに起こっていますね。
limeさんはこれをどのように収拾するんでしょう?気になります。
そして秋人と和貴、2人の仲は崩壊し始めて、もう戻れないように思えます。
さぁ飛田さん、かき回してください。
どんな泥が舞い上がるんでしょう。

大海彩洋さんへ 

ふふふ。大海さんがいろいろ想いを巡らせてくれてるのがうれしい^^
そう、今までの私の物語は、あまり「がっつり」は無かったですもんね。
今回はどうでしょう。
ここで焼却炉が火を噴く科学的な検証が提示されても、なんだか物語的には面白くないですよねえ。(作者的に、おもしろくないのかも)
今回は、「ああ、やっちゃったか」的に、いろいろ崩壊していきます。
どっから壊そうかな……。

今回は子供らの友情物語に留まらないかも。
飛田が来て引っ掻き回すまで、もうちょっとお待ちくださいね^^

あ、余談。そう言えば小・中学校の焼却炉って、今はもう廃止されてるんですよね。
子供の頃には普通にあったのに。温暖化対策なのでしょうねえ。

ツバサ さんへ 

ツバサさん、おはようございます。
そうなんです、ちょっと決定的な事件が起こってしまいました。
これは偶然の事故だとはちょっと思えないかもしれませんよね。
子供らにとってもセンセーショナルな事件。
秋人は和貴に何も話さないし。
和貴の不信感はもう、止まら無さそう……。
次回から飛田が来て、ちょっと引っ掻き回してくれます。
また良かったら、お立ち寄りください^^

山西 サキさんへ 

サキさん、おはようございます。
うん、今回はちょっと、偶然説はなかなか見つかりそうにないですよね。
学校中がもう秋人の事を不審な目で見ていますし。
和貴にしたって、何も大事な事を話してくれない秋人を、このまま友人だと思い続けることは難しそう・・。
さあ、こっからです。(なにがw)
飛田もそろそろ子どもたちに接触していくはずですし、……すこし真相が見えて来るかな?
見えてきたところで、もう止まらないんですが(*´Д`)
次は2月。のんびり更新ですが、また遊びに来て下さい~^^

NoTitle 

う~~む。
確かに子ども心に火事ややけどは怖いなあ。。。
・・・と思っていました。
子どもは火が怖いものと思わないけど、
火傷は怖い・・・と思いますからね。
そういうところが繊細に描写されていて良かったです。

LandM さんへ 

火傷が、秋人のせいだったら、ちょっとひどいですよねえ。
下手したら死んじゃってたかもしれない。
真相は語ってくれそうもないですが・・・。要観察ですね><
コメントありがとうございました!

NoTitle 

こんばんは。

これって、いくら「こういう現象は科学的にこう説明できる」と言われても、もう「はい、そうですね」と受け入れられないところに来ちゃっていますよね。クラスメートだけじゃなく、おそらく和貴ももう秋人(と小菊)を信じられなくなっている感じ。

それと秋人(小菊も)は、けっこう直情型なのかなあと考えています。瞬間で沸騰してしまう感じ?

そこまでの力がある人って、本来はそんなに簡単に見せたりしないと言うか、相手の能力が低い分、もう少し余裕があるように思うんですよ。実際にやろうとすれば出来るだろうに別に村を全滅させたりはしていないから、何か特別なことによって一瞬だけスイッチが入るのかなあといろいろ想像をめぐらせています。

続き、楽しみにしていますが、どうかご無理はなさらないでくださいね!

八少女 夕 さんへ 

夕さん、おはようございます^^

そうなんですよね~、今ここで科学的検証がうまくいっても、もやもやは消え去りませんよね。
なんで秋人は、そんな大きなニュースを和貴に語らないのか。
すぐにばれるのは分かってるのにねえ。

こんな状況で和貴が秋人にずっと信頼を寄せるとは思えず……。
物語はジェットコースターのように下っていくかもしれません。

>それと秋人(小菊も)は、けっこう直情型なのかなあと

あ、それはあるかもしれませんよね。それともあまりにも莫大なエネルギーを持て余してるか。
夕さんの読みに作者ドキドキですが、そっち方面に思いを巡らせてくださって、嬉しいです。
次回から飛田も登場します。
じわじわ、裏側を探らせてみますね。

そして、お気遣いありがとうございます><
なにしろ、つい最近解明されたばかりの病気なので、どの耳鼻科もなかなか本格的な処置ができず、病名を言うだけで敬遠されて(;_;)。
来週、ようやく専門の先生の所に行ってきます。
気を使わせてしまって、ごめんなさいね~。

今日も寒いけど、がんばりましょう~。(そちらも寒いかな?)

NoTitle 

今回はタイトルが『兆し』とあって、お、何か分かるのかな!? と思いきやこんなスタートw
和貴の頭の中はそりゃあ鬼側に傾いちゃいますよね……
話そうともしないなんて尚更…

次回飛田探偵に期待です!

夢月亭清修 さんへ 

えへへ。もう、ぜんぜん進みませんよねえ(笑)
いや、今回はけっこう暴露した方なんですよ?(何を言い訳)

和貴にしてもたら、もう今までの関係にはなれそうにないですよね。

さあ、ここから飛田さんです。
私立探偵の腕を拝見。……なんて思ってると、肩透かしかも。
でも、頑張ってもらいましょう><

いつもありがとうございます(´▽`*)

こんばんは~~(^0^*)ノ 

前回の秋人の和貴への言葉は
前日の焼却炉での出来事からだったんですね・・・

中学生くらいって本当に都市伝説とか不思議話が大好きだから
少しでも不審なら全部、摩訶不思議なことと思い込みたい。
ってとこありますから、これはもう格好の餌ですね。
秋人も辛いよね(;m;)

あの台詞から見ると、
やっぱり秋人は小菊のような完全なる悪い何かではないと思えます。
小菊はもう、なんだか小悪魔通り越してる感がありますもんね((;Д;)))
悪魔の母を持ってしまった秋人の心の中は
いつでも諦観に満ちていたのかな・・・・・
その中で見つけた、たった一つの光明だった和貴・・・
でも、やっぱりそんな悪魔な母親の所為で
離れていこうとしてる秋人の救いだった和貴・・・

本当は、どちらに転ぶのか
私には見当もつきませんので
今は私的には秋人の心に肩入れしてますけど
さて・・・どうなんでしょうか??limeさん??(笑)
今後も目が離せません(^^*)

かじぺたさんへ2 

おお! そう言う見方もできますよね。
教室に行けば、和貴にも昨日の騒動がばれる。
その前に、やんわりと釘をさす的な……。
かじぺたさん、するどい!

そして、かじぺたさんは秋人の内面を、優しい方向で捉えてくださってるんですね。
うん、今はまだ和貴目線だけだから、どんどん秋人は鬼方向で固められてるけど。

でも、秋人が母やキヨに反発する素振りが、まだあまり見えて来ませんし。
この辺が、外からでは分かりづらいですよね。
秋人、実際はどうなんでしょう。
かじぺたさん、唯一の秋人応援派と見ていいですね?ふふ。

このあと飛田が子供たちとも接触していくはず。
じわじわ見えてくると思うので、どうぞ、お待ちくださいね^^
いつもコメント、ありがとう~。(´▽`*)

NoTitle 

じわじわくるサスペンス。さすがはlimeさん。こういうの書かせると独壇場だなあ。

これをどう「単純な話」に収斂させるというのか。

さすがに「夢オチ」というわけがないし。

うーん……。

そうか!


流鬼 第17章 真相

 飛田は少年に尋ねた。

「それはほんとうのことなのか」

 和貴は答えた。

「ごめんなさい全部ウソです」

 ~ 完 ~


ボゴッ(怒り狂ったlimeさんに文春文庫「真夜中の相棒」で後頭部を殴られて撲殺)

ポール・ブリッツさんへ 

ポールさん、こんばんは~^^

もう、じわじわ過ぎて「さっさと先へ進め」って怒られそうなんですが(みんな優しいから言わないのですよね)

このお話はね、単純なんだけど「そんな強引な」って、ポールさんに卓袱台ひっくり返されそうな感じです。
兎に角救いが無いし、ひどいラストです。
でも、最後の数行で、「ああ……」って、ちょっと思ってもらえるかな。

……って、なんですかそのラストは!
(でも実際それよりひどかったらゴメン!)

大事なジョニー本で殴っちゃだめですよ~><
でもいつか、あれ、装丁をもっとカッコよくしてほしいなあ~~(。-_-。)

ポール・ブリッツさんへ 

わあ、ほんとうだ!
凄くかっこよくなってる! いつのまに・・・。

NoTitle 

limeさんにあの本のことをお教えして、limeさんが買われてから1年くらいあとの2014年に文春文庫がリバイバルフェアやりまして。30年ぶりにカバーが一新された新装版で再刊されたんです。待ってた人多かったらしいです。そのときもお知らせしたと思うのですが(汗)

アマゾンにはまだ在庫があるみたいですね新装版。「布教用」に新刊として買って文春とホワイト先生に心ばかりのお布施をするとか(^^;)

ポール・ブリッツ さんへ 

えええ~、そうでしたっけ!
やばい、記憶が全然残らない病か?

新装版、魅力なんだけどなあ……。ホワイト先生を盛り上げたら、日本でもあんな感じの設定が流行るかなあ~。
(なにを・・・w)
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