流 鬼  《連載中》

流鬼 第13話 魔の所在(2)

 ←(イラスト)星空の下で →(雑記)描写と得意分野
太陽の照り付ける炎天下から暗い家の中に入ると、ひんやりとした、けれど重い空気が体にまとわりつく。

ホッとするでもなく、身構えるでもなく。
これがキヨの日常だ。

「小菊は?」
土間から居間へのあがり口にぽつんと腰掛け、足元を跳ねるロクをじっと見つめている秋人に、キヨは問いかけた。

「奥の部屋」
「何か変わったことは?」
「ないよ」

トンと、膝に飛び乗ってきたロクの背を、秋人は優しく撫ではじめた。
こうやって見ていると可愛らしい普通の中学2年生の少年に見える。
キヨにとって望ましい事ではあるが、時々何を考えているのか、無性にその頭の中を覗いてみたくなる。
今がそうだった。

「健造の息子が、血相を変えて飛び出して行ったよ。頭の先から足の先までびっしょりで。……水浴びは、あんたと?」

秋人はロクを見つめながら首を横に振った。

―――秋人とではない……と?

「あの子とすれ違う時、ヤマユリの匂いがした。小菊の匂いだ」
「ふーん」

ロクが首を伸ばし、気のない返事をする秋人の唇を軽くついばむ。
まるで恋人にするような仕草に、秋人もほんの少し笑いながら口を開けて舌で遊んでやる。
目の白い瞬幕をぱたぱた動かし、ロクが嬉しそうに甘える声を出した。

完全にカラスを手懐けている。もしかしたらこの村のカラスすべて、そうなのかもしれないと、キヨは漠然と思った。
この子ならやりかねない。

「小菊は和貴と何をしてたんだろうね。秋人、あんたは知ってるの?」
「僕が帰ってきたのはほんの少し前だから、よくわからない。母さんは水浴びをしてたんだと思うよ。び しょ濡れで、服も着ないで風呂場から出て来たから」
「あの子と?」
「さあ」

秋人は小菊によく似た大きな黒曜石の瞳をゆっくりとキヨに向けて来た。

「母さんに訊けばいいじゃない。和貴と風呂場で何をやってたのって。おばあちゃんはいつもそうだ。母さんのことは僕に訊いて、僕の事は母さんに訊く」

声がひどく苛立っている。キヨはしまったと思った。

「母さんに直接言えばいいんだ。馬鹿なイタズラはやめろ。これ以上波風立ててどうするんだって」

「分かったから、秋人。……怒らないで。ゴメンね、おばあちゃんが悪かった。今度からそうするから」

何かが焦げるような匂いが微かに鼻孔に流れ込み、キヨは慌てて秋人に走り寄った。
座ったままのその少年の頭をギュッと胸に抱きしめる。
秋人の膝から押しのけられたロクが、キヨに抗議するようにグアと喉の奥でひとつ鳴いた。

秋人が苛立っているのはキヨに対してだろうか、和貴に悪戯を仕掛けた小菊にだろうか。
それとも、逃げるように去って行った和貴にだろうか。

なだめる様にその頭をしばらく撫でてやるうちに、焦げ臭い匂いは次第に薄れていった。

こんな乾いた安普請の古い家、燃えて炭になるなど造作もないだろうと思いながら、キヨは額の汗をそっと拭った。



関連記事


もくじ  3kaku_s_L.png 凍える星
もくじ  3kaku_s_L.png モザイクの月
もくじ  3kaku_s_L.png NOISE 
もくじ  3kaku_s_L.png RIKU
もくじ  3kaku_s_L.png RIKU・3 托卵
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【(イラスト)星空の下で】へ
  • 【(雑記)描写と得意分野】へ

~ Comment ~

NoTitle 

秋人くんいうのは、わたしが想像していた以上に、この小説におけるパワーバランスというか、盤面の状況を正確に把握しているのではないだろうか、と恐ろしくなってきた。

熟練した将棋指しのように一手一手を進めているのは、小菊さんではなくむしろ秋人くんなのではないだろうか。

そんなことを感じたであります。

そういや昔、立ち読みした恐怖マンガで、おとなしい美少女を、「魔女だ、魔女だ」といっていじめていた学校が、実はその少女が本物の魔女で、学校ごと燃やされて教職員生徒一同皆殺しになる、というのがあったなあ。誰の作品だったっけ。

あれ 

こんばんは。

コメ、一番乗り?
それとも、今誰かが先にあげちゃうかな。
あ、一番なら景品もらえるわけではないですものね。
でもなんだか得した気分。向こうでは大抵出遅れるので。

キヨはいろいろ知りたがるけれど、直接は訊けないのですね。
ああ、なんかそこがリアルです。
我が子のように育てたけれど、ちょっと怖い?
そして、もしかして秋人のことも、子供や孫というよりは、少し鬼っぽく考えているのかもなんて感じてしまいました。

秋人は、やはり不思議な存在ですね。
カラスを手なづけていることと、鬼の力、キヨにとっては近いのかな。

ううむ、この先、ドキドキしながらお待ちしています。

NoTitle 

和貴と入れ替わるようにキヨが帰ってきたのですね。
やっぱり、濡れた格好で家から出て来たところを見ると、
何があったのか聞きたくなりますもんね。
でも、聞きたいという気持ちはあっても直接小菊に聞かないで、
秋人に聞く辺り、長年一緒に暮らしていても、
やっぱり存在が怖いという気持ちがあるようですね。

それにしても、秋人がここまで怒りを露わにするのは、
何気に初めてだったりして?
普段は温厚そうですが、秋人も怒らせたら怖そうですね(><)
秋人が怒ったのは誰に対してなのかによって、
考えも見えてきそうですが今はまだのようですね(´・ω・`)

ポール・ブリッツさんへ 

おっ。秋人の存在の大きさを、感じ取ってしまわれましたか! で……でも、はたしてそうかな!?(←声が震えてるぞ)

小菊にしても、秋人にしても、まだまだ正体を現す気がないようです。(だからそれは作者が・・・)

今回のポールさんの読みは、あたるのか><

おお~、その恐怖漫画。何となくありそうな感じですね。
その場合、どっちかですもんね。
本当に魔女だった。か、まったくの濡れ衣で、哀れな被害者だったか。
どっちかしかないって言うのが、なんだかつらい・・・。

今日、昼間何気なくついていたTVアニメを見たら、可愛い少女キャラが、学校で血みどろの殺し合いをしていました。(おジャ魔女ドレミみたいなのが)……良いのか、これ……。って、ちょっと心配になりました。

八少女 夕 さんへ 

ああ~、おしい。
僅差で2番目でした。(って、なんの競争w)

最近はここも閑散として来まして、コメントもゆっくりです^^
私もちょっとペースを落とそうとしてたので、このゆっくり感がちょうどいいかな~。
夕さん、せっかくの帰省中なのに、コメントアリガトございます!(あ、カタコトになった)

そうそう、キヨ。
この人、どこかでやっぱりこの親子に強く出れないところが有りますね。
一番、行動に一貫性が無いようにも見えますし。
(ちょっとウジウジ型?)
この人の考えを探るよりも、小菊や秋人の言動に注意したほうが、分かりやすいかもしれません。
・・・って、みんな分かりにくいけど><

秋人は、やっぱり少し普通ではないですよね。
烏は・・・まあ、人懐っこい性格なので、これくらいは懐くかもしれないけど、まだまだ、隠してることが有りそうです。
もうじき飛田も出てくると思いますし(忘れてたw)ゆっくり、紐解いて行ってくださるとうれしいです^^

あ、コメントも、ゆっくり落ち着いた時でいいですよ~^^

ツバサさんへ 

そうなんです。
キヨはずぶ濡れで走り去った和貴を見ていますしね。
秋人は、真っ裸で風呂から出て来る小菊を見てるし……。
ハードな昼下がり(笑)

キヨはどうやら二人の事を少し恐れているみたいですね。
愛情も、そこそこあるみたいなんだけど、無償の愛……という訳にはいかないみたい。
やはりあの親子は、普通じゃないんでしょうかねえ。

うん、秋人が何に怒ってるのかというのも、重要なポイントですね。

もしかしたら、……全てに、なのかも。

村人にも、母親にも、キヨにも、和貴にも……。
だとしたら、ちょっと怖いですね><

いつも読んでくださって、ありがとうございます^^

こんばんは。 

小菊に続いて秋人の実態もほんの少し見えた様な・・・。
キヨの質問に答える秋人の態度に凄みすら感じてしまいます。
キヨは小菊はもちろん秋人も恐れているのかな。
焦げるような臭い・・・とても気になります。
いったい何?教室でも臭っていましたね。
秋人から出てきているのでしょうか?
ロクの動きまでが不気味です。

山西 サキ さんへ 

サキさん~、続き、読んでくださってありがとう^^

今日は由良家の内部事情を少しだけ……。なんて言って、まだまだ謎だらけですよね^^;
だけど、たぶん由良家は、ほぼこんな感じだと思うんですよ。
明らかに普通の家族じゃないですよね~。

キヨは二人に対して、どこか怯えている部分もありそうですが、それでも逃げ出したいとは思ってい無さそうですね。
可愛いと思う部分も、やはりあるみたい。

焦げた匂い……。これは秋人と無関係ではなさそうです。
烏のロクの存在も、怪しげですし。

もう物語は三分の二に差し掛かっています。
さあ、謎は解けるのか・・・。

飛田さん、いつになったら名探偵ぶりを発揮してくれるのか(笑)
また、2週間後の更新になりますが、どうぞ遊びに来て下さいね(*´ω`)

NoTitle 

こんにちは。
何かしらのメンタル面での怒り系のエネルギーが焦げる匂いへと・・。
なだめてあげることができれば落ち着くんですね。^^;
爆発してしまうと大変なことになりそうですね。
いろんな誘引や因子や原因があるかと思うんだけど、どう絡んでくるのかしら。怖いけどきになる〜〜〜〜〜!!!!

マダム猫柳さんへ 

マダム~、こんばんは^^

うん、なんか焦げた匂いがしたみたいですね。
周りの何かが、燻ったのかな?
教室でもプリントが焦げちゃってたみたいだし。

秋人の感情と何か関係があるのか、ないのか・・・。
でも、この後の展開に無関係ではなさそうです。
また、のんびりと追いかけてやってください~(*´▽`*)
いつも、読んでくださってありがとう!!

NoTitle 

ヤマユリの香り~~。凄いですね~~。
香りだけで判別できるとは!!
Σ(・ω・ノ)ノ!

私は分かっていてもなかなか感じ取ることができないじぇ。。。
嗅覚が駄目なのかなあ。。。


LandMさんへ 

ヤマユリノ香りw
ここは深く触れてないけど、きっと小菊の愛用してる香水かなんかなんでしょうね。

女性は特に匂いに敏感だから、こういうの気が付いちゃいますね。

昨日乗ったバスの隣の女性の香水がきつくて苦しかったです><

こんにちは~(^0^*)ノ 

キヨってかわいそうな人ですよね・・・
孤独から救われたと思ったら
授かりものは、得体の知れない生き物で
自分が働いて切り盛りしてる家の中なのに
愛情を持ちながらも怖れながら日々を送っている・・・

秋人は和貴に裏切られたと思っているのか
それとも、もともと心を預けてはいなかったのか
はたまた、ずっと何か企んでいるのか・・・・

そして、最近ご無沙汰の(笑)飛田さん!!
お話がどう転がっていくのか楽しみです(^^*)
キヨと和貴には悪いけど・・・・(笑)

かじぺたさんへ 

かじぺたさん、こんばんは^^
キヨの視点なので、特にそう思ってしまいますよね。
頑張って働いてるのに、娘はああだし、孫もくすぶってるし・・・(うん、くすぶってるし)
この後秋人か小菊の視点が出てきたら、何か別のものが見えてくるのかもしれませんが。
さて・・・まだまだ由良家、不穏な感じです。
(ゆっくり更新過ぎて、全然進みませんよね><)

秋人も、いろいろ不満をかかえていそうです。
それはいったい、誰に対してなのか。小菊の事をどう思ってるのか。
予想しながら見て行ってくださいませ^^

そうそう、飛田さん。いつ戻ってくるのやら><
たぶん、とんでもない展開になっていくと思うのですが、どうぞのんびりお付き合いくださいませ。

NoTitle 

おお、秋人発火?
初めて秋人が小菊の子供らしく見えてきました。
謎の怖さを発しているというか何というか。(今のところ焦げ臭さですが)
過去の出来事ともリンクしてくる描写でドキドキしました^^

夢月亭清修さんへ 

夢月亭さん、続きを読んでくださってありがとうございます!!
秋人、じわじわ正体を見せつつあるようです。
(と言っても、まだ内面を隠しているみたいですが)
ただの普通の子供では・・・ないみたいですよね><
感情でいろいろ問題が起こって来そうですが……。
なかなか真相にたどり着きませんが、のんびり追ってやってください。
ありがとうございました!
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【(イラスト)星空の下で】へ
  • 【(雑記)描写と得意分野】へ